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日本食品の輸入動向:日本産食品が米国市場で受け入れられるために‐高いハードルをどのように越えるか‐

2010年9月
分野:食品・農林水産物

食料自給率がオーストラリア、カナダに次ぎ3位、124%である米国は、工業国であると同時に農業大国でもある(※1)。

中西部は世界に誇る穀倉地域であり、テキサス州、フロリダ州はかんきつ類、ロサンゼルスが位置するカリフォルニア州は米をはじめ生鮮野菜や果実、ワシントン州はりんごの産地として知られており、それら農産物をはじめ加工品の多くが日本にも輸出されている。

昨今アジア諸国では日本産の野菜や果物が高く評価されているが、北米市場においては価格面から米国産に太刀打ちできるものは少なく、また輸送にかかる時間やコストも障壁となり、日本からの農産物の輸出にとってはハードルが高い市場といえる。また、米国は地理的にも季節外の商品も含め、南米あるいはメキシコなどの中米から比較的安価で輸入することが可能なため、1年中、種類豊富な野菜、果物が安定的に市場に出回っている。

※1, カロリーベース総合食料自給率(2007年度農林水産省データ)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

カリフォルニア産野菜、カリフォルニア米の品質は高い

生鮮野菜や果物を取り扱う日系大手輸入販売会社の話では、にんじん、セロリなどの品質は非常に高く、米国での日本食普及にも大きく貢献しており、ニューヨークをはじめ各都市の高級日本食レストランに卸されているとのことだ。

現在日本から定期的に輸入され、数量が比較的多い生鮮品として長いもが挙げられるが、それ以外は植物検疫の問題もあり、野菜、果物を含め非常に少ない。長いもは、日系市場よりも韓国系市場や中国系市場での取り扱い、販売が多く、薬膳としてスープ等に用いられることが多いようである。また高級素材として、生わさび、みょうがなども日本から輸入販売されているが、輸入量は限られているため、統計データを把握することは困難である。

「米」に関しても日本産米が珍重されるアジアの一部諸国とは状況が異なる。カリフォルニア産米が価格面では圧倒的に有利であり、品質面でも定評があるため、日本からの輸入米にとっては厳しい市場といえよう。新潟産無農薬コシヒカリなど、付加価値の高い商品がわずかながら輸入されているが、優れたカリフォルニア産米が米国に「すし」をはじめとする日本食文化を根付かせるために、大きく寄与していることは間違いないであろう。

米国に輸入されている米の多くはインディカ米と言われる長粒種であり、ジャポニカ米と言われる短粒種とは違い、ねばりが少なくさらりとした米である。米国の主な輸入相手国は、タイ、インド、パキスタンである。

チリ産りんごが、季節的にも価格的にも有利

りんごについては、日本からの輸入品がわずかながらある。これは日系商社が季節限定で毎年輸入している青森県産りんごである。2010年の1月から2月にかけてロサンゼルス、ハワイ、ニューヨークに数本の40フィートコンテナが入荷されたそうだ。販売価格は1ポンド(約450g)あたり約3ドルと米国産に比べ割高であるが、日本産りんご特有の食感や甘みが一定の顧客を捉え、今年も完売したそうである。

しかしながら、米国農務省(USDA)の派遣検査官による日本の農場検査が必要なため、それにかかる経費も足かせとなっており、今後の輸入継続が懸念される。

米国での収穫時期と前後してりんごの収穫期を迎える南半球のチリやニュージーランドからの輸入品が秋以降増えてくる。特にチリからは、りんご以外になし、ぶどうといった果実も多く輸入されている。チリ産りんごの輸入量は2010年上半期では総輸入量の約70%を占めており、輸入額でも全体の約65%となっている。1kgあたりの単価を比べると、チリ産が最も安く0.81ドル、ニュージーランド産が1.07ドル、カナダ産が1.13ドルとなっている。日本産はチリ産に比べ、5倍近くの3.96ドルである。

米国りんご協会(US Apple Association)が9月に発表した2010年のりんご収穫量は2億2,600万ブッシェル(約492万トン)で、前年より4%減少し、過去5年間で年率2%のペースで減少している。ちなみに、人口1人当たりに対して昨年は113個、今年は90個という勘定になる。日本における2009年の生産量が84万6,000トンであることからしても、減少傾向にあるとはいえ、日本と比較し生産量は格段に多いことが分かる。

表1:米国におけるりんごの輸入(2010年1~6月)
輸入量(トン) 輸入額(ドル) 輸入単価
(ドル/kg)
チリ 78,171.6 63,325,808 0.81
ニュージーランド 21,194.6 22,609,224 1.07
カナダ 6,299.5 7,091,654 1.13
日本 43.8 173,613 3.96

(出所:米国農務省海外農業局)

付加価値の高い日本産牛肉

日本特有の付加価値の高い食品として、日本産牛肉が挙げられる。2010年4月20日に宮崎県において口蹄疫の疑似患畜が確認されたことを受け、4月23日より輸出検疫証明書の発行が停止されたため、海外への輸出が不可能となっているが、それまでの米国への輸入量は注目される。

日本からの牛肉の輸入に関して、2010年1月から4月までは、輸入量が月平均10.3トン、輸入額が同54万7,014ドルである。景気後退期以前の2007年1月から6月までは、輸入量が同48.0トン、輸入額が同68万5,374ドルであった。また景気後退後の2009年1月から6月までは、輸入量が同10.8トン、輸入額が同36万8,667ドルであった。

表2:米国における日本からの牛肉の輸入
輸入量(トン) 輸入額(ドル)
2007年1~6月(月平均) 48.0 685,374
2009年1~6月(月平均) 10.8 368,667
2010年1~4月(月平均) 10.3 547,014

(出所:米国農務省海外農業局)

輸入量で比較すると、景気後退期以前の2007年1月から6月までは、景気後退後の2010年1月から4月までに比べ、4倍以上の輸入実績があったことになる。

2007年1月から6月までは1ドルがおよそ120円前後、2009年1月から6月までは1ドルが90円台半ばで変動していたことを踏まえても、今回の景気後退が高級輸入品に非常に大きな打撃を与えたことが分かる。日本の牛の生育産地あるいは輸入業者の努力で実績を積み上げ、日本産牛肉の認知度も次第に高まっている。市場は限られているが、日本産牛肉はロサンゼルスの高級住宅街として知られるビバリーヒルズの高級ホテル内ステーキレストラン、ラスベガスの高級しゃぶしゃぶ店、さらにロサンゼルスからの空輸によって、シカゴ、ニューヨーク、テキサスなどのレストランへと浸透し始めている。

日本産牛肉の輸入業者もオーストラリア産にシフト

以前日本産牛肉を取り扱っていた輸入販売業者によると、近年日本の技術を取り入れ生産された日本産牛肉に近い霜降りのあるオーストラリア産牛肉の輸入販売にシフトしたとのことである。これは、2003年にカナダ、米国でBSEが発生し、日本が発生国からの牛肉輸入停止措置を取った際、オーストラリア産牛肉が米国産に取って代わるといった事態が起きたのと似ている。2010年8月にロサンゼルスで行われたWestern Food Service & Hospitality Showにおいても日本の輸入業者が日本産牛肉風のオーストラリア産牛肉を紹介していたが、以前のオージービーフの特徴であった固い赤身肉とは違い、“さし”の入った美味しい肉であった。

米国において、牛肉の国別輸入量では、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアが上位を占めている。この3カ国は利益率の高い日本、米国に輸出を拡大する戦略をとっており、それ以外の牛肉輸出国である南米諸国は、欧州向けに多く輸出を行っている。

2010年1月から6月までの米国の牛肉輸入相手国1位は隣国のカナダである。カナダは同期間中、米国の総輸入量39万8,890.2トンの39.2%、総輸入額の35.8%を占める。

日本からの輸入は2010年4月23日以降停止されているが、同年1月から6月までの輸入量、輸入額はともに10位となっている。5位から8位まではメキシコや、ウルグアイ、ニカラグア、コスタリカなどの南米諸国となっているが、順位は月によって頻繁に入れ替わる。

2010年1月から6月までの1kgあたりの輸入単価に関して、輸入量の上位3カ国と、9位のチリ、10位の日本を比較すると以下のとおり。ただし、日本は輸出停止以前の4月までの輸入量、輸入額を示している。

表3:米国における牛肉の輸入(2010年1~6月)
輸入量(トン) 輸入額(ドル) 輸入単価
(ドル/kg)
世界計 398,890.2 1,375,227,111 3.45
カナダ 156,295.2 492,672,188 3.15
ニュージーランド 105,135.7 358,659,539 3.41
オーストラリア 91,541.9 331,351,328 3.62
チリ 531.1 2,221,467 4.18
日本(1~6月) 41.0 2,188,056 53.37

(出所:米国農務省海外農業局)

カナダ産は輸送コストが低いため、価格が抑えられていると考えられる。日本産牛肉が平均に比べ15倍以上の輸入価格となっているのは驚きであるが、高価格にもかかわらず、高級レストラン等のニッチマーケットで既に日本産牛肉として認知されていたのは、非常に質の高い畜産物であることを示している。

さらには、日本産牛肉は、最近ではケーブルテレビの料理番組など、メディアでも取り上げられることもあり、一般にも徐々にその存在を知ってもらう機会が増えていただけに、今回の輸入停止措置が1日も早く解除され、日本産牛肉が再び米国市場に戻ってくることを期待する声は大きい。

日本産「ほたて貝」は高価だが高品質

ほたて貝は、米国への輸入が非常に多い産品である。統計で示されているものは冷凍輸入品であり、米国では「スキャロップ」と呼ばれるものである。一般的に日本人が「ほたて貝」としてイメージする寿司ねた用の大きなものだけではなく、サイズも小さいものから大きなものまでバラエティがあり、生食可能なもの、加熱処理が必要なものがある。

表4:米国におけるほたての輸入(2010年1~6月)
輸入量(トン) 輸入額(ドル) 輸入単価
(ドル/kg)
中国 7,119.1 41,327,567 5.81
日本 1,097.3 19,916,390 18.15
ペルー 824.0 6,420,275 7.79
カナダ 813.0 13,317,603 16.38

(出所:米国農務省海外農業局)

平均単価は日本産が一番高いが、個別急速冷凍(IQF:Individual Quick Frozen)などの技術が進んでおり、品質的に優れたものが多い。

総じて日本産品にとって、米国はハードルの高い市場であるが、日本食レストランで人気のはまち、天然あじなどは日本ならではの産品であり、日本食の広がりとともに、今後も需要の増加が見込める産品と考えられる。

長引く円高により、価格競争の面では厳しい状況が続いているが、日本の食文化そのものを輸出していくという理念のもとに日本産食品を米国社会に紹介していくことが、今後の日本産食品の輸出拡大には必要であると考えられる。

(ロサンゼルス・センター)

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