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日本食品の輸入動向

日本産品および日系企業現地生産品小売での販売動向 ‐ すし以外にも可能性が広がる日本食品

2010年9月
分野:食品・農林水産物

英国人は日本食に好意的

今春セルフリッジデパートで開催された日本食フェア

日本食全般に対する英国人(特に大都市部在住)のイメージは、一般的に極めて好意的で、健康、安全、安心、というものだ。そして、日本人が長寿で、英国人と比較して健康的な食生活をし、肥満が少ないのは、日本食の影響であると信じている人が多い。しかし、2010年春、日本食フェアを2週間開催した現地の有力デパートである「セルフリッジ」のバイヤーおよびフロアーマネージャーによると、一般的な英国人は、すしはよく知っているものの、日本食と、中華をはじめとするアジア各国の料理との区別は明確にはできていない。同バイヤーは、日本食材を活かしたレシピの開発、英文でわかりやすく書かれた調理方法の添付、賞味期限が少しでも長いものの輸出、ベジタリアン向けの製品開発などを増やせば、さらに日本食材の輸入拡大が期待できるという。

日本語名がそのまま現地の言葉に

ここ数年、有名シェフらをパーソナリティに迎えた料理番組が各局で放映されている。特にBBCの“SATURDAY KITCHEN”、ITVの“DAILY COOKS CHALLENGE”は、毎回国際色豊かなレシピを紹介しており、YUZU、MISO、EDAMAME、PANKOといった日本食材の知名度を日本語名のままでも通じるレベルに押し上げる大きな役割を果たしている。これらの番組の放送翌日には日系のスーパーに問い合わせが多く寄せられる。数年前にはPANKOが、最近ではSHIRATAKIがゼロカロリーのスーパーヌードルとして紹介され、店頭からなくなってしまう現象が起きた。

こういったもの以外にもすでに、すし、酒、ゆず、刺身、てんぷら、みそ、うどん、そば、豆腐などが日本語のままの名称で流通している。

英国への輸出は回復傾向に

円高や原料に対する規制などハンディもあるが、英国の消費者は、本物の日本食材を手に入れたいという要望が強いため、価格は高くても日本食品、食材の輸出拡大が見込める。

日本の財務省の輸出統計をみると、一時期落ち込んでいた輸出は、2010年にはいり回復傾向がみられる。また、日本から輸出され、オランダ、ベルギーなど大陸に荷揚げされ英国に再輸出されている日本食材や、米国、中国、タイにある日系企業の工場などから英国に輸出されている日本食材もあり、統計の数字よりもはるかに大きなボリュームの日本食材が英国市場に流入されている。

現地生産品はメインストリーム中心に市場を拡大

英国の食品小売市場は、4、5社の寡占状態であるため、新たに市場に参入し、収益をあげていくことは困難である。そのような中、現地生産の日本食品では、ビール、乳酸飲料、チョコレート、スナック菓子、しょうゆが、大手スーパーの「テスコ」、「セインズベリー」、「アズダ」、高級路線の「ウェイトローズ」などによく並んでいる。これらの製品の広告は、TVやバス停などでも見られるようになり、知名度もかなり高くなっている。

潜在的な可能性が大きい日本食材
 ‐ 日本酒、みそ、スナック菓子、カレー、お好み焼き、緑茶など

日本からの輸出製品のなかで、特筆すべきは日本酒だ。英国は、欧州の中でも最大の日本酒市場であり、急成長している。ロンドンを中心に日系スーパーでは日本酒、焼酎、梅酒など、常時100アイテム以上の取扱いがあり、さらに売り場は拡大傾向にある。すでに、現地有力デパートや一部の大手スーパーに日本酒が並んでいるが、日本食の広まりを背景に、近い将来さらに日本酒の品揃えが増強される見込みだ。アメリカ系のスーパー「ホールフーズ」、アジア食材スーパー「ロンダン」、高級デパート「セルフリッジ」、高級デパート「ハーベイ・ニコルズ」では、日本酒の試飲を実施したり、幅広い日本酒を取り扱い始めたりしており、これらの影響がほかのスーパー、デパートにも広がっていくとみられている。世界最大規模のワインコンペティションであるIWC(International Wine Challenge)に2007年、日本酒部門が新設され、以降毎年多くの日本酒が紹介されている。最近では、従来の吟醸酒、大吟醸酒、純米酒、本醸造酒以外に、発泡酒、にごり酒など新製品も登場している。食事との組み合わせ方などを消費者に分かりやすく説明できるレシピを開発し、商品の販促活動をしていくことで、日本酒市場の拡大に拍車がかかるのではないかと思われる。日系卸以外にも当地の流通業者が本格的に日本酒市場に参入するようになれば、当地のスーパーやアルコール専門店にも配荷が進み、飛躍的な伸びが期待できる。

伝統的な英国の製品であるマーマイト

つぎに注目すべき品目はみそだ。英国には、古くからマーマイト(写真参照)という、麦芽を発酵させてつくった水あめ状の製品がある。これはビールの酒粕を主原料としたビタミンBを多く含む製品である。このマーマイトと味やベースが良く似ているためか、英国では、みそがあまり抵抗なく受け入れられている。すでに日系のスーパー、中華系スーパー、アジア食材店にも配荷は増えている。特に、手軽なインスタントのみそ汁が好まれ、ねぎ、豆腐、あげ、ほうれんそうなどの具入りのものが人気である。

大手スーパー、「アスダ」では試験的にインスタントみそスープを販売している。ペースト状のみそも、料理が好きな消費者に支持されている。大手スーパー「ウェイトローズ」では西京仕立ての魚の販売コーナーもできている。日系スーパーでは白みそよりも赤みそが売れ筋で、味に深みがあるものが好まれている。

スナック菓子製品については、日本のスーパーの多様な品揃えに対し、英国の大手スーパーには約600アイテムの菓子(スナック、キャンディ、チョコレート、ビスケット、ガムなど)と種類が少ない。英国のスーパーのプライベートブランド比率が高いため選択が限定される。スーパーの影響力が強く、メーカーからの提案が採用されにくいことや、販売促進に多額の費用が継続的に発生するために、新製品の導入に極めて慎重な対応を余儀なくされており、限られた有名なブランドの製品しか棚に並ばない環境になっている。日本の菓子のうち、特に子供向けの個別包装のキャンディ、キャラクター製品、チョコレート、スナック菓子、わさび豆などの評価が高い。賞味期限が長く、製品規格から英語に対応し、現地消費者の嗜好を考慮した製品であれば大手スーパーでの取り扱いの可能性もさらに高くなるだろう。2010年の4月に大手デパート「セルフリッジ」で開催された日本食フェアでは、チョコレート付きビスケット、わさび豆などが非常に好評で、現在では日本製品コーナーではなく、通常の菓子売り場に並ぶようになっている。

日本式のカレーも評価されている。従来よりインド人、パキスタン人、バングラデシュの人口が多いため、カレーを提供するレストランは多いが、日本式のカレーは近年になり、浸透しはじめている。日本式カレーは「カツカレー」とよばれ、新たなカテゴリーに位置づけられている。現地人が経営しているロンドン市内の弁当屋でも日本式のカレーは人気アイテムの一つである。にんじん、たまねぎ、ジャガイモなどの具材は現地で調達でき、家庭でも手軽に作れるので、カレールーの需要増加は大いに期待できる。今春開催されたデパート「セルフリッジ」での日本食フェア期間中実施した調理デモはデパートのバイヤーの評価も高かった。カレールーは、近くにあるデパート「ハーベイ・ニコルズ」でも人気商材の一つとなっている。

お好み焼きは、英国で2店舗レストラン展開している日系企業がある。客の80%以上は非日本人で、老若男女さまざまである。この日系企業が日本産のソースを現地に適応させた味が大好評で、お好み焼きだけでなく、焼きそばも人気を博している。このレストランには、現地のレストラン関係者も研究のために頻繁に視察に来ているようで、多くの人の関心を集めている。

緑茶も、市場が拡大している製品である。日系スーパーには比較的幅広い種類の日本産緑茶が、アジア系食材を売るスーパーや現地の大手スーパーには低価格の緑茶(ティーバッグ中心)が多く並んでいる。ロンドンの繁華街のピカデリーサーカスにある日系スーパーの担当者の話では、よく売れるのは煎茶、玄米茶とのことだ。最近は便利な粉末茶の人気が高いとのことであった。さらに現地のレストランチェーンである「イツ」、「イート」や、弁当屋を経営している「ワサビ」(国内で20店舗以上を展開)では抹茶を使ったドリンクが提供されている。

円高や原材料の規制の問題はあるが、このように、すし以外にも需要が高い日本食材が多く、英国における日本食市場はさらなる拡大が期待できる。

(ロンドン・センター)