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市場・トレンド情報

円高による日本食品等への影響大‐調達先変更で対応‐ 緑茶・日本酒の輸入や日本食レストランは好調

2010年12月
分野:食品・農林水産物

英国では、すしを初めとする日本食が他の欧米諸国に比べ普及、定着しており、非日系も含めた日本食関連レストランの数も500店舗以上といわれている。長引く円高ポンド安によって、日本食・日本産農水産物等の広がりにも大きな影響が出ている。

一方、そうした厳しい状況の中で、売り上げを伸ばしている品目がある。また、2012年にはロンドン・オリンピックの開催が予定されており、外食需要の増加が見込まれる。

卸売業者は調達先を変更

継続的な円高ポンド安によって、商品の種類を問わず、日本から輸入される全ての食品について大きな影響が出ている。1ポンド当たりの対円レートは、リーマンショック前の2007年7月には240円台後半であったが、2010年11月は130円前後で推移している。

英国の流通業の特徴として、大手スーパー5社が小売市場全体の約70%を占める寡占状態となっており、小売が非常に強い力を持っていることが挙げられる。そのため、こうした円高状況の中でも、輸入・卸売業者は販売価格を上げられず、小売業者と日本の取引先との間で板ばさみになっている。円高の大きな影響を受けているのは輸入・卸売業者といえる。もし輸入・卸売業者が価格を上げれば、スーパー等小売店の店頭からは日本産商品が消え、安い外国メーカーの日本食品が代わりに陳列棚に並ぶことになる。他方、商品のラインナップを変えることは、英国において、どのような輸入規制があるのか、一から調べ直さなければならないため問題も多く、簡単に商品の調達先を切り替えられない面もある。

実態的には、円高の影響で日本産食品の価格は高くなっており、一部の卸売業者は安い中国産などの商品に調達先を変更せざるを得なくなっている。例えば、茶はインド産や中国産、米などは欧州産や中国産、台湾産にシフトしている。

さらに、日本産の有機食品など品質の良い日本産食品にこだわる卸売業者は、安易に他国産の安い商品に切り替えられないため、かなり大きな影響を受けている。また、日本側から見ても、例えば、売上げ全体に占める英国向け輸出比率が非常に高い一部の菓子、調味料メーカーなど英国との取引きができなくなると、大きな打撃を受ける可能性もある。

こうした卸売業者は、調達先の切り替えに加え、円高により逆に生産コストが安くなっている第三国から原料を調達している日本のメーカーに対しては、英国向けの輸出価格を抑えてもらうよう要望し、何とか対応している状況である。

進む二極化、高級日本食レストランと手頃な日本食チェーン店が人気

一方、日本食品を扱う小売店は、全体的に商品の値上げは避けられないものの、様々な工夫で何とか苦境を乗り切ろうとしている。例えば、回転率のよい商品については値下げを行い販売量を増やすことで売上げ増を図り、回転率の悪いものは値上げするという対応策を講じている。また、自社で直接輸入する割合を増やすことで、流通コストを削減し難局をうまく乗り切っている小売店もある。さらに、日本の都道府県の物産展などイベントを行うことにより、集客を高める努力を行う小売店も少なくない。

また、日本食レストランでは、食材調達面で円高ポンド安の影響は大きいものの、英国人を相手にした日本食レストランは、引き続き人気が高い。高級レストランとされるZUMA、NOBU、UMUは、逆に客席を増改築するなど客足を伸ばしている模様である。また、英国系のファストフード感覚の日本食チェーン店では、提供する料理の質を落としても、安い食材を仕入れることで、円高の影響を緩和させており、店舗数を拡大している。

しかし、日本人を顧客とするレストランは苦戦が続いている。例えば、日系企業の駐在員の給料が円建てで現地通貨で支払われる場合、実際の給料受け取り額の価値は目減りしているため、日本食レストランでの外食を控える動きも一因とみられる。

日本食レストランの二極化が進んでおり、英国の消費者に受け入れられるような明確なコンセプトのある店が生き残っているといえる。

緑茶、日本酒の輸入急増

こうした円高ポンド安の厳しい状況下でも、英国への輸出を伸ばす日本産食品はある。日本の財務省貿易統計によると、日本の緑茶の英国向け輸出額は、2003年から2009年にかけて730万円から1,850万円と2.5倍に急増している。2010年1~8月輸出実績でも1,200万円で、前年同期比71%増と大幅に伸長している(輸出量は前年同期比35%増であることから、高価値のものが輸出を牽引しているとみられる)。

また、単価が高く輸出額増加への貢献が期待される日本酒の英国向け輸出は、2003年の1億3,100万円が2009年には1.4倍の1億8,100万円と大幅に増加している。英国は、欧州の中で最大の日本酒市場となっており、高級日本食レストランの数は増加傾向にあり、英国人が日本酒を注文する機会が増えていることや、これまで取り扱っていた日系・中国系以外の英国系の流通業者が地酒に関心を持ち取り扱いを始めたことなどで、今後一層の拡大が見込まれる。2010年1~8月の輸出額も1億4,200万円で、前年同期比33%増と大幅に増加している。円高の要因があるものの、緑茶や日本酒が確実に日本食ブームに乗って英国市場に浸透していることがうかがえる。

ロンドン・オリンピックで外食需要拡大

また2012年夏に開催予定のロンドン・オリンピックは、健康志向を背景に拡大が続く日本食品にとっても追い風となるであろう。ホテル業界紙 Hotel Industry Magazine は、オリンピック開催期間中の一日当たりの観光客を35万人、延べ1,800万食の外食需要が生じると見込んでいる。英国系日本食レストランでは、洞爺湖サミット(2008年7月日本で開催)の料理人を総料理長に招いて本格的なメニューを提供するなど、すでに需要の取り込みを図っている。

外食需要以外でもホームパーティー用のスシ関連食材をはじめ、最近は小売店でみその売上げが増えるなど、内食向け食材需要も好調だ。老舗デパートでも自主的に日本食フェアを企画し、13日間で延べ5万人以上が来場するなど、日本食は着実に広がりを見せている。今後は、カレーやうどん、お好み焼きといった家庭でも作りやすい商品の人気上昇が見込まれ、日本食品の一層の輸出促進のためには、英国家庭に日本食の浸透を図っていくことが必要とみられる。

(ロンドン・センター)