化粧品の現地輸入、販売規則および留意点:米国向け輸出

質問

米国に化粧品を輸出します。現地での輸入、販売規則および輸出者として留意すべき事項を教えてください。

回答

米国の連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug and Cosmetic Act: FDCA)では、化粧品(Cosmetic)は「人の体に塗る、馴染ませる、スプレーする等により、体をきれいに美しくし、魅力を高め、または外見を変えるためのもの」と定義されます。これにMoCRA(後述)では「最終製品に使用される、質的および量的に定められた組成を有する調合物」が追加されました。保湿剤やシャンプーのほか、練り歯磨き粉も化粧品に分類されます。なお、同法の医薬品(Drug)の定義にも該当する化粧品(日焼け防止剤など医薬品の効能を持つもの)は、化粧品および医薬品両方の規制の対象となります。

米国での化粧品販売は2023年12月29日に発効した化粧品規制現代化法(Modernization of Cosmetics Regulation Act of 2022; 以下「MoCRA」)によって米国で流通する化粧品の製造または加工に従事する施設の所有者または運営者は2024年7月1日までに同施設および化粧品の登録他への対応が求められています。登録は基本的に電子ポータル(Cosmetic Direct)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで行います。

MoCRAの登録対象者にはOEMメーカーも含まれますが、小売事業者、美容サロン、研究目的で製造する施設、包装のみを行う施設などは規制の対象外となります。

詳細は文末の参考資料・情報「調査レポート 米国・化粧品現代化規制法(MoCRA)の内容と要対応事項」PDFファイル(1.1MB)を参照下さい。

I. MoCRAによる主な改正点および必要な対応事項

  1. 有害事象(死亡、命を脅かすような危険、入院、重篤障害など)が発生した場合の報告
    法律により化粧品ラベルに名前が表示される化粧品の製造業者、包装業者または販売業者の責任者は自らが製造、包装、または販売した化粧品の米国内での使用に関する重大な有害事象報告を受領した場合、当該製品のラベルのコピーを添付して受領日から15営業日以内にFDAに報告すること他が義務づけられます。
    また、責任者は、有害事象に関する記録を6年間保管する義務を負い、FDAは査察の際に当該記録にアクセスすることができるとしています。
    1. 有害事象報告を受け取ることができる米国内の住所、電話番号またはwebsiteの設置
    2. 有害事象報告を受け取った場合のFDAへの報告および記録の保管に対する体制の構築
  2. 施設の登録および化粧品のリストアップ
    1. 施設の登録(2年おきに更新)

      既存の施設は2024年7月1日までに登録、新規の施設は化粧品の製造を開始後60日以内の登録が必要です。

    2. 製品のリストアップ(成分を含む、毎年更新)
      既存の化粧品は2024年7月1日までに化粧品の製造施設の登録番号、責任者の指名、連絡先のリストアップが必要です。新規の化粧品は販売開始から120日以内のリストアップが必要です。なお、過去に電子ポータル(Voluntary Cosmetics Registration Program: VCRP)に自主登録した化粧品もMoCRAでの登録が必要です。
      ただし、 上記のうち施設の登録および化粧品のリストアップについては米国での過去3年の平均売上が100万ドル未満の場合は中小企業として免除されます。一方、中小企業であってもFD&C法第612条(b)に記載されている次の事業については免除の対象にはなりません。(1)目の粘膜に頻繁に接触する化粧品(2)注射器で注入する化粧品(3)内服用の化粧品(4)24時間にわたり外観を変化させることを目的とする化粧品で消費者による除去が使用方法の条件に含まれないもの。
  3. 化粧品の安全性の立証
    化粧品製品の責任者は、化粧品製品の安全性が十分に実証されていることを確保し、これを裏付ける記録を保管することを義務づけられます。
  4. その他
    事業者は化粧品を製造、加工する施設における化粧品の適正製造規範(Good Manufacturing Practice: GMP)の遵守状況の確認が必要です。また、事業者はFDAガイダンスに従って化粧品アレルゲンの表示義務、タルク含有化粧品中のアスベストを検出、特定するための試験方法の確立およびPFAS化粧品の安全性について対応しなければなりません。

II. 関税分類番号(HSコード)

化粧品(HSコード3301〜3307)
化粧品の多くは無税ですが、品目によって約2〜6%の関税がかかります。税関使用料や港湾維持料なども徴収されます。

III. 輸入手続き

  1. 輸入業者は自動積荷目録システム(Automated Manifest System: AMS)を通じて輸入申告書(entry notice)と通関保証(entry bond)を米国税関国境警備局(Customs and Border Protection)に提出します。
  2. AMSは、入力された情報を米国食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)の食品輸入管理システム(Operational and Administrative System for Import Support: OASIS)に自動的に送ります。
  3. FDAはこれらのデータにもとづき、現物検査の必要の有無を決定します。検査が必要な場合、FDAはサンプルを各規定に照らして検査し、問題なければ販売できます。

IV. 化粧品関連の規制

  1. 規制関係機関
    FDAが管轄し、その傘下機関の食品安全・応用栄養センター(Center for Food Safety and Applied Nutrition: CFSAN)と規制問題事務局(Office of Regulatory Affairs: ORA)を中心に化粧品に関する規制を定めています。
  2. 化粧品の成分規制
    安全性の面からクロロホルム、塩化ビニル、ビチオノール、クロロフルオロカーボンプロペラント、ハロゲン化サリチルアニリド、塩化メチレン、ジルコニウム含有複合体の7成分に加え、ウシ(畜牛)由来の原料も配合が禁止されています。
    また、ヘキサクロロフェン、水銀化合物、日焼け防止剤の3成分は配合が制限されています。日焼け防止剤の配合制限は医薬品としての規制に抵触する可能性があるためです。配合目的が日焼け防止ではなく、例えば製品の変色防止のためであれば使用できます。ただし、その目的をラベルに記載する必要があります。
    配合禁止成分および配合制限成分以外の成分については、企業の責任で制限なく使用できます。
    化粧品に使用されるすべての着色料は、FDAの承認が必要です。また、主に石油を原料とする着色料はFDAの承認のほかに、色ごとの検査も必要です。詳細は文末の参考資料・情報「化粧品の成分に関する情報」、「使用可能な着色料一覧」を参照ください。
  3. 表示、ラベル
    FDAは、商品表示は商品の外箱と本体の容器両方に印刷するべきと定めています。表示規格については、「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug and Cosmetic Act: FDCA)」および「公正包装ラベル表示法(Fair Packaging and Labeling Act)」の規定に準ずる必要があります。また、前述のMoCRAにより責任者の米国内住所、電話番号またはWebsiteによる連絡方法の記載および香料アレルゲンの表示が必要になりました。化粧品に「FDA承認済み」と記載することは誤解を招くとして禁止されています。標準表記言語は英語ですが、プエルトリコなど米国領土であって英語以外の言語が主言語である地域については、その言語を使用できます。医薬品の効能を持つ化粧品は、医薬品と化粧品と両方の規則に従う必要があります。詳細は文末の「ラベルに関する情報」を参照ください。

V. 日本から輸出時の注意事項

米国向け化粧品の販売には英語での表示規定に対応する必要があります。このため米国向けに化粧品を輸出する場合は、化粧品製造業者(またはその製造業者から輸出用化粧品を購入した化粧品製造販売業者)でなければ輸出できません。また、輸出用化粧品を製造する化粧品製造業者は、製造開始前に、輸出用化粧品についての「輸出化粧品製造届書」を厚生労働大臣に届出しなければなりません。

関係機関

関係法令

参考資料・情報

ジェトロ
調査レポート「米国・化粧品現代化規制法(MoCRA)の内容と要対応事項」2023年11月 PDFファイル(1.1MB)
ビジネス短信「米FDA、化粧品現代化規制法(MoCRA)施行に向けパブコメ募集」2023年08月25日
ビジネス短信「米FDA、化粧品現代化規制法(MoCRA)に基づく製造施設の登録期限を2024年7月1日まで延長」2023年11月15日
FDA情報(英文)
施設登録、化粧品リストアップのガイダンス 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
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化粧品、薬品の定義、他外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

作成日:2013年11月
更新日:2024年6月

記事番号: A-030105

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