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日本産および日系企業現地生産品の小売での販売動向

日本産食品のこれからの販売戦略‐中国系、韓国系マーケットが日本食品に注目している‐

2010年9月
分野:食品・農林水産物

2010年9月20日、経済協力開発機構(OECD)は、2009年6月をもって米国の景気後退(リセッション)は終了したと発表したが、景気回復のペースは非常に緩やかであり、2010年10月の米国の失業率は全体で9.6%、特にカリフォルニア州では12.4%と高い水準であり(※1)、依然として厳しい雇用状況から抜け出すことができないままでいる。

カリフォルニア州には、全米に住む日本人、日系人のうち36.2%の約30万人が在住(※2)し、また中国系、韓国系を加えたアジア系米国人が州の人口に占める割合は12%にも及び、日本産食品の大きな消費地と考えられる。さらには、多くの日系食品商社の本社もロサンゼルス近郊に集中しており、輸入、保管、流通の一大拠点となっている。日本産食品を含むアジア系食品を扱うスーパーマーケットや、日本食レストランの数も州別で1位を誇っているが、景気後退以降消費は低迷し、各食品商社は日本産食品の販売に苦戦を強いられている。

※1, 失業率は、米国労働省統計局の調査による。
※2, 2000年国勢調査による。

日本産食品の苦戦要因

米国において、日本産食品の売上高が伸び悩んでいる要因には、次のことが挙げられる。

  1. 高い失業率、労働時間短縮・賃金低下による収入の減少、 経済の先行き不透明感による購買意欲の減退
  2. 外食回数の減少
  3. 消費者の節約、低価格志向により比較的価格が高い日本産食品にとっては不利な環境
  4. 長引く円高による輸入品の価格上昇
  5. 日本産に比べ安価な他国産の日本風食品の台頭
  6. 米国産による日本食品の拡大

失業率だけをみても、その水準が景気後退期前に戻るのは2013年はじめとOECDは予測している。消費が活発になるまでには相当の期間が必要と考えられ、日本産食品を取り巻く環境は、依然として厳しいとみられる。

上記1から3までの要因は、米国経済の回復、雇用の安定が図れない限り、今後も大きく食品、外食業界の足を引っ張るものと考えられる。

また、円高による影響は非常に大きい。既に取り扱っている商品も、追加で輸入する場合、前回に比べコストが10%ほど上昇するといったケースもあるそうだが、すぐに販売価格に転嫁することができず、苦戦を強いられている。

日本からの輸入品のみを販売している日本酒専門販売会社のように、2010年10月以降値上げに踏み切る決断を下したケースもある。

日本食品輸入商社数社の話を総合すると、日本から輸入された食品の売り上げは、全体的に減少傾向にあるようだ。月別では、売り上げが前月比10%程度落ち込む月もあるとのことで、販売予測が立ちにくい状況にある。また、特にレストラン関係への売り上げには依然として回復の兆しはなく、地域による格差はあるとしながらも、全体的には落ち込みが大きく、高級日本酒は販売量が激減しているようだ。

日本食品の売上回復の方策

この状況を打開する策として講じられている企業努力について、日系食品商社などにヒアリングしたところ、1. 業務運営上の対策、2. 新たな市場開拓などがあげられた。

1. 業務運営上の対策

日本食品が売れるようになるための業務運営上の対策には、次のようなことが考えられる。

1‐1. 在庫を抱えることによる資金繰りの悪化などを防ぐため、極力在庫を少なくし、商品を効率よく回転させる
1‐2. 定番商品については欠品が許されず、一定量の輸入を継続せざる得ないため優先的に輸入する
1‐3. 輸入相手国の多様化、分散化によるコストダウンを図る
1‐4. 米国産の日本食品の開発、品質向上を図る
1‐5. 売れる商品、売れない商品の選別を図る

1‐3.の例としては、香港製の日清のインスタントラーメン「出前一丁」がある。100gの袋入り30個が、中国系スーパーマーケットでは、通常価格16.99ドル(約1,444円、1ドル=85円換算)、セール時には、14.99ドル(約1,274円)と1個当たり42円という安価で販売されている。 1‐4.の米国産の日本食品に関しては、日本からの輸入品と比較すると、同等の品質で安価なものが多いため、売り上げが安定しているようである。

日常的に食される現地生産品としては、米、豆腐、みそ、しょうゆ、酢をはじめ、それらの加工食品であるみそだれ、しょうゆ系たれ、酢加工品などが挙げられる。

カリフォルニア州では、米は近年多くの品種の研究開発が進み、日本産米にそれほど劣らない優れた品種がスーパーマーケットに出回っている。ただし、高級品の売り上げは最近減少しているといわれている。

その反面、以前はカリフォルニア産高級日本米が販売されていなかった中国系、韓国系のスーパーマーケットにもその販路を広げており、彼らが独自に生産している安価な米と一緒に陳列、販売されている。

特に中国系スーパーマーケットの一部店舗では、日系商社が取り扱っている最高品種といわれる「玉錦」「田牧ゴールド」などの高級品が置かれようになっており、一昔前とは、商品構成が様変わりしているようである。しかしながら、日本から輸入されている日本産の米は、最高級のカリフォルニア産日本米に比べても非常に割高で、一部の日系スーパーマーケットでの取り扱いに限られており、他のアジア系スーパーマーケットでは馴染みのない商品である。

表1:ブランド米の価格(15ポンド、約6.8kg)(単位:ドル)
商品名 中国系スーパー 韓国系スーパー 日系スーパー
玉錦(短粒米) 22.19 22.99 26.99
田牧米ゴールド(短粒米) 26.49 23.99 26.99
中国ブランド米 ※4 7.45 取扱なし 取扱なし
新潟産無農薬コシヒカリ 取扱なし 取扱なし ※4 78.16

※3, 20ポンド入り。15ポンドの価格。
※4, 2kg入り。15ポンド換算の価格。

2. 中国系、韓国系マーケットへの販路開拓

日系市場だけに販路を留めることなく、各社ともに米系市場やアジア系市場への展開を図るなど、それぞれ異なった戦略で、新たな市場拡大に取り組んでいる。

例えば、米系市場へは、米系スーパーマーケット、レストランへの販売拡大を目指し、すしのり、てんぷら粉、ラムネ飲料などのオリジナルブランドの開発など、またアジア系市場へは、単価を抑えて大量に商品を投入するなどの取り組みがみられる。

現時点では、アジア系でも中国系、韓国系市場への販路開拓が最優先されており、各日系食品商社もシェア拡大のために奮闘している。

特に南カリフォルニアでは、多くのアジア系コミュニティが形成されている。第二次世界大戦前に日系移民が作り上げたロサンゼルスのダウンタウンに位置するリトル東京をはじめ、そこから東には巨大な中国人コミュニティが、またダウンタウンから西には韓国人コミュニティが築かれている。

これら中国系、韓国系のコミュニティでは、自国の商品を中心に販売するスーパーマーケットが多い。しかし最近では、中国系移民、韓国系移民の二世、三世が他の文化への興味を持ちはじめ、日本食レストランでの食事は一般化してきている。中国、韓国の若者にとって日本文化がトレンドになっていることが、スーパーマーケットなどでの日本食品取り扱い拡大に拍車をかけているものと思われる。

また中国人、韓国人には日本人と似た「食の嗜好性」、例えば、調味料としてしょうゆを多く使用する、米を主食とする、日本酒、韓国焼酎、紹興酒のような食中酒とともに食事をするという文化が存在する、といった共通性がある。また、長い文化交流の歴史からも、他のアジア系民族以上に日本食を受け入れる下地があったと思われる。

中国系、韓国系スーパーマーケットで取り扱われる日本食品の種類はしょうゆ、みそ、ごま油、カレー粉、米、だしの素、各種ソース類、菓子、ながいもなど多種多様に渡り、関連商品として炊飯器なども販売されている。

中国系スーパーマーケットにおける日本食品の拡大理由としては、日本食を食する機会が増えたこと、中国移民の増加により、高級品やこだわりのある商品を求める層が増加したことも要因であると推測される。

中国系スーパーマーケットの大手99 Ranch Marketは1984年に設立され、現在カリフォルニア州に28店舗、ワシントン州、ネバタ州、テキサス州にも合計5店舗を構えている。その一部店舗では、しょうゆ関連商品だけでも、めんつゆ、うなぎたれ、ポン酢など日系のスーパーマーケット以上の品揃えをしているところがある。またしょうゆでは、ヤマサうすくちしょうゆ、ヤマサ減塩しょうゆ、キッコーマンあまくちしょうゆなどのこだわりのある商品もあり、その品揃えには目を見張るばかりだ。また、麻婆豆腐用ソースに関しても、ハウス食品がタイで製造したもの、あるいは味の素の日本産商品が販売されている。

韓国系スーパーマーケットにおいても、日本食品が広がっており、なかには日本産の納豆まで販売しているスーパーマーケットもある。また、日本産食品に類似した韓国製の菓子などもよく見かけ、日本産食品の良いイメージが浸透していることがうかがえる。

米国農務省発表の2010年1月から7月までの輸入貿易統計によれば、ごま油は総輸入量の30%以上が日本産であり、日本からの輸入量は2,644トン、輸入額は1,535万1,851ドルと、日本がともに1位である。また、ながいもは、同期間の日本からの輸入量が634トン、輸入額が151万239ドルとなっている。

最近、週末には、中国系、韓国系スーパーマーケットで、それぞれの母国語を話す販売員が日本食品のデモ販売を行っている光景をよく見かける。消費者に馴染みのない商品は棚に陳列するだけでは売り上げが伸びないため、まずは、試飲、試食をしてもらう、あるいは、簡単なレシピを棚に置いたりチラシに入れたりするなど、さまざまな工夫をこらして販売促進を図っている。

(以下、単位:ドル)

表2:しょうゆの価格
商品名(各1,000ml) 中国系スーパー 韓国系スーパー 日系スーパー
ヤマサ うすくちしょうゆ 日本産 3.79 4.29 5.09
ヤマサ 減塩しょうゆ 日本産 5.49 6.99 6.50
キッコーマン あまくちしょうゆ 日本産 4.89 5.49 6.29
表3:めんつゆの価格
商品名(各500ml、3倍濃縮) 中国系スーパー 韓国系スーパー 日系スーパー
ヤマサ めんつゆ 日本産 5.19 取扱なし 4.99
キッコーマン めんつゆ 日本産 4.99 3.99 5.99
表4:ごま油の価格
商品名(300ml) 中国系スーパー 韓国系スーパー 日系スーパー
かどや ごま油 日本産 4.99 4.99 4.99
表5:麻婆豆腐用ソースの価格
商品名(各110g) 中国系スーパー 韓国系スーパー 日系スーパー
ハウス 麻婆豆腐 日本産 1.98 取扱なし 2.69
ハウス 麻婆豆腐 タイ産 取扱なし 2.99 取扱なし
味の素 麻婆豆腐 日本産 取扱なし 2.99 取扱なし
味の素 麻婆豆腐 タイ産 2.18 取扱なし 2.99

※それぞれのスーパーで1店舗の価格を参考値として掲載している。各スーパーの販売価格を代表するものではない。

米、しょうゆ、めんつゆなどの価格比較から分かるように、日本産食品といっても日系スーパーマーケットでの販売価格が一番安いわけではない。それぞれの市場に見合う価格構成がなされていると思われるが、販売先の拡大が収益拡大に結びついているとは限らず、厳しい価格競争が展開されていることが想像できる。

目新しい商品が求められる

多くの日系食品商社は日本からの輸入品に関し、他社にはない商品を探すことに力を入れており、日系スーパーマーケットには常に目新しい商品が並んでいる。

また最近では、食品商社経由のみならず、小売業者が直接日本産食品を買い付け、輸入販売を行うケースも出てきている。小売業者にとっては価格面でのメリットすなわち中間マージンをカットすることで価格を抑えることができる、あるいは顧客の好みに応じた商品開発を日本企業とともに行うことができるなどのメリットが考えられ、日本企業にとっては米国への輸出のチャンスが増えるかもしれない。

しかしながら、「品質が良ければ売れる」ということではなく、そこには日本企業が歩み寄らなければならない課題もある。

今後、米国への輸出を希望する日本企業は、品質のみならず、価格、サイズ、パッケージ、ラベリング、賞味期限の設定などが米国市場に合うような商品開発が求められる。また、米国側輸入業者との強い信頼関係を築いていく必要がある。

(ロサンゼルス・センター)

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