税制

最終更新日:2025年01月28日

法人税

ルーマニアは2023年10月に、所得税の免除、社会保険料、零細企業、付加価値税、一部の法人に対する新たな法人税などのさまざまな税分野で税法を大幅に改正する規範法(「法律2023年296号」)を制定した。これに続いて、法律2023年296号を修正および更新した緊急条例2023年115号を含む、他のいくつかの法改正が行われ、多国籍企業グループおよび大規模国内グループに対する世界的な最低課税水準を確保することを目的とした法律2023年431号(BEPS2.0第2の柱とも呼ばれる)と、さらに注目すべき変更をもたらした法律2024年231号が成立した。一般的な側面と最も重要な変更を、関連する項目ごとに分類して以下に示す。

税率

法人税は、利益に対して一律16%

  1. 最低売上税(MTT)

    法律2023年296号第2章(2)により、昨年の売上高が5,000万ユーロを超える納税者を対象に、最低売上税(MTT)が導入された。MTTは法人税とは別の税であり、特定の計算式(後述)を通じて計算され、法人税額と比較する必要がある。2つの算定結果のうち、最も高い額が国家に支払われなければならない。MTTは2024年に始まる課税年度から適用され、四半期および年次単位で計算される。

    最低売上税(MTT)=1% ×(VT-Vs-I-A)

    1. MTT(Minimum tax on turnover):課税年度の期首から年度末までの累計で決定される最低売上税
    2. VT(総収入):課税年度/修正課税年度の期首から四半期/年度末までの累積計算による総収入
    3. Vs(控除収入):控除金額を表し、課税年度/修正課税年度の期首から四半期/年度末までの累計で計算され、以下を含む:
      • 非課税収入
      • 製品在庫原価に関連する収入
      • 役務提供に関連する収入
      • 有形・無形資産の生産による収入のうち、後述のIに含まれていないもの
      • 補助金収入
      • 保険・再保険会社からの株式または自社所有の有形資産の損害に対する補償収入
      • 同時に費用勘定に反映された物品税収入
    4. I:2024年1月1日/2024年に始まる修正課税年度の初日時点の取得/生産による仕掛資産の価値
    5. A:2024年1月1日/2024年に始まる修正課税年度の初日から購入/生産される資産の会計上の減価償却費。この指標には、指標Iの値に含まれる資産の会計上の減価償却費は含まれない。

      指標IおよびAに従って建設中/所有資産の価値を控除する納税者は、これらの資産を経済的使用期間の少なくとも半分、ただし5年を超えずに所有し続ける必要がある。この条件が満たされない場合、これらの金額についてMTTが再計算され、四半期/年度の控除から付帯税が課される場合がある。

      これらの規定は、次の資産には適用されない。

      • 組織再編の一環として移転される資産
      • 清算/破産手続きにおいて疎外される資産
      • 資産が破壊、紛失、盗難、または欠陥があり交換され、これらの状況が納税者によって正式に実証または確認された場合。なお、資産が盗難された場合、納税者は司法機関が発行した証拠文書に基づいて盗難を証明する必要がある。
      • 法律で定められた特定の義務を履行した結果、会社の所有権から外される資産

    本計算式による算出の結果がマイナスの場合、最低売上税はゼロとなる。
    さらに、金融機関および石油・ガス産業に従事する企業には、最低売上税の免除として、特別な規制が適用される。

  2. 金融機関に対する追加税

    2024年1月1日以降、金融機関(ルーマニア法人)および金融機関のルーマニア支店(外国法人)に対して追加税が課される(法律2023年296号第2章(2))。
    金融機関は、法人税に加えて、売上高(具体的に定義されている)に対して以下の税率を適用して計算した最低売上税を支払わなければならない。
    2024年1月1日~2025年12月31日:2% 2026年1月1日~:1%

    金融機関に対する追加税は、以下のような期間中に記録された特定の収入および純利益に前述の税率を適用して計算される。

    1. 利息による収入
    2. 配当収入
    3. 手数料およびコミッションからの収入
    4. 損益を通じて公正価値で評価されていない金融資産および負債の認識中止による利益(損失)(純額)
    5. トレーディング目的で保有される金融資産および負債に関連する損益(純額)
    6. トレーディング目的に指定されていない金融資産に関連する損益で、損益を通じて公正価値で強制的に評価される損益(純額)
    7. 損益を通じて公正価値で評価されるように指定された金融資産および負債に関連する損益(純額)
    8. ヘッジ会計による損益(純額)
    9. 為替レート差(利益または損失)(純額)
    10. 非金融資産の認識中止による損益(純額)
    11. その他の営業利益
  3. 石油・ガス産業に従事する企業に対する追加税

    2024年1月1日以降、石油・ガス産業で事業を行い、前年度の売上高が5,000万ユーロを超える企業に対して追加税が設けられる(法律2023年296号第2章(2))。
    法人税に加え、最低売上税が以下の計算式に従って算出される(各指標は前述参照):ICAS=0.5%*(VT-Vs-I-A)

    法人税計算上、最低売上税は損金不算入項目となる。
    2026年1月1日以降(または2026年開始の修正課税年度以降)、石油・ガス産業で活動する納税者は、最低売上税を適用する。
    国家エネルギー規制当局によって規制/認可され、前年に電力および天然ガスの配電/供給/輸送活動から収益(指標Vsに含まれる収益を除く総収益)の95%以上を獲得した経済事業者には、MTTまたはICASの免除が与えられる。

  4. 零細企業制度

    一定の条件を満たすルーマニア法人は、課税対象収入に1%または3%の税率を適用し、特定の収入を免除して計算される零細企業税を支払うことを選択できる(法律2023年296号第2章(3))。

    • 1%の税率は、売上高が6万ユーロを超えず、事業活動が以下に定義された欧州共同体経済活動統計分類(通称、NACEコード)に該当しない零細企業に適用される。
    • 3%の税率は、売上高が6万ユーロを超える零細企業、またはその事業活動が以下に定義されたNACEコードに該当する零細企業に適用される。

    NACE CODE 5821:コンピュータゲームの編集活動
    NACE CODE 5829:その他のソフトウエア編集活動
    NACE CODE 6201:カスタムソフトウエア開発活動
    NACE CODE 6209:その他の情報技術サービス活動
    NACE CODE 5510:ホテルおよび類似の宿泊施設
    NACE CODE 5520:短期および休暇用宿泊施設
    NACE CODE 5530:キャラバンパーク、キャンプ場
    NACE CODE 5590:その他の宿泊業
    NACE CODE 5610:レストラン
    NACE CODE 5621:イベントケータリング
    NACE CODE 5629:その他の飲食業
    NACE CODE 5630:バーおよびその他の飲料提供サービス業
    NACE CODE 6910:法律サービス
    NACE CODE 8621:一般的な健康管理業
    NACE CODE 8622:専門看護業
    NACE CODE 8623:歯科医療業
    NACE CODE 8690:その他の保健衛生事業

    前述のNACEコードに該当する活動以外の事業活動からも収入が得られる場合、それら事業による収入にも3%の税率が適用される。

    零細企業は、[1]売上高が50万ユーロ(為替レートは収益が記録された課税年度の終了時点で有効な為替レート)を超えないルーマニア企業であり、[2]資本は州および地方行政機関以外の者に保有されており、[3]清算/解散手続き中ではなく、[4]会社の総収益の少なくとも80%はコンサルティングおよび/または管理活動(NACEコード6920に対応する税務コンサルティングからの収益を除く)以外から得ていなければならず、[5]少なくとも1人の従業員が必要であり、[6]直接的または間接的に参加権または議決権の価値/数の25%以上を保有する関連会社/株主がおり、かつ、零細企業制度を適用するために各関係者/株主によって設立された唯一の法人であり、[7]法律に従った義務がある場合は期日までに年次財務諸表を提出している企業、と定義づけられる。

    また、以下の事業分野は零細企業から除外される。

    1. 銀行システムにおける預金保証基金
    2. 投資家補償基金
    3. 私的年金保証基金
    4. 保険保証基金
    5. 法人格を備えた財政的に透明な事業体
    6. 銀行業界で活動するルーマニアの法人
    7. 保険および再保険業界、資本市場で活動するルーマニアの法人、およびこれらの分野で仲介/販売活動を行うルーマニアの法人(二次保険および/または再保険を除く)。定義されている仲介業者法により、総収益を含む最大15%までの保険/再保険の販売活動から収益を上げているもの。
    8. ギャンブル業界で活動するルーマニアの法人
    9. 石油および天然ガス鉱床の探査、開発、搾取活動を行うルーマニアの法人
  5. 世界共通の最低法人税率導入

    多国籍企業グループおよび大規模国内グループに対する世界的な最低課税レベルを確保するための法律(法律番号2023年431号)は、2024年1月に公布さた。この法律は、多国籍企業グループおよび大規模国内グループに対する世界的な最低課税レベルに関するEU理事会指令2022/2523の規定を置き換えるものである。
    この指令の規定に沿って、ルーマニアは、年間収入が最低7億5,000万ユーロの多国籍企業および国内企業グループに対して15%の最低実効課税を確保するための2つの主要な共通措置を確立した。具体的には次のとおりである。

    1. 所得合算ルール(IIR)
      多国籍企業グループまたは大規模国内グループの親会社は、軽減水準で課税されるグループの構成事業体に対する追加税の配分可能割合を計算して支払う義務がある。
    2. 軽課税所得ルール(UTPR)
      多国籍企業の構成事業体が、軽減税率で課税されるグループの構成事業体に対して、親会社レベルでのIIRに基づいて課されない追加税の負担額に等しい追加費用として記録される税金を支払う義務がある。

    さらに、この法律は、国内ミニマム課税(QDMTT)の創設も規定しており、当該税金は、法律の対象となる多国籍企業グループおよび国内企業グループの、ルーマニアにおいて低税率である子会社レベルで決定されることになっている。QDMTTは、前記ルールを適用する前に優先的に計算され、他の管轄区域においてIIRおよびUTPRルールに基づいて課せられる追加税がゼロになる可能性がある。

    トップアップ税は、実効税率が最低税率15%を下回る管轄区域にある構成主体レベルで発生する。多国籍企業グループまたは大規模国内グループの実効税率は、課税年度および管轄区域ごとに、その管轄区域内の構成事業体の調整対象税を純適格所得(つまり、利益)で割ったものとして計算される。

    トップアップ税率は、実効税率と最低税率15%の差として計算される。IIRおよびQDMTTの規定は2024年1月1日から適用され、UTPRの規定は2025 年1月1日から適用される。

課税年度

納税年度は、原則として暦年であるが、企業の裁量によって暦年以外の12カ月を設定することも可能。

申告と納付

申告期限は、原則として四半期もしくは月ごとに翌25日まで。
確定申告は、納税者の関連するカテゴリーに応じて期限が異なる。

繰越欠損金

2024年または2024年開始の修正課税年度から発生する欠損金は、その後5年間連続して得られた課税所得の70%の割合で回収(相殺)される。2023年12月31日現在、2024年より前の年度に発生した欠損金で、2023年12月31日現在で回収可能なものについては、欠損金計上年度から連続する7年間における残りの回収可能期間において、課税所得の70%を限度として回収(相殺)される。

借入コストの超過

納税者は課税期間中、超過借入費用(借入費用が利息収入を超える額)を、控除限度額100万ユーロ相当のルーマニア・レイ相当額まで控除することができる。特定の進行中の資産の取得/生産に資金を提供しない関連当事者との取引/業務については、50万ユーロを超える借入コストに対する控除基準の新たな制限が導入された。この基準は金融機関には適用されない。
課税期間中に控除できる、関連者および非関連者の両方と行われた取引/業務に起因する超過借入費用の合計は、100万ユーロの控除基準を超えることはできない。
前記の制限を超える超過借入費用(ECB)は、それが発生する課税期間における控除対象が、計算基礎から最大30%に制限される。
借入コストを超える控除額の計算根拠は次のように計算される。

総収入-総費用-非課税収入+法人税費用+超過借入コスト+控除対象減価償却費(つまり、利息、税金、減価償却費および償却前の調整利益)

計算の基礎がマイナスまたはゼロに等しい場合、超過借入費用(前記の基準を超える費用)は、発生した課税期間では損金算入されず、同じ控除条件の下で、無期限に繰り越される。2024年1月1日時点で適用される新しい基準を考慮して、ECBの配分を繰り越すための特定のルールが導入された。
例外として、独立した事業体であり、財務会計の観点からは連結グループの一部ではなく、関連事業体や恒久的施設を持たない納税者は、超過借入費用を費用が発生する課税期間に全額控除することができる。
スピンオフまたは合併の結果として消滅した事業体によって記録された繰越借入費用を超過した非控除額は、新しい納税者または合併またはスピンオフ事業体の資産および負債を引き継ぐ納税者によって繰り越すことができる。

二国間租税条約

ルーマニアは、日本と二国間租税条約を締結している。

日本・ルーマニア二国間租税条約に基づき、税率は次のように決められている。

  • キャピタルゲイン:0%
  • 配当:10%
  • 利子:10%
  • ロイヤルティー:10%(映画用フィルム、ラジオまたはテレビ放送用のフィルムまたはテープを含む、文学、芸術、または科学作品の著作権の使用または使用権の対価として受け取るあらゆる種類の支払い)
  • 工業用ロイヤルティー:15%(特許、商標、意匠またはモデル、計画、非公開の配合またはプロセスの使用または使用権の対価として受け取るあらゆる種類の支払い、産業・商業または科学の機器、産業・商業または科学の経験に関する情報を使用する権利)

租税条約締結国・地域[国家財政庁(NAFA)のリストによる]

アルバニア、アルジェリア、サウジアラビア、アルメニア、オーストラリア、オーストリア、アゼルバイジャン、バングラデシュ、ベラルーシ、ベルギー、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、カナダ、チェコ、中国、キプロス、韓国、クロアチア、デンマーク、エクアドル、エジプト、スイス、アラブ首長国連邦、エストニア、エチオピア、ロシア、フィリピン、フィンランド、フランス、ジョージア、ドイツ、ギリシャ、香港、インド、インドネシア、ヨルダン、イラン、アイルランド、アイスランド、イスラエル、イタリア、日本、カザフスタン、クウェート、ラトビア、レバノン、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マレーシア、マルタ、北マケドニア、英国、モロッコ、メキシコ、モルドバ、モンテネグロ、ナミビア、ナイジェリア、ノルウェー、オランダ、パキスタン、ポーランド、ポルトガル、カタール、サンマリノ、セルビア、米国、シンガポール、シリア、スロバキア、スロベニア、南アフリカ共和国、スペイン、スリランカ、スーダン、スウェーデン、タジキスタン、タイ、チュニジア、トルコ、トルクメニスタン、ウクライナ、ハンガリー、ウルグアイ、ウズベキスタン、ベトナム、ザンビア

その他税制

個人所得税(一律10%)、源泉徴収税、付加価値税(VAT:基本税率19%)、物品税、地方税(建物税、土地税、その他)など。
さらに、一部の対象企業には、環境基金への支払いや電子申告の義務がある。

個人所得税

課税対象

ルーマニアに住所を有する個人は納税居住者とみなされ、全世界所得に対して課税される(一部の例外を除く)。特定の状況下では、ルーマニアに住所を持たない個人は、収入をどこで受け取ったかに関係なく、ルーマニアを源泉とする収入に対して課税される場合がある。
租税条約に基づいて他国が発行した納税居住証明書がない場合、外国人個人またはルーマニアの恒久的施設を通じて独立した活動を行う個人は、税務上の居住基準を満たした日から全世界所得に対して課税対象となる。

以下の条件のうち少なくとも1つを満たす個人は、ルーマニアの税務居住者とみなされる(法律2015年227号第7条28項)。

  1. 個人の住所がルーマニアにある
  2. 個人の重要な利害関係の中心がルーマニアにある
  3. 個人が、当該暦年で終了する連続12カ月のいずれかの期間中に、合計183日を超える期間ルーマニアに滞在している
  4. 個人はルーマニア国家職員として海外で働くルーマニア国民である

非居住者が前述した2番目または3番目の条件を満たし、ルーマニアが租税条約を締結している他国が発行した納税居住証明書がない場合、その個人は、ルーマニアの税務居住者になった時点で、全世界所得の課税対象となる。
ルーマニアに在住し、ルーマニアと租税条約を締結している国の居住者でもある個人は、関連する条約の条件に基づいて軽減税率または免税の恩恵を受けることができる。外国人個人のルーマニア滞在が183日未満で、その個人の給与費用がルーマニアにリチャージされていない場合、納税居住証明書が利用可能な場合に限り、受け取った給与収入に対するルーマニアの所得税の義務が免除される場合がある。
ルーマニアと租税条約を締結していない国の納税居住者である個人は、ルーマニアに滞在した最初の日からルーマニアで課税対象となる。ルーマニアに住所を有し、ルーマニアと租税条約を結んでいない国への居住地変更を証明するルーマニアの納税居住者は、居住地変更が行われた暦年およびその後3暦年について、全世界所得に対して引き続き課税対象となる(法律2015年227号)。
給与所得、フリーランス収入、知的財産権収入、家賃収入、年金収入、賞金、投資収入、農林漁業収入等には標準税率10%が適用される(法律2015年227号第64条)。ただし、前記の各種収入には、特定の控除やその他の要素など、考慮する必要がある独自の要素がある。さらに、配当金(8%)などの特定の所得には特別税率が適用される場合がある。

給与所得には次の税率が適用される(法律2015年227号)。

  1. 従業員の社会保険料:社会保険料(CAS)25%(さらに、雇用主である個人および法人が例外的な労働条件を適用した場合は4%、雇用主である個人または法人が特別な労働条件を適用した場合は8%を加算)(法律2015年227号138条)
  2. 健康保険料(CASS):10%
  3. 雇用主社会保険料:2.25%(労働保険料で、失業、医療休暇、労働災害、給与保証基金を含む)(法律2015年227号220~223条)

給与以外の付加給付(食事券など)は、原則として社会保険料が免除されないが、特定の給付については一部免除される場合がある。原則として、ルーマニアに居住し、ルーマニア企業から給与(または給与とみなされる報酬)を受け取っているすべての人は、社会保障に加入し、社会保障費用を支払わなければならない。
支払い義務は、ルーマニア子会社と雇用契約を結んでいる従業員に加え、ルーマニア子会社と役員契約を結んでいる役員や、日本からルーマニア子会社へ出向契約に基づいて出向している役員にも適用される。健康保険料(CASS)は、政令2023年296号に基づき、実際の年収・総所得の10%、または自営業で収入を得ている個人の場合は年収基準の10%を適用して計算されるが、上限額は保険料納付期限時点の法定最低賃金(額面)の60倍、最低額は6倍(一部免除を考慮)となる。
原則として、欧州連合(EU)および欧州経済領域(EEA)加盟国、スイス、およびルーマニアが社会保障分野で合算協定を締結しているその他の管轄地域の国民は、ルーマニアで発生した医療費の補償の恩恵を受ける。関連する適用証明書を取得した場合、社会保障費が免除される場合がある。ただし、個人が母国の法域で社会保障費の対象になっていない場合、その人はルーマニアの社会保障制度に該当し、ルーマニアの規制(母国の雇用主または自治体)に従って社会保障費を支払う責任がある。従業員は社会保障の目的で登録するために特定の手順に従う必要がある(法律2015年227号)。

IT産業関連職務に従事する従業員に対する個人所得税の免税措置について

2023年11月1日より、法令2023年296号により、IT産業関連職務に従事する従業員に関する個人所得税の免除措置の上限を月収(額面)1万レイ(約2,000ユーロ。レイは通貨単位レウの複数形、1レウ=約0.2ユーロ)とする。月収(額面)が1万レイを超える部分については、税制上の優遇措置を受けられない。また、同法により、建設業および農業関連職務に従事する従業員についても、月収(額面)1万レイを上限として免税措置が適用される(この基準額を超える給与所得については税金が課される)。なお、これらセクター(IT、建築、農業)に対する免税措置は、従業員の基本的な勤務地でのみ適用される。
研究・イノベーション・デジタル化省令21813/6421/2246/4433/2022により定められていた、特定のIT関連活動に従事する従業員に対する個人所得税の免除は廃止され、省令20463/3964/967/1415/2023により置き換えられたが、適用されるルールについては前省令からほとんど変更がない。具体的には欧州共同体経済活動統計分類(通称、NACEコード)の以下の事業活動が対象となる。

  1. NACE CODE 5821:コンピュータゲームの編集活動
  2. NACE CODE 5829:その他のソフトウエア編集活動
  3. NACE CODE 62-1:カスタムソフトウエア開発活動
  4. NACE CODE 62-2:ITコンサルタント活動
  5. NACE CODE 6209:その他の情報技術サービス活動

前述のIT産業活動に従事する従業員が当該免税措置を受けるためには、以下の基準を満たす必要がある。

  1. 当該従業員が雇用されている職種(ポジション)が、本省令の別添において定められている職種に該当していること(具体的には、データベース管理者、アナリスト、ITシステムエンジニア、ソフトウエアシステムエンジニア、ITプロジェクトマネージャー、プログラマー、ITシステムプログラマーおよびコーディネーター、ITシステムプログラマー、プログラマーアシスタントまたはアナリストアシスタント、ソフトウエア製品開発エンジニア、など)
  2. 対象となる従業員の職種/ポジションが、コンピューター/情報関連の専門部署に属しており、雇用主の組織図において、その専門部署のカテゴリーが情報通信技術、人工知能(AI)、新興デジタル技術、電子税務、データベース、電子政府サービス、デジタルトランスフォーション(DX)などのくくりで強調されていること
  3. 対象となる従業員が、認定された高等教育機関の長期または短期の高等教育課程を修了した者に与えられる卒業証書、または大学の第1サイクルを修了した者に与えられる卒業証書、もしくは、バカロレア資格を有しており、認定された高等教育機関の課程に従い、本省令の別添にて定めるいずれかの活動を効果的に実施している者であること
  4. 対象となる従業員の雇用主が前会計年度に、市場での販売を目的としたコンピュータ・プログラムの作成活動から得た収益が区分上、収支に計上されていること
  5. 前述の4.において言及された雇用主の年間収入が、免除対象の従業員1人につき、最低でも1万ユーロのレイ相当額(所得が登録された各月のルーマニア国立銀行の発表した平均為替レートを適用し算出)であること

新設の会社である場合は、対象従業員が本免税措置を受けるために必要な条件4.を会社設立年度および翌年度のみ免除される。
また、2023年1月発効の省令改正により、当該免除は公共部門の従業員にも適用されることとなった。
本免除の適用を受けるために必要となる書類については、同省令の第4条に挙げられており、雇用主はこれらを準備し、監査の際には(物理的、または電子署名を含むデジタル形式で)提示する必要がある。また当該免税措置を受ける従業員の職種・ポジションへの配置は、雇用者の責任で行われる。
当該免除は、雇用契約や出向契約、または特別なステータスに基づく給与(または給与とみなされる報酬)に対して、月単位で適用される。
本免除は、従業員がコンピュータ・プログラムの作成活動を実際に行っている全期間について適用される。つまり、ある1カ月のうちに、数日でもコンピュータ・プログラムの作成活動を行っていた場合、同月の給与所得に対して本免除が適用される。

エンジェル投資家(個人)への配当所得税免税

中小企業に対して資金を供給するか中小企業の株式を買収するエンジェル投資家(個人)は、配当所得税が3年間免税される(法令2015年120号)。その場合、投資を受ける中小企業は、次の条件を満たす必要がある。

  1. 有限会社(S.R.L.)として登録されている。
  2. 独立した法人である。
  3. 支払不能または倒産状態ではない。
  4. 銀行、保険、コンサルティング、資本市場、賭博、不動産等の分野に適用されない。

付加価値税(VAT)

一般に、VATの標準税率は19%に設定されている。ただし、5%および9%の軽減税率があり、特定の条件下ではゼロとなる(法律2015年227号第291条)。

9%課税の商品とサービスの例

  1. ヒト用および動物用医薬品
  2. 特定の分類コードを持つ食品(アルコールおよび砂糖その他の甘味料または香料を添加したノンアルコール飲料、砂糖の含有量が製品100g当たり最低10gである砂糖添加食品(乳児用の粉ミルク、菓子パン、ビスケット以外)で標準税率19%が適用されるものを除く)
  3. 農業生産に通常使用されるタイプの肥料および農薬、播種または植え付けを目的とする種子およびその他の農産物、ならびに農業部門で特に使用されるようなサービスの供給
  4. 農業灌漑用水の供給
  5. 灌漑および飲料水の供給
  6. ホテルの宿泊施設および同様の宿泊施設(キャンプ用の土地の賃貸を含む)
  7. レストランおよびケータリングサービス(アルコールおよび砂糖その他の甘味料または香料を添加したノンアルコール飲料を除く)
  8. 農業生産に通常使用されるタイプの化学肥料および化学農薬(2031年12月31日まで適用)
  9. 太陽光発電パネル、太陽熱パネル、ヒートポンプ、その他特定のパラメータを満たす高効率暖房システムの供給および設置(設置キットを含む)、ならびに別途購入する必要部品。これらの取引でVAT軽減税率の恩恵を受けるためには、購入者は、財政法典付属書のモデルに従って、自己責任による申告を行う義務がある。
  10. 太陽光発電パネル、太陽熱パネル、ヒートポンプ、その他特定のパラメータを満たす高効率暖房システムの修理および/または拡張のための部品の供給および設置(設置キットを含む)。これらの取引についてVAT軽減税率の恩恵を受けるためには、購入者は、財政法典付属書のモデルに従って、自己責任に関する申告書を提出する義務がある。
  11. 遊園地やレクリエーション・パーク、スポーツ・イベントへのアクセス
  12. 公営住宅(関連する土地を含む)の供給
    この目的のため、公営住宅には、最大120平方メートルで、価額(VAT控除後)が60万レイを超えない住宅(2023年1月1日以降は約12万ユーロ)が含まれるが、これに限定されない。VAT9%の軽減税率は、個人向けに行われる供給に適用され、住宅が販売後に住宅として使用できる場合にのみ適用される。自然人は、2024年1月1日より、個人または他の自然人/他の自然人と共同で、VAT控除後の価格が60万レイを超えない家屋を9%の軽減税率で購入することができる。前記の規定の例外として、2023年1月1日から12月31日までに締結された法律行為で、当該家屋の購入のための前払いを目的とするものについては、2024年1月1日から12月31日までの間、5%の軽減税率を維持することが提案されている。軽減税率を適用した住宅取得は、特定の「軽減税率適用住宅取得登録簿」に記載されるべきである。

5%課税の商品とサービスの例

  1. 書籍、新聞、雑誌、学校マニュアル(宣伝のみを目的としたものを除く)
  2. 博物館、城、映画館、動物園、植物園、記念館、史跡へのアクセス
  3. 2029年12月31日まで適用される、一定の分類コードを持つ幹、切り株、柴、枝、または同様の形態の薪の個人、法人、その他の団体への供給
  4. 特定のカテゴリーの消費者(例:公立・私立病院、非政府組織、社会サービス提供者など)を対象とした、寒い季節の暖房の供給

0%課税の商品とサービスの例

  1. 商品輸出
  2. 輸送サービスおよび商品の輸出に直接関連するその他のサービス
  3. 国際旅客輸送
  4. 商品の域内供給(個別規定)

さらに、VATが免除される特定の商品およびサービスの供給もある。「免除」は、VATの対象ではなく、仕入税額控除の対象とならない供給品に適用される。免除される商品およびサービスの供給には、特定の銀行業務および金融業務、保険および再保険サービス、医療サービス、教育、不動産の特定の賃借、コンセッション、リース、賃貸(課税オプションが行使された場合を除く)、海外で修理されたルーマニア製品の逆輸入(輸出品と同等である場合)、指定された流通システムを通した天然ガスや電力などの輸入が含まれるが、これらに限定されない。

VAT徴収スキーム

前年および当年度の年間売上が450万レイ(90万ユーロ)の上限を超えなかった事業者は、VAT徴収スキーム(ルーマニア語ではTVA la incasare)(注)を選択できるようになった。さらに、本規定により、条件を満たせば年内いつでもVAT徴収スキームの適用を選択することが可能となった。

(注)請求書払いで、実際の支払いを受けた後に国へVATを支払うことが認められる制度。
通常VATは対象取引の代金回収前に国に対して支払われるが、このスキームが適用されるVAT納税者は、実際の代金が回収される前にVATを国に支払う必要がなく、支払い受領後に納付することが認められる。

電子インボイス:E-InvoiceE-Factura

詳細については、後述「電子申告」のカテゴリーを参照。

SAF-T reporting

詳細については、後述「電子申告」のカテゴリーを参照。

RO e-Seale-Sigiliu

詳細については、後述「電子申告」のカテゴリーを参照。

RO e-Transport

詳細については、後述「電子申告」のカテゴリーを参照。

E-VAT

詳細については、後述「電子申告」のカテゴリーを参照。

源泉徴収税(配当金、ロイヤルティー、利子等への国外移転にかかる課税)

標準源泉徴収税率は16%。配当所得税率は8%(法律2015年227号第43条)。
租税条約によりその他様々な税率が適用される。徴収対象となる基本的な所得は、配当金、ロイヤルティー、利子など。

間接税

物品税

物品税は、対象となる品目を保管、生産、または輸入する会社、法人、個人事業者などに課せられる。
EU基準に準拠した範囲で、アルコールとアルコール飲料、たばこ、エネルギー(燃料油・電気等)が対象になる。物品と税率は間接税法によって定められている。
申告は月次で翌月25日までに行うとともに、年次申告は4月30日まで。

物品税(間接税)が廃止された品目

コーヒー、プラチナ・金製の宝飾品、服飾用の天然の毛皮、ヨット、プレジャーボートまたはそのエンジン、エンジン容量が3,000立方センチメートルの自動車、武器と弾薬。

物品税が課せられる品目(法律2015年227号第342条、法律2023年296号第2条および3条)

アルコール飲料
  1. ビール
    1. 標準ビール:プラトン1度当たり1ヘクトリットル当たり4.62レイの物品税。
    2. クラフトビール:年間生産量が20万ヘクトリットル未満の独立生産者の場合、プラトン1度当たり1ヘクトリットル当たり2.54レイの物品税。
  2. ワイン
    1. スティルワイン:ヘクトリットル当たりの物品税はゼロ。
    2. スパークリングワイン:1ヘクトリットル当たり66.34レイの物品税。
  3. その他の発酵飲料
    1. スティル品種:1ヘクトリットル当たり555.58レイの物品税。
      1. リンゴと洋ナシのサイダー:1ヘクトリットル当たりの物品税はゼロ。
      2. ミード:蜂蜜を水に溶かした溶液を発酵させて製造されるミードは、1ヘクトリットル当たりの物品税がゼロ。
      3. ベリー飲料:香料やアルコールを添加せずにベリーから作られた飲料については、1ヘクトリットル当たりの物品税はゼロ。
    2. スパークリング品種:1ヘクトリットル当たり66.34レイの物品税。
  4. 中間製品
    1ヘクトリットル当たり555.58レイの物品税。
  5. エチルアルコール
    1. 一般:純アルコール1ヘクトリットル当たり4,629.75レイの物品税。
    2. 蒸留所での生産:蒸留所で生産された製品は、純アルコール1ヘクトリットル当たり2,314.87レイの物品税。
たばこ製品
  1. 紙巻きたばこ:1,000本当たり672.92レイの物品税。
  2. 紙巻きたばことシガリロ:1,000本当たり591.25レイの物品税。
  3. 細切りたばこ:手巻きたばこ用のたばこは1キログラム当たり591.25レイの物品税。
  4. その他の喫煙たばこ:1キログラム当たり591.25レイの物品税。
エネルギー製品
  1. ガソリン
    1. 有鉛:1トン当たり2,530.17レイ、または1,000リットル当たり1,948.23レイの物品税。
    2. 無鉛:1トン当たり2,151.13 レイ、または1,000リットル当たり1,656.36レイの物品税。
  2. ディーゼル
    1トン当たり1,796.53レイ、または1,000リットル当たり1,518.04レイの物品税。
  3. 燃料油
    商業用途と非商業用途の両方で1トン当たり71.07レイの物品税。
  4. 液化石油ガス(LPG)
    1. モーター燃料:1トン当たり607.7レイの物品税。
    2. 暖房用燃料:1トン当たり537.76レイの物品税。
    3. 家庭消費:1トン当たりの物品税はゼロ。
  5. 天然ガス
    1. モーター燃料:1ギガジュール当たり12.32レイの物品税。
    2. 商用利用:1ギガジュール当たり0.81レイの物品税。
    3. 非商業的使用:1ギガジュール当たり1.52レイの物品税。
  6. 灯油
    1. モーター燃料:1トン当たり2,640.92レイ、または1,000リットル当たり2,112.73レイの物品税。
    2. 暖房用燃料:1トン当たり2,226.35レイ、または1,000リットル当たり1,781.07レイの物品税。
  7. 石炭とコークス
    1. 商用利用:1ギガジュール当たり0.71レイの物品税。
    2. 非商業的使用:1ギガジュール当たり1.42レイの物品税。
  8. 電気
    1. 商用利用:メガワット時当たり2.37レイの物品税。
    2. 非商業用途:メガワット時当たり4.74レイの物品税。
ニコチンおよびその他の製品
  1. ニコチンの有無にかかわらず液体:物品税0.81レイ/ml
  2. 燃焼を伴わない吸入用たばこを含む製品:物品税1.094,93レイ/kg
  3. ニコチンの有無にかかわらず、たばこ代替品を含む、燃焼を伴わない吸入用製品:物品税1.094,93レイ/kg
  4. 総糖分レベルが5~8g/100mlの砂糖を添加したノンアルコール飲料:物品税40レイ/hl
  5. 総糖分レベルが8g/100mlを超える砂糖を添加したノンアルコール飲料:物品税60レイ/hl
  6. 経口消費を目的とした、たばこを含まないニコチン製品:物品税115レイ/kg

物品税は支払い後に還付できるようになった。現在、特定の分野で事業を展開している企業は、一定の条件が満たされれば、さまざまな製品カテゴリーの物品税の還付を受ける権利を得ることができる。還付の対象となる製品は、事故による汚染、不適切な混合、使用不適、または品質劣化により、リサイクルのために税務倉庫に返送されたエネルギー製品に限定される。還付ポリシーは、消費に適さなくなった、または販売の法的要件を満たしていないために市場から回収されたアルコール飲料およびたばこ製品にも適用される。さらに、このポリシーは税務倉庫に返品される物品も対象となる。さらに、この制度は、ルーマニアで物品税の対象となり、その後輸出または域内市場内で配送された製品も還付対象としている(法律2015年227号第400条)。

地方税

  1. 建物税(法律2015年227号第460条)
    1. 個人が所有している住宅用建物および別館の場合、課税額は評価額の0.08~0.2%。課税率は地方自治体が決定する。
      評価額は建物の構造(コンクリート、木造など)、タイプ(水道電気付きか否か)、面積、所在地などにより算出される。
    2. 個人が所有している非居住用建物の場合、課税額は評価額の0.2~1.3%。比率は地方自治体が決定する。
      評価額は、過去5年間における認定評価者が作成した評価報告書などに基づく。
    3. 会社によって所有される非居住用の建物で、農業活動のために使用される建物の場合、課税額は評価額の0.4%。
    4. 法人が所有している住宅用建物の場合、課税額は評価額の0.08~0.2%。比率は地方自治体が決定する。
      評価額は昨年度評価額などによる。
    5. 法人が所有している非居住用建物の場合、課税額は評価額の0.2~1.3%。比率は地方自治体が決定する。
      評価額は昨年度評価額などによる。

    なお、法人の場合、建物の評価額を5年ごとに更新する必要がある。過去5年以内に評価が更新されていない場合、課税率は、地方自治体によって5%まで引き上げられる。
    なお、2026年から地方税のルールが大きく変わる予定である。

  2. 土地税
    土地税は、地方自治体が定める分類に従い、土地の用途、場所、土地のランク、面積を考慮して算出され、前年度の12月31日に土地を所有している者が、年2回に均等に分割して、3月31日と9月30日までに支払う。
  3. 不動産売買取引税
    以下のように不動産取引額に対して個人に適用される。
    1. 不動産の所有期間が3年未満の場合、あらゆるタイプの建物および更地の不動産取引額の3%。
    2. 不動産が3年を超えて所有されていた場合、前記と同じ種類の不動産の場合、不動産取引額の1%。
  4. 高額動産・不動産に対する税
    法令2023年296号により導入。
    1. 個人:前会計年度の12月31日時点で、ルーマニア国内に住宅用建物を単独もしくは共同で所有する個人で、その建物の課税価格が250万レイを超える場合。課税額は、管轄税務当局に登録された建物の課税価格と基準額250万レイとの差額に0.3%の税率を適用して算出される。
    2. 個人と法人:ルーマニアにおいて登録された自動車を所有し、その購入価格が37万5,000レイを超える個人および法人。課税額は、対象自動車の購入価額と基準額37万5,000レイとの差額に0.3%の税率を適用して算出される。本税金は対象自動車の引き渡しが行われた会計年度から5年間、課される。

    本税の申告および納付の期限は、住宅用建物の場合、課税年度(納付期限を含む)の9月30日まで、自動車の場合は課税年度(納付期限を含む)の12月31日まで。

  5. 自動車税
    シリンダー容量に基づいて計算される。販売するために在庫として会計帳簿に登録された電気自動車や中古車は非課税となる。ハイブリッド車の場合、地方自治体は自動車税を少なくとも50%に減税している。
  6. 広告サービスの利用者は、紙や映像・音声などのマスメディアを除き、サービス金額の1~3%相当の税金を地方自治体に支払う必要がある。
    広告ディスプレイのユーザーは税金を支払う必要がある。個人が経済活動を行う場所にあるディスプレイの場合、金額は最大32レイ、その他のパネル、ディスプレイ、またはその他の広告および宣伝用の表示構造の場合、最大23レイである。

環境基金への支払義務(緊急政令2005年195号)

次の項目に該当する企業は、水・森林省環境基金行政局へ月次(品目によっては四半期または年次)ごとに翌月25日までに、各税額を支払う必要がある。
納税期日を超過した場合、1日当たり0.1%のペナルティーが加算される。

  1. 大気汚染物質(一酸化窒素、硫黄酸化物、水銀、鉛など)を排出している企業:1kgにつき0.02~20レイ
  2. 有害物質輸入・製造企業(医薬品製造用を除く):同物質価格の2%
  3. 鉄・非鉄廃棄物の販売企業:収益の3%
  4. 木工・木工製品を取り扱う企業:売上高の2%
  5. 鉱油輸入企業・製造企業:1kg当たり0.3レイ(支払義務は1回のみ)
  6. 容器包装の供給会社:法定回収率を順守できなかった場合、法定回収率と実質回収率の差を支払う。1kg当たり2レイ
  7. タイヤ・メーカー:再生目標値を下回る部分について、1kg当たり2レイ
  8. エコ税:バイオ素材以外の材料を使って買い物袋を製造するメーカーは、1袋につき0.1レイ

電子申告

電子インボイス:E-InvoiceE-Factura

ルーマニアでは、企業と政府機関間の取引(B2G)において電子インボイスと電子申告の使用が義務付けられており、ルーマニアのVAT対象となる企業間取引(B2B)にも電子インボイスと電子申告の使用が義務付けられている。この規制はあらゆる種類の商品やサービスに適用され、ビジネス界内で統一された電子インボイスシステムへの移行を示唆している。緊急条例2024年69号の規定に従って、ルーマニアは企業から個人消費者(B2C)までの取引を含む電子インボイスの導入を拡大している。課税事業者は、2024年7月1日から、B2C取引に電子インボイスを自主的に採用することが奨励されている。この自主段階は2024年12月31日まで延長されている。その後、2025年1月1日から、そのような取引に対する電子インボイスの発行と報告は、請求日から5暦日以内というコンプライアンス要件とともに、規制要件となる予定である(法律2022年139号第2条、法律2023年296号第14条4項、緊急条例2024年69号第5項)。

ルーマニアで設立された課税対象者は、インボイス発行日から5暦日以内に、また、いかなる場合もインボイス発行期限から5日以内に、RO E-Facturaシステム経由で電子インボイスを提出することが義務付けられている。これは、RO電子インボイス登録(RO e-invoice register)における受信者の登録ステータスに関係なく適用される。サプライヤーは、インボイスの発行と送信にRO E-Facturaシステムを利用する必要がある。
電子インボイスは特定の技術仕様を満たしている必要があり、特定の必須要素が含まれている必要がある(緊急政令2021年120号、第2条)。電子インボイスが特定の要件を満たしている場合、財務省は電子インボイスに電子署名を適用し、受信者にインボイスを提供する。財務省の電子署名は、電子インボイスがRO E-Facturaシステムで受信されたことを証明する。

SAF-T reporting

Standard Audit File for Tax(SAF-T、税務用標準監査ファイル)は、企業・団体と税務当局との間の会計データの電子交換の国際標準を反映したもので、納税者に課される新たな申告義務である。SAF-Tには、納税者の会計・税務データに関する情報が含まれている(条例2021年11号第1条第7項)。
SAF-Tの主な役割は、税務当局と納税者間の情報伝達を標準化し、双方に利益をもたらすことである。SAF-Tは、納税者が行った業務について税務当局による検証を容易にする一連の情報(当初は税務申告を補足するもので、事前に定義されたフォーマットによる)を定期的に報告するものである(指令2021年1783号第1~5条)。
現時点で、ルーマニアの大規模納税者と中規模納税者の両方は、D406情報申告書を通じて税務用標準監査ファイル(SAF-T)を提出することが義務付けられている。小規模納税者は、2025年1月1日からこの要件の対象となることが予想される(指令2021年1783号第5条)。
中堅・大企業では電子申告が義務化された。電子申告は、電子申告ウェブサイト*(e-guvernare外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を通じて行われる。そのためには電子署名証明書を取得する必要がある。
*本ウェブサイトは公開されていますが、安定したアクセスができない可能性があります。

RO e-Seale-Sigiliu

国家RO e-Sealシステムは、ソフトウエアアプリケーションとインテリジェントデバイスの使用に基づいたシステムであり、管轄当局に、税関/税務当局の監督下で、リスクのある商品を陸路で輸送する場合、移動を追跡する目的で、それらが搭載されている輸送手段の位置に関する情報へのアクセスを提供する。
国家RO e-Sealシステムは、スマートデバイスとソフトウエアアプリケーションの使用に基づいた、自動化された高速な方法を実装している。これにより、管轄当局は、貨物が輸送中であるか、国内の経済事業者の最終目的地にあるかに関係なく、貨物の転用の潜在的な地点を決定することができる(指令2024年5号)。

RO e-Transport

RO e-Transportシステムは、緊急政令2022年41号第2条で言及されている貨物を国内で監視することを目的とした一連の原則、規則、およびITアプリケーションである。これにより、管轄当局はサプライチェーンからの、またはサプライチェーン内の潜在的な迂回ポイントを決定することができる。このシステムは、国家税務庁および国立金融情報センターを通じて財務省によって管理されている(法律2022年41号第2条)。

RO e-Transportシステムでデータを申告する義務は、商品の国内輸送と国際輸送の両方で発生する可能性がある。

E-VAT(E-TVA)

事前申告されたRO e-VAT申告書には、課税対象者によって申告され、財務省とNAFAのITシステム(RO e-InvoiceRO e-TransportRO e-Seal、RO e-SAF-T、統合税関ITシステムおよびこれらの機関のその他のITシステム)に送信される経済活動に関するデータと情報が含まれている(緊急条例2024年70号)。

事前申告されたRO e-VAT申告書は、VAT目的で登録された納税者によって2024年7月1日以降に実行される取引に対して、2024年8月1日から実施される。

事前申告されたRO e-VAT申告書は、VAT申告書の法定提出期限の翌月の5日までに電子手段で送信される。
NAFAが事前入力された値と比較して重要な差異を特定した場合、NAFAはVAT申告書を提出する法定期限の翌月5日までに、「RO e-VATコンプライアンス通知」フォームを介して電子的手段で課税対象者に通知する。
重要な差異とは、VAT申告書に含まれる情報と事前申告されたRO e-VAT申告書に含まれる情報の間で、パーセンテージで少なくとも20%と最小絶対値RON5,000の累積条件を満たす有意性しきい値を超える値を指す(VAT調整に関しては適用されない)。

事前申告されたRO e-VAT申告書を受け取った後、VAT目的で登録された課税対象者は、実行された課税業務および実際の財政状況に従って、事前申告されたデータと情報を検証する。
課税事業者は、「RO e-VATコンプライアンス通知」を受領した日から20日以内に電子的手段で回答する義務がある。

前記の法的期限内にこの義務を遵守しない場合は、原則として違反となり、高額納税者には5,000~1万レイ、中規模納税者には2,500~5,000レイ、その他の法定納税者には1,000~2,500レイの罰金が科せられる。
さらに、要求された情報の未提供または部分的な提供は財政リスク指標とみなされ、税務調査や不正行為防止調査の開始につながる可能性がある。
RO e-VATコンプライアンス通知への対応義務、財政リスク指標への影響、および前記の制裁は、2025年1月1日から発効する。現金会計VATシステムを適用する課税事業者の場合、これに関する規定は、通知とそれに伴う義務および制裁は2025年8月1日から始まる。

RO e-VATコンプライアンス通知は次の場合には適用されない。

  • 重大な誤りがあった場合。
  • 事前申告されたe-VAT申告書の特定の行について、税務機関のデータベースからの十分な情報がないか、データベースからの情報が相関していない状況。
  • 財務大臣の命令により定められたその他の状況。

さらに、財政法第325条の改正により、D390要約ステートメントとそのモデルの提出期限はNAFA会長の命令により定められることとなる。これらの改正は2024年7月1日から発効するが、2024年6月のD390申告は、2024年7月25日までに提出される。