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市場・トレンド情報

報道等にみられる食に関するトレンド

2010年10月
分野:食品・農林水産物

地球にやさしい食生活のススメ ‐ 政府が掲げる理想の食生活と現状

英国食品基準局(FSA)の委託研究機関であるイースト・アングリア大学の研究所が、9月28日付レポートの中で、地球にやさしい食生活の具体的な提起を発表した。主要各紙は「菜食主義になって地球を救おう、科学者から政府へ申し入れ」「牛肉とチーズは食べるな、菜食主義になろう、フード・ポリスからのメッセージ」など消費者の関心を引く極端な見出しで一斉に報じ、話題を呼んでいる。

レポート「食と気候変動」

今回、発表されたレポートでは、生産、輸送、販売形態を通じたCO2排出量などを判断基準に、環境に与える負担が大きい食品と小さい食品を具体的に列挙し、できるだけ環境にやさしい食品を取り入れながら日々の食生活を変えていくよう提案している。例えば、牛肉やチーズ、コーヒー、紅茶、ココア製品は避けて、穀物と豆類を多く取り入れることなどだ。また有機栽培の旬のものを取り入れることも奨励している。この提起は、まず、学校給食、病院食、公的機関の食堂などからはじめ、段階的に国家単位で取り組んでいく計画だという。

一般消費者の食生活の現状

今回のレポートは、牛肉ではなく穀類や豆類を推奨し、有機栽培の作物を奨励したということで、菜食主義の運動家や有機栽培の支持団体などから歓迎されたが、今後、一般消費者の意識を変えていくのは長い道のりかもしれない。

「テレグラフ紙」のウェブサイトに掲載の10月11日付記事に、大手スーパーマーケットチェーンのモリソンズが発表した売れ筋定番商品17品が紹介された。同チェーンの顧客1,100万人を対象にした調査で導き出された結果は以下の通りである。

1位…食パン(白)、2位…ポテトチップス(塩味)、3位…トマト缶、4位…バナナ、5位…コーラ(大ペットボトル)、6位…ブロッコリー、7位…チョコレート・ウェハース、8位…牛ミンチ、9位…紅茶、10位…鮭の切身、11位…ロールパン(白)、12位…インスタント・コーヒー、13位…チェダー・チーズ、14位…オーストラリア産白ワイン、15位…トマト・ケチャップ、16位…豚肉と卵のパイ、17位…苺ジャム。

野菜類でランクインしたのはブロッコリーのみで、定番のジャガイモ、人参、玉ねぎでさえ圏外だった。フルーツ類もバナナがランクインしたのみで、定番のリンゴとオレンジは圏外だ。豆類も入っていない。また肉類は、豚、鶏、ターキーを抑えて、レポートで避けるようにとの指示があった牛肉がランクインしている(レポートでは豚肉を奨励)。

さらに、同記事によれば、英国で第2次世界大戦中、戦後を通じて行われていた食糧配給制度が終了した1954年以来、約50年間、売れ筋定番商品はほぼ同じだという。目新しいものはオーストラリア産白ワインぐらいなものだそうだ。いかに消費者の食生活を変えていくのが大変かうかがい知れる。

地球に優しい調理法

レポートでは、調理法についての提起も行っている。最もエネルギー効率がよい=環境への負担が少ない調理法は、電子レンジと圧力鍋だという。電子レンジに関しては、加熱される食品の構造が変化して健康に害を加えるのではという世論が根強く、最近は、湯煎に再び注目が集まっている。8月10日付の「メトロ紙」には、1970年代に発明され爆発的ブームとなったレトルトパウチ入り食品が、今、高級志向にリメイクされ、現代人の味覚をとらえている、との記事が掲載されていた。ブームに火をつけたのは大手スーパーマーケットチェーンのウェイトローズ。真空調理した冷凍総菜シリーズの販売を開始したところ消費者のニーズをつかんだ。食品業界誌「グローサー」は「湯煎の手法は電子レンジの登場により忘れ去られてしまったが、今、人々は電子レンジを離れ、原点回帰しているようだ。そこに新改良の真空調理レトルト食品がはまった」と分析している。

今回のレポートが国家単位で浸透するにはだいぶ時間がかかりそうだが、深刻化する気候変動、食糧危機への取組みからも、政府は早急にこの問題に取り組んでいく構えである。

急成長するフリー・フロム商品 ‐ 広がるアレルギー対策食品の需要

他国と比べ、スーパーマーケットのプライベート・ブランド(PB)商品の比率が大きいと言われる英国。メーカー品に比べて割安となるラインナップはもちろんのこと、オーガニックや高級志向、健康志向など付加価値を売りにしたラインナップも多数取り揃えてあり、 新商品の開発にも余念がない。そんな中、今、各店が開発にしのぎを削っているのが、一般的にフリー・フロム(free-from)商品と言われる、原材料から特定の食品(アレルギーの原因となるグルテン、小麦粉、乳製品など)を取り除いた商品のラインナップだ。

急成長を見せるフリー・フロム商品

「テレグラフ紙」の6月12日付記事によれば「この1年間に、各スーパーマーケットが新たに販売を開始した商品の5%がグルテン・フリーを謳った商品で、今、最も急激な伸びをみせている分野だ。アレルギーに関する情報を提供する非営利団体、アレジーUKによれば、現在、英国民の45%がなんらかの食品アレルギーの症状を持っている可能性があるという」とのことだ。

食品業界誌「グローサー」の5月15日付記事には、各スーパーマーケットが競うようにフリー・フロム商品点数を増やす現状を報じている。「スーパーマーケット・チェーンのアズダが、フリー・フロム商品を229点販売しているセインズベリーに迫るべく、新たに78点の商品を加え、6月から合計208点を店頭に並ベると発表した。さらにテスコも両社に追いつくべく商品開発に力を入れはじめている。アズダのカスタマー・プランナーによれば、これまでのフリー・フロム商品は主にケーキやビスケットなど菓子類に限っていたが、不景気による内食の増加と消費者からの要望により、食材の開発に力を入れたいという。

リアリティ・ショーで人気が出た乳製品フリー・アイスクリーム

英国版「マネーの虎」としてスタートしたBBCのリアリティ・ショー「ドラゴンズ・デン」の企画から誕生した乳製品フリーのアイスクリームが話題を呼んでいる。この商品を企画販売するのは、乳製品アレルギーの息子を持つ24歳のシングル・マザーのクリスティ・ヘンショー氏。彼女の人柄や商品にかける情熱、番組の人気も手伝い注目を集め、この秋、立て続けに各大手スーパーマーケット・チェーンの店頭に並ぶことになり、さらなる話題を呼びそうだ。

グルテン・フリーのビール

メーカーが率先してフリー・フロム商品の開発を進めている分野にビールが挙げられる。10月21日付「インディペンデント紙」の記事によれば、「最近、そばやソルガム、トウモロコシ、亜麻、きび、テフ、米、ぶどうなどを使用したグルテン・フリーのビールを作る醸造所が増えている」と、世界の国々で作られているグルテン・フリービールのリストの紹介だけでなく自宅で醸造するレシピまで紹介していた。リストの中には日本の商品として、キリンビールの「のどごし〈生〉」が、英国の商品としてワールド・トップ醸造所の「アゲインスト・ザ・グレイン」、セント・ピーターズ醸造所の「Gフリー」、グリーンズ社の「グリーンズ・エンディヴォー・ダブル」、ハンブルトン社の「トリレーション」が紹介された。

英国食品基準庁のアレジー・アラート・システム

スーパーマーケットのPB商品からメーカー品まで、フリー・フロム商品の開発、販売が進み、消費者にとって選択肢が広がるのは歓迎すべきことだが、その分、不正表示や誇張表示の例も多数ある。英国食品基準庁(FSA)のウェブサイトにはスーパーマーケットやメーカーから報告を受けた誤表示の商品情報を掲載(平均報告件数は月3件ほど)しており、希望者にはEメールや携帯電話のテキスト・メッセージで最新情報を逐次送信するサービスを提供している。

フリー・フロム商品をとりまく環境

前述の「テレグラフ紙」の記事中のポーツマス大学のヘザー・マッケンジー教授のコメントによれば「現在、報告されている食品アレルギー事例の大半は自己診断によるもの。診断は、きちんと医師により受けるべき。現在、我々が把握している数字によれば、英国の全成人のうち食品アレルギーの症状を持つ人々はわずか1.4~1.8%だが、比較的軽い症状の人々を含めればこの数字はさらに高くなるだろう」とのことだ。

消費者がまずは自身の症状をきちんと把握し正しい商品選びをする。今後は、アズダが各店舗に食品アレルギーの相談に対応できる専門家を配置し始めたように、小売店の意識向上も進んでいくだろう。それに加えて医師などの専門家や消費者団体などによる情報発信など商品を取り巻く環境も含めてフリー・フロム商品は今後も注目の分野となりそうだ。

賢く外食する方法 ‐ 外食インフレに対抗するサービスあれこれ

英国国家統計局の発表によれば、9月の英国の消費者物価指数(CPI)は、航空運賃とガソリンの値下がりが衣料品と食料品の記録的値上がりをオフセットし、7月から依然、3.1%で横ばいだという。事実、主要スーパーマーケットの商品価格比較サイト「 マイ・スーパー・マーケット外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」の調査では、2007年以来、パン、卵、肉などの主要食品の価格高騰率は21%で、それ以外の食品は48%の高騰率だという。そんな厳しい食品インフレのあおりを、今、最も受けているのは外食産業のようだ。

高騰する外食費

「フード・サービス・チェーンを展開するメニューラマ社が、ホテル、レストラン、パブを対象に行った調査によれば、レストランの3コースの食事の平均価格は過去1年間で5%上昇して21ポンド、パブでの食事は5.6%上昇して15.74ポンド。レストランやパブの経営者が、厳しい食品インフレの最中でも利益率をキープするためメニューの値段をつり上げているのは明らかだ」と報じるのは「タイムズ紙」の10月30日付の記事。

また、全英の約500件の日本食レストランと持ち帰り店の情報を掲載し、ロンドンを中心に全英で12万部を無料配布する 「イート・ジャパン・マガジン」のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます で、2009年末に実施されたアンケート結果では、前年時に比べ、日本食レストランの利用回数は減らないものの、利用額を抑えるという傾向が顕著に見られた。

不況といえども、レストランの利用回数を減らすよりも利用額を減らす、さらには、お得に利用できるサービスを探し求める消費者が増え、それに伴ったサービスの提供も増えてきているようだ。

賢く外食するための便利サイト

お金に関する知識、情報、節約術等を紹介するサイト「 ラブマニー・ドット・コム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」内の記事に、レストランをお得に利用するための便利なサイトがいくつか紹介されていたので下記に挙げてみたい。

  1. グルーポン・サイト…日本でもお馴染みの協同購入クーポンサイト。日替わりで数量限定のお得なクーポンが紹介され、特定の人数に達するとクーポンの発行が成立するという仕組み。購入希望者はクーポン発行の成立人数に達するよう口コミで情報を広げる。 グルーポラ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますグルーポン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます などが有名である。
  2. バウチャー・サイト…レストランやホテル等が発行するバウチャー(クーポン)の情報を集めたサイトのことをいう。 ホットUKディールズ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますレストラン・バウチャーズ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 、マイ・バウチャー・コーズなどが有名である。
  3. ラスト・ミニッツ・サイト…空席を出したくないレストランなどが、ぎりぎりの段階(ラスト・ミニッツ)で出すお得なサービス情報を集めたサイト。 ラストミニッツ・ドット・コム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます など。

上記のサービスはみなインターネットによる瞬時の情報発信や、ソーシャル・メディアでの情報伝播があってこそ成り立つ仕組みであり、さらに、期間や人数を限定してのサービスなのでレストラン側が損をしにくいというところが人気の理由だといえる。

高級レストランを安上がりに済ませる工夫

一方、高級レストランも空席を埋めるための工夫としてBYO(Bring Your Own Drink)を導入する店が出てきている。

BYOとは、会計に若干の持ち込み料を加算した上で、レストランが客にアルコール飲料の持ち込みを容認するというものだ。そもそもはアルコール販売ライセンスを持たないレストランがこのサービスをはじめ、結果、安上がりになるということで学生行きつけの安食堂や、東ロンドン周辺のインド料理店、べトナム料理店で定番化している。

このBYOの高級レストラン版として、今、話題になっているのが、BYOワイン・クラブという会員制クラブ。年間99ポンド(約1万3,000円)の会費を支払い、加盟レストランならどこでもワインとシャンパンを持ち込むことができるというもの。2010年6月にスタートし、現在の加盟レストランは33軒。ミシュランの星付きやセレブリティ・シェフのレストランなどの高級店も多く、日本食ではリッチモンドにある「マツバ」が加盟している。

ミシュラン・ガイド2010年版では、創刊35年の歴史の中で、初めて英国の星付きレストランの数がフランスのその数を上回るという結果になり、いよいよ英国グルメ時代の到来かと話題になったが、この不景気の中、厳しい状況を強いられているレストランも多い。今後、さらに高級レストランを中心としたお得に外食できるサービスが登場しそうだ。

(ロンドン・センター)