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市場・トレンド情報

米国のiPad発売時の反響とその後

2010年9月
分野:コンテンツ(その他)

2010年1月27日、カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたアップル社新製品発表会で、iPadが発表された。その直前、2009年クリスマス商戦でアマゾン社のKindle、SonyのReaderなど電子書籍リーダーが好調であったことから、iPadもアップル社が手掛ける書籍ブックリーダーだとの憶測が囁かれていた。

アップル社CEOスティーブ・ジョブス氏は会場に集まった記者や業界関係者に、「MacbookとiPhoneの間に何かがある」と語りかけながらiPadを紹介した。この言葉が意味したのは、消費者の日常生活における利用シーンのことだ。デスクに座って使用するMacbook。外出する時にも常時身に付けて持ち歩くiPhone。この「間」とは、リビングルームで寛ぎながら利用するiPadである。

日本でも発売前日はアップルストア前に徹夜行列ができるなど、話題沸騰となった。米国でも発売初日に30万台が売れ、1カ月で累計130万台を越えたという。これはiPhoneを上回る勢いであり、金融調査会社RBCによると米国だけで2010年4月28日の発売開始から約1年間で465万台を出荷するとしている。全世界では812万5000台。このうち日本は47万5,000台で、米国のほぼ十分の一。また、アップルが2010年クリスマスにiPad新型バージョンを発表するというニュースもある。

表1:iPadの出荷台数予測(単位:千ユニット)
国・地域 発売開始 2010年 2011年 合計
第3四半期 第4四半期 第1四半期
米国 2010年4月 1,855 1,094 1,701 4,650
オーストラリア 2010年5月 37 58 81 176
カナダ 2010年5月 58 91 128 277
フランス 2010年5月 171 270 364 805
ドイツ 2010年5月 66 105 131 302
イタリア 2010年5月 46 73 91 210
日本 2010年5月 101 159 215 475
スペイン 2010年5月 27 43 54 124
スイス 2010年5月 13 20 25 58
英国 2010年5月 124 196 265 585
オーストリア 2010年7月 19 24 43
ベルギー 2010年7月 16 20 36
香港 2010年7月 32 40 72
アイルランド 2010年7月 13 16 29
ルクセンブルグ 2010年7月 3 4 7
メキシコ 2010年7月 11 14 25
デンマーク 2010年7月 10 12 22
ニュージーランド 2010年7月 19 24 43
シンガポール 2010年7月 16 20 36
その他の国・地域 150 150
合計 2,498 2,248 3,379 8,125

出所:RBC Capital MarketよりWowmax Media作成

iPadの影響(1) アップル製品

iPadの発売は、従来のアップル社製品販売数にどのような影響を与えたのだろうか。Macbook、携帯端末iPodとの「市場の食い合い」を予測する声もあったが、米ビジネス誌FORTUNEは「iPadはアップル社事業にポジティブな影響を与えている」とする分析記事を掲載した。それによれば、2010年4月のMacの米国内販売数は前年同月比プラス39%であったのに対して、iPodはマイナス17%と、確かに「食われている」のだが、「iPadは価格がiPodの4倍であるため、粗利を考えるとアップル社事業にはポジティブ」としている。

表2:Macbookの販売数。対前年同月比の推移
2008年 2009年 2010年
1月 12% -6% 36%
2月 60% -16% 43%
3月 72% 3% 7%
4月 49% -2% 39%
5月 49% -3%
6月 43% 16%
7月 43% 2%
8月 21% 12%
9月 27% 7%
10月 28% 7%
11月 -1% 33%
12月 4% -32%
表3:iPodの販売数。対前年同月比の推移
2008年 2009年 2010年
1月 -28% -13% 5%
2月 -5% -16% 10%
3月 4% -17% 3%
4月 12% -9% -17%
5月 11% -18%
6月 4% -11%
7月 7% -17%
8月 21% -15%
9月 -2% 22%
10月 -20% -11%
11月 -17% -11%
12月 -5% -1%

表2、表3出所:NPD

iPadの影響(2) 電子出版

iPadはタブレット型コンピュータで、アマゾンのKindleやSONYのReaderのような専用電子書籍リーダーではないが、アップル社は書籍リーダーとしての利用も特徴として強く打ち出し、独自の電子書店iBook Storeを立ち上げた。このため電子書籍リーダーのシェア争いが激しくなったと言える。

2010年5月末現在、米国で所有されている電子書籍リーダーの62%がKindleだが、4月に発売されたばかりのiPadも16%と急追している。

表4:電子書籍ユーザー調査による書籍リーダー所有状況
所有している電子書籍端末は? Current Survey
May '10
Kindle(Amazon) 62%
iPad(Apple) 16%
Sony Reader(Sony) 7%
A Smart Phone with eBook Capability 7%
Nook(Barnes & Noble) 3%
Other 7%

出所:Investors Place.com

電子書籍リーダーとしてのiPadの魅力は、ページをめくる動作ではないだろうか。ボタン操作や、いちいち拡大しなくてはならないという手間がかからず、実際に書籍や雑誌を読んでいる感覚である。現在のところ、iPadの登場が最も影響を与えているのは、この電子出版分野である。

KindleとiPadの対決という構図で捉えられがちだが、実はamazonとアップルのビジネスモデルの違いが鮮明に現れている。

amazonは世界最大級のオンライン書店である。同社のビジネスモデルは、書籍を売って儲けることにある。Kindleからの収益もあるが、それ以上に重視しているのは、それが紙に印刷されたものであれ、電子ファイル化したものであれ、とにかく書籍を売ることだ。だから、Kindleを売るために電子ファイル化された書籍「Kindle Edition」をKindle以外の他社端末、iPadやiPhoneあるいはWindowsベースのパソコンなどでも読めるように専用アプリ「Kindleリーダー」を無償配布している。これによって、iPhoneやiPadでもKindleの電子書籍が読めるようになった。Kindleという電子書籍リーダーの販売もさることながら、それ以上により多くの端末を通じて一冊でも多くの電子書籍を売ろうという戦略である。他方、アップルはiPhoneやiPadという製品を売って儲けるビジネスモデルである。

米経済紙Wall Street Journal(2010年1月21日)に、アップルのiPadビジネスモデルが記載されている。以下、記事より引用。

  • ターゲットはファミリーと学校
  • 複数のメンバーで共有し、一緒に見る
  • 電子教科書のオーサリング技術を開発している
  • 画面表示をスムーズに変換できる技術を開発している
  • 仮想キーボードでの入力を可能とする
  • News Corp.など複数のニュースメディアや書籍出版社と提携交渉中
  • CBSやディズニー (ABCを保有)と月間契約制の配信について交渉
  • YouTubeを保有するGoogleと異なり、有料コンテンツ販売を重視
  • 素人コンテンツの開拓より「ベストコンテンツ」へのアクセスを重視
  • 旧メディアの販路拡大に協力する救世主として登場する
  • 新しい課金方式を考えている

ここでまず注目したいのは「ターゲットはファミリーと学校」である。iPadはデスクと外出の中間であるリビングルームでの利用シーンを想定したものであることは前述した。これがファミリーである。

では、もうひとつの「学校」を考えてみたい。米国の学校で使用する教科書や専門書は大きくて重い。アップルはここに目をつけ、iPadを電子教科書として普及させることを考えている。「電子教科書のオーサリング技術を開発している」のもそのためだ。全米で約4000校といわれる大学キャンパスで電子教科書として使用されるとすれば、安定的なハードの販売と電子ファイル化された教科書、専門書の販売が期待できる。

他方、この方針はアップルに自社ストアで販売するコンテンツの内容審査を厳しくさせているという面もある。電子教科書として浸透させようというときに、同じストアで「暴力」や「セクシャル」が売られていてはイメージが悪いためである。

この内容審査問題はamazonの価格決定権問題とともに国内出版社にとって、iPad、Kindleへの作品供給にあたっての大きな課題となっている。

図1:iTuneストアの四半期ベース売上高推移(2005-2009年)

出所:WSJ

もうひとつ指摘しておきたいことは『素人コンテンツの開拓より「ベストコンテンツ」へのアクセスを重視』である。

アップルによれば、iPadの発売当日だけでiBookストアから25万冊分の書籍アプリがダウンロード購入されたという。その後も好調に推移しているようだが、話題となった書籍アプリに「Alice for iPad」がある。これは、日本でもお馴染みの「不思議の国のアリス」の絵本を書籍アプリとして制作したものだが、iPadの機能をフルに使ったリッチ・コンテンツである。制作したのは Atomic Antelope外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます というプロダクションで、iPhone用ゲームアプリなどの開発をしていたということだ。

また、Timeなどの雑誌定期購読アプリも話題となっている。誌面からホームページへ飛べば最新のニュースが読めるし、誌面では掲載数に限りがある写真なども該当部分をタッチする事で何枚も見られる。これら、従来の出版メディアのリッチコンテンツ化もiPadの影響と言えるだろう。

iPadの影響(3) クラウド・コンピューティング

一般に、個人用コンピュータの普及がインターネットを成長させたと言われるが、iPadはインターネットから生まれたコンピュータと言っても過言ではない。近年成長が著しいクラウド・コンピューティングである。簡単に言えば、インターネット接続環境にあるPCさえあれば、高度な情報処理や膨大なデータ蓄積などを外部専門企業が運営するウェブを活用して行うことができるというもの。利用者にしてみれば、適切な利用料金を払うだけで、高額なソウトウェアを購入したり、システムを構築したり、アップグレードしたりする必要がなくなる。

関連大手企業も凌ぎを削っており、例えば外部記憶装置メーカーの3PAR(スリーパー)買収を巡って米PC大手ヒューレット・パッカードとデルが争っている。この外部記憶装置は何万、何十万という顧客の注文を処理し、その膨大なデータを蓄えておくために絶対必要なものであるといわれている。

このクラウド・コンピューティングとiPadは相性が良いと言われている。クラウドの特徴は利用者からみて、サーバーや記憶装置に先行投資がいらず、システムメンテナンスなどが不要であり、なによりそこで提供されるアプリケーションにいつでも、どこからでもアクセスできるという点である。顧客管理、在庫管理、仕入管理などさまざまな場面で、作業効率化をもたらすと考えられているクラウドサービスを、持ち歩きが可能で処理能力が高く操作性の良いiPadを使って利用するというシーンである。

図2:クラウド・コンピューティングの利用シーン

出所:Arista Networks

(ロサンゼルスセンター)

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