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市場・トレンド情報

報道等にみられる食に関するトレンド

2011年1月
分野:食品・農林水産物

2011年、エスニック食品の競争激化

多民族国家である英国では、近年エスニック食品の需要がますます高まっている。「母国の料理を作りたい」「他国の料理も試してみたい」という消費者の要望に応えため、2011年には食品企業や大手スーパーマーケットでのエスニック食品の拡大が計画されているようだ。こうした背景の中、日本食品のシェア確保・拡大に向けて、英国の消費者を引き付ける仕掛けが求められる。

拡大するエスニック食品

英国に本社を置く世界的な食品メーカー、アソシエイティッド・ブリティッシュ・フーズ(ABF)社がエスニック食品ブランド「ブルードラゴン」シリーズを拡大するというリニューアル計画を発表した。食品業界向けオンラインポータルサイト「ジャスト−フード」の2010年11月23日付の記事によると、同社は2011年の旧正月に合わせ、新商品の投入、パッケージデザインの刷新、レシピ開発、テレビコマーシャルなど、600万ポンド(約7億円)をかけた大々的なキャンペーンを実施予定。新商品としては、焼きダレ、炒めもの用ソース、ペースト、料理ソースなどをそれぞれ数種類ずつ販売予定であり、パッケージデザインを一新し、花のイメージと東洋的な印象をより強めたロゴに変更するという。

また、英国の大手スーパーマーケットチェーン、テスコも2011年にエスニック商品の種類を拡大すると発表した。スーパーマーケットのオンラインポータルサイト「Supermarket.co.uk」に掲載された2010年12月1日付の記事によると、同チェーンはエスニック食品として、トルコ、スリランカ、ラテン、フィリピン、アフリカ、南アフリカ、ギリシャ・キプロスの7カ国分のバリエーションを加えると発表した。同チェーンは消費者の要望に応えるかたちで、エスニック食品の種類を、過去12カ月間に2倍の3,000商品にまでに増やした。エスニック食品のバイヤーであるムハマド・ラーマン氏は「英国は、世界の中でも群を抜いて多様な国籍の人々が集まる場所であり、母国の食品を購入したいという要望が非常に増えている。また、見た目が興味をそそるソース・香辛料・野菜・缶製品・菓子などが、他国の料理を試してみたいという好奇心旺盛な消費者の注目を集めている」と語った。

家庭でのアジア料理に人気の兆し

エスニック食品の種類が増加すると同時に、家庭においてもエスニック料理作りが流行の兆しだ。中でもアジア料理への注目は高い。

世界最大のオンライン・レシピサイト「AllRecipes.com」が発表した「2011年の家庭料理のトレンド」を取り上げたインディペンデント紙、2010年12月14日付の記事によると、お金をかけずにいろいろな料理を楽しむために、2011年は家庭でエスニック料理を作るのが流行ると予想されている。現在エスニック料理が急速に人気を得てきており、特に南米、日本、韓国料理の人気が最も高まっているという。

また、2010年の売れ筋料理本を振り返った、ガーディアン紙のウェブサイト内ブログの2010年12月30日付記事では、話題沸騰中の韓国系アメリカ人シェフ、デビット・チャン氏のレシピ本「モモフク」が紹介され、多国籍かつ現地に即した絶妙なバランスのレシピだと評価した。日本で修業した経験を持ち、現在ニューヨークでラーメンバーなどを展開するチャン氏のレシピ本には、韓国をはじめ日本を含むアジア、洋食を融合した独創性豊かなレシピが揃っており、その影響力は非常に強い。

消費者への啓蒙が鍵となる販売促進

前述したエスニック食品ブランド「ブルードラゴン」は、今ではテスコ、アズダ、セインズベリーなど大手のスーパーマーケットで取り扱われており、手軽に購入できるエスニック食品ブランドの筆頭である。同ブランドのウェブサイトでは、250以上ものレシピ集のほか、動画による料理のコツも紹介されており、消費者の啓蒙ともいえる情報発信に積極的だ。レシピ集にはレシピを評価すると賞品が当たる機能があり、消費者の声を引き出しながら商品開発に利用するとともに、商品の販売促進にもつなげている。未知の食材や他国の料理に初挑戦してみる人にとっては、レシピの評価は大いに参考になる。高評価のレシピがあれば、まずはレシピどおりに試してみるのではないだろうか。なお、日本食レシピの中には、「ほたて貝入りそば・ヌードル・スープ」「ラーメン・ヌードル・サラダ」などのように日本では見かけない興味深い料理も紹介されており、現地に即したアジア料理の進化がうかがえる。

このように、小売店でのエスニック食品の選択肢が増え、家庭でのアジア料理作りに関心が集まる中、日本産の日本食品の存在を高め、シェアを拡大していくことが重要だ。そのためには、英国の消費者に日本食材の特長や商品そのものをアピールすると同時に、有名シェフによるレシピ紹介やレシピサイトでの人気などにより、食材の利用方法を知ってもらい試してみたいと思わせる工夫が必要であろう。

2011年の食トレンド予想 ‐ キーワードは楽しみ、健康、地産地消

近年、英国の消費者の間では、「食を楽しむ」人が増えている。不況が長期化するなか、生活に変化を求める人々が、料理に対しても新しさを求めているのだ。また、自分の健康はもちろん、自身の購買行動と社会のつながりを考慮する倫理的な消費者も増加している。「ヘルシーな食材」や輸送・生産にかかる環境負荷が低いとされ、国内農家の支援にもつながる「地元の旬な食材」を用いた料理が、一層支持されるとみられる。

料理に求めるのは「新しさ」

BBC(英国放送協会)が発行する食の月刊誌「オリーブ」2011年2月号に、その年に期待される食のトレンドを占う「クールリスト2011」が掲載された。同誌のプレスリリースでは「厳しい経済情勢の中で、国民は生活に楽しみを求めている」と語った。

「クールリスト2011」によれば、現在「いつもと違うウォッカを楽しみたい」という人々の心を、掴んでいるのが「ベーコンウォッカ」である。ベーコン風味のウォッカでトマトジュースを合わせたカクテル「ブラッディ・マリー」によく合うという。また、今年、人気が出そうなスピリッツとして選ばれたのは、手選別のライ麦を用いたポーランド産「マーキス」、スウェーデン産「カールソンズ・ゴールド」、そして、自前の農場で獲れたジャガイモで作られる英国産の「チェイス」といった職人によるこだわりの新鋭ブランドだという。消費者が、新しさをもとめていることがうかがえる。

新鮮味を求める消費者の外国料理への関心は依然として広がっており、今年は特にデンマーク料理に注目が集まると予想されている。これは、世界中のグルメ雑誌が世界一と賞するコペンハーゲンのレストラン「ノマ」の存在が大きな理由だと思われる。英国のレストラン関係者向け月刊業界誌「ビッグホスピタリティ」ウェブサイトに2011年1月10日付で発表された「食のトレンド2011」でも、今年は「ノマ」の成功に追随した北欧風レストランに注目したいとしている。「クールリスト2011」では 「自宅でデンマーク料理に挑戦しよう」と提案している。メニュー例としては、ケシの実がトッピングされたアーモンド入りデニッシュパンや、野生のハーブを用いた燻製料理などが紹介されている。

「地元産食材」「健康」への高まる関心

「食のトレンド2011」は、国民の地産地消への関心がますます高まっていると言及しているが、「クールリスト2011」においても、旬の食材を検索できるiPhone向けアプリケーション「シーズンズ」が紹介された。また、「旬」「地元産食材」をフレーズとして掲げるレストランの紹介が多く見受けられた。このような地元産食材に対する関心の高さは、2010年12月8日付「ビッグホスピタリティ」のウェブサイト記事からも読み取れる。記事自体は、「地元産食材」を売りにしたメニューを扱うパブやレストランなどに対して消費者保護団体である取引基準局が抜き打ち調査を実施したことを報じたものだが、この調査の背景には、近年相次ぐ産地偽装の現状があるという。食材の購入や外食をする際に、フードマイレージ(※1)の観点や地元の企業を支援を考える消費者が増加しているようだ。

また、「食のトレンド2011」では、健康への関心と好転しない景気を背景に、手頃でヘルシーなアジア料理に注目している。この健康志向ブームによって、元来、動物性脂肪分を多く含まない健康的な日本食にも一層の関心が集まる可能性もある。地元の食材を取り入れたヘルシーな日本の料理を紹介し、人々の好奇心は刺激してみてはどうか。

※1, 食料の輸送距離を指す。輸送に伴って排出される二酸化炭素が地球環境に与える負荷を計るための指標。英国の消費者運動「フード・マイルズ」で提唱されたことが始まりとされる。日本においても農林水産政策研究所により導入された。

(ロンドン・センター)