ワシントン条約に基づく輸出入規制:日本

質問

ワシントン条約について教えてください

回答

ワシントン条約とは、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora: CITES)」の通称です。この条約は、絶滅のおそれのある野生動植物の種が過度に国際取引に利用されることがないよう、これらの種の保護を目的として1973年にワシントンにおいて採択されました。

I. ワシントン条約の概要

ワシントン条約では、野生動植物の種を絶滅の恐れのある可能性などに応じて、附属書IからIIIに分類し、それぞれに必要な国際取引規制を設けています。
日本は1980年にこの条約を批准し、「輸出貿易管理令」と「輸入貿易管理令」として法令に反映しています。日本では、ワシントン条約該当物品の輸入については、通関できる税関官署が限定されています。詳細は税関にお問い合わせください。

  1. 管理当局

    締約国は、この条約に基づく輸出入許可書および証明書の発行権限を有する管理当局を指定します。日本では、経済産業省(海洋で採取した品などを除く一般的な輸出入の場合)と農林水産省(海洋で採取した品などの場合)がこれに当たります。また種の保護の観点から許可書等の発給に関して管理当局に助言する科学当局として植物および水棲動物については農林水産省、陸上動物については環境省が指定されています。

  2. 規制の対象

    ワシントン条約の規制対象は、次のとおりです。

    1. 生きている野生動植物
    2. 上記aの卵・球根・種子など
    3. 上記aの個体の一部:血清、血漿、DNAなどを含む(ただし、糞尿や嘔吐物は除く)
    4. 上記aを原材料に使用した加工品(剥製、衣料品、装飾品、漢方薬、化粧品などを含む)

    同条約では、附属書IからIIIにより具体的な規制対象の種を規定しています。国によって、同一種を異なる名前で呼んだり、一般名では異なる名前でも、同一種である場合など、動植物種の呼称は様々なケースが想定されます。附属書では、そうした誤解を避けるため、それぞれの種を学名で表記しており、輸出入に際しては規制該当の有無を学名で確認する必要があります。

    また、海外旅行などで一時的に出入国する個人が購入または取得した物品であっても、ワシントン条約附属書に掲載されている動植物が一部でも含まれている場合には、通常の輸出入規制と同様にワシントン条約の規制対象としての措置が課せられるため注意が必要です。但し、特例措置により個人で使用するために携帯して輸出入する場合、所定の条件(付属書IIに該当すること、決められた量であること、生きたものでないこと等)を満たせば手続きは不要です。

II. 附属書ごとの規制、手続き

  1. 付属書I

    「絶滅のおそれのある種で取引による影響を受けている、または受けるおそれのあるもの」が規定されています。原則として商業取引は禁止されています。但し、学術目的や商業目的で人工繁殖させたものなどのみ取引は可能です。

    1. 学術目的等での輸出入の手続き

      学術目的の国際取引の際は、まず、輸入者が輸入国で輸入申請を行い、輸入国の政府が科学当局に照会し輸入許可書を発給します。その後、同許可書のコピーを輸出者に送付し、輸出国での輸出(転出)申請を行い、輸出国政府機関発行の輸出許可書(または再輸出証明書)を取得します。当該輸出品を輸入する際には、輸出国の輸出許可書および輸入国の輸入許可書(日本の場合は経済産業大臣による輸入承認証)オリジナルを用いた申請が必要です。

    2. 人工繁殖用および条約締結前に取得した標本等の輸出入手続き

      輸出者が輸出国政府に輸出(転出)申請を行い、輸出許可書を入手します。その後、輸出許可書のコピーを、輸入者等を経由して輸入国当局に送付し、輸入国で当該品の輸出許可書の有効性を確認し、問題なければ輸入許可書が発給されます。

  2. 附属書II

    「国際取引を規制しないと絶滅のおそれがあるもの」を規定しています。 当該品の商業取引は条件付きで可能です。国際取引の際には、輸出国政府機関が発行した輸出許可書(または再輸出証明書)が必要です。日本に輸入する場合は経済産業大臣による事前確認書を税関に提出する必要があります(ただし、船積国・地域などにより、税関長による通関時確認で済む場合もあります)。

    1. 事前確認が必要な物品の輸入手続き(日本):

      事前確認が必要な物品は、輸入公表[三の7の(6)、(7)、(8)]をご参照ください。

    2. 通関時確認となる輸入物品(日本)
      上記aに該当しない附属書II(またはIII)の物品は、輸出許可書の通関時確認のみで輸入できます。
  3. 附属書III

    条約締約国において、「自国内における規制および取り締りのために他の締約国の協力が必要」と認められた種を規定しています。国際取引には輸出国政府機関発行の輸出許可書(または再輸出証明書、原産地証明書や加工証明書など)が必要です。日本に輸入する場合は経済産業大臣による事前確認書を税関に提出する必要があります(船積国・地域等により、税関長による通関時確認で済む場合もあります)。

    日本への輸入手続きは、上記2項の附属書IIと同様です。

  4. 人工飼育・人工繁殖用に関する特別規定
    人工飼育により繁殖させたものについては特別規定があります。該当する繁殖のものは附属書Iの規制種であっても附属書IIの扱いとなり、輸出国政府機関発行の繁殖証明書をもって輸出許可書に代えることができます(同条約第7条)。ただし、当該動物(附属書Iに限る)の繁殖施設は条約事務局に事前登録する必要があります。

III. 日本の国内法による規制

他にも関連して、絶滅のおそれのある種の保存を目的とする日本の国内法としての「種の保存法」があり、ワシントン条約により指定されている動植物および国内に生息し、政令により定められた動植物等の捕獲・譲渡、輸出入や陳列が規制されています。

関係法令

法令データ提供システム(e-Gov):
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参考資料・情報

税関:
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経済産業省:
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環境省:
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調査時点:2014年11月
最終更新:2017年9月

記事番号: A-010911

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