フォーフェイティング:日本
質問
輸出債権を、銀行が遡及権(買取銀行の買戻請求権)なしで買い取ってくれるフォーフェイティングという金融取引があると聞きました。その内容について教えてください。
回答
I. フォーフェイティング取引の概要
フォーフェイティング(forfaitingあるいはforfeiting)取引は、輸出債権についての貿易金融(トレードファイナンス)の一手法で、次のような特徴があります。
- 輸出者の依頼に基づく銀行による輸出手形買取取引のうち、万一手形が不払となっても買取銀行は輸出者に手形の買戻を要求しない。すなわち、銀行が遡及権を放棄して行う買取をフォーフェイティングと呼びます。輸出者にとっては手形の買戻義務のないノン・リコース(Non-Recourse)取引です。
- 買取の対象となる輸出手形は、期限付(ユーザンス)手形で、一覧払(at sight)手形は対象となりません。通常は商業信用状(L/C)付取引に限定され、L/C発行銀行が引受した後に実行されます。
II. 利用のメリット、コスト、留意事項
- 利用のメリット
- 買取銀行が遡及権を放棄するため、万一手形が期日に不払いとなっても輸出者は手形の買戻をする必要がなく、この意味で手形の支払いリスクから解放されます。これは、輸入者及びL/C発行銀行の支払いリスクのみならず、それぞれの所在国における外貨送金停止といったカントリー・リスクについても解放されます。また、手形決済遅延に関する延滞利息についても買取銀行から請求されることはありません。
- このようなリスクからの解放は手形金額の100%満額が対象です。保険会社が提供する貿易保険や取引信用保険は、リスクカバー率が通常90~95%ですので、高いリスクカバー率となっています。
- ノン・リコース取引の特徴として、銀行の手形買取について輸出者は売掛金回収として会計処理することができ、いわゆる売掛債権の流動化(またはオフバランス化)が図れます。
- 利用のコスト
輸出者にとってのコストは買取利息(割引利息)で、手形買取時に買取代金から差し引く方法で徴求されます。適用金利は、TIBORやLIBORと呼ばれる市場金利に銀行マージンを加えて計算され、銀行マージンはL/C発行銀行の信用リスクおよび所在国のカントリー・リスクに応じて買取銀行が決定します、なお、買取対象となる手形通貨は、米ドル、円、ユーロなどの国際通貨に一般論として限定されます。 - 利用にあたっての留意事項
L/C発行銀行が呈示された船積書類を引受することが前提となりますので、船積書類がL/C条件と合致しないディスクレとなり、発行銀行が引受しない時はフォーフェイティングは実行されません。船積書類の作成に当たっては特に注意が必要です。また、買取銀行はフォーフェイティングの実行を最終実行するまで約束しませんので、買取銀行がL/C発行銀行から引受通知を実行し買取を実行するまでは、取引が成立しない可能性が残ることに留意が必要です。
III. 申し込み方法
- 輸出者は次の輸出取引の主要明細を連絡し、銀行の事前審査を受けます。
- 輸入国(輸出の仕向け先)
- L/C発行銀行
- 取引金額および手形期間(ユーザンス期間)
- 取扱商品の内容
- 輸入者
- 船積時期および予定船積回数、等
- 実際の申込時には、輸出債権の銀行宛売却を証する「債権譲渡通知書(Letter of Assignment)」を銀行に提出します。
- フォーフェィティングは、国内の大手邦銀や在日外銀支店で取り扱っています。詳細は各銀行にお問い合わせください。
IV. 輸出取引の他のリスクヘッジ方法
以下のようなリスクヘッジ方法があります。詳細は参考情報をご覧ください。
- 信用状の確認
Open Confirmation: 発行銀行の指定を受けL/Cに確認を付加する手続、あるいは、Silent Confirmation: 発行銀行の確認を付ける指定が無いL/Cに受益者との特約で確認を付加する手続 - 輸出手形保険
参考資料・情報のジェトロ貿易・投資相談Q&Aをご参照ください。 - 国際ファクタリング
参考資料・情報のジェトロ貿易・投資相談Q&Aをご参照ください。
参考資料・情報
ジェトロ:貿易・投資相談Q&A
国際ファクタリングの仕組み
調査時点:2017年1月
記事番号: A-010715
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