外資に関する奨励

最終更新日:2025年01月28日

奨励業種

ルーマニアは、さまざまな国家援助プログラムを通じて地域開発を積極的に推進し、貿易収支を強化している。政府は、製造、リサイクル、食品、建設資材産業を中心に、さまざまなセクターにわたる有形・無形資産への初期投資を支援するために多額の予算を割り当てている。さらに、いくつかの新たな国家援助措置が間もなく開始されることが想定されており、産業プロセスの脱炭素化や金属鉱物資源の開発などの戦略的分野への投資機会がさらに拡大すると考えられる。

各種優遇措置

外資のみを対象とした優遇措置はない。最恵国待遇の原則に従い、投資家は、あらゆる分野への投資の自由、投資方法と投資形態の自由、国営化や収用に対する保証、配当および外国為替通貨清算による金額を海外へ移転する権利(ルーマニアで適用される税金等の支払いを条件として)が保証される。また投資家は、国際仲裁(投資紛争解決国際センター(ICSID)、国際連合国際商取引委員会(UNICTRAL))もしくは国内裁判所のいずれかを選択する権利が保証される(直接投資に関する政府緊急政令1997年92号)。さらに、いかなる投資家も、優遇措置利用時の平等な扱い(優遇措置付与方法と申請基準を差別しないことを意味する)、透明性、効率性と資金調達源に関する機密性と適合基準が保証される(投資誘致に関する政府緊急政令2008年85号)。

以下の優遇措置は、ルーマニア国内に法人登記する全企業が対象となり、そこには外資も含まれる。

主な税制優遇措置

  1. 海外子会社のための配当金や利益などの海外送金は、金額に制限を設けない(ルーマニア中央銀行規制2005年4号)。
  2. 機械・機器、コンピュータなどの加速減価償却(税法2015年227号)。
  3. 欠損金
    2024年または2024年開始の修正課税年度から発生する欠損金は、その後5年間連続して得られた課税所得の70%の割合で回収(相殺)される。2023年12月31日現在、2024年より前の年度に発生した欠損金で、2023年12月31日現在で回収可能なものについては、欠損金計上年度から連続する7年間における残りの回収可能期間において、課税所得の70%を限度として回収(相殺)される(条例2023年155号第2章(15))。
  4. 利益を生産設備・機器などへ再投資(購入も含む)する際、当該利益(再投資利益)を課税対象外とする(税法2015年227号)。
  5. 研究開発費の50%を税控除対象とする。また研究開発部門の設備および装置などは加速償却の対象とする(税法2015年227号)。
  6. 研究開発のみを行う企業は、国家補助制度の遵守を条件として最初の10年間、法人税を免除する。さらに、研究開発やイノベーション活動によって個人が得た給与収入は、一定の条件が満たされれば個人所得税が免除される(税法2015年227号)。
  7. 法定準備金
    法定準備金の設定は法人税目的で損金算入されるため、準備金が株主資本の20%に達するまで、「会計上の利益+法人税額」の5%まで、納税者は利益を社内に留保することができる。
  8. スポンサーシップ活動に対する税額控除
    スポンサーシップ法と財政法は、法人税納税者である企業が、特定の分野(文化、教育、人道支援など)で行われる活動について、非営利団体/公的機関/個人にスポンサーシップを提供することを認めており、特定の条件下で減税の恩恵を受けることができる。スポンサーシップ費用は控除対象外だが、税額控除となる場合がある(つまり、スポンサーシップ全額について法人税減額に使用できる可能性がある)。財政法では、法人税の20%と会社の売上高の0.75%という制限(最低)が定められている。資格を得るには、受益者が国家財政庁(NAFA)に登録されている必要がある。企業はフォーム107を使用してスポンサーシップを毎年報告する必要がある。
  9. IT業界の従業員に対する個人所得税の免除
    2023年11月1日発効の政令296/2023は、月収(額面)1万レイ(約2,000ユーロ)までのIT関連の業務に従事する従業員に対する個人所得税の全額免除を規定している。月収(額面)が1万レイを超える場合、税制上の優遇措置は適用されない。この免除は従業員の主な勤務地に限定されており、従業員の役職、部門カテゴリー、学歴、ソフトウエア販売による雇用主の収入など、省令(20463/3964/967/1415/2023)に概説されている特定の基準を満たすことが条件となる。
  10. エンジェル投資家に対する配当所得税の免除
    中小企業(SME)に資本を提供する、または中小企業の株式を取得するエンジェル投資家(個人)は、政令2015年第120号に基づき、3年間の配当所得税の免除の恩恵を受けることができる。資格を得るには、投資先の中小企業が有限会社(S.R.L.)として登録され、別法人として運営され、破産または倒産していない必要がある。さらに、金融、保険、コンサルティング、資本市場、ギャンブル、不動産などの分野に関与してはならない。
  11. フリートレードゾーン(自由貿易地域)
    フリートレードゾーンで活動を行う企業には、以下の税制上の優遇措置が適用される。[1]付加価値税(VAT)の免除は、フリートレードゾーンに置かれる非共同体商品の供給、およびフリートレードゾーンで行われるそれぞれの商品の供給に適用される。[2]保管目的でフリートレードゾーンに持ち込まれる非共同体商品には関税がかからない。[3]フリートレードゾーンで行われる投資には国家援助が受けられる。
  12. 資本企業に対する減税
    2021年から2025年の期間に自己資本増加のために法人税、零細企業税、特定税を支払う納税者には、一定の条件の下で最大15%の減税が与えられる。減額のパーセンテージは次のとおり。税金が支払われる年の会計資本の価値がプラスで、引き受けた株式資本の価値の少なくとも半分の場合は2%。調整後資本の年間増加額は増加率に応じて5%から10%の間で、納税者が2020年と比較して一定の目標割合で調整後資本の増加を登録した場合、2022年からは3%となる(法律2020年153号)。
  13. 工業団地
    工業団地内にある建物と土地を所有する企業は、建物税と土地税が免除される。

国家予算からの補助金制度

ルーマニアの貿易収支改善を目的とした地域開発の促進に向けた国家援助(政令2024年300号)

既存企業や新規創業企業が行う有形・無形資産への初期投資をサポートする。農業、鉄鋼、造船、運輸、エネルギーなど一部の業種を除き、ほぼ全業種が対象となる。
総予算は4億5,000万ユーロ。財務省を通じて割り当てられた。

  1. 受益者の条件
    1. 最低初期投資は1,000万ユーロ(付加価値税を除く)
    2. 助成期間は2024年~2026年。財務省と受領企業との間の融資契約に基づき、資金提供は2026年12月31日までに承認され、支払いは2032年までに行われる予定(補助金に割り当てられた予算の範囲内で)
    3. 財政的支援は、最大5,775万ユーロの返還不要な地域国家補助金で構成されている(地域により異なる)。大企業の場合は対象となる費用の最大70%
    4. 対象業種:製造業およびリサイクル業(廃棄物の収集、処理、処分、リサイクル可能な材料の回収活動)
  2. 資金提供による設備投資
    1. 建設、技術設備、機械および装置に代表される有形資産
    2. 特許、ライセンス、ノウハウ、その他の知的財産権などの無形資産

製造業に対する国家援助(政令2024年702号)

このプログラムは、製造業の持続的な成長と新たな雇用場所の創出を支援するための財政的支援を提供する。
新しいユニットの設立、既存ユニットの生産能力の拡大、既存ユニットの生産の多様化、または既存ユニットの全体的な生産プロセスの根本的な変更のための有形および無形資産への初期投資。
総予算は4億4,700万ユーロ。経済・デジタル化・起業・観光省を通じて割り当てられた。

  1. 受益者の条件
    1. 最低初期投資は500万ユーロ(付加価値税を除く)
    2. 助成期間は2025年~2028年
    3. 財政的支援は、最大5,775万ユーロの返還不要な地域国家補助金で構成されている(地域により異なる)。大企業の場合は対象となる費用の最大70%
  2. 資金提供による設備投資
    1. 有形資産(建設、技術設備、機械および設備)および無形資産(特許、ライセンス、ノウハウまたはその他の知的財産権)
    2. 給与費用
    3. 前記2つのカテゴリーの混合

建設製品および資材に対する国家援助‐Construct Plus(政令2023年68号)

このプログラムは地域開発を確実にするための財政支援を提供し、建設資材の輸入に起因する貿易赤字を削減し、建設製品および建設資材の国内生産を増やすことを目的としている。
総予算は5億9,600万ユーロ。経済・デジタル化・起業・観光省を通じて割り当てられた。

  1. 受益者の条件
    1. 最小初期投資は40万ユーロ(付加価値税を除く)
    2. 助成期間は2024年~2029年
    3. この財政支援は、大企業の対象となる費用の最大70%を上限とする返還不要な地域政府補助金で構成される
    4. 対象業種:建設製品・建設資材の製造業
  2. 資金提供による設備投資
    1. 建設、技術設備、機械および装置に代表される有形資産
    2. 特許、ライセンス、ノウハウ、その他の知的財産権などの無形資産

食品産業に対する国家補助制度‐INVESTALIM(政令2023年65号)

新しい部門の設立、既存部門の能力の活用、または既存部門の生産の多角化のための有形および無形資産の取得に関連する食品産業への初期投資をサポートする。
総予算は5億9000万ユーロ。地方投資融資庁(AFIR)を通じて割り当てられた。

  1. 受益者の条件
    1. 最低初期投資は50万ユーロ(付加価値税を除く)
    2. 助成期間は2023年~2026年
    3. 財政的支援は、最大5,775万ユーロの返還不要な地域国家補助金で構成されている(地域により異なる)。大企業の場合は対象となる費用の最大70%
    4. 対象業種:食品の加工および保存
  2. 資金提供による設備投資
    1. 有形資産(建設、技術設備、機械および設備)および無形資産(特許、ライセンス、ノウハウまたはその他の知的財産権)
    2. 給与費用
    3. 前記2つのカテゴリーの混合

その他の国家援助措置

前述までの制度に加えて、他のいくつかの国家援助措置が間もなく(2024年末/2025年初め)開始される予定。

  1. 戦略的投資に対する国家補助制度
    製造業における投資プロジェクトを対象としている。総予算10億ユーロのこの計画は、2025年から2030年まで実施される予定で、1億5,000万ユーロを超える多額の投資を呼び込み、100以上の新たな職場を創出することを目指している。
  2. 産業プロセスの脱炭素化のための戦略的投資に対する国家補助制度
    脱炭素化プロセスに焦点を当てた冶金および化学産業の投資プロジェクトに資金を提供するように設計されている。総予算は10億ユーロで、この計画は2026年から2030年まで実施される。対象プロジェクトは、電化、再生可能資源からの水素の使用、エネルギー効率の向上を優先する必要がある。
  3. 金属鉱物資源の資本化スキーム
    金属鉱物資源の開発のための投資をサポートする。総予算は2億5,000万ユーロで、この制度は2024年から2025年まで実施される。対象となる投資は7,500万ユーロを超える必要がある。
  4. 小規模産業家向けの国家補助制度
    繊維、皮革、履物、化学製品などの軽工業への投資を支援するように設計されている。5年間の総予算は7億4,000万ユーロで、この制度は50万ユーロから300万ユーロの投資額を目標にしており、最大180万ユーロまで国からの援助が受けられる。

(注)これらの国家補助計画は、国家支援プログラムに対するルーマニア当局の将来の戦略を表している。この情報は公開情報に基づいて作成されているが、現在、一般的な枠組みが構築中であるため、最終版は前記内容と異なる可能性がある。

その他

特になし。