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市場・トレンド情報

円高による海外日本食市場への影響 — コスト増で輸入卸の利益縮小—

2010年11月
分野:食品・農林水産物

円高の影響は、ドバイの輸入企業と日本の輸出企業との間の商品の決済方式と輸送運賃の決済方式により、その度合いが左右される。アラブ首長国連邦(UAE)の通貨、ディルハム(AED)は、米ドルと連動させるペッグ制(固定相場制)を敷いている(1ドル=3.6725AED)。日本以外からの食材の輸入品はディルハムやドル、あるいは輸出国の通貨建てでの決済が主となるが、日本からの輸入品の決済や輸送運賃はほとんどの場合が円建てとなるため、輸入企業が大きな為替リスクを抱える。2009年の平均為替レート約94円と比較すると、9月末の調査時点で12円程度の円高となっており、実際の商品仕入れ値ベースでみると2割前後のコスト高となっている。

ドバイでは、日本食材の普及の中心となっているすし関連の高級食材が円高の影響を大きく受けている。以下、日本から輸入する食材の販売・需要に関する円高の影響について、日系輸入卸3社と日本食レストラン2社へ聞き取り調査を行った。

市場競争で生き残るために利益を圧縮

輸入卸は、日本から仕入れをしている食材はすべて円高の影響を受けていると回答した。特に大きな影響があるものは高級食材であり、まぐろが卸値で前年比2割以上上昇しており、その他の食材も同15~20%値上がりしている。さらに、すし食材として欠かせない生ほたて、うに、はまち、たこ、甘えび、赤貝、ほっき貝、いくら、さんま、あじ、ほっけ、さば等も同様の影響を受けている。9月29日付けで輸入が再開された日本からの牛肉についても2009年の単価より最低限4%程度高値にしないと採算が合わない状況にあり、本来は9%の値上げが必要なところ、利益を圧縮して市場競争をしていく必要に迫られている。

日本食レストランでは、これまでの努力で普及してきた日本産牛肉やすしの値段を現時点で上げることは、需要を減らすことに繋がりかねないと判断している。そのため、円高の影響への対応策として、食材の日系輸入卸との連携により、双方で利益を圧縮して吸収しているケースや、今まで開拓してきた自社の市場を失わないために、輸入卸が自らの利益を削って現状の価格のままで納入しているケースがある。また今後、円安になった場合に納入先から大幅な値下げ交渉を迫られ、今まで築きあげた相互信頼の喪失に繋がりかねないことの懸念も、輸入卸が値上げ交渉に消極的な理由となっている。しかし、新規に輸入する食材については、当然ながら円高を反映させた価格で、売り込み交渉を行うようにしているという。

相次ぐ輸入先の変更・代替品への切り替え

まぐろを取引する業者の中には、イタリア半島の南に位置するマルタ産のまぐろを一度日本の築地を通してUAEへ輸入するルートをとるものがある。管理の厳しい築地を通すことで、品質に関するリスクを減らすことができるからだ。しかし、世界的にまぐろ類の資源管理が強化される中、マルタ産まぐろの日本への流入量が減少し、日本国内での単価上昇がおきている。円高の影響に加え、こういった要因による価格上昇も影響し、一部のレストランは、マルタから直接UAEへ輸入し、ディルハムでの決済を行っている輸入企業との取引に切り替え始めている。

また、レストランのシェフは、長年の経験を活かし、地元や近隣から品質のよい魚介類を徐々に入荷するようになり、メニューの一部は日本産から切り替えて使用するなど、こまめな工夫をして経費を削減している。

野菜類については、品質や味の面で日本産品とくらべて遜色のないものを選ぶという工夫をしており、近年品質が高まっている韓国産のしめじ、エノキタケ、その他台湾産の野菜類やタイ産のチンゲンサイなどの野菜に切り替えている。

レストランのシェフや輸入企業からの聞き取りによると、ドバイには日本食レストランが多く普及してきているものの、日本産高級食材を多用している店は少ない。まぐろやねぎ類、春菊、しいたけ等のきのこ、野菜類等の高級な食材のみ築地から輸入するなど、日本産品の利用は、必要最低限にとどめている。その他ほとんどが韓国、タイ産等の外国産品を利用するという例が多い。また、中国で加工して、日本のメーカーが品質チェックをしたものや、中国メーカー産品で、日本の輸入者が品質管理をしたものも輸入されている。また、のり、しょうゆ、酢、みりん、味噌などの寿司関連食材についても数年前からアメリカ、シンガポール等の日系企業の海外生産地拠点から輸入し、円高リスクを回避している例も聞かれる。

堅実に需要を伸ばす日本産高級果物

円高にもかかわらず堅実に需要を伸ばしている食材としては、果物がある。2010年の日本の通関統計によると、1月~8月のメロンやぶどうのUAE向け輸出は前年同期比で6倍以上の伸びを見せている。これは、2009年に農林水産省の輸出促進支援事業(海外ビジネスネットワーク構築委託事業)としてドバイに設置したアンテナショップでの、日本の高級果物の販売によるところが大きいとみられる。同店舗では、メロン、ぶどう、りんご、なしを中心に需要が伸びている。店舗を訪れる客層のうちUAE人が顧客全体の約7割を占め、リピーターも多い状況である。次いでドバイ在住のイラン人、レバノン人の富裕層となっている。UAE人への日本産果物の浸透とは対照的に、昨年まで多かった西欧系やインド系の富裕層の来客が少なくなっている。

市場維持と拡大のため日本食関連企業は更なる連携を

ドバイで流通している食材は、そのほとんどが欧米、南米、オセアニア、南アフリカ共和国、インド、オマーンなどの近隣諸国を中心とした世界各国からの輸入品である。日本産食品の輸入額シェアはドバイの輸入食品全体の1%未満であり、ドバイに流通している食品全体の中で円高による日本産食品の不足等による市場への直接的な影響はほとんどない状況だ。高級レストランや高所得者層に対する日本産食品の市場を失わないように、日本食関係者は、輸入企業や日本食レストランとの連携、あるいはアンテナショップの運営により日本産食品のシェアを維持し、市場拡大への努力をしている時期である。この状況の中で市場競争が激しく、差別化が難しくなっている生鮮魚介類においては、このまま円高が続くとシェアを喪失しかねないという危機感が日系輸入企業の間に拡がっている。

(ドバイ事務所)