独資株式を中国側に譲渡する際の手続きと留意点:中国
質問
中国に独資で工場を建設しましたが、今回、出資持分の一部を中国側に譲渡し、独資を解消したいと考えています。定款には特に出資持分譲渡の規定はありません。このように出資持分譲渡を行う場合どうしたらよいか、留意点などについて教えてください。
回答
独資企業の出資持分の一部を中国側に譲渡する場合、外商投資企業から中外合弁企業に改組されることになり、様々な手続きが発生します。独資株式の出資持分譲渡に関する根拠法は「外商投資企業出資者の持分変更についての若干の規定([1997]外経貿法発第267号、1997年5月28日施行)があります。
I. 中国側との交渉
- 企業評価およびデューデリジェンス(買収監査)の実施
出資持分譲渡先の中国側出資者は通常独資企業に対してデューデリジェンスを実施して、独資企業の財務・法務・環境・ビジネス面での問題点や瑕疵事項を把握します。 - 株式譲渡条件の交渉
上記1の結果を踏まえて、出資持分譲渡条件を交渉し、日中の譲渡当事者間で出資持分譲渡協議書を締結します。重点となる交渉事項は以下のとおりです。- 出資持分譲渡価格と対価の支払い方法
- 譲渡側当事者の瑕疵担保責任
- 出資持分譲渡に当たっての譲渡当事者の承諾事項と違約責任
- 準拠法、紛争の解決方法、秘密保持
- 合弁契約書の作成
独資企業の現出資者と中国側新出資者との間で合弁条件の交渉を行い、合弁契約書を締結します。契約書に盛り込むべき重点項目は主に以下のとおりです。- 合弁改組後の増資引き受けや出資持分譲渡にかかわる基本原則・基本条件
- 董事会構成および職権
- 董事会での全会一致決議事項
- 合弁当事者の責任分担
- 合弁会社の解散要件と紛争解決方法
II. 独資出資持分譲渡にかかわる許可取得などの手続き
- 定款の変更
独資出資持分の譲渡に伴い、独資企業の定款の変更が発生します。中国会社法では、定款の変更には董事会(または株主会)を開催し、メンバーの決議を要すると規定しています。 - 出資持分譲渡および改組申請方法と提出書類
出資持分譲渡および中外合弁企業へ改組するには、所在地の商務部門へ許可申請を行います。申請から許可書および新批准証書の取得までにかかる所要期間約1ヵ月です。申請時の主な提出書類は以下のとおりです。- 出資持分譲渡協議書
- 合弁契約書と会社の新定款
- 董事会メンバーリストと新董事任命書
- 独資企業の批准証書(原本)と営業許可証(コピー)
- 中国側出資者の営業許可証(コピー)
- 出資持分譲渡対価の支払い
被譲渡者である中国側出資者は、出資持分譲渡協議書や上記2の出資持分譲渡および改組許可書、納税証明書などを提出して所在地の外貨管理局の認可を受け、出資持分譲渡対価を譲渡者である日本側出資者向けに外貨で送金することになります。 - 出資持分譲渡対価の受領証明と出資証明書の発行
- 出資持分譲渡対価の受領証明書類としては日本の公認会計士事務所の監査証明が最適ですが、手配が難しければ、銀行の入金証明書で代替することになります。
- 出資証明書は、変更後の出資比率と出資金額に基づき改組後の中外合弁企業が作成し、各出資者宛に送付します。
- 出資持分譲渡後の手続き
出資持分譲渡後は、所在地の工商行政管理局にて企業形態の変更登記から新営業許可証の取得を行う必要があります。所要期間約2週間です。
III. その他留意点
- 出資持分譲渡に対する課税
譲渡者の出資持分譲渡価格が元の取得原価を上回る場合、超過額(譲渡益)に対しては10%の企業所得税が課税されます。被譲渡者である中国側出資者が日本側(譲渡者)の為に10%を源泉控除して代理納税し、残りの金額を日本側に送金します。 - 出資持分譲渡制限
中国中外合弁経営企業法第4条により、中国側の投資家に対して持分の全てを譲渡する場合を除き、外国企業側の投資比率は25%を下回ってはいけません。
関係機関
関係法令
- 中国中央人民政府:
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中国外資企業法(中国主席令第41号、2016年9月3日改正施行)
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中国外資企業法実施細則(中国国務院令第648号、2014年2月19日改正施行)
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中国中外合弁経営企業法(中国主席令第48号、2016年10月1日改正施行)
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中国中外合弁経営企業法実施条例(中国国務院令第648号、2014年2月19日改正施行)
-
中国会社法(中国主席令第8号、2014年3月1日改正施行)
調査時点:2012/10
最終更新:2018/03
記事番号: A-010726
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