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外国産品の先行事例分析

手軽な加工食品の普及、高まる環境意識 ‐ 安全、環境に配慮した外国産品が登場

2010年11月
分野:食品・農林水産物

米国は、多民族から成る移民国家である。米国に順応しながらも、母国の文化を守り、それを子孫へと継承していく多くの移民たちの存在が、現在の米国の食生活に多大な影響を与えたといっても過言ではない。それぞれの民族が形成するコミュニティーには、自国の食品を取り扱う食品店やレストランが数多く集まっている。

移民国家とは言えない日本が大きな経済力を背景として海外から多種多様な食品を輸入販売しているのとは事情が異なり、米国における諸外国からの食品輸入や多様な食文化の発展は、人々の生活に根ざした需要から生まれた必然といえるであろう。それゆえ、外国産品の市場としてはかなり成熟度が高く、既に多くの産品が民族の垣根を越えてあらゆる販売チャンネルを通し流通している。しかしながら、日本の約3倍の人口を抱え、異種民族の共存共栄を目指す米国では、常に新しい可能性を求めて市場を開拓する人々が存在している。

成長する調理済みエスニック加工食品

近年、インド料理やタイ料理といったエスニックフレーバーを基本としたレトルト食品やカップ食品といった手軽に食することが出来る調理済み加工食品が食品展示会で注目を集めている。最近では、スーパーの店頭にこれらの商品が出回り始めており、特に現地で生産加工された輸入品が目を引く。

多くのアメリカ人にとって、冷凍食品をはじめ調理済み加工食品は、生活に必要不可欠な食品である。その理由として、一般的にスーパーから自宅までの距離が長いこと、多くの女性が職を持つようになり、家事に費やせる時間が限られていること、また地域によって新鮮な生鮮食品が手に入りにくいことなどがあり、こういった加工済み食品は日常的に利用されていると考えられる。ピザやラザニアといったイタリア料理を基本にした冷凍食品、肉の煮込み料理などはもっともポピュラーな調理済み加工食品であり、プライベートブランドの安価な商品から有名シェフあるいは有名レストランの名をうたって販売されているものまで多くの商品が棚を占有している。

加工食品が好まれる理由

ではなぜ昨今、エスニック料理の調理済み加工食品が輸入販売されるようになったのか。

  1. 2008年の金融危機以降の内食傾向は、スーパーマーケットをはじめ多くの食品販売会社に品揃えを再考する機会を与えたと考えられる。実際、多くのスーパーマーケットでは対面販売による惣菜売り場の充実を図るなど、手軽に食することが可能な食品販売に力を入れている。
  2. 外食の回数が減った消費者は、今まで以上に冷凍食品あるいは加工食品に対しバラエティーを求めている。
  3. インド料理、タイ料理レストランは多く存在し、すでにアメリカ人にとって馴染みのある外国料理である。
  4. 刺激の強い食品を好む傾向にあるアメリカ人にとって、好ましいフレーバーの料理である。
  5. 多くのスパイスを使用することから、実際に家庭で作るのは手間がかかるため、調理済みの加工商品は非常に利便性が高い。
  6. インドあるいはタイで加工、生産することにより価格を抑えることが可能である。
  7. 最近増加していると言われる菜食主義者にとっても、便利な商品が多い。

これら調理済み加工食品は、味も良く、手軽に本場風の食品が家庭で再現でき、価格的にも適正であることから、今後市場での人気が高くなるのではないかと予想される。

また、景気後退という経済環境と、アメリカ人の食に対する新しい欲求という潜在的需要がうまく一致し、インド、タイといった国での新しい加工食品開発、米国への輸出が始まったとも考えられる。

インドは英語を公用語とするため、近年では米国企業のカスタマーサービス部門を請け負うなど、米国と非常に密接な関係を築いてきた。インドの食品企業にとっても、米国は輸出相手国として格好のマーケットであると位置づけられ始めているのではないだろうか。

また、タイには日本の食品企業も多く進出しており、技術面をはじめ食品製造に対して信頼のおける国として成長しているものと考えられる。

付加価値の高い商品づくり

これらインドやタイから輸出される食品の中には、付加価値を高めるため、以下のような点に注意を払って商品ごとの特性を打ち出すブランドも見受けられる。消費者にとっては安心して購入するための目安にもなっている。

  1. 食の安全を裏付けるために米国農務省(USDA)のオーガニック認定を表示
  2. アメリカ人に多いグルテンアレルギーに対応した、グルテンフリー商品であることを強調
  3. 保存料、着色料を添加しない
  4. 米国であまり普及していなかったレトルト食品として開発し、新しいアイデアであることをアピール
  5. レトルトパウチの容器をアピールできるようスタンド型に設計するなど、細かい点に配慮
  6. まぐろを使用しているものには、ドルフィンセーフ(Dolphin Safe)(※1)を表示

※1, まぐろとイルカの群れは一緒にいることが多く、大型のナイロン網を使った漁法でまぐろを漁獲することによりイルカが窒息するケースが増え、海洋性哺乳動物の保護に熱心なアメリカ国民の間で問題視された。その結果、まぐろ漁獲の際のイルカの混獲数が一定以下の場合は、ドルフィンセーフという表示が出来る。

以前は、原材料といった一次産品の輸出が主であった新興国が、米国での消費者のニーズを十分に把握した上で、アメリカ人の食卓をターゲットにした完成品の輸出に目を向け始めたことが見て取れる。中国製ペットフードに有毒成分が含まれていたことに端を発した食品の安全性問題は、その後もアメリカ人にとって大きな関心事である。インドやタイがこういった問題が起きた背景等を学び、安全かつ高品質な製品を安価な値段で供給するシステムを確立し得るならば、今後の米国の食品市場を変えていく可能性があり、食品輸出の新しいモデルを構築するかもしれない。

環境に優しいニュージーランド産ワインが米国市場に登場

2011月19日に「PR Newswire」がインターネット配信したニュースは、環境に配慮したニュージーランドのワイナリーで生産されたワインの販売が米国で開始されたことを伝えている。

米国で生まれ、ニュージーランドで育った二人のアフリカ系アメリカ人の姉妹によって創設された「 eco love Wine外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」は、持続可能な農法を用いてぶどうを栽培する。使用されるエネルギーについても、二酸化炭素排出量を計測した上で、管理・削減に努めており、地球温暖化防止を目的として設立されたニュージーランドの「 carboNZero外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」の認定を受けた商品を生産、販売している。商品は、環境問題に関心の高い女性、またMillennial(2000年代に成人を迎える人々の意)と呼ばれる若い世代をターゲットとしており、米国においては既存のワインとは違う宣伝方法あるいは販売方法がとられるとのことである。

今回は、「 snooth外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」というワイン専門ウェブサイトを通して販売される。snoothはぶどうの産地、品種などから世界中のワインを検索でき、インターネットの販売サイト、また身近な取扱店、値段、消費者の口コミ、評価などの情報発信をするサイトである。サイトに訪れる人は月間1,000万人とも言われ、多くのレビューが載せられ、ワイン系のウェブサイトでは世界で一番大きいとされている。

インターネットの発達により、既存の流通形態とは異なる販売方法が可能になり、販売者側にとっては会社の規模や実績に関わらず販売機会が増加している。その一方、消費者の知識や欲求も増えており、それらを満たす商品でなければすぐに飽きられてしまう傾向にあり、商品の淘汰が激しい時代になっているようである。

この環境に優しいニュージーランド製ワインが、どこまで品質や価格を含め消費者の関心を引き共感を得ることが出来るか、今後のsnoothの動向が気になるところである。

食と環境問題

以上の2つのケースからも分かるように、米国における食品購買の購入動機は今まで以上に多くの要素を含んでいることがわかる。品質、価格競争力は言うに及ばず、自然環境にまで関心が払われた商品の開発が進んでいる。それらを裏付けるための機関として以下のような組織が存在する。

  1. Rain Forest Alliance外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます :
    1990年に設立以来、持続可能な生活を確保することを目的に、土地の利用法、商取引の方法、消費行動を変えることを使命として活動している。「Sustainable Agriculture Network」(※2)によって定められた基準に従い認定を行っており、合格したものは認証マークを使用することが認められている。廃棄物の削減、水の使用頻度や、汚染予防をはじめ、労働者の賃金や住環境に至るまで、多くの基準が設けられている。最近は、ココア、コーヒー、バナナ、切花に至るまで身近で販売されている商品にこのマークを見かけるようになった。アメリカン航空の機内でも2010年11月1日からこの基準をクリアしたコーヒーが、認証マークの入ったカップでサービスされている。
    ※2, Sustainable Agriculture Network(SAN):ラテンアメリカで保全活動や農村開発をおこなっている独立した団体の連合。開発や保全を行う際の新しい手法として、主要な農作物(バナナ、コーヒー、カカオ、柑橘類、切花)向けにサステイナブル・アグリカルチャー(持続可能な農法)を普及させる活動を行う。

  2. NON GMO PROJECT外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます :
    2005年にカリフォルニア州バークレーの自然派スーパーマーケットとカナダのトロントにある自然派スーパーマーケットが一緒になり、非遺伝子組換え商品について定義を定めるべくスタートした非営利団体である。近年では、多くの企業の賛同を得ており、Whole Foodsマーケットのプライベートブランド「365 Every Day」の商品の一部にもこの認証マークが添付されている。

  3. Animal Welfare Approved外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます :
    2006年に設立され、消費者が食する畜産品がどこでどのように育てられたかに関心を持って欲しいということから設立された非営利団体。餌には一切の動物の副産物の使用が禁止され、環境に配慮し慈しみをもって育てられた健康的な動物であることなどが基準として設けられている。

  4. Marine Stewardship Council外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます :
    持続可能な漁業を推奨し、基準を満たした商品にはその認証マークの使用が許可される。

  5. VeriFlora外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます :
    持続可能な栽培方法で育てられた切花、鉢植え植物を認証するシステム。

  6. Fairtrade Labeling Organizations International外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます :
    すでに認知度の高い認証であり、コーヒー、チョコレート、衣服などでもよく目にする。
    商品の適性価格、労働条件、出来る限り農場から直接商品を購入する、生産によって得た収入をコミュニティーにとって価値のある使用を目指す、環境を破壊する薬品あるいは、非遺伝子組換品の使用を禁止するなど、開発途上国の利益を守るための基準が設けられている。

「Fair Trade USA」(第三者認定機関)が2010年11月17日に発表したニュースによれば、2010年上半期、米国で販売されているフェアトレード商品のうち、麦、蜂蜜、砂糖、スパイス、茶の5品目は前年同期に比べて33%以上の売り上げの伸びを示している。

2005年にはフェアトレード商品を意識するアメリカ人は9%であったが、2010年には34%のアメリカ人がフェアトレード商品に関心を持つようになったとしている。これら商品の売り上げが生産者に与えた追加所得は、2005年は1,500万ドル、2009年は4,800万ドルにも及ぶと推測され、5年間で3倍以上の伸びを示した。

食品に関連する認証、認定機関を取り上げたが、すべての機関が「食」と「環境」のサステイナビリティー(持続可能性)の深い関連性を大きなテーマに取り上げている。

地球環境を取り巻く数多くの問題が懸念される昨今、人間の生存に欠かすことの出来ない食糧需給は環境問題を考えずに語ることが出来ないテーマとなっていることの現れであろう。

特に、市民運動が盛んな米国においては、今後一層その傾向が強まるであろう。また企業側はイメージアップのためにも環境問題を意識した商品開発を行っていくと推測される。

認証機関の認証マークを使用することは、文章で商品説明をする以上に簡単に商品特性を消費者にアピールすることが可能なため、今後もこれら認証機関の活動が活発になると予想される。しかし、認証にかかる費用が商品代に含まれることも事実であり、中小企業にとって、また消費者にとっては負担が大きいことも考えられる。

環境に優しいパッケージ

環境に考慮した食品の生産に関連し、そのパッケージの原材料も話題になっている。

Stltoday.com外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」(ミズーリ州セントルイスのニュースを中心に情報発信をしているウェブサイト)が2010年11月11日に発信したニュースによれば、EnviroPak社が新聞紙を再生して電子機器などの様々な商品の形にくり抜いた梱包資材の販売を開始したことを伝えている。

また、ペットフードの大手企業であり日本でも販売されているA社は、それまでの石油をベースに製造されたパッケージに代わり、大豆を原料としたインクを使用し、コーンスターチをベースに製造したパッケージに入った商品を2011年初頭から販売予定であるとしている。

各企業は、これまでの石油由来のプラスチック関連パッケージから、商品の賞味期限等内容物に悪影響が及ぶことがなく、商品価格に反映することもない、環境に優しいと考えられる素材を使用したパッケージを模索している。

Greener Package外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」は、持続可能なパッケージを推奨する団体である。このサイトでは2010年度に優秀と認められたパッケージについての情報を得ることができる。食品部門ではコカ・コーラ社が作った原料の30%が植物由来(セルロース系エタノール、あるいはエタノールを生産する際に出る廃棄植物を使用)とされるペットボトル、ケンタッキーフライドチキン社が開発した繰り返し使用可能なポリプロピレンを原材料とする容器が優秀賞を受賞しており、コカ・コーラ社はこの容器の使用により、従来の容器を使用した場合に比べ、二酸化炭素排出量が10~20%改善されるとしている。

今後日本産食品の輸出にあたっても、こういった米国での流れを考慮し商品開発をすることが必要になってくるのではないかと考えられる。

(ロサンゼルス・センター)

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