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日本産および日系企業現地生産品の小売での販売動向

景気回復を目指す米国市場 ‐ 消費者の節約志向と円高が日本産品販売に影響

2010年12月
分野:食品・農林水産物

2010年12月の米国では、消費の冷え込みがいまだに続いているようである。今回、聞き取り調査を実施した日系食品商社、水産物卸売業者、レストラン、一般小売店などは、前回調査時期(2010年9月)と同様、売り上げに改善の兆しが見られないという意見が圧倒的であった。

景気後退が終息したといわれてはいるものの、改善の兆しが実感できない景況感の裏側には、長引く雇用不安を背景に消費者の購買意欲の減少、また日本産輸入食品に至っては円高といった大きなマイナス要因が考えられる。

2010年の物価指数の推移

米国労働省(United States Department of Labor)の労働統計局(Bureau of Labor Statistics)が発表したところによると、 2010年11月における総合消費者物価指数は季節調整済みの統計で前月比0.1%増加している。2009年12月から2010年11月までの12カ月間の季節調整前の総合物価指数は前年同期比で1.1%上昇、食品全体では1.5%上昇している。

また、家庭で消費される食品は、ノンアルコール飲料、肉・魚・卵、シリアル・パン菓子類、乳製品、野菜・果物、その他の食品の大きく6品目に分別される。11月の物価指数の前月比は、野菜・果物以外はわずかに上昇している。シリアル・パン菓子といった米国人の好む朝食用食品は、前月比で0.4%上昇しているが、景気後退以前に好調だったとされるレストランでの朝食の売り上げが景気後退以降は減少したといわれている。節約のためにシリアルなどで朝食を済ませる傾向がうかがわれる。野菜・果物においては、果物の11月の物価指数は前月比で2.0%上昇したものの、野菜が2.0%減少し、合計では前月比0.2%の減少となった(表1参照)。

景気回復への実感が薄いなかで、必要不可欠な食品の購入が優先され、特に必要性のない食品の購入は見合わせていると考えられる。経済の回復の遅れは日本産輸入食品あるいは日本酒といったアルコール飲料にも、大きな影響を与えているようだ。

ガソリン・燃料油の価格上昇の影響

エネルギーにおいては2009年12月から2010年11月までの物価指数(季節調整前)は前年同期比で3.9%上昇しており、夏以降のエネルギー(ガソリン・燃料油)の値上がりが食品の輸送コストや工場生産費用に影響を及ぼすことが懸念される。

特に2010年夏以降、ガソリン・燃料油の値上がりは顕著である。海上貨物輸送においては、3カ月ごとに見直される船舶用燃料費が海上運賃に反映されるため、これら燃料油の値上がりは、日本から輸出される食品のコストに影響を及ぼすと考えられる。また、ガソリンの値上がりも商品を配送する上でトラック輸送費などに影響を与えるため、エネルギーの価格変動は、輸入食品の価格に大きな影響を及ぼす要因の一つだ。

表1:食品およびエネルギー関連の消費者物価指数前月比の推移と
2009年12月~2010年11月期(12カ月)の物価指数の比較
(各月分は季節調整済み、12カ月分は季節調整前)単位:%(2010年統計)
5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 2009年12月~2010年11月
家庭で消費される食品 下記6品目の合計 0 △0.1 △0.1 0 0.3 0 0.3 1.7
ノンアルコール飲料 0.8
肉・魚・卵 0.5
シリアル・パン菓子類 0.4
乳製品 1.1 1.1
野菜・果物 △0.7 △0.2
その他の食品 0.1
家庭外で消費される食品 0.1 0.1 0 0.3 0.3 0.1 0.1 1.3
エネルギー エネルギー合計(ガソリン、燃料油、ガス、電気等) △2.9 △2.9 2.6 2.3 0.7 2.6 0.2 3.9
ガソリン △5.2 △4.5 4.6 3.9 1.6 4.6 0.7 7.3
燃料油 △1.4 △3.2 △1.6 0.9 0.8 4.7 4.2 11.1

出所:米国労働省、労働統計局の統計に基づき作成

景気後退後の食品消費の動向

米国農務省(USDA)のEconomic Research Service が2010年8月に発表したデータによれば、2008年における食品消費合計額は1兆1,721億ドルであったが、2009年には1兆1,820億ドルと増加。そのうち、外食にかける消費は全体の48.6%、内食は51.4%と、わずかながら内食が上回っている(図1参照)。

図1:2009年食品消費額 合計1兆1,820億ドル

出所:米国農務省(USDA)のEconomic Research Service 2010年発表データをもとに作成

一方、日本における外食産業の2009年度の市場規模は、23兆9,156億円(財団法人食の安全・安心財団付属機関「外食産業総合調査研究センター」発表資料による)であり、単純に1ドルを83円と換算した場合、約2,881億ドルである。景気回復の遅れが外食産業に及ぼす影響は甚大であり、近年増加傾向にある日本食レストランにとっても打撃は大きいと予測される。レストラン業界全体の不調は、日本産食品の需要の低迷にもつながるものと考えられる。

日本産輸入食品は利益率が圧縮

日系食品商社が、輸入販売している日本産食品においては、米国経済の回復の遅れ、円高、輸送コスト増といったマイナス要因の改善がみられないため、厳しい販売状況が続いていると考えられる。これらマイナス要因をすぐに商品価格に反映させることも出来ないため、利益率を下げて商品を販売している現状がうかがわれる。

しかしながら、一部中国系食品商社では、全体の取引量に占める日本産食品の品数が増加しているといったケースもある。日本食の普及、顧客層の広がりに伴い、多少価格が高くても、高品質な日本産食品を求めるアジア系の消費者が増えてきているようだ。現状は厳しいが、先を見据えて積極的に日本産品の輸入販売を試みていると考えられる。

売れ行きが好調な日本食商品

肥満、成人病は米国にとって大きな社会問題であり、スーパーマーケットでは、低カロリー、低脂肪食品など、カロリーを意識した商品が多く販売されている。米系の市場に流通している日本食品のなかには、こういった背景を受け、販売が好調な商品もあるようである。

菜食主義者をターゲットにした商品、あるいはカロリーの低い豆腐加工品などがその一例である。

日本食品には、カロリーが低い商品、良質な植物性たんぱく質を用いた食品、発酵技術を生かしてコクやうまみといった成分がうまく調和した調味料商品が多く存在する。これらを今後、米国民のニーズに合わせ、商品開発が出来れば、また新しい市場開拓の可能性もある。

厳しい状況が続く高級日本食レストラン

すしねたを中心に日本食レストランと取引をしている某水産物卸業者によれば、2010年10、11月の水産物の売り上げが前年割れしており、2009年6月に景気後退が終息したという、2010年9月の宣言とは裏腹に、現実の景気は芳しくないようである。水産物は全体的に販売価格が高いため、レストランからの売掛金の回収が遅れることにより、卸業も資金繰りが圧迫されるといった悪循環につながっているケースもあるようだ。

12月は祝日の関係で営業日数が少ないこと、またロサンゼルスで続いた長雨の影響などで客足が減り、収益減少といった、より厳しい状況が予想されるとのことである。

顧客一人当たりの単価が高いすしを中心とした日本食レストランの営業不振は、景気後退以降周知のことではあったが、2010年後半になっても改善の兆しは見えず、すし以外のメニューを取り入れたり、日本産以外の安価な外国産魚を用いたりして、方策を講じているものの、回復基調には至っていないようである。

米国では、10月以降、ハロウィーン、感謝祭、クリスマスと祝日が毎月続き、家族中心にパーティーを開く機会が増え、食費以外にもギフトの購入費用がかさむ。また、11月の固定資産税の支払い時期等も重なり、家計全体の支出が増加するため、外食の回数を減らし、内食傾向に拍車がかかると考えられる。そのため、2010年の年末は、特に高級日本食レストランにとっては厳しい年の瀬となることが予想される。

中国系マーケットでの需要が拡大する日本食品

最近になって、中国系および韓国系マーケットでの日本産食品の占める割合が多くなっている。その要因を中国系大手スーパーマーケット99Ranch Marketを運営する「Tawa Supermarket Inc.」の広報担当者にインタビューを行った。要因としてあげられるのは、以下の3点である。

  1. 日本産食品は既に台湾、香港、中国の市場に進出し、現地での認知度、好感度の高い食品であるため、これら3カ国から米国へ移住してくる中国系の人々からも、非常にニーズの高い商品となっている。
  2. 中国系移民の2世、3世といわれる米国で生まれ育った若い世代に、キャラクター商品や、日本の漫画、ゲームといった若者特有の日本文化が浸透しており、ここから派生して日本食品に対する興味、需要が拡大している。
  3. カリフォルニア州には日本食、日本文化に馴染みのある米国人が多く、中国系マーケットで買い物をする米国人顧客の中にも、日本食を求めている人々がいる。

これら3つの大きな要因と共に、日本産食品への確かな信頼性、また日系卸売業者のしっかりとした供給システムも、日本産食品をはじめ日本食品の増加の後押しをしているとのことである。

日本産食品の中でも特に人気がある商品は、カレー商品とスナック菓子だそうだ。また、一昔前は生魚をあまり口にしなかった中国人・中国系米国人の間で、刺身やパッケージずしといった日本食商品の人気が定着し、販売も好調ということである。

現在、顧客の約50%は中国系であるが、マーケットの所在地によってはベトナム人や韓国人の顧客も多く、特にテキサス州(ヒューストン、ダラス)では、韓国人消費者が増加しているそうである。テキサス州には主な日系マーケットがまだ進出していないため、日本産食品を中国系マーケットで購入するといった現象が起きていると考えられる。

Tawa Supermarket Inc.はアジア系人口が多いカリフォルニアを中心にワシントン州、ネバダ州、そしてテキサス州にも店舗を拡大し、一般食料品以外にも日本の電化製品、化粧品、家庭用品、酒類などを販売する店舗や、168Marketという、形態が99Ranch Marketとは多少異なるスーパーマーケットも運営し、日本食品および物品の販売にも力を注いでいる。

品揃えは多岐に渡っており、今後は日本の文化を紹介するイベントなども販売促進のために取り入れていきたい、ということだ。Tawa Supermarket Inc.は日系マーケット以外の日本産食品のディストリビューションチャネルとして注目されるであろう。

日本産食品にとって、2010年はまだまだ厳しい販売状況であったが、増加する中国および韓国系の消費者をターゲットにするため、アジア系マーケットでの新しい販売方法を考えてゆくべきであろう。

(ロサンゼルス・センター)

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