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市場・トレンド情報

外食産業の動向 ‐ カロリー表示義務化の影響、不況下の取り組み

2011年1月
分野:食品・農林水産物

メニューにカロリーと栄養成分を表示

新聞「USA TODAY」が2010年9月24日に発表した記事によると「米国は世界の経済先進国33カ国中、最も肥満人口の高い国」とされ、実に人口の3分の2に当たる7,200万人以上が適正体重(※1)をはるかに上回っている。政府試算によれば「肥満が原因とされる医療費は2008年に1,470億ドルに及んだ」と報じられた。

また、2010年12月6日に、マーケットリサーチ会社The NPDによる米国人の食生活についての調査が、Yahooニュースで配信された。この記事によると「米国では若者と比べて年配者の方が健康的な食生活を送っているという結果が出たものの、成人5人のうち4人(約1億7,000万人)に食生活の改善が必要である」。

このように、食生活と関連した肥満問題などの生活習慣病は、米国で多くの人々の関心を集め、重大な社会問題となっている。

※1, 適正体重はBMI数値を基準に計算される。

カリフォルニア州における取り組み

米国では各州により法律が異なる。カリフォルニア州では、州内で20店舗以上のレストランを運営するチェーン店に対し、メニュー、メニューボード、ディスプレーにカロリーを表示することを義務付ける法案が2008年9月に成立し、州知事が署名した。同法案は、2段階をふんでおり、2010年末までに第1段階が、2011年1月1日から第2段階が施行された。

第1段階:2009年7月1日~2010年12月31日
各メニューにおけるカロリーと栄養成分(炭水化物、飽和脂肪酸、塩分)を記載したカタログを、1.着席するレストラン形態であればテーブルに、2.ドライブスルー形態であれば、オーダーをする場所で提示する必要がある。カタログはメニューと別冊でよい。

第2段階:2011年1月1日以降
メニュー、メニューボード、あるいはディスプレー上にカロリーが表示されなければならない。ドライブスルーにおいては、上記に加え栄養成分の情報が入手可能であることを知らせる必要がある。

完全施行を目前に控えた2010年暮れは、テレビ報道などでもチェーンレストランにおけるメニューのカロリー比較がされていたが、完全施行されてからは、低カロリーメニューを前面に打ち出したコマーシャルを行っているレストランもあり、チェーンレストランでの食事に対し、消費者は摂取カロリー、あるいは栄養素に対し今まで以上に関心を払うことが予想される。

全米レストラン協会(National Restaurant Association) によれば「カロリーを減らすための工夫としては、付け合わせのフライを除く、低脂肪のマヨネーズやドレッシングへの置き換えなど容易な方法もある」としているが、「レストランを代表するメニュー(Signature Menu)については、本来の味に変化をきたすことを避けることが重要であり、提供するサイズを小さくする傾向にある」としている。また「2008年と比較し、70%以上のレストラン利用者は、より健康的な食事を心がけている」と報告されている。

各レストランでは”more lighter , more healthier(より軽く、より健康的に)”を念頭においたメニューを考案し始めている一方、高カロリーかつ高脂肪の、昔ながらのマカロニ・アンド・チーズといった定番メニューも、依然として顧客に好まれる傾向にあるようだ。

金融危機以降、外食回数の減少やデザートなどメインディシュ以外のものをオーダーしないなど、外食時消費行動が変化したが、今後カロリーが表示されることにより、ますますその傾向が強まるのではないかと予想される。

日本でもチェーン展開をしている「Denny's(デニーズ)」では、既存のメニュー以外に「栄養成分表(Nutrition Facts)」と称し、取り扱いメニューの一人前の分量、総カロリー、脂肪、トランス脂肪酸、飽和脂肪酸、塩分、コレステロール、繊維質、たんぱく質、砂糖などの含有量を表示したものを各テーブルに1冊配置し、顧客に栄養成分情報を公開している。すべてのメニューに栄養成分表を挿入するには膨大な経費が必要になるため、このようにメニューとは別にする方法を選択したのではないかと思われる。

ロサンゼルス界隈のコーヒーチェーン店「スターバックス」においても、マフィン、ベーグル、クッキーなどの店頭販売商品にもカロリーが表示されており、今までコーヒーとともに簡単におやつとして食していた商品が想像以上に高カロリーであることに驚く人も多く、甘い菓子類の購入を控えるようになる可能性もある。カロリー表示は、消費者の健康志向をサポートする上での一助となるであろうが、その反面、レストランの売り上げにどのような影響を及ぼすのか、今後の動向が注目される。

2010年の米国レストラン業界

売り上げ:5,800億ドル
店舗数:945,000
雇用者数:1,270万人
(National Restaurant Associationの資料による)

米国労働省(Department of Labor)の労働統計局(Bureau of Labor Statistics)から発表された2010年の8月以降の外食産業における失業率は、8月11.9%、9月11.7%、10月11.0%、11月11.8%となっており、全米の11月失業率9.8%を上回る2桁台で推移している。特に2010年第2四半期では、大幅な一時解雇が行われるなど、厳しい状況が続いているようである。

このような状況の中で、大手外食産業は利益を確保するため以下のような戦略を立てている。

  1. ファストフードレストランの「マクドナルド」では“Dollar Menu”と称し1ドルで購入できる単品を目玉商品として販売している。
  2. 一人前の分量を小さくし、値段を下げることにより、数種類の商品が注文されるよう確保する。
  3. POS(Point of Sale:販売時点情報管理)により、販売状況を即座に把握して価格設定に反映させる。
  4. “Barbell Strategy”と呼ばれる「安価なメニューを高価なメニューで相殺する」という戦略を立て、価格に敏感な消費者と、そうではない消費者の動向を探り、販売促進を行う。
  5. 期間限定で二人分で合計20ドル前後といった低価格メニューを提供するなど、消費者の興味を引く目玉企画を立てる。

大手外食産業以外の高級レストラン店でも、最近は何らかの方法で料金の割引を行うなど、顧客の呼び戻しに必死である。以下、一部の例を挙げる。

  1. クレジット会社と共同企画による割引、一例としては、指定のクレジットカードとカード会社から送られてきたクーポン券を同時に支払いの際に使用することにより料金割引を提供する。
  2. 日本でも人気を博している(※2)グルーポンなどの共同購入クーポンサイトを通し、半額の食事券を販売する。
  3. インターネットのレストラン予約サイトとの共同企画により、割引食事券を販売する。これは、上記グルーポンとほぼ同じシステムである。

これらは事前に大幅な割引で高級レストランの食事券を購入できるのは消費者にとってプラスではあるが、実際は店が混んでいて予約が取れない、店が閉店してしまい購入済みのクーポン券が利用できないといったケースもあるようだ。

※2, グルーポンとは、米国発祥のクーポン共同購入サイト。クーポンを買うことで、多くの場合は、50パーセント以上の割引を受けられる。

その他にも、以下のような変化や取り組みが見られる。

  1. シェフや店主自らが顧客のニーズを探る
    ソーシャルメディアの発達が飲食業にもたらした影響は計り知れないが、“Face to Face(顔を向かい合わせて)”といわれる昔ながらのマーケティング手法を重視し、顧客の言葉に耳を傾けるため、シェフやレストラン店主自らが顧客と接点を持つことも重要とされている。最近では、新作デザートを試食してもらい、顧客の意見を収集するといった試みを実行しているレストランもあり、このようなマーケティング手法は、顧客の立場からすると、大変好感度の高いものといえる。
  2. 顧客の要望に応じたサービスを提供
    「スターバックス」では、フローズンドリンク商品のフラペチーノを提供する際 “However –You-Want-It” (お客様のご要望にいかようにもお答えします)というサービスを開始した。これは、コーヒーに加えるものを、無脂肪牛乳、ライトシロップ、豆乳といったさまざまな種類の中から顧客が自分の好みに応じて注文できるというものである。「企業側にとっては手間のかかるサービスではあるが、こういった顧客重視のサービスを行うことによって、売り上げが伸びている」とNational Restaurant Association出版の雑誌「レストランニュース」2010年10月号は報じている。
  3. 従業員の再教育
    顧客に対する接客マナーを改めることにより、サービス改善を図り、リピーター客を増やす。

変化する外食産業における朝食メニュー

最近では、探究心が強い健康志向のシェフたちにより、新鮮で高品質な食材や世界中から仕入れた食材を使用したものへと変化している。コーヒーは、手間をかけて焙煎した豆を丁寧に抽出したものが登場しており、オーガニック、フェアトレードのコーヒー豆を使用しているレストランも多くある。米国での朝食にかかせないシリアルやパンについても、健康食材として人気の高いキヌア(※3)、アマランサス(※4)などを添加したものが生産されている。中には、顧客のリクエストにより卵黄を使わず卵白だけで卵料理を提供したり、全粒粉を使用したパンケーキやワッフル、砂糖無使用のパンケーキシロップを提供したりといったサービスを行うレストランもあり、健康に留意する顧客から支持を得ているものと思われる。

「夜でも朝食メニューが食べられる」と書かれたメニューボード

朝食メニューは、朝食の時間帯に限らず、いつでも食べられるメニューへと位置付けられ始めている。前出の「デニーズ」では、”BREAKFAST FOR DINNER”と称したキャンペーンを、店頭やテレビコマーシャルを通じて行っている。これは、朝食時間帯でなくても朝食メニューが注文できるという内容のキャンペーンである。朝食は夕食時のメニューに比べて単価が低いため、顧客にとっては手頃な値段での外食が可能となることから、金融危機以後、レストランへ足が遠のいていた顧客を呼び戻すための作戦の一つと考えられる。以前のような定番朝食メニューから、顧客の興味を引くアイデアあふれる朝食メニューに変化しており、これが昼食時や夕食時にも受け入れられるようになった一因ともいえるのではないだろうか。

金融危機以後、低迷している外食産業ではあるが、多くの改善策が試みられており、景気回復とあいまって今後は徐々に回復基調に転じるのではないだろうか。

※3, キヌアとは、南米アンデス地方原産の雑穀。近年健康食品として注目されている。
※4, アマランサスとは、南米で穀物として食されてきた。キヌア同様、近年健康食品として注目されている。

(ロサンゼルス・センター)

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