米国の食品関連の規制
1. 食品規格
青果物に関して個々の製品の規格は定められていないものとみられます。
2. 残留農薬および動物用医薬品
青果物に関する米国における農薬の規制は環境保護庁(EPA)と米国食品医薬品局(FDA)が管轄しています。EPAは農薬の種類と最大残留農薬限度(MRL)の承認と登録、FDAは、食品についてEPAが設定した規制を執行する役割を担っています。
EPAは、農薬成分および農作物ごとに残留農薬の許容量を設定(ポジティブリスト制)しており、米国に輸入される青果物とその加工品は、その基準を満たしていなければなりません。なお、一部の農薬成分については、人体に安全だとして許容量の設定を免除しているものもあります。残留農薬の許容量に関する詳細は、「関連リンク」の「その他参考情報」にある農林水産省の「諸外国における残留農薬基準値に関する情報」や連邦規則集第40巻第180条(40CFR Part180)で確認してください。連邦規則集での確認方法はEPAのウェブサイト「残留農薬許容量情報(Part 180)の索引」を参照してください。
また、許容量を超えて農薬成分が残留している青果物、およびEPAが残留農薬の許容量の設定も免除も行っていない農薬成分が残留している青果物は、米国に輸入することができないため、日本から米国向けの青果物の輸出にあたっては、農薬の使用否、そして残留する農薬の許容値について事前に確認しておく必要があります。
加工された青果物に、許容量が設定されている農薬成分が残留している場合には、次の3つの条件をすべて満たさなければなりません。
- 加工前の青果物における残留農薬が許容量を超えていない。
- 現行適正製造規範(CGMPs)に基づく製造が行われ、残留農薬ができるかぎり取り除かれている。
- 加工後の青果物の残留農薬が、加工前の原料における許容量を超えていない。((食品医薬品化粧品法(FD&C 法)第 408 条(a)(2)、合衆国法典21USC346a(a)(2))。
なお、2021年8月にEPAは、クロルピリホスの残留農薬基準値を取り消す最終規則を公表し、2022年2月28日にすべての食品におけるクロルピリホスの残留基準値を取り消しましたが、2024年2月5日、クロルピリホスの基準値を取り消す最終規則を無効とする改正を行いました。EPAは現在も本件について検討中であることから、輸出前には最新情報を確認してください。
3. 重金属および汚染物質
食品に含まれる有毒および有害な物質の許容量は、食品医薬品化粧品(FD&C)法第406条に基づく規則で定められています。現在、FDAが規則で食品に関して暫定残留許容濃度を定めている物質は、ポリ塩化ビフェニール類(PCB類)のみで(連邦規則集第21巻第109.30条:21CFR Part109.30)、紙製の食品包装材のPCBの残留物に対する暫定的な許容量は10ppmとなっています。
一方で、ヒ素および有害重金属などの汚染に関する規制についてはFDAが中心に行っていますが、総括的な法的水準は決められていないのが現状です。それぞれの有毒・有害物質が長期的に健康に与える影響は不明確とし、有害な物質の含有は避けることが望ましいとされています。
1. 有毒・有害物質の欠陥対策レベル
FDAは、有毒・有害物質に関する欠陥対策レベルをガイダンス「ヒト向け食品および動物飼料に含まれる有毒・有害物質に関する対策レベル」として2000年に発行しています。同ガイダンスでは、19種類の有毒・有害物質について、食品と飼料の品目別に対策レベルの値(ppmなど)が設定されています。各物質の欠陥対策レベルの値は食品によって異なりますが、同ガイダンスでは、例えばアフラトキシンについて「一般食品」においては20ppbと設定しています。
なお、このガイダンスには規則のような法的拘束力はありませんが、FDAが法的措置を発動するかどうかを決定する際の基準と位置付けられています。従って、有毒・有害物質の含有量が欠陥対策レベルを下回っている必要があります。
また、FDAが鉛の上限を定めている個別の製品カテゴリーがあります。例えば、ボトル入り水については5ppb、子供がよく消費するジュースやキャンデーについても、ジュースは50ppb、キャンデーは0.1ppmを上限としています。
ジュースに含まれる鉛の基準値は2004年に50 ppbに設定後、その後2022 年にガイダンス案が発表され、そのまま飲めるタイプのリンゴジュースについては鉛の基準値を10ppbに設定し、その他のそのまま飲めるタイプのジュースについては20 ppbに設定すると記載されています。現状、正式な変更はありませんが、今後基準値が厳しくなる可能性はあります。
2. トータルダイエットスタディに基づく参考指標
米国では、1991年からさまざまな食品に含まれる物質(ヒ素および有害重金属などを含む)のトータルダイエットスタディ(Total Diet Study:TDS)が実施されており、FDAのウェブサイト上で結果が公開されています。これは法的に設定された許容量や基準値ではありませんが、米国で消費されているさまざまな食品中におけるヒ素や有害重金属などの含有量について、最小値、最大値、平均値などを知ることができるため、参考指標として有効利用することができます。
公表されている直近のデータは2018年から2020年に実施されたサンプリングによるもので次のような結果となっており、米国で消費されている食品に含まれるヒ素および有害重金属などの参考指標として活用することができます。
ここでは、果物(いちご、りんご、オレンジ)と野菜(茹でた皮なしポテト)の例を上げます。
いちごに含まれるヒ素および有害重金属などの参考指標(単位:ppb)
名称
|
最小値
|
最大値
|
平均値
|
ヒ素
|
検出なし
|
8.3
|
2.8
|
カドミウム
|
1.8
|
34
|
9.3
|
銅
|
検出なし
|
770
|
321
|
鉛
|
検出なし
|
検出なし
|
N/A
|
マンガン
|
2200
|
5700
|
3426
|
亜鉛
|
480
|
1400
|
1007
|
りんごに含まれるヒ素および有害重金属などの参考指標(単位:ppb)
名称
|
最小値
|
最大値
|
平均値
|
ヒ素
|
検出なし
|
20
|
1.9
|
カドミウム
|
検出なし
|
検出なし
|
N/A
|
銅
|
検出なし
|
470
|
240
|
鉛
|
検出なし
|
検出なし
|
N/A
|
マンガン
|
200
|
400
|
275
|
亜鉛
|
検出なし
|
440
|
58
|
オレンジに含まれるヒ素および有害重金属などの参考指標(単位:ppb)
名称
|
最小値
|
最大値
|
平均値
|
ヒ素
|
検出なし
|
6.7
|
0.37
|
カドミウム
|
検出なし
|
1.2
|
0.044
|
銅
|
280
|
630
|
478
|
鉛
|
検出なし
|
検出なし
|
N/A
|
マンガン
|
110
|
520
|
246
|
亜鉛
|
360
|
850
|
545
|
茹でた皮なしポテトに含まれるヒ素および有害重金属などの参考指標(単位:ppb)
名称
|
最小値
|
最大値
|
平均値
|
ヒ素
|
検出なし
|
4.8
|
0.32
|
カドミウム
|
13
|
42
|
25
|
銅
|
250
|
1300
|
654
|
鉛
|
検出なし
|
検出なし
|
N/A
|
マンガン
|
860
|
1600
|
1143
|
亜鉛
|
1400
|
3600
|
2278
|
-
鉛:
-
FDAは、子供が頻繁に消費する食品を中心に(キャンデーやジュース)、鉛についてのサンプル調査を長年にわたって実施しています。FDAは1970年代から鉛の含有量の削減について働きかけており、最近のデータでは2歳児が摂取する鉛の量は1979年と比較して90%減少しているというデータもあります。
3. その他
米国では、連邦レベルより州レベルでさらに厳しい規制を設けている場合があります。詳しくは、州、地方自治体のウェブサイトで確認してください。
一般的に、カリフォルニア州は、全米で最も食品に対する規制が厳しいとされています。具体的には、カリフォルニア州法プロポジション65(安全飲料水および有害物質施行法:Prop.65)の警告表示にかかる改正で、2018年8月30日以降は、警告文に有害物質名を少なくとも一種類表示し、その物質を’含む’ではなく、’有害物質にさらされる’という表現にする、インターネットでの販売にも該当する製品には警告文の表示をすることが義務付けられました。
なお、生殖毒性があるとされるビスフェノールA(BPA)に関しては、2017年12月31日以降は個々の商品もしくは商品棚への警告表示が必要となり、全体警告は認められません。
Prop.65の有害物質リストは1,000種類以上に及び、年に2~3回はリストが更新されます。確認の際には必ず直近のリストを参照してください。
4. 食品添加物
米国に輸入される青果物の加工品に使用される食品添加物に関する規制は、合衆国法典第21巻第348条(21U.S.C.348)Food Additivesに基づいて行われています。食品添加物の定義は、合衆国法典第21巻第321条(21U.S.C.321)により規定されており、食品に対して直接または間接に使用が認められている食品添加物やそれにかかる規則は、連邦規則集第21巻第170条から第189条(21CFR170-189)に列挙されています。
使用可能な食品添加物のリストについては、関連リンクの「使用が許可されている着色料一覧」および「使用が許可されている添加物一覧(着色料以外」から確認することが可能です。米国において新規の食品添加物を使用する場合には、GRAS通知、または食品添加物申請(Food Additive Petition:FAP)をFDAに申請し、事前許可を得る必要があります。
着色料に関する規制は、合衆国法典第21巻第379条e(21U.S.C.379e)に基づいて行われています。使用することができる着色料は、日本で許可されているものとは異なるため、FDAウェブサイト上の「使用が許可されている着色料一覧(Color Additive Status List)」と「連邦規則集第21巻第70条から82条(21CFR Part70-82)」を確認してください。
特に、赤色102号については日本をはじめEUやアジアの主要国では着色料として使用が認められていますが、米国では認められていません。また、クチナシ、ベニバナ、ベニコウジも日本では古くから着色料として使用されていますが、米国では使用することはできません。
また、カリフォルニア州では発がん性など健康を損なうリスクが大きいとされる4種類の食品添加物を用いた食品製造や使用、販売を禁止するカリフォルニア州食品安全法案418号が2023年10月に成立しました。規制対象となっているのは、臭素化植物油(BVO)、臭素酸カリウム、プロピルパラベン、および赤色3号で、2027年1月1日以降、これらの添加物を含む加工食品をカリフォルニア州で製造、販売(カリフォルニア州への輸入を含む)することが禁止されます。違反した個人や団体は、初回5,000ドル以下、2回目以降は1万ドル以下の罰金が科されます。カリフォルニア州安全食品法案 418号に基づき製造、使用、販売が禁止されることとなる、これらの各成分の安全性を、FDAは審査し、再評価していると述べた。特に赤色着色料3号については、FDAは、連邦食品医薬品化粧品法のデラニー条項に基づいて安全性を審査中ですが、決定のタイムラインは示していません。
2024年7月3日に、FDAは、食品への臭素化植物油(BVO)の使用を許可する規制を取り消す最終規則を公布しました。この規則は2024年8月2日に発効し、適用日は発効日から1年後となっています。
5. 食品包装(食品容器の品質または基準)
食品の製造、梱包、包装、輸送または保管に用いられる資材を構成している物質であって、食品の性質に技術的な影響を与えないものを食品接触物質(Food Contact Substances:FCS)といいます〔食品医薬品化粧品法第 409 条(h)(6)、合衆国法典 21USC348(h)(6)〕。FDAは、食品接触物質を間接添加物(Indirect additive)として、食品添加物に定義しています。なお、包装などの資材を構成している成分が溶出し食品に移行するかどうかを確認する責任は、資材の製造業者が負うことになります。
食品接触物質は、FDA 規則に合致している物質(次の1を参照)でない場合は、FDA への食品接触物質通知(2を参照)が必要です。
1. 食品接触物質の規制の適合確認
次の規則に当てはまらない食品接触物質は、FDA への食品接触物質通知をしなければなりません。
- 間接添加物(連邦規則集第21巻第174条から第179条: 21CFR Part174-179)
- GRAS (連邦規則集第21巻第182条、第184条、第186条: 21CFR Part 182,184,186)
- 1958 年以前に容認されている物質(Prior Sanctioned Material, 連邦規則集第21巻第181条: 21CFR Part181)
- 規制の適用除外になる物質(Threshold of Regulation Exemption, 連邦規則集第21巻第170.39条:21 CFR Part 170.39)
2. FDA への食品接触物質通知(Food Contact Substance Notification)
食品接触物質の製造業者あるいは供給業者は、市販の 120 日以上前にその物質の情報をFDA に通知しなければなりません(連邦規則集第21巻第170.100条: 21CFR Part170.100)。通知から120日の間に FDA から異議申し出がない場合はその通知が有効となり、食品接触物質の使用が合法となります(連邦規則集第21巻第170.104条: 21CFR Part170.104)。ただし、食品接触物質通知は、申請した製造業者に対して有効となるため、同じ物質であっても申請した製造業者以外の製造業者には、通知の効果は及びません。提出方法および提出先については関連リンクを参照してください。
2024年3月、米国食品医薬品局(FDA)は、食品接触物質通知が無効であるとFDAが判断する方法と時期に関する規則(21CFR170.105及び21CFR170.102)を改正する最終規則を発表しました。この最終規則を発行する前は、FDA は安全性の懸念に基づいてのみ、食品接触物質通知がもはや有効ではないと判断することができましたが、今回の改正により、FDAが安全性以外の理由で、食品接触物質通知が無効であると判断できるようになります。安全性以外の理由とは、例えば製造業者が、その食品接触物質通知の物質を製造、供給、または使用しなくなった場合や、また、食品接触物質通知の認可がほかの認可と重複した場合 (例えば、食品接触物質の使用が食品添加物規制によって既に認可されている場合、または発行された規制免除の閾値の対象である場合など)の場合にFDAは食品接触物質通知が無効である、と判断し、宣言することができます。最終規則では、安全性の懸念に基づいて認可を取り消すFDAの権限も、引き続き維持されており、一方、FDAが無効であると判断する前に、企業から関連情報をFDAへ提出することも可能です。FDAは規則改訂を通じて食品接触物質の管理プロセスをより効率的にすることが、食品化学物質の安全性を強化するアプローチの一部であるとしています。食品接触物質通知が有効であるかどうかは、FDAの「有効な食品接触物質通知一覧から確認することができます。
3. PFAS
PFASとは、パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質と呼ばれる化学物質のクラス・ファミリーで、非粘着性およびグリース、耐油性、耐水性の特性により調理器具、食品包装、および食品加工において使用されています。FDAは食品接触物質として長鎖PFASを2011年に禁止しましたが、短鎖PFASは許可してきました。しかし、FDAは、6:2フルオロテロマーアルコール(6:2 FTOH)を含む短鎖PFASの安全性に関しても懸念し、規制の変更措置を取り始めています。2024年2月には、PFASを含む耐油性材料を、米国内で食品包装に使用するために販売することの中止を発表しました。
連邦レベルにおける動きだけでなく、ワシントン州、ニューヨーク州、カリフォルニア州などいくつかの州では既に食品包装だけでなく、その他のPFASの使用を禁止し始めている州もあり注意が必要です。
4.フタル酸エステル類
FDAは、可塑剤、接着剤、消泡剤、表面潤滑剤、樹脂、および殺ダニ剤として使用される23種類のフタル酸エステルとほかの2種の物質の食品接触材使用許可を取り消しました。この措置により、これらのフタル酸エステルは、第21巻第175条から第178条:21CFR Part175-178の規制によって認可された物質のリストから削除され、食品接触用途ではフタル酸エステルの使用は残り9種類に制限されます。このうち8つは可塑剤としての使用が許可され、1つはモノマーとしての使用が許可されています。
連邦レベルにおける動きだけでなくミネソタ州、ミシガン州、ニュージャージー州、ニューヨーク州は現在、立法会議でフタル酸エステル類を制限する法案を検討しています。メイン州では食品包装のフタル酸エステル類の禁止法が2022年に施行されているなど注意が必要です。
5. 食品包装用リサイクルプラスチック
米国全体で、プラスチックを含む使用済みリサイクル(PCR: post-consumer recycled)材料の使用を増やすことに重点が置かれています。一方で、食品接触物質におけるPCRプラスチック材料の使用に関するFDAの主な安全上の懸念は、次の3点です。
- PCR材料中の汚染物質がリサイクル材料から作られた最終的な食品接触物質に出現することで食品に移行する可能性があること、
- PCR材料は食品接触用途として規制されていない可能性があること、
- PCRプラスチック中のアジュバント(添加剤・補助物質)は食品接触用途としての規制を順守していない可能性があること
リサイクルプラスチックから作られた食品接触物質の製造業者は、未使用の材料と同様に、リサイクルされた材料が意図された用途に適した純度であり、未使用の材料のすべての既存の仕様を満たすことを保証する責任があります。従って、リサイクルポリマーに新規添加物を使用する場合、あるいは未使用ポリマーに現在許可されている添加物の量を超えて認可された添加物を使用する場合は、食品接触物質通知(FCN)または食品添加物申請(FAP)が必要です。FDAは、食品包装材メーカーがリサイクルプラスチックを食品包装材に使用するための工程を評価する際の参考として「産業界向けガイダンス - 食品包装におけるリサイクルプラスチックの使用:化学上の検討事項(Guidance for Industry - Use of Recycled Plastics in Food Packaging: Chemistry Considerations)」を作成しています。また、FDA は食品接触物質の製造に使用されるPCRプラスチックを製造するための特定のプロセスの適合性に関して肯定的な意見を出した申請のリストを公開しています。
6. ラベル表示
青果物およびその加工品のラベル表示は、公正な包装および表示法(Fair Packaging and Labeling Act)により規制されています。青果物およびその加工品を商業目的で米国に輸入するには、米国税関・国境取締局(CBP)およびFDAが定める表示を行わなければなりません。
生鮮果実または生鮮野菜の開放容器(硬質または半硬質の容器で、蓋、包装紙その他内容物を覆い隠さない色の透明な包装紙以外のもので閉じられていないもの)で、その内容物の量が1ドライクオート以下のもの、などのように、条件によっては表示義務が免除されます。ただし2 個以上の容器が入っている外側のパッケージに、含まれている数とそれぞれの内容物の量を示すラベルを付けなければならないという条件があります。
一般的に表示しなければならない項目は次のとおりです。表示は英語で行わなければなりません。詳しくは、FDAの「食品表示ガイド」で確認してください。
-
主要表示パネル:PDP(Principal Display Panel)
-
-
情報パネル:IP(Information Panel)
-
- 原材料名〔青果物の場合は必要ありません。ただし、2種類以上の原材料(食品添加物を含む)が使用されている場合は、それぞれの名称を表示しなければなりません。また、アレルギー原因物質を含む場合は、その名称を表示しなければなりません。〕 表示が義務付けられているアレルギー物質は乳、卵、魚(例えば、ヒラメ、タラ)、甲殻類(例えば、カニ、ロブスター、エビ)、ナッツ(例えば、アーモンド、クルミ、ピーカン)、ピーナッツ、小麦および大豆に加え、2023年1月1日からゴマについてもアレルギー表示が義務化され、全部で9種類となります。魚、甲殻類、ナッツについては、その種類も明記する必要があります。
- 栄養成分表示(生鮮青果物、および輸入後に加工、再包装される青果物には表示の義務はありません。)
- 製造業者、梱包業者、流通業者のいずれかの名称と住所
- 警告および取り扱い上の注意
- 原産国
なお、「4.栄養成分表示」について、2016年7月26日に改正法が施行されました。改正のポイントは次のとおりです。
- 消費者に見てほしいサービングサイズやエネルギー量(カロリー)の文字をより大きく太字にして強調する。
- 栄養素表示に”added sugars”を新たに追加する。
- ビタミンA、ビタミンCの代わりにビタミンDとカリウムの表示を追加する。
また、全米バイオ工学食品情報開示基準(National Bioengineered Food Disclosure Standard : NBFDS)により、いわゆる遺伝子組み換え食品の情報開示が義務付けられています。USDAの農産物マーケティング局(AMS)は、バイオ工学(BE:bioengineered)の技法を用いて生産されうる穀物・食品、つまりNBFDSの対象となるBE食品リストを作成しています。このリストは、BE食品の研究開発の進展により今後さらに追加・更新される可能性がありますが、2024年時点のリストには表示規制対象のBE食品としてりんご(アークティック種)、パパイヤ(リングスポット抗ウイルス性)、パイナップル、アルファルファ、てんさい、とうもろこし、じゃがいもなどが含まれており、バイオ工学技術を用いて作られた品種を原材料に使用している場合には開示義務があります。
7. その他
食品の衛生および安全性
米国に輸入される青果物およびその加工品の安全は、FDAが管轄しています。米国に未加工の農産物(生鮮野菜・果実など)を輸出する生産者(農場)は、2011年1月に成立した食品安全強化法(Food Safety Modernization Act:FSMA)第105条(Standards for Produce Safety)で規定される「農産物安全基準」を順守する必要があります。
2024年5月にFDAは収穫前の農業用水の安全性を高めるための最終規則を発表し、2024年7月5日に発効されました。最終規則では、対象となる農産物の収穫前に農業用水を使用する農場は、少なくとも年に1回、農産物の安全性に影響を及ぼす可能性のある要因を評価し、農業用水査定(アセスメント)の実施が義務付けられます。農業用水査定の結果、農業用水が安全ではないと判断された場合には、適切な是正措置をとることが義務付けられます。対象農産物(スプラウト類を除く)の収穫前農業用水要件の施行期日は、次のように規定されています。
- 非常に小規模な農場の場合: 最終規則の発効日から2年9カ月後(2027年4月5日)
- 小規模な農場の場合: 最終規則の発効日から1年9カ月後(2026年4月6日)
- その他のすべての農場(ただし「非常に小規模な農場」にも該当しない、適用除外される農場を除く)の場合: 最終規則の発効日から9カ月後(2025年4月7日)
なお、「非常に小規模な農場」、「小規模な農場」の定義は次のとおりです。
- 非常に小規模な農場とは、過去3年間に農場が販売した農産物の平均年間売上高が25,000ドルを超え250,000ドル以下の農場。
- 小規模な農場とは、過去3年間に農場が販売した農産物の平均年間売上高が250,000ドルを超え500,000ドル以下の農場。
- (参考)過去3年間に農場が販売した農産物の平均年間売上高が25,000ドル未満の農場(「非常に小規模な農場」の定義よりさらに小さい農場)については、今回の最終規則の適用が除外されている。
(参考)スプラウト類の収穫前農業用水要件の施行期日
- 非常に小規模な農場の場合(過去3年間に農場が販売した農産物の平均年間売上高が25,000ドルを超え250,000ドル以下の農場)は2019年1月28日
- 小規模な農場の場合(過去3年間に農場が販売した農産物の平均年間売上高が250,000ドルを超え500,000ドル以下の農場)は2018年1月26日
その他のすべての農場(ただし「非常に小規模な農場」にも該当しない、適用除外される農場を除く)の場合は、2017年1月26日
また、青果物の加工品を製造/加工、梱包、保管する施設は、FSMA第103条により、危害分析およびリスクに基づく予防管理(Hazard Analysis and Risk Based Preventive Controls)として、食品安全計画の策定と現行適正製造規範の実施が義務付けられています。
輸入業者は、FSMA第301条により、外国供給業者検証プログラム(Foreign Supplier Verification Program:FSVP)として、輸入食品に対する安全検証活動を実施する必要があります。
食品安全強化法の適用対象や要件などの詳細は、関連リンクの「食品安全強化法(FSMA)に関する情報」(ジェトロ)で確認してください。
米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)による食品施設の査察
米国では2011年1月4日、食品安全強化法(FSMA)が成立し、FDAの権限が多岐にわたって強化されました。FSMAの制定により日本企業への影響は、さまざまな点で生じています(「食品関連の規制」の「7.その他」を参照)。特に、同法の第201条に基づき、FDAによる外国の食品関連施設への査察権限が強化され、日本の食品関連施設でもFDAによる査察が実施されるようになりました。そのため、米国で消費される食品の関連施設はFDAからいつ査察が入っても対応できるように、米国の規則に沿った対応をすることが必要です。
米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)による農場の査察
FDAは2019年春、他国の大規模農産物農場を含む、農産物安全規則の対象となるスプラウト事業以外の大規模農場に対する定期査察を開始しました。また、農産物安全基準規則の対象となるスプラウト事業以外の小規模農場の定期査察を2020年に開始しました。
スプラウト(発芽野菜または新芽野菜)の農場はリスクが高い(サルモネラ菌やリステリア菌など食中毒の原因になる有害細菌が含まれているケースが頻繁にある)ため、それ以前からも査察が実施されていましたが、その他の青果物を生育する農場でも、例えば過去に有害細菌が含まれた農産物が出荷された農場やその近くにある農場など、リスクが高いとみなされる米国の農場をはじめとしてFDAによる査察が実施されています。
査察では農業用水供給システムの安全性に関する事項や土壌の安全性検査などをはじめ安全な農産物が生育され出荷できるシステムが導入され守られていること、または問題点や改善方法についての指導などが実施されています。