渡航ビザの種類とその取得方法:中国
質問
中国への渡航ビザについて教えてください。
回答
当記事作成時点(2023年9月中旬)で、中国における日本国籍者への「15日間ノービザ中国滞在」は、未だ再開されていません。(但し、海南省へ渡航する場合は最長30日間までビザは不要。)したがって、中国に出張・派遣する社員の仕事内容、中国での滞在期間等から判断し、適切なビザを取得する必要があります。
外国人は、目的により以下のビザ(査証)を取得することが定められています(新「出入国管理法」2013年7月1日施行)。
- 商業貿易活動:Mビザ
- 就労:短期Zビザ
- 就労:Zビザ
- 観光:Lビザ
- 中国が必要とする外国人高度人材・専門分野人材:Rビザ
- 外国人の中国における交流・訪問・視察等:Fビザ
- その他にも帯同ビザ・留学ビザ等あります。
上記とは別に現地で取得するビザとして以下のものがあります。
- 中国経由乗り継ぎ:Gビザ(トランジットビザ)
- 口岸:Eビザ(アライバルビザ)
したがって、中国に派遣する社員の仕事内容、中国での滞在期間等から判断して適切なビザを取得する必要があります。
※ビザの情報は随時変わるので、管轄の中国総領事館・中国ビザ申請センター(以下、中国ビザ申請センター等という)に適宜ご確認ください。
なお、日本からのリモートで中国業務に従事されるケースについては、就業・就労ビザや外国人就業証、外国人居留許可証等の取得は不要です。
Ⅰ. Mビザ、短期Zビザ
Mビザおよび短期Zビザは、それぞれ下記に該当する業務に従事する場合に、申請すべきビザとなります。
以下のいずれかに該当し、かつ滞在期間が90日以内である場合、申請が必要となる。 | |
---|---|
Mビザ |
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短期Zビザ |
|
Mビザの申請について
中国への出張に際しては、Mビザを申請されるのが多くなっております。ここで簡単に、Mビザの申請資料などを、確認しておきます。
[必要資料]
- 中国国内の相手方が発行した招聘状
- パスポート原本
- パスポートの顔写真入りのページのコピー1部
- ビザの申請表
- 写真
をもって、日本にある中国ビザ申請センター等で申請することになります。
当記事作成時点(2023年9月時点)では、申請から発行まで1ヶ月から3ヶ月程度の時間を要する模様です。具体的な必要資料、所要時間は、管轄の中国ビザ申請センター等まで事前にご確認のうえ、実施ください。
Ⅱ. Zビザ
日本企業の駐在員は、中国への渡航にあたり、一般的にはZビザを取得する必要があります。ここでは、Zビザの取得⽅法について説明をいたします。
1.申請条件
中国で就労するにあたり、当該外国籍人材就業証および外国人居留許可証の取得が必要となります。それぞれの申請には準備すべき書類も多く、相当の日数を要します。従って、受け入れ先の中国企業、派遣元の日本企業ならびに本人が相互に連絡を取ることはもとより、関係管轄機関から必要な情報を収集し、適切に申請手続きを行うことが必要です。
「外国人中国就業・就労分類基準(試行)」より、外国人就労規制強化の新制度の運用が始まり、外国人就労者を高度人材(A類)、専門人材(B類)、一般人材(C類)に分類し、就業許可およびZビザ発行のためには、各種条件を満たすことが義務付けられています。
【分類基準】
A類 ※(1)~(6)のいずれかを満たせばよい
(1)国内の人材誘致計画に選定された人材
(2)国際的に公認された専門業績認定基準に合致する人材
- グローバル500の本部における高級管理職および技術研究開発の主要メンバー、下部会社またはエリア本部における副総経理以上の管理職、技術研究開発の責任者
- 国際的に著名な金融機関または会計事務所の高級管理職
(3)市場動向に合致する奨励類職位に必要とされる外国人材
- 中央国有企業、グローバル500に選定された企業の全世界またはエリア本部、ハイテク企業、大手企業が招聘雇用した高級管理職または技術職務人材及び科学研究の基幹幹部
- 国内外の中堅企業が招聘雇用した副総経理以上の高級管理職または技術職務にかかる人材及び科学研究の基幹幹部、「外商投資産業指導目録」における奨励類産業または「中西部地区外商投資優位産業目録」における小型外商投資企業の董事長、法定代表者、総経理、首席技術専門家
- 平均賃金収入が現地における前年度の平均賃金収入の6倍を下回らない外国人材
(4)イノベーション・創業人材
(5)優秀な青年人材(40歳以下)
B類 ※原則として(1)~(5)のいずれかを満たす60歳を超えない人材
(1)学士以上の学位、および2年以上の関連職務経歴を有する外国人材であり、かつ以下いずれかの条件を満たす者
- 教育、科学研究、ニュース、出版、文化、芸術、衛生、体育などの特殊な分野において、科学研究、教育、管理の業務に従事する管理者または専門技術者
- 国内外の政府間協議、国際組織間協議、国内外の貿易および工学技術契約の履行にかかる人材、国際的に著名な学術機構および教育分野における国際組織が派遣する人材
- 国際組織の駐在代表機構が雇用する人材、外国人専門組織の駐在機構の代表
- 多国籍企業が派遣する中堅以上の人材、外国企業の駐在代表機構の首席代表および代表(※多くの日本人駐在の場合、上記の条件を充足する可能性が高い。充足する場合には、下記(6)の点数基準を充足する必要はない。)
- 各種企業、事業者、社会組織が雇用する外国管理者または専門技術者
(2)国際的な職業技能資格証書を有する人材または急を要する技能型人材
(3)平均賃金収入が現地における前年度の平均賃金収入の4倍を下回らない外国人材
(4)外国語教員
(5)国の関連規定に合致する人材
(6)得点が60点以上の人材
C類 ※(1)あるいは(2)のいずれかを満たせばよい
(1)現行の外国人就業管理規定に合致する者
(2)臨時的、短期間(90日を超えない)の業務に従事する者
【得点配分表】
上記した各種条件に照らしても、A類ないしB類に該当しない人材の場合、得点配分表で、A類:85点以上、B類:60点以上を満たす必要があります。
加点要素(最高得点) | 基準 | 得点 |
---|---|---|
直接資格を付与 | 国内の人材誘致計画に選定され、国際的に公認された専門業績認定基準に合致する人材 | ― |
市場動向に合致する奨励類職位基準に合致する人材 | ― | |
イノベーション・創業人材および優秀な青年人材 | ― | |
中国国内における年間給与(20) | 45万元以上 | 20 |
35万元以上、45万元未満 | 17 | |
25万元以上、35万元未満 | 14 | |
15万元以上、25万元未満 | 11 | |
7万元以上、15万元未満 | 8 | |
5万元以上、7万元未満 | 5 | |
5万元未満 | 0 | |
学歴および資格(20) | 博士:国際的な最高ランクの職業技能資格証書または高級技師、あるいはそれに相当する資格 | 20 |
修士:技師またはそれに相当する資格 | 15 | |
学士:高級エンジニアまたはそれに相当する資格 | 10 | |
実務経験年数(15) | 2年以上:超過年数1年につき1点を加算 | 最高点20 |
2年 | 5 | |
2年未満 | 0 | |
中国国内における年間勤務期間(15) | 9か月以上 | 15 |
6か月以上、9か月未満 | 10 | |
3か月以上、6か月未満 | 5 | |
3か月未満 | 0 | |
中国語の能力(5) | 過去に中国国籍を有していた外国人 | 5 |
中国語での学位取得 | 5 | |
HSK5級以上 | 5 | |
HSK4級 | 4 | |
HSK3級 | 3 | |
HSK2級 | 2 | |
HSK1級 | 1 | |
勤務予定地(10) | 西部地区 | 10 |
東北地区等の旧工業地区 | 10 | |
国家レベルの貧困県等の特別地区 | 10 | |
年齢(15) | 18歳以上、25歳未満 | 10 |
26歳以上、45歳未満 | 15 | |
46歳以上、55歳未満 | 10 | |
56歳以上、60歳未満 | 5 | |
61歳以上 | 0 | |
世界的に著名な大学を卒業、またはグローバル500の企業における就業経験およびその他の条件(5) | 国内外の著名な大学を卒業 | 5 |
グローバル500の企業での就業経験 | 5 | |
特許等の知的財産権を保有 | 5 | |
中国において連続して5年以上の就業経験 | 5 | |
地方政府による奨励加点(10) | 地方経済および社会発展のため必要とされる特別人材(具体的な基準は省レベルの外国人就業管理部門が制定) | 0-10 |
2.中国の受け入れ企業が事前に行う手続き
- 外国人就労管理サービスシステムでのアカウント登録
中国の受け入れ企業は、外国人就労管理サービスシステムで、以下の書類をアップロードし、新規アカウント登録を行います。- アカウント登録申込書
- 企業の登記証明(営業許可証、組織機構コード証、社会保険登記証、外国企業駐在代表機構登記証または海外非政府組織代表機構登記証など)
- 担当者の身分証明書
- その他法律法規に規定する書類(批准証書など)
- 「外国人就業許可通知書」の発給申請
管轄地の人力資源・社会保障行政部門へ以下の書類を提出し、「外国人就業許可証書」の発給を申請します。
申請手続きは受領まで約10~15営業日を要します。発行日から有効となり、有効期間は12カ月です。なお、近年、就業許可申請にあたり、本人の年齢が60歳を超える場合は、副総経理以上の役職もしくは特殊技能を保持する者以外は許可されない事例があります。- 外国人就業許可申請書
- 赴任予定者の履歴証明
- 学歴証明書または職業技能資格証明書
- 無犯罪証明書
- 健康診断書
- 雇用意向書または任職証明書
- パスポート
- 写真(電子版、3×4cm)
- 同行家族に関する証明書類
- その他法律法規に規定する書類
フローチャートⅠ. 中国の受け入れ企業が事前に行う手続き
3.赴任予定者が日本で行う手続き
- 外国人就業許可通知書の取得
中国の受け入れ企業が日本の派遣元企業に送付した外国人就業許可通知書を受領します。 - Zビザの申請
赴任予定者が直接または旅行代理店を通じて最寄りの中国大使館または領事館(東京・大阪・名古屋では中国ビザ申請センターが代行)にてZビザを申請します。提出書類は指定のビザ申請書、外国人就業許可通知書の原本およびコピー、パスポート、写真(3×4cm)などです。申請から発給までは約4営業日を要します。場合によっては面接を受ける必要があります。ビザ申請書は、下記の中国ビザ申請センターのウェブサイトからダウンロードが可能です。
この段階において発給されるZビザは一時入国用の査証であり、中国入国から30日間で失効するため、入国後に速やかに外国人就業証および外国人居留証明書を取得する必要があります。ビザ申請書は、文末の中国ビザ申請センターのウェブサイトからダウンロードが可能です。
日本でのビザ申請時における健康診断書の提出は原則不要となりますが、中国現地における「外国人就業証」および「外国人居留許可証」の申請時には、引き続き同書類の提出が義務付けられています。なお、日中友好医院あるいは国公立病院での受診結果の利用が可能です。
4.中国入国後に行う手続き
- 「外国人就業証」の申請
中国入国後15営業日以内に、許可証に基づき中国の受け入れ企業と労働契約を締結し、管轄地の人力資源・社会保障行政部門に「外国人就業証」の発給を申請します。申請書類は外国人就業証申請書、中国の受け入れ企業との労働契約書、パスポート、入国後の健康診断書(wechat公式アカウント「税関総署国際旅行衛生保健センター(中文:海关总署国际旅行卫生保健中心)」での事前予約が必要)、労働契約書のコピー、写真などです。申請から発給までは約15営業日を要します(外国人の中国における就業管理規定15条)。なお、取得するまでは、現地法人等の雇用者としての活動はできません。 - 「外国人居留許可証」の申請
就業証を受領後、入国後30日以内に受け入れ企業所在地の県以上の地方人民政府公安機関出入境管理機構へ「外国人居留許可証」を申請します。提出書類は外国人居留申請書、パスポート、健康診断書(上記1.「外国人就業証」の申請手続きで健康診断書を提出している場合は不要)、外国人就業証、写真、中国企業の労働契約書などです。居留証発行までは約15営業日を要します(外国人の中国における就業管理規定16条および出入国管理法30条)。
5.留意点
居留許可の更新または出入国管理局でのパスポート預かり期間中に、出張等の理由によりパスポートが必要となる場合、出入境管理局により発行された居留許可申請の受理票をパスポートの代わりとして利用することが可能です。空港でのチェックインの際には、受理証に顔写真を貼付し、出入境管理局の公印(割印)を押印したものを、パスポートのコピーとともに提示します。ホテルでのチェックインの際には、前出の写真貼付の受理票と、パスポートの顔写真ページ、居留許可証(有効期限内のもの)が貼付されたページ、最新の入国日が記載されたスタンプのあるページのコピーをそれぞれ提示します。
ただし、2023年8月3日発表の「公安機関サービスの質の高い発展を保障する若干の措置」により、所持ビザの残り有効期間が7営業日以上の場合は、居留許可の申請や更新を行う際に、パスポートを預ける必要はないとしています。
Ⅲ.中国の日本国籍者に対するビザ発給/免除の状況
当記事作成時点(2023年9月中旬)で、中国における日本国籍者への「15日間ノービザ中国滞在」は、未だ再開されていません。
一方、国家移民管理局は2023年1月29日付で、日本人に対するアライバルビザ発給および72/144時間のトランジットビザ免除を再開すると発表しました。
これまでに馴染みのない、この2つのビザ発給/免除について、簡単に説明をいたします。
1.中国経由乗り継ぎ:Gビザ(トランジットビザ)免除
トランジットビザ免除制度とは、最終的に第三国(または地区、中国台湾・香港・マカオ地区を含む)訪問で中国を途中経由する外国人に対して、入国時に必要なビザを免除する制度を指します。
- 申請書類
- 有効期限が3カ月以上のパスポートまたはその他の国際旅行証明書
- 72/144時間以内の期日と座席が確定した第三国への乗り継ぎ便の航空券
- 記入済みの外国人出入境カード(現地の空港にて入手可能)
- 申請手続き
申請書類を提出し、入国審査を受けて入国許可証を申請します。発給にかかる時間はケース・バイ・ケースですが、1時間程度待たされるか、それ以上を要するケースもあるようです。 パスポートには、ビザに代わり入国許可証が貼り付けされ、ここに通関場所(空港)と、滞在できる期間、エリアが記載されています。
滞在可能期間については、到着日の翌日0時から72時間から144時間までとされています。北京や上海などの主要な空港であれば144時間、すなわち到着から約6日間滞在可能となっています。
なお、乗換という目的に照らし、滞在できるエリアについても制限があります。上海空港での通関であれば、上海市・江蘇省・浙江省内に限られ、北京空港であれば北京市・天津市・河北省の一部、となっています。
この滞在可能期間やエリアは頻繁に変更され、またタイムリーに更新されていないということも往々にしてありますので、基本的には短期間かつ空港周辺の都市、という前提で活用いただくべき制度となります。
2.口岸:Eビザ(アライバルビザ)
「公安機関サービスの質の高い発展を保障する若干の措置」(2023年08月03日発表)において、商談、貿易交流、設置・メンテナンス、展示会参加、投資・起業などを目的として中国に入国する外国人に対し、中国外でのビザ発行が間に合わない場合、企業の招聘状および証明資料に基づき、アライバルビザの申請が可能とされました。また、ビジネス目的で何度も往復する必要がある場合は、中国入国後3年間有効のマルチビザに切り替えが可能ともされています。
これをうけて、当記事作成時点(2023年9月中旬)において、窓口まで問い合わせたところ、アライバルビザは申請事由についての審査が厳しく、引き続き発給率は低いとの回答が得られました。通常の出張に利用されるには不確定要素が多く、慎重にご判断いただくべき状況と考えます。
なお、アライバルビザの申請が可能な旅行者は、海外の高級人材または海外大学のインターン生、人道的な理由による緊急入国者などが対象となり、一般の旅行者向けではありません。
一方、「特区旅遊(E)ビザ」という特別版「アライバルビザ」は日本人に対しても、現地到着時に空港において、取得可能とされております。
「特区旅遊(E)ビザ」申請手続きは、口岸内の入出境査証事務所において写真を撮影し、申請用紙の記入後パスポートとともに提出し、手数料を支払って申請します。
ビザの有効期間は「入境した翌日(0:00)から5日間」であり、滞在可能エリアは申請した特区のエリア内のみ、深圳で申請した場合は深圳市内のみとなり、最長で5泊6日滞在可能です。
特区旅遊ビザは「珠海」と「厦門」でも申請可能ですが、珠海と厦門の特区旅遊ビザの滞在可能日数は3日間のみと短期間となります。
関係機関
関連法令
- 中国公安部:
- 中国出入国管理法(中国主席令第57号、2012年6月30日公布、2013年7月1日施行)
- 中国中央人民政府:
- 中国外国人出入国管理条例(国務院令第637号公布、2013年7月12日公布、2013年9月1日施行)
- 中国人的資源・社会保障部:
- 外国⼈の中国における就業管理規定(労働部、公安部、外交部、対外経済貿易部発布労部発1996年29号、1996年1⽉22⽇発布、人力資源・社会保障部令第32号により改訂、2017年3⽉13⽇に新たに発効)
- 国家外国専門家局・人的資源社会保障部・外務省・公安部:
- 外国人中国就業・就労分類基準(試行)(719KB)
- 在日大使館および総領事館:
- 中国ビザ申請の規則(2023年3月14日更新)
- 外国人の中国入国ビザ及び入国政策の更なる調整に関する通知
- 国家移民管理局:
- 日本人に対するアライバルビザ発給および72/144時間のトランジットビザ免除を再開する
参考資料・情報
- 中国査証申請服務中心 中国ビザ申請センター
-
外国人就労管理サービスシステム
日本国際貿易促進協会(TEL 03-6740-8261):日中貿易必携
調査時点:2023年8月
最終更新:2023年9月
記事番号: A-010934
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