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原産地規則と原産地証明書:EU

EUの原産地規則・原産地証明書について教えてください。

I. EUの原産地規則
EUの原産地規則は、「非特恵原産地規則」と「特恵原産地規則」に区分され、EU関税法で下記のように定められています(EU関税法No.2913/92 22〜35条、およびEU関税法施行規則 No. 2454/93 35〜65条、同Annex 10〜22)。


1. 非特恵の原産地規則
非特恵のWTO協定税率適用のための原産地の認定基準には、次の2つがあります。ただし、WTO協定税率は全ての原産品に対して等しく適用されますので、これらの原産地ルールが適用されるのは特定の産品や、特定の通商政策目的の場合となります。

  1. 1カ国のみが生産に関与し、当該国で完全に得られた産品(関税法23条)
  2. 生産国が複数国にわたる場合には、その産品の原産国は、最終の実質的な加工が経済的に正当化されると共に、そのための設備を有する工場で行われ、その結果新しい産品の製造をもたらすか、もしくはその最終加工が製造の重要な工程に該当する必要があります(関税法24条) 。


最終の実質的な加工の判断基準としては、1)付加価値基準(ある加工に伴って生じた付加価値が一定の比率を超えた場合に原産資格を与える)、2)関税分類変更基準(非原産材料部品が最終完成品の関税番号に変更されることをもって原産資格を与える)、3)加工工程基準(特定の加工が行われるかもしくは行われないことにより原産資格を付与する)の種類があります。これらの基準は非特恵のみならず特恵原産地規則にも適用されます。


特定の品目については、原産資格を与える加工と与えることにならない加工が個別に定められています。例えば繊維製品では関税番号4桁変更基準が適用されていますが(関税法施行規則36〜38条)、Annex 10で定められている繊維製品については付加価値基準に加え、特定の加工が要求されています。


2. 特恵目的の原産地規則
特恵税率適用のための原産地規則は、関税法27条、関税法施行規則67〜97条およびEUが特定の国・地域と締結する各々の特恵協定の中に定められています。


A. GSP(一般特恵関税)は、開発途上国(2012年10月時点で計176カ国・地域が対象となっています。)の原産品に対して適用されますが、そのための原産地規則は次のとおりです。

  1. 当該国で完全に得られた製品(関税法施行規則68条)
  2. 非原産材料が使われているが、十分な加工が行われることによって当該国で得られた産品。充分な加工の定義は製品ごとに詳細に定められ(リストルールと呼ばれ、関税法施行規則69条およびAnnex 15に定められています)、多くの場合、厳格な付加価値基準が用いられています。

 
また、GSP目的では、軽微な加工など原産資格を与えることとならない作業に関する規定(関税法施行規則70条)、僅少規定(同71条)、累積に関する規定(同72条)などのルールがあります。


B. EUとその他欧州諸国(EFTAを含む)および地中海沿岸諸国等との間に締結された各種経済協定に基づく特恵制度があり、その適用のための原産地ルールが存在します。
産品の加工が域内の複数国にまたがった場合には、協定ごとに異なった累積制度が適用されますが、「汎欧州地中海累積制度」では、多国間累積の考え方が適用され、累積に関する同一の原産地規則を持つ事を条件に、域内複数国での原産品は全て当該生産国の原産品とみなされます。
「汎欧州地中海原産地累積制度」はEU27カ国、EFTA4カ国、エジプト、アルジェリアなど地中海沿岸諸国10カ国の計41カ国を対象とし、2010年を目途に欧州・地中海地域を自由貿易圏にするという目標の下、1997年に設けられました。各協定ごとの対象国および原産地規則の詳細は欧州委員会税制・関税同盟総局サイトをご参照ください。


なお、特恵にかかわる原産地累積制度には下記の種類があります。

  1. 2国間累積:2国間FTAなど2国間でのみ累積が可能。
  2. 地域累積:定められた地域グループ内の産品は累積できるとされ、GSPの場合に適用。
  3. 多国間累積:汎欧州地中海累積制度に適用され、例えばA国、B国、C国で相互に特恵協定が締結され同一の原産地規則を有する場合、B国、C国の原産品はA国の原産品に累積できるとされています。
  4. 完全累積:EUとEEA諸国間(アイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン)のほか、地中海諸国の一部の国との間で適用され、域内で全ての加工を行うことを条件に最終生産国の原産品とみなされます。


II. EUの原産地証明書
原産地証明書は、当該製品の原産国を証明した書式で、EU関税法により「非特恵原産地」と「特恵原産地」に区別してその要件が定められています。


1. 非特恵の原産地証明書
非特恵のWTO協定税率適用目的では、EUへの輸入産品の原産国を記載した原産地証明書は原則不要です。ただし、非特恵の場合であっても特定の協定等により要求されている場合には、原産地証明書が必要となります。例えばEUが特定の国と締結する繊維協定等に基づき原産地証明書が要求される場合があります。また、アンチダンピングなど通商政策目的で迂回防止のために原産地証明書が要求される場合があります(関税法26条、関税法施行規則47条〜54条、Annex 12)。
[注]EUは2011年9月14日付のEU理事会規則第955/2011号により、繊維製品の輸入時に原産地証明書または原産地申告書の提出を求めるEU規則を廃止する規則を定め、この規則は2011年10月4日付で公布されました。


2. 特恵目的の原産地証明書
原産地証明書の種類は特恵の協定ごとに異なります。

A. EUR.1
EUが特定の国と締結する以下の特恵協定目的では、EUR.1と呼ばれる証明書が必要です。EUR.1は輸出国での発行後4カ月間有効で、この期間内に輸入国税関に提出されねばなりません(関税施行規則110条〜115条、関税法施行規則Annex 21)。

a. 汎欧州地中海諸国との特恵協定
EFTA諸国(スイス、ノルウェーなど4ヶ国)、エジプト、アルジェリアなどの地中海沿岸諸国、クロアチア、アルバニアなどの西バルカン諸国等との間で締結されるFTAなどの特恵協定において、原産資格を証明するためにEUR.1が要求されます。また、同地域内では、EUR.1と同様に、原産地証明書としてEURO-MED、およびInvoice Declaration EURO-MEDも導入されており、これらは多国間累積制度を適用する場合に使用されます。
b. その他の国・地域との特恵協定
例えば南アフリカ共和国と締結している2国間通商開発協力協定(TDCA)では原産性を証明するためにEUR.1が必要とされています。
c. GSPにおける累積目的
EU原産品を使用する場合には、EUR.1が必要とされています(関税法施行規則90条a) 。


B. Form A
GSP目的ではForm Aと呼ばれる原産地証明書が必要となります(関税法施行規則81条〜86条、およびAnnex 17)。Form Aの申請に当たっては当該製品のGSP原産資格を確認した後、GSP受益国の当局に対して申請を行います。ASEAN地域累積を利用する場合には、完成品のみならず、ASEAN域内から調達する部品等についても部品の原産性を証明するためのForm Aを取得することが必要です。この場合、完成品のForm A上にはASEAN CUMULATIONと記載されます。Form Aは、発行日から10カ月以内にEU域内輸入国へ提示されねばなりません。


C. Invoice Declaration
当局から事前に許可を得た認定輸出業者は、原産地証明書に代わりInvoice Declarationをすることも可能です。また、総額6,000ユーロ以下の貨物であれば、EU原産品あるいは受益国原産品にかかわらず、いかなる輸出業者であっても原産地証明書に代わりInvoiceに原産品であることを宣誓することにより、原産地証明書に代えることができます(関税法施行規則89条(1)(b))。
ただし、当該製品が原産資格を持つことが条件です。認定輸出者の要件は関税法施行規則90条に定められています。Invoice Declarationのサンプルは同Annex 22に示されています。


3. 原産地証明書の免除
私人から私人への小口貨物(500ユーロ以下)および旅行者の私物(1,200ユーロ以下)の場合などは原産地証明書が免除されます(関税法施行規則90条c)
 
4. 原産地証明書の発給機関
特恵関係の原産地証明書の発行は、特恵受益国である輸出国の政府機関が行っています。


III. 改訂されるEUのGSP(一般特恵関税)対象国
現在EUのGSP対象国数はEU委員会規則(EC)No.512/2011により176カ国と定められていますが、これは2013年12月31日までで、2014年1月1日からは89カ国になることが2012年10月31日付EU官報で公示されています。今回EUがGSP対象国を半数以上削減することにした目的として、次の点が挙げられます。

  1. GSPの利益を「最も必要としている国により多くの特恵を与える」とのEUの方針。
  2. GSPプラスを強化する。GSPプラスとは、労働、環境、人権の分野でいくつもの国際条約の実施を約束する国が、特別の貿易特恵に与れる制度のこと。
  3. 受益国の数を減らすことにより、残った後発開発途上国(LDC)の競争力を高めことによりLDCに対する貿易特恵の効果を強化する。

2014年1月1日よりGSP対象から外れる87カ国・地域名および同年月日より対象となる89カ国・地域名については文末の通商弘報「マレーシアなどが特恵対象外に-新GSP規則を公示-」をご覧ください。


関係法令
Eur-lex:
EU関税法
EU関税法施行規則
EUの新たな一般特恵関税規則(2012年10月31日EU官報)


参考資料・情報
経済産業省:
「EU向け繊維製品輸出における原産地証明書が不要になった」旨の通知(平成24年1月6日付公表)
ジェトロ:
「マレーシアなどが特恵対象外に-新GSP規則を公示-」
「欧州における特恵関税」ユーロトレンド2006年2月号
欧州委員会税制・関税同盟総局:
European Commission, Taxation and Customs Union ? Rules of Origin


調査時点:2012/11

記事番号: A-041152

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