為替レートの決定方法

質問

為替リスクを回避するため為替先物を予約したいと考えています。銀行が提示する先物為替レートはどのようにして決定されるのでしょうか。教えてください。

回答

銀行は為替・金利の変動リスクを避けるために適切と判断するドルの持高をその時々で調整しています。外国為替には直物相場と先物相場があります。

I. 直物相場と先物相場

直物相場とは、銀行と顧客との外国為替取引に関しては、当日中にその受け払いを行う場合に適用する相場であり、銀行はTTB(電信買い相場)とTTS(電信売り相場)を公表しています。一方、先物為替相場とは、将来の一定の期日または期間を予約の実行日または期間と定めて、銀行と外貨の決済を行うレートをあらかじめ取り決めておく場合の為替相場です。

II. 対顧客相場の決定

銀行が顧客取引に適用する為替相場は、同時点での銀行間市場(外国為替市場)における実勢相場に銀行のマージンを加味して決定されます。先物為替取引においても、先物相場決定時点での市場の直物相場をベースとする点は同じですが、先物相場は、直物相場に加え、売買する外貨(たとえば米ドルと円)の金利差が反映されたスプレッドを調整して決まります。

III. 先物相場の決定方法(2通貨間の金利差が反映される)

以下、米ドル-円のケースで説明します。
前提条件
米ドル直物相場:US$1=100円
米ドル1年物金利:5%
日本円1年物金利:1%
その他:自由な為替市場が存在すること。また税金は考慮しない。

仮に今100万円持っていて、これを運用した場合、日本円で運用すれば、1年後の元利合計は101万円です。一方100万円を直物相場でドルに転換して運用すれば、1年後の元利合計はUS$10,500となりますが、1年後の為替レート次第では、円ベースに引き直した場合の運用結果は異なってきます。(たとえば、一年後の時点での直物相場がUS$1=110円であれば円ベースの元利合計は115.5万円となり、US$1=90円であれば、94.5万円となります。) そこで、このような為替相場の変動による運用損益の変動を避けようとすれば、ドル建て運用開始時点で先物予約を締結することになります。この場合、先物相場は理論的にはUS$10,500=101万円となる相場(US$1=96.19円)に収斂します。(先物相場がこのレートより円安(ドル高)であれば、ドル建て運用の収益(先物相場で円転後の円ベース収益)は円での運用の場合を上回り、このレートより円高(ドル安)であれば、円での運用の場合を下回る。)

上述の例で、直物相場(100円)と先物相場(96.19円)の差額のことをスプレッドといいます。高金利通貨のスプレッドはディスカウント(直物相場からスプレッドを差し引いたものが先物相場)となり、低金利通貨のスプレッドはプレミアム(直物相場にスプレッドを加えたものが先物相場)となります。

このような先物相場の決まり方を金利裁定取引といい、先物相場(スプレッド)は基本的には2国間通貨の金利差を反映して決まりますが、上記の例はあくまでも理論であり、実際にはその他の要因がスプレッドに影響を及ぼすこともあり得ます。(たとえば、米ドルの先安感が強まれば、先物で米ドルを売っておこうとする人が増え、ディスカウントは拡大します。)

対顧客先物相場は、上述の通り、先物相場を決定する時点での為替市場における直物相場とスプレッドをベースとして、銀行のマージンを加味して決定されます。

調査時点:2011年8月
最終更新:2017年9月

記事番号: A-010719

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