トルコの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2023年の実質GDP成長率は4.5%と堅調。消費者物価上昇率は64.8%と高水準が続く。
  • 貿易は輸出が伸び悩んでほぼ前年並み。輸入もわずかに減少し、貿易赤字は縮小。
  • 対内直接投資は20.1%減と低迷するも、湾岸諸国が3.2倍と存在感を強める。
  • 日本からの輸出は2桁増。直接投資も2桁増と回復傾向。

公開日:2024年9月25日

マクロ経済 
GDP成長率は4.5%と堅調も物価高が政府の信認を揺るがす

2023年のトルコ経済は、5月の大統領・議会選挙後の経済・金融政策の転換によって、国際的な信認は改善方向に進んだ。僅差で大統領選挙を制したレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は、メフメット・シムシェキ氏を国庫・財務相に登用し、低金利を主軸とした金融政策を引き締めによる正統派政策に転換させた。また政府は、財政赤字の抑制、2023年2月にトルコ南東部を襲った大地震からの復興に向け、付加価値税や公共手数料、法人税の引き上げなどを通じて税収増を図った。

新体制のもと、トルコ中央銀行(以下、中銀)は、政策金利(1週間物レポ金利)を2023年6月から2024年3月にかけて8.5%から50%まで大幅に引き上げたが、為替市場でのトルコ・リラ(以下、リラ)の下落は続き、2023年は対ドルで36.5%の減価となった。同様に、前年から続く高インフレも収束することなく、2023年の消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年比64.8%まで高騰した。また、政府は最低賃金を前年同様2度にわたって約2倍に引き上げた。リラ安が続く中、家計はインフレを見越して商品を購入する消費傾向が見られ、個人消費は減速することなく、地震の影響や外需の鈍化を相殺した。この結果、2023年の実質GDP成長率は、個人消費の前年比12.8%増の成長にけん引され、4.5%と堅調な伸びを見せた。

表1 トルコの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2021年 2022年 2023年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 11.4 5.5 4.5 4.0 3.9 6.1 4.0
階層レベル2の項目民間最終消費支出 15.4 18.9 12.8 16.6 15.3 11.1 9.3
階層レベル2の項目政府最終消費支出 3.0 4.2 5.2 6.0 6.4 7.6 1.7
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 7.2 1.3 8.9 3.8 5.7 14.8 10.7
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 25.1 9.9 △ 2.7 △ 3.4 △ 9.4 1.2 0.2
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 1.7 8.6 11.7 13.5 19.7 14.5 2.7

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
〔出所〕トルコ統計機構(TUIK)

しかし、長期に及ぶ物価高と高金利の共存は、国民生活を圧迫し続け、2024年3月に行われた統一地方選挙で、エルドアン大統領率いる与党・公正発展党は、イスタンブールなどの大都市部を中心に実質的な敗北を喫した。政府は地方選挙後も、金融引き締めの路線を堅持する姿勢を示しており、格付け会社S&Pグローバル・レーティング(S&P Global Ratings)は同年5月、トルコの信用格付けを、前年9月のフィッチ(「B」に引き上げ)に続いて、「B+」に引き上げた。経済協力開発機構(OECD)は5月、2024年のトルコ実質GDP成長率予想を前回(2024年2月)発表の2.9%から3.4%に上方修正し、2024年のインフレ(CPI)を55.5%の上昇と予測した。

貿易 
貿易赤字は縮小

2023年の貿易は、海外需要の低迷と地震の影響もあり、輸出が前年比0.5%増の2,554億3,772万ドルにとどまった。また、輸入は0.5%減の3,617億6,468万ドルで、貿易赤字は2.9%減の1,063億2,695万ドルとなった。

2023年の輸出を品目別にみると、最大の輸出品目の自動車・同部品が前年比15.0%増、貴金属類が33.7%増と、両品目の寄与が大きかった。一般機械(11.3%増)、電気機器(11.8%増)も好調だった。一方、鉄鋼が世界的な需要減を受け39.6%減で最大のマイナス寄与となった。ニット衣類、非ニット衣類も、欧州向けの冷え込みを要因に低迷した。防衛産業の好調が続く中、航空機・同部品は38.7%増(品目別20位)だった。トルコの防衛・航空産業の輸出額は、2023年に全体で前年比27.1%増の55億ドルを記録した。

国・地域別の輸出では、リラ安基調であるにもかかわらず、輸出額全体の40.8%を占めるEU向けが前年比1.2%増と伸び悩み、国別で首位のドイツは0.3%減だった。2位以下を輸出額順にみると、米国(12.2%減)、イラク(7.2%減)、英国(4.2%減)など、主要国はほぼ軒並みマイナスだった。他方、欧米の制裁対象国となっているロシア向けは16.8%増だった。ロシア向け輸出は上半期に急増する傾向があったが、米国からの制裁に関する警鐘を受け、9月以降は減少傾向にある。また、包括的経済連携協定(CEPA)を結ぶなど経済関係強化が進んでいるアラブ首長国連邦(UAE)への輸出は、貴金属を主力に63.1%増で最大寄与となった。同様にサウジアラビア向けも2.5倍に伸ばしている。

2023年の輸入を品目別にみると、最大の輸入品目の鉱物性燃料が前年比28.4%減だった。この背景には、対ロシア制裁に参加しないトルコに対して、ロシアが石油および石油精製品の輸出で、割引などの優遇措置を取っていることがあげられる。同品目のロシアからの輸入シェアは、2022年の41%から68%に拡大した。そのほか、鉄鋼、プラスチック製品、有機化学品が2桁のマイナスになった。一方、好調な内需を受け自動車・同部品は82.5%増と急増しており、最大寄与となった。また、金を主体とする貴金属類は、8月に需要抑制のため20%の追加財政義務が課され、第4四半期に鈍化したものの、年間では44.6%増と好調だった。一般機械(18.4%増)、電気機器(29.2%増)なども伸びた。また、政府は11月、国内産業保護を目的に紡織用繊維およびその製品に対して追加関税を課すなど輸入抑制策を実施している。一方で、生産コストの上昇がトルコの繊維産業の競争力に悪影響を与えているとの懸念もある。

国・地域別の輸入では、金の需要を受け、UAEからは貴金属を中心に前年比で2.6倍となり、スイスからも29.8%増と好調だった。EUからは、ドイツ(19.3%増)、フランス(22.4%増)、スペイン(35.4%増)などが伸び、EU全体では13.6%増だった。国別で最大の輸入元は前年と同様に、天然ガスを主力とするロシアだが、輸入額は22.5%減、次いで中国が8.8%増だった。

表2-1 トルコの主要品目別輸出(FOB) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
自動車・同部品 26,801 30,828 12.1 15.0
一般機械 22,671 25,234 9.9 11.3
鉱物性燃料 16,411 16,390 6.4 △ 0.1
電気機器 13,704 15,326 6.0 11.8
貴金属類 10,208 13,647 5.3 33.7
プラスチック製品 11,571 10,571 4.1 △ 8.6
ニット衣類 11,006 10,278 4.0 △ 6.6
鉄鋼製品 10,533 10,051 3.9 △ 4.6
鉄鋼 14,671 8,860 3.5 △ 39.6
非ニット衣類 8,458 8,037 3.1 △ 5.0
果実・ナッツ類・豆類 4,943 5,368 2.1 8.6
アルミニウム・同製品 6,708 5,317 2.1 △ 20.7
家具 5,260 5,145 2.0 △ 2.2
ゴム・同製品 3,708 3,818 1.5 3.0
合計(その他含む) 254,170 255,438 100.0 0.5

〔出所〕トルコ統計機構(TUIK)

表2-2 トルコの主要品目別輸入(CIF) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料 96,549 69,114 19.1 △ 28.4
一般機械 34,574 40,939 11.3 18.4
貴金属類 23,458 33,912 9.4 44.6
自動車・同部品 17,678 32,260 8.9 82.5
電気機器 21,535 27,824 7.7 29.2
鉄鋼 28,367 24,160 6.7 △ 14.8
プラスチック製品 18,976 16,214 4.5 △ 14.6
有機化学品 11,120 9,180 2.5 △ 17.4
光学・精密機器 5,244 6,451 1.8 23.0
アルミニウム・同製品 7,683 6,293 1.7 △ 18.1
銅鉱・同製品 5,510 5,652 1.6 2.6
穀物 5,369 5,075 1.4 △ 5.5
医療用品 4,560 4,986 1.4 9.4
航空機器・同部品 3,357 4,283 1.2 27.6
合計(その他含む) 363,711 361,765 100.0 △ 0.5

〔出所〕トルコ統計機構(TUIK)

対内・対外直接投資 
対内直接投資低迷も湾岸諸国からが好調

中銀発表の国際収支統計によると、2023年の対内直接投資(株主資本、フロー)は、前年比20.1%減の55億7,800万ドルとなった。地域別では、全体の53.3%を占めるEU(キプロスを除く26カ国)からの投資額が36.1%減と落ち込んだ。国別の投資額では、オランダが43.9%増で首位、ドイツが29.3%減で2位。また、その他の欧州勢ではロシア連邦タタルスタン共和国のタトネフト(Tatneft、石油)によるアイテミズ・アカルヤクト(Aytemiz Akaryakit、燃料販売)の買収(3億3,600万ドル)案件により、ロシアからの投資が15倍に急増した。他方、前年首位だったスペインが91.7%減、スイスが70.6%減だった。

前年低迷した中東・北アフリカからは、UAEが2.1倍、カタールが36.4倍となり中東・北アフリカ全体でも2.4倍と、前年から反転し、急伸した。アジアからは日本が38.8%増の1億1,100万ドルで最大だった。次いで前年好調だった台湾が48.6%減、中国、韓国からの投資も低迷している。ただし、中国からはEV販売関連の進出が目立っている。

表3 トルコの国・地域別対内・対外直接投資 [国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 4,651 2,974 53.3 △ 36.1 2,713 2,663 47.0 △ 1.8
階層レベル2の項目オランダ 788 1,134 20.3 43.9 1,931 1,395 24.6 △ 27.8
階層レベル2の項目ドイツ 972 687 12.3 △ 29.3 366 355 6.3 △ 3.0
階層レベル2の項目フランス 177 358 6.4 102.3 32 55 1.0 71.9
階層レベル2の項目アイルランド 371 272 4.9 △ 26.7 5 9 0.2 80.0
階層レベル2の項目ベルギー 46 159 2.9 245.7 16 31 0.5 93.8
階層レベル2の項目スペイン 1,559 130 2.3 △ 91.7 39 89 1.6 128.2
階層レベル2の項目ギリシャ 1 0.0 全増 52 203 3.6 290.4
階層レベル2の項目ポルトガル 2 0.0 全増 13 159 2.8 1,123.1
英国 401 324 5.8 △ 19.2 211 513 9.0 143.1
ロシア 24 369 6.6 1,437.5 26 7 0.1 △ 73.1
スイス 704 207 3.7 △ 70.6 65 117 2.1 80.0
米国 316 255 4.6 △ 19.3 1,181 1,321 23.3 11.9
中東・北アフリカ 447 1,060 19.0 137.1 358 650 11.5 81.6
階層レベル2の項目UAE 274 584 10.5 113.1 273 459 8.1 68.1
階層レベル2の項目カタール 11 400 7.2 3,536.4 4 5 0.1 25.0
階層レベル2の項目アゼルバイジャン 86 53 1.0 △ 38.4 9 29 0.5 222.2
階層レベル2の項目エジプト 4 0.1 全増 16 69 1.2 331.3
アジア 412 351 6.3 △ 14.8 129 215 3.8 66.7
階層レベル2の項目日本 80 111 2.0 38.8 1 4 0.1 300.0
階層レベル2の項目台湾 111 57 1.0 △ 48.6 0 0.0
階層レベル2の項目香港 50 50 0.9 0.0 15 0.3 全増
階層レベル2の項目中国 83 36 0.6 △ 56.6 16 17 0.3 6.3
階層レベル2の項目韓国 60 32 0.6 △ 46.7 1 5 0.1 400.0
階層レベル2の項目ウズベキスタン 2 0.0 全増 24 80 1.4 233.3
合計(その他含む) 6,985 5,578 100.0 △ 20.1 4,879 5,669 100.0 16.2

〔注〕EUは、キプロスを除く26カ国。
〔出所〕トルコ中央銀行

業種別では、例年通りサービス部門のシェアが高く、全体の57.0%を占める。しかし、最大の卸・小売業が前年比37.7%減と2年にわたり低迷が続き、前年に10倍以上の伸びを見せた金融・保険業も66.4%減となり、サービス部門全体では34.0%減だった。他方、不動産業は6.9倍の2億9,800万ドルの史上最高を記録した。製造業は輸送機器が6倍となる1億7,600万ドルに急伸し、加えて化学品・基礎医薬品が87.1%の3億500万ドルと全体を牽引し、製造業全体で9.0%増だった。電力・ガス供給も37.2%増と前年同様に伸ばしている。

2023年のM&A案件では、日用品配送プラットフォームのゲティル(getir)が、アブダビ政府系ファンドのムバダラ・インベストメント(Mubadala Investments)が主導のベンチャーキャピタル(VC)から5億ドルを獲得した。なお、ゲティルは2024年5月に、欧米での事業からの撤退を決めている。次いでトファシュ(Tofas)(トルコのコチ(Koç)・ホールディングとイタリアのフィアット(FIAT)の合弁)がステランティス・トルコ(Stellantis Türkiye)を買収(4億4,500万ドル)、前述のタトネフト、カナダのSSRマイニング(SSR Mining)によるホド・マーデン・プロジェクト(Hod Maden、銅鉱・金鉱:40.0%、2億7,000万ドル)、英国のヴォレクス(Volex)によるムラト貿易(Murat Ticaret、電気配線ハーネス、バッテリーケーブル製造:1億9,500万ドル)、クウェートのアル・ラワビによるブルガン銀行(Burgan Bank、クウェート系:52.0%、1億8,800万ドル)、米国のユニバー・ソリューションズ(Univar Solutions)によるカレ・キムヤ(Kale Kimya、化学品:1億4.300万ドル)などの買収案件があった。また、スタートアップでは、日本にも進出しているソフトウエアのインサイダー(Insider)がカタール投資庁(QIA)主導のVCから1億500万ドルを得ている。

トルコの対外直接投資は、前年比16.2%増の56億6,900万ドルだった。地域別ではEU向けが前年比1.8%減と低調だった。EU域内を国別にみると、税制優遇で有利なオランダへの投資が27.8%減、2位のドイツも3.0%減だったが、不動産投資による「ゴールデン・ビザ」取得特典のあるギリシャ(3.9倍)、ポルトガル(12.2倍)が3位、4位に急伸した。また英国が2.4倍、米国向けも11.9%増と好調だった。中東・北アフリカでは前年に続いてUAE(68.1%増)、エジプト(4.3倍)向けの投資が目立った。アジアでは前年同様ウズベキスタンへの投資が3.3倍と好調だった。業種別では、不動産業が2.6倍と最大寄与になったが、金融・保険業は19.8%減と減速した。この結果、全体の69.5%を占めるサービス部門は31.2%増だった。M&A案件では、フィンテック系スタートアップのパパラ(Papara)がスペインのレベリオン(Rebellion)を買収し、トルコ初、国内7番目のユニコーンとなった。他方、製造業は、主力の食品・飲料(74.8%減)、繊維・繊維製品(20.4%減)が弱く、全体では44.3%減だった。

投資環境・外資政策 
EU環境基準整合を視野に産業の高付加価値化、国産化を目指す

トルコの投資優遇措置は、地域格差是正と産業の高付加価値化を目的としており、一般投資、地域別投資、戦略投資、プロジェクトベース投資を4本柱とした投資優遇措置や、技術開発系の優遇措置などがある。中でも法人税減免に対する優遇措置が注目されるが、2024年5月にシムシェキ国庫・財務相は、外国企業に対する15%の法人税最低税率を導入する予定であることを発表した。また同月には、国家資材局(DMO)による公共調達の入札で、国産品を提示する入札者に最大15%の価格優遇措置を導入するなど、新規投資誘致や国内産業保護に向けた取り組みを行っている。

トルコは、最大の貿易パートナーであるEUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)に対する調整も進めており、2021年に発表した「グリーンディール・アクションプラン(Green Deal Action Plan)」をベースに排出量取引制度(ETS)導入を目指すなど、EU基準との整合を目指している。これに関連して、トルコは鉱物性燃料をほぼ輸入に頼っていることもあり、再生可能エネルギーに対する関心も高い。2023年5月には、2030年末までに操業を開始する再生エネルギーを利用したプラントに対する買い取り価格およびインセンティブを公表した。しかし、気候法などの法整備は遅れており、今後の課題となっている。

経済連携協定の進展に関しては、2023年7月1日付でウズベキスタンとトルコの特恵貿易協定、9月1日付でUAEとのCEPAが発効した。また、各国と新たな協定締結に向けての交渉も進んでおり、2023年7月には、英国政府がトルコとの新たな自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉を開始する方針を発表したほか、2024年3月にはトルコと湾岸協力会議(GCC)の間でFTAの交渉開始で調印が行われた。他方、2024年5月、トルコ貿易省はパレスチナのガザでハマスとの戦闘を続けるイスラエルとの全品目の輸出入を停止すると発表した。なお、トルコとイスラエルの間では、1997年にFTAが発効している。

対日関係 
日本からの輸出は前年並み、投資額は鈍化

日本の財務省「貿易統計(通関ベース)」でトルコとの貿易をみると、2023年は輸出が39億9,277万ドル(前年比23.5%増)、輸入が11億1,451万ドル(7.9%増)だった。日本の貿易黒字は、2022年より30.8%増の28億7,826万ドルとなった。

日本のトルコ向け輸出は、輸送用機器、特に乗用車(前年比2.1倍)を中心とした自動車が前年に続き好調だった。また、鉄鋼が25.2%増と2桁の伸びを見せ、自動車に次ぐ寄与となった。全体の25.8%を占める一般機械では、トルコの震災復興需要もあり、建設用・鉱山用機械が24.1%増とけん引したが、前年好調だった荷役機械、ポンプ・遠心分離機、繊維機器などは2桁の減少となった。

日本のトルコからの輸入では、マグロを主力とする魚介類が前年比15.9%減と伸び悩み、最大の構成比(39.7%)を占める食料品が全体で2.7%増にとどまった。ただ、乾燥果実を主力とする果実および野菜、パスタを主力とする穀物類は2桁増と好調だった。また、液化天然ガス(LNG)が4,463万ドルで最大寄与となった。また、全体の11.7%を占める衣類・同付属品は、4.9%増と前年の低迷から回復傾向を見せた。他方、鉄鋼など原料別製品はおおむね2桁減となり、全体で19%減と振るわなかった。

表4-1 日本の対トルコ主要品目別輸出(FOB) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
一般機械 916 1032 25.8 12.7
階層レベル2の項目建設用・鉱山用機械 234 290 7.3 24.1
階層レベル2の項目原動機 123 155 3.9 26
階層レベル2の項目金属加工機械 120 136 3.4 13.1
階層レベル2の項目繊維機械 131 113 2.8 △13.2
階層レベル2の項目ポンプ・遠心分離機 82 60 1.5 △26.9
輸送用機器 608 926 23.2 52.2
階層レベル2の項目自動車 273 542 13.6 98.9
階層レベル3の項目乗用車 199 425 10.6 113.9
階層レベル2の項目自動車の部分品 318 338 8.5 6.4
原料別製品 656 788 19.7 20.2
階層レベル2の項目鉄鋼 482 603 15.1 25.2
階層レベル2の項目金属製品 66 72 1.8 9.5
階層レベル2の項目非鉄金属 54 62 1.5 14.8
電気機器 608 734 18.4 20.7
階層レベル2の項目重電機器 154 212 5.3 38.1
階層レベル2の項目電池 192 198 5 3.2
階層レベル2の項目電気計測機器 81 92 2.3 14.6
化学製品 225 208 5.2 △7.3
階層レベル2の項目プラスチック 77 82 2.1 7.3
合計(その他含む) 3,233 3,993 100 23.5

〔出所〕財務省「貿易統計(通関ベース)」をドル換算

表4-2 日本の対トルコ主要品目別輸入(CIF) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
食料品 431 443 39.7 2.7
階層レベル2の項目魚介類 189 159 14.3 △15.9
階層レベル2の項目果実 61 80 7.2 31
階層レベル2の項目穀物類 63 71 6.3 13
階層レベル2の項目野菜 30 39 3.5 32.2
その他 171 180 16.2 5.3
階層レベル2の項目衣類・同付属品 125 131 11.7 4.9
階層レベル2の項目バッグ類 17 18 1.6 6.8
原料別製品 139 112 10.1 △19
階層レベル2の項目鉄鋼 72 54 4.8 △25.3
階層レベル2の項目織物用糸・繊維製品 35 33 2.9 △6.6
一般機械 75 102 9.1 36.2
階層レベル2の項目原動機 33 54 4.8 60.4
化学製品 65 67 6 2.9
階層レベル2の項目医薬品 22 32 2.9 45.2
輸送用機器 63 65 5.8 3.4
階層レベル2の項目自動車 29 34 3.1 17.8
階層レベル2の項目自動車の部分品 27 19 1.7 △30.7
鉱物性燃料 0.083 45 4 53753
合計(その他含む) 1,033 1,115 100 7.9

〔出所〕財務省「貿易統計(通関ベース)」をドル換算

トルコの国際収支統計で、日本のトルコ向け直接投資 (株主資本インフロー)をみると、2023年は前年比38.8%増の1億1,100万ドルと2009年以来最低の水準に冷え込んだ前年から回復した。前年末以来、自動車セクターの投資案件がみられるようになっており、2023年11月には、トヨタ・モーター・マニファクチャリング・テュルキエ(TOYOTA MOTOR MANUFACTURING TURKIYE:TMMT)が、サカリヤ県の工場でハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)バッテリーの生産を開始した。同年9月にはブリサ(トルコのサバンジュ(Sabancı)・ホールディングとブリヂストンの合弁)がアクサライ工場へ3,400万ドルの追加投資を決定し、同月ヤンマートルコ機械(YANMAR TURKEY MAKINE)がイズミルのトルバルにトラクター生産工場を開設した。また、エンバイオ(enbio)・ホールディングスが3月にボル県でバイオマス・ガス化発電所の商業運転を開始した。10月には川金コアテックが、免震・制震デバイスの販売に向けイスタンブールに支店を開設した。スタートアップ案件では、5月に東芝エネルギーシステムズがスマートパルス(SmartPulse)に出資し、12月にエクセディが農薬散布用ドローンを主力製品とするバイバルス・メカトロニクス 航空(Baibars)に出資した。2024年に入ってからも、1月に水産食品の極洋が欧州子会社を通じてコチャマン(KOCAMAN BALIKÇILIK)の株式51%を取得して子会社化すると発表し、3月には業務用厨房機器メーカーのホシザキが関連会社オズディ(Öztiryakiler)の株式を51%まで追加取得し、連結子会社とした。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2021年 2022年 2023年
実質GDP成長率 (%) 11.4 5.5 4.5
1人当たりGDP (米ドル) 9,663.9 10,622.0 12,849.0
消費者物価上昇率 (%) 36.1 64.3 64.8
失業率 (%) 12.0 10.4 9.4
貿易収支 (100万米ドル) △ 46,221 △ 109,541 △ 106,327
経常収支 (100万米ドル) △ 7,398 △ 49,085 △ 45,513
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 71,046 77,889 92,720
対外債務残高(グロス) (100万米ドル、期末値) 436,381 457,952 499,885
為替レート (1米ドルにつき、トルコ・リラ、期中平均) 8.85 16.55 23.74


1人当たりGDP:2023年は推計値
消費者物価上昇率:国際収支ベース(財のみ)
失業率:2023年は暫定値
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支:トルコ統計機構(TUIK)
経常収支、対外債務残高(グロス):トルコ中央銀行
外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF(2023年のみトルコ中央銀行)
1人当たりGDP:IMF