税関の事後調査:日本
質問
税関の事後調査とはどのような制度ですか?
回答
税関の事後調査とは、輸出入通関後に税関職員が輸出者または輸入者の事業所等を訪問して、税関に申告された内容を保管されている帳簿や書類等により確認を行う制度のことです。
I. 輸入者に対する制度
- 目的
税関は輸入貨物にかかる納税申告が適正か否かを確認します。不適切な申告の場合はこれを是正し、輸入者に対して適切な申告指導を行うことにより適切な課税を確保することを目的として実施しています(関税法第105条第1項第6号)。
輸入者は貨物を輸入する際に自己の責任に基づき関税等の納付税額を算出して輸入申告をします(申告納税制度)。しかし、関税評価の知識や納税意識の不足、法解釈の相違などから必ずしもすべての輸入者が適正な申告をしているとは限りません。そこで、税関が事後調査により申告納税制度を補完し、適正な輸入申告を確保して課税の公平性を図ります。
- 対象期間
通常、事後調査日から遡って5年間です。 - 誤りが指摘された場合
調査の結果、申告内容への誤りが指摘された場合、税関は輸入者に適切な指導を行い、課税価格、税額等の不足額を徴収します。輸入通関時に課税される税には、関税、消費税の他、貨物の品目に応じてその他の内国消費税(酒税、たばこ税、揮発油税等)があります。関税が無税の場合でも輸入申告価格(CIF価格)が適正でないと消費税などに影響します。
また、事後調査で納税申告が適正でないとの指摘を受け、修正申告を行うもしくは更正処分を受けたことに関し、正当な理由がない時は、関税および内国消費税に対して過少申告加算税、無申告加算税が、さらに過少申告や無申告に関し、課税標準や納付すべき税額の基礎となる事実について隠ぺいまたは仮装が認められる場合には重加算税等の付帯税が課されます。 - 申告漏れの事例
毎年11月に財務省から関税・消費税の申告漏れを含めた輸入事後調査結果が報道発表されます。2015年度に調査を実施した輸入者4,302社のうち、申告漏れがあったのは2,977社(69.2%)で、関税および内国消費税の追徴税額は145億9,000万円でした。
申告漏れの主な例は以下のとおりです。
- インボイスに記載された決済金額以外の貨物代金の申告漏れ
- 豚肉に係る高価申告(実際の輸入価格よりも高い価格で輸入申告し、差額関税を免れようとした)
- 海外生産のために輸入者が輸出者に無償提供した材料費用などの申告漏れ等
- 処分または使用につき制限がある貨物に係る課税価格の申告誤り
- 低価インボイスによる輸入申告
- 事後調査への準備
日頃から適正な輸入申告を行うことが大切です。そのためには取り扱う輸入品について常に契約・支払いなどの詳細内容を把握しておく必要があります。また、輸入申告漏れのないようインボイス金額、別払い金、無償又は値引き提供費用などを確認し、的確な関税評価に努めることが大切です。疑義がある場合は、事前に通関業者や税関に相談してください。
事後調査が実施される場合、原則として税関から事前に通知があります。以下の書類提示・提出が要求されますので、5年間は必ず保管してください。
- 関税関係帳簿(品名、数量、価格、仕出人の名称、輸入許可年月日、許可番号を記載)
- 通関関係書類(契約書、インボイス、パッキングリスト、運賃明細書、保険料明細書、価格表)
- 経理関係の帳票(総勘定元帳、補助台帳、振替伝票、決済関係の経理書類)
- 法人税確定申告書
- 消費税確定申告書
- 取引情報に関わる電子メール等、電子媒体の記録
- 会社概要、会社組織図
II. 輸出者に対する調査
- 目的
輸出事後調査は、輸出管理体制や通関処理体制の構築を促すことで輸出通関を実現することを目的としています(関税法第105条第1項第4の2号)。税関は、輸出された貨物に係る手続きが関税法等関係諸法令の規定に従って正しく行われたか否かを確認し、不適正な申告を行ったものに対しては適切な申告を行うように指導します。 - 調査対象期間
通常、事後調査日開始から遡った5年間です。輸出取引(販売、仕入)内容、決済関係、インボイス内容(品名、価格など)や輸出関係の帳簿、書類、電子媒体記録の保存状況、また、輸出者企業の輸出管理や通関処理体制などが確認されます。
関係機関
関係法令
調査時点:2016年12月
最終更新:2020年6月
記事番号: A-011023
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