VATの還付制度:EU
質問
EUのVAT還付制度について教えてください。
回答
EUでは、すべての加盟国にVATの導入を義務付けています。EU加盟国以外の国の事業者は通常、現地で売り上げがないため負担した税額が還付されます。
I. VAT(Value Added Tax、付加価値税)
- 標準税率
欧州理事会の決定により標準税率の下限は15%と定められています。上限に関する規定はなく、税率は加盟国ごとに異なります。ただし、デンマークを除く加盟国では、特定の商品やサービスに対して軽減税率が適用されます。各国のVAT標準税率については、欧州委員会のウェブサイトをご確認ください。
- VAT課税対象取引
EU加盟国内において事業目的で行われる有償の資産および役務の提供が課税対象取引です。非課税取引には輸出取引やEU域内非課税納品などが含まれます。
II. EUのVAT還付制度
- 還付を受けられるケース
EU加盟国以外の国の事業者は通常、現地で売り上げがないため負担した税額が還付されます(EU13号指令)。業務上の支出を現地で行った場合などで、VATを支払った場合も以下の場合はVATの還付を受けられます。ただし、一部加盟国ではVAT還付ができないケースもあります。
- EU加盟国内にVAT登録を行った事業所などを有していないなどのケース
- VATを自己の課税事業目的のために支払うなどのケース
なお、VAT登録とはEU加盟国内で課税事業者となるために課税事業者番号を取得することです。
- VAT還付対象となる業務上の支出(例)
- 見本市・展示会の入場料
- 出張者のホテル代
- レストラン・ケータリング代
- 現地交通費
- 駐在員事務所の各種経費
- レンタカー費用
- 還付申請に必要な書類
- VATが課税されている請求書・インボイスまたは領収証原本
申請者の正確な社名、所在地が記載されている必要があります(社員個人宛のものでは還付が認められない国もあります)。 原本には申請受付後現地税務当局のスタンプが押され、返還されます。
- 申請者が日本で消費税の課税事業者であることの証明書
- 還付申請書
申請書は、還付申請する国の税務当局から入手します。国により申請に必要な書類や作成方法が異なります。必要書類および手続きの詳細は当該国の税務当局等に確認ください。とくに、国により、日本における消費税の課税事業者証明書の発給当局、還付金支払先、支払方法、還付対象年度、使用できる言語、使用文字、申請期限などが異なります。事前に十分確認してください。
- VATが課税されている請求書・インボイスまたは領収証原本
- 還付申請時期
VAT還付は、翌年6月までに申請する必要があります。申請締め切り日等は、国により異なります。
- 税務代理人の任命
国により税務代理人の任命が義務づけられています。また、還付請求手続きは、EU28カ国で異なるため、還付請求代行専門業者の利用が検討に値します。
- VAT還付が難しい加盟国
原則として、EU加盟国は非居住者へのVAT還付を認めることが義務付けられています[EU VAT 13号指令の相互主義(相手国が非居住者還付を認めるならば、当該加盟国も非居住者還付を認める原則)]。しかし、国によっては還付が認められないこともあります。とくに旧社会主義国等では注意を要します。詳細は還付代行業者あるいは各国税務当局に確認ください。
なお、旅行者などが、現地のTax Free Shopなどで買い物をした場合は、簡易払い戻しが行われます。買い物時に代金と引き換えに店頭で税金払戻用の小切手やバウチャーを受け取り、EU最終出国地の税関で確認スタンプを受けることで、VATの還付が受けられる制度です。
関係法令
- Eur-lex:
- 付加価値税の共通システムに関する欧州理事会指令2006/112/EC(475KB)
参考資料・情報
- 欧州委員会:
- 関税同盟(EUROPA-Taxation and Customs Union)
- 国別資料
- EU加盟各国のVAT税率(669KB)
調査時点:2013年12月
最終更新:2024年6月
記事番号: A-000910
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