市場・トレンド情報

日本食品の輸入動向:日本酒輸入量が4年間で倍増へ

都市部の高級料理店を中心に普及

2010年11月
分野:食品・農林水産物

オーストラリアの日本酒輸入が2006年以降右肩上がりに拡大している。輸入量の伸びは2010年に入ってからも加速しており、通年で4年前の約2倍の水準に達する可能性が高い。シドニーやメルボルンなどの大都市圏ではワインと同じ感覚で食中酒として日本酒を飲むことが富裕層の間でトレンドとなっており、需要の中心は従来の高級日本料理店から地場の西洋系レストランにも拡大している。

主要国を上回るペースで輸出量拡大

日本酒造組合中央会によると、清酒のオーストラリアへの輸出量は1999~2006年まで年間60キロリットル台から90キロリットル台の間を上下していた。しかし、2007年118キロリットル(前年比28.3%増)、2008年135キロリットル(同14.4%増)、2009年153キロリットル(同13.3%増)と、ここ数年順調に伸びている。

2009年のオーストラリアへの清酒の輸出量は国・地域別でみると13位となっているが、日本からの清酒の最大輸出市場である米国(3,575キロリットル)や2位の韓国(1,954キロリットル)、3位の台湾(1,381キロリットル)、4位の香港(1,308キロリットル)、5位の中国(485キロリットル)と比較するとまだ少ない。

オーストラリアは人口約2,200万人で、市場規模が比較的限定的であるが、人口1人当たりの輸出量では、食や酒の流行がよく似た英国よりも多くなっている。

表1:主要国・地域別の清酒輸出量の推移(単位:キロリットル)
順位
(2009年)
国・地域 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年
1位 米国 2,616 2,997 3,354 3,852 3,843 3,575
2位 韓国 230 399 665 1,069 1529 1,954
3位 台湾 2,080 2,133 1,991 1,700 1,626 1,381
4位 香港 987 961 877 1,006 1,213 1,308
5位 中国 240 262 426 468 482 485
13位 オーストラリア 95 81 92 118 135 153
世界全体 8,796 9,537 10,269 11,334 12,151 11,949

(出所)日本酒造組合中央会

直近の輸出も順調に推移しており、財務省貿易統計によると、2010年1~10月の輸出量は前年同期比23.0%増の約160キロリットルと既に2009年1年間の実績を上回った。同輸出額も前年同期比4.6%増の1億1,572万2,000円と大幅に伸びた。この勢いが続けば、2010年1年間の輸出量は190キロリットル以上に達し、2006年(92キロリットル)比で2倍以上に拡大しそうだ。

食文化の変化が日本酒人気と関係

オーストラリアで日本酒の需要が拡大している背景には次の要因が考えられる。

第一は、グローバルな食の流行を反映してオーストラリア人の食文化が様変わりしていることだ。オーストラリアでも以前からフランス料理やイタリア料理を基本に、アジア料理の要素を絡めた「モダン・オーストラリア料理」が高級料理の1ジャンルとして定着しているが、食事の提供方法としては前菜、主菜、デザートという3コース料理が主体だった。

ところが、近年ではスペインのタパスや日本の居酒屋風の業態が注目を集めており、大都市では、旧来の3コースの枠を超えた小皿料理中心あるいは大皿料理を皆で分けて食べるスタイルの高級店が現れている。オーストラリア人のレストラン業界関係者は「食事のスタイルの変化が、新しい食中酒としての日本酒人気の受け皿になっている。日本酒需要は今後も拡大するだろう」と指摘している。

ワイン感覚で日本酒を楽しむ高所得者層が拡大

第二の要因は、高所得者層に日本料理が浸透していることだ。テイクアウトの巻きずしや回転ずし、ラーメンといった安価な日本食が普及する一方、近年ではすしや刺し身を出す西洋系の高級料理店も増えている。日本食の需要はピラミッドの低層に位置する客単価10~20オーストラリア・ドル(以下、豪ドル)のファストフードと、同100~200豪ドルの高価格帯に二極化している。日本酒は後者の高所得者層向けの市場で、日本料理の浸透と共に需要を伸ばしている格好だ。

例えば、シドニー東部郊外には日本人シェフを起用してすしや刺し身、和風の一品料理を出している高級西洋料理店が少なくとも3店舗ある。こうした店では、まぐろの炙りや白身魚の薄作りをぽん酢であえてカルパッチョ風に盛り付けるといったフュージョン料理も一般的だ。日本の酒蔵から仕入れた高級な地酒をワインリストに並べている店もあり、和風テイストのメニューと共にワイン感覚で日本酒を楽しめるようになっている。

また、シドニーでは日本酒をテーマにした「モダン・ジャパニーズ料理」の店もここ数年の間にいくつかオープンし、人気を集めている。従来の日本人経営の高級店とは異なり、現地資本の店がオーストラリア人の従業員によるオーストラリア人向けのサービスを提供している。日本酒は熱かんにして「徳利とおちょこ」で飲むのではなく、冷やした純米酒や吟醸酒をワイングラスで飲むスタイルが主流となっている。

普及を図る取り組みも本格化

第三の要因は、日本酒の普及を図る取り組みだ。高級料理店「テツヤズ」(シドニー)のオーナーシェフでオーストラリア屈指の料理人として知られる和久田哲也氏は、酒蔵の職人を囲んだ試飲会を開催するなど日本酒の普及に貢献、2007年には日本酒造青年協議会から「酒サムライ」の称号を授与されている。

在シドニー日本国総領事館は2009年7月、現地の食のオピニオン・リーダーや報道関係者ら約100人を招き、和久田氏の料理と共に日本の地方の伝統的な酒蔵の銘酒を紹介する夕食会を開いた。

日本食レストラン海外普及推進機構(JRO)が2010年1月、シドニーで開催した日本の料理と食材のPRイベントでも、日本の酒造業者がブースを出展して日本酒や焼酎を売り込んだ。

ジェトロ・シドニーセンターは2009年から2年連続で国内最大の食品見本市「ファイン・フード・オーストラリア」に日本産農林水産物・食品の広報ブースを出展し、日本酒の販路拡大にも力を入れている。

オーストラリアでは検疫規制が厳格であることが農林水産物・食品輸出のネックとなっているが、日本酒は比較的通関が容易であること、焼酎などの蒸留酒と比較して酒税が低いことが利点となっている。

日本酒造組合中央会によると、日本国内の清酒消費量は1970年代のピーク時と比較して約3分の1の水準まで落ち込んでおり、酒造業界は海外市場に活路を求めている。オーストラリアでは食文化の変化や日本食の浸透といった「受け手」の需要が拡大すると同時に、日本酒の普及を図る「送り手」の取り組みも奏功し、相乗効果を生んでいるといえそうだ。

(シドニー・センター)

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