ポーランドの貿易と投資(世界貿易投資動向シリーズ)
マクロ経済
GDP成長率はプラスを維持、インフレ率は今後落ち着く見通し
ポーランドの2022年の実質GDP成長率は5.1%と、前年の6.9%から1.8ポイント減となったもののプラス成長を維持した。成長率を需要項目別にみると、民間最終消費支出は3.3%増(前年比2.9ポイント減)、政府最終消費支出は2.0%減(7.0ポイント減)と縮小した一方、国内総固定資本形成は5.0%増(3.8ポイント増)と拡大した。産業別に前年比でみると、金融・保険(43.6%増)、製造業(7.5%増)は伸びた一方、情報・通信(17.2%減)、宿泊・飲食(17.0%減)、流通・自動車修理(10.5%減)、運輸・倉庫(5.8%減)、建設(4.4%減)などは振るわなかった。
ポーランド経済研究所(PIE)が2023年8月に発表した報告書では、2023年の実質GDP成長率は0.7%、2024年は2.2%と予測している。
項目 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
年間 | Q1 | Q2 | Q3 | Q4 | Q1 | ||
実質GDP成長率 | 6.9 | 5.1 | 4.5 | △2.5 | 1.0 | △2.3 | 3.8 |
民間最終消費支出 | 6.2 | 3.3 | 0.8 | 0.9 | △0.9 | △2.0 | △0.8 |
政府最終消費支出 | 5.0 | △2.0 | 0.4 | 0.1 | 0.1 | △11.4 | 13.9 |
国内総固定資本形成 | 1.2 | 5.0 | 1.3 | 1.9 | △0.2 | 1.6 | 1.9 |
財貨・サービスの輸出 | 12.3 | 6.2 | 0.8 | 1.5 | 2.4 | △0.3 | △0.4 |
財貨・サービスの輸入 | 16.1 | 6.2 | 0.9 | 1.3 | 1.1 | △2.2 | △4.0 |
〔注〕四半期の伸び率は前期比(季節調整済み)。
〔出所〕ポーランド中央統計局(GUS)
2022年の消費者物価指数(CPI)上昇率は14.4%だった。前述のPIEの報告書によると、CPI上昇率は、2023年2月をピークに低下しており、2023年の平均は12.6%になった。その後も下降傾向は続き、2024年の平均は7.9%になると予測している。一方で、食料品価格の伸びは計画的に鈍化するが、エネルギーやサービスの価格上昇によって、インフレ率が押し上げられる可能性があると指摘した。
2022年の失業率は5.2%で、前年の5.8%からわずかに改善した。ユーロスタットの2023年8月の発表によると、ポーランドの同年6月の失業率(季節調整値)は、EU加盟国の中でマルタに次いで2番目に低い2.7%(チェコと同率)だった。
貿易
輸出入ともにEU加盟以降最高を更新、貿易収支は2年連続の赤字
2022年の貿易は、輸出が前年比19.3%増の3,438億2,720万ユーロ、輸入は25.6%増 の3,636億6,010万ユーロとなり、ともにポーランドがEUに加盟した2004年以降の最高額を更新した。貿易収支は198億3,300万ユーロと2年連続の赤字となり、前年の14億6,100万ユーロから赤字額が大幅に増加した。
輸出を品目別にみると、最大品目である機械・輸送用機器(構成比35.9%)は、発電機械・設備(3.7%)の前年比30.9%増、事務用機械・自動データ処理機械(2.5%)の24.7%増、道路走行車両(8.8%)の21.1%増、電気機械・同部品(9.3%)の15.1%増がけん引し、15.4%増と好調だった。そのほか、原料別製品(18.2%)は19.0%増、食料品および動物(11.3%)は28.9%増など、輸出拡大に貢献した。また、構成比としては小さいものの、鉱物性燃料・潤滑油(3.8%)は2.2倍に増え、動植物性油脂およびろう(0.4%)は91.1%増と、大きく伸びた。
品目 | 輸出(FOB) | 輸入(CIF) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2021年 | 2022年 | 2021年 | 2022年 | |||||
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | 金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
機械・輸送用機器 | 106,874 | 123,284 | 35.9 | 15.4 | 99,877 | 112,186 | 30.8 | 12.3 |
原料別製品 | 52,731 | 62,743 | 18.2 | 19.0 | 51,029 | 59,404 | 16.3 | 16.4 |
雑製品 | 50,967 | 56,219 | 16.4 | 10.3 | 39,942 | 47,681 | 13.1 | 19.4 |
食料品および動物 | 30,162 | 38,878 | 11.3 | 28.9 | 19,341 | 24,131 | 6.6 | 24.8 |
化学工業製品 | 28,017 | 33,956 | 9.9 | 21.2 | 42,598 | 52,127 | 14.3 | 22.4 |
鉱物性燃料・潤滑油 | 5,968 | 12,963 | 3.8 | 117.2 | 17,711 | 35,827 | 9.9 | 102.3 |
食用に適さない原材料 | 6,872 | 7,730 | 2.2 | 12.5 | 8,508 | 10,673 | 2.9 | 25.5 |
飲料およびたばこ | 5,338 | 5,593 | 1.6 | 4.8 | 2,214 | 2,584 | 0.7 | 16.7 |
動植物性油脂およびろう | 630 | 1,204 | 0.4 | 91.1 | 1,463 | 2,460 | 0.7 | 68.1 |
合計(その他含む) | 288,146 | 343,827 | 100.0 | 19.3 | 289,606 | 363,660 | 100.0 | 25.6 |
〔注〕 EU 域外貿易は通関ベース、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ポーランド中央統計局(GUS)
輸出を国・地域別にみると、EU(構成比75.6%)は前年比20.2%増と好調だった。そのうち、ユーロ圏(58.9%)は18.7%増で、最大の輸出先であるドイツ(27.8%) は15.3%増だった。同国向けの最大輸出品目である機械・輸送用機器(35.7%)が15.2%増、原材料別製品(18.8%)が21.0%増、食料品および動物(10.0%)が33.3%増と寄与した。機械・輸送用機器の内訳をみると、電気機械・同部品(11.3%)の前年比17.1%増、道路走行車両(9.3%)の18.4%増がけん引した。EUのうち、非ユーロ圏(16.7%)は25.5%増だった。ドイツに次ぐ主要な輸出先であるチェコ(6.6%)が32.9%増、その他のEU加盟国も軒並み大幅に増加した。
EU域外で最大の輸出先である英国(4.9%)は前年比16.8%増、それに続く米国(3.0%)は34.7%増と大きく伸びた。ウクライナ(2.8%)は主要国・地域別で最大の伸び率の55.1%増で、鉱物性燃料・潤滑油(20.7%)が7.9倍に増えたほか、雑製品(17.4%)が83.1%増、機械・輸送用機器(22.6%)が16.9%増と貢献した。―方、ロシア(1.4%)向けの輸出は40.1%減と大幅に縮小し、特に機械・輸送用機器(29.1%)の59.6%減が響いた。
国・地域 | 輸出(FOB) | 輸入(CIF) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2021年 | 2022年 | 2021年 | 2022年 | |||||
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | 金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
EU | 216,322 | 259,922 | 75.6 | 20.2 | 156,623 | 186,627 | 51.3 | 19.2 |
ユーロ圏 | 170,571 | 202,520 | 58.9 | 18.7 | 130,150 | 153,323 | 42.2 | 17.8 |
ドイツ | 82,860 | 95,558 | 27.8 | 15.3 | 60,590 | 73,394 | 20.2 | 21.1 |
フランス | 16,532 | 19,663 | 5.7 | 18.9 | 9,682 | 10,709 | 2.9 | 10.6 |
オランダ | 12,518 | 15,843 | 4.6 | 26.6 | 11,984 | 13,902 | 3.8 | 16.0 |
イタリア | 13,362 | 15,764 | 4.6 | 18.0 | 14,615 | 16,800 | 4.6 | 15.0 |
スロバキア | 7,398 | 9,925 | 2.9 | 34.2 | 5,451 | 5,649 | 1.6 | 3.6 |
非ユーロ圏 | 45,750 | 57,401 | 16.7 | 25.5 | 26,474 | 33,303 | 9.2 | 25.8 |
チェコ | 17,042 | 22,657 | 6.6 | 32.9 | 9,138 | 11,119 | 3.1 | 21.7 |
スウェーデン | 8,036 | 9,168 | 2.7 | 14.1 | 4,804 | 6,125 | 1.7 | 27.5 |
ハンガリー | 7,189 | 8,819 | 2.6 | 22.7 | 4,402 | 5,072 | 1.4 | 15.2 |
アジア大洋州 | 8,741 | 9,740 | 2.8 | 11.4 | 68,558 | 88,071 | 24.2 | 28.5 |
中国 | 3,062 | 2,970 | 0.9 | △ 3.0 | 42,850 | 53,616 | 14.7 | 25.1 |
ASEAN | 1,564 | 1,932 | 0.6 | 23.6 | 9,214 | 12,106 | 3.3 | 31.4 |
インド | 947 | 1,403 | 0.4 | 48.0 | 2,711 | 3,868 | 1.1 | 42.7 |
オーストラリア | 990 | 989 | 0.3 | △ 0.1 | 470 | 1,369 | 0.4 | 191.4 |
韓国 | 774 | 852 | 0.2 | 10.1 | 6,536 | 8,668 | 2.4 | 32.6 |
日本 | 733 | 786 | 0.2 | 7.1 | 4,479 | 5,371 | 1.5 | 19.9 |
英国 | 14,402 | 16,819 | 4.9 | 16.8 | 4,552 | 6,413 | 1.8 | 40.9 |
米国 | 7,626 | 10,273 | 3.0 | 34.7 | 8,917 | 15,637 | 4.3 | 75.4 |
ウクライナ | 6,270 | 9,726 | 2.8 | 55.1 | 4,247 | 6,085 | 1.7 | 43.3 |
ロシア | 7,998 | 4,791 | 1.4 | △ 40.1 | 17,001 | 15,523 | 4.3 | △8.7 |
トルコ | 2,648 | 3,861 | 1.1 | 45.8 | 5,258 | 6,544 | 1.8 | 24.5 |
メキシコ | 1,587 | 2,138 | 0.6 | 34.7 | 709 | 860 | 0.2 | 21.3 |
サウジアラビア | 776 | 870 | 0.3 | 12.2 | 2,113 | 5,743 | 1.6 | 171.8 |
南アフリカ共和国 | 635 | 789 | 0.2 | 24.3 | 439 | 1,421 | 0.4 | 223.7 |
ブラジル | 549 | 698 | 0.2 | 27.1 | 1,418 | 2,023 | 0.6 | 42.7 |
合計(その他含む) | 288,146 | 343,827 | 100 | 19.3 | 289,606 | 363,660 | 100 | 25.6 |
〔注〕 (1)EU 域外貿易は通関ベース、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
(2)アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港および台湾を加えた合計値。
〔出所〕ポーランド中央統計局(GUS)
輸入を品目別にみると、最大品目である機械・輸送用機器(構成比30.9%)は、電気機械・同部品(7.7%)の15.9%増、道路走行車両(7.2%)の16.4%増がけん引し、12.3%増だった。また、鉱物性燃料・潤滑油(9.9%)は2.0倍に増えたほか、化学工業製品(14.3%)が22.4%増、原料別製品(16.3%)が16.4%増と貢献した。鉱物性燃料・潤滑油の内訳をみると、石油・石油製品(7.0%)が76.4%増、石炭・コークスおよび練炭(1.6%)が4.1倍の増加だった。
輸入を国・地域別にみると、全体の半分以上を占めるEU(構成比51.3%)が前年比19.2%増となり、そのうち、最大の輸入元であるドイツ(20.2%)が21.1%増となった。また、イタリア(4.6%)は15.0%増、オランダ(3.8%)は16.0%増など、ほかのEU加盟国も好調だった。EU域外では、ドイツに次ぐ輸入相手国である中国(14.7%)が25.1%増と前年に引き続き好調だった。最大輸入品目の機械・輸送用機器(52.1%)の17.6%増のほか、雑製品(27.1%)の28.4%増、化学工業製品(7.2%)の67.4%増、原料別製品(11.8%)の29.0%増が寄与し、中国からの輸入をけん引した。米国(4.3%)は、鉱物性燃料・潤滑油(8.4%)の15.4倍や、機械・輸送用機器(32.1%)の25.1%増により、75.4%増と大きく伸びた。さらに、その内訳をみると、石油・石油製品(6.1%)の58.6倍、発電機械・設備(12.4%)の32.8%増が貢献した。そのほか、ウクライナ(1.7%)は43.3%増となり、穀物およびその調製品(10.2%)の19.4倍に支えられた食料品および動物(22.7%)の3.0倍と、植物性油脂(13.4%)の2.3倍に支えられた動植物性油脂およびろう(13.8%)の2.3倍がけん引した。一方、ロシア(4.3%)は8.7%減になり、これまで輸入相手国として維持していた3位から5位に転落した。原料別製品(7.3%)が39.5%減となり、そのうち特に鉄鋼(2.8%)の57.5%減が響いた。
対内・対外直接投資
対内直接投資は自動車、物流、エネルギー関連で好調
ポーランド国立銀行によると、2022年の対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年比4.5%増の327億7,400万ユーロとなり、2004年のEU加盟以降、最高額を更新した。
項目 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|---|---|---|
対内直接投資額 | 16,150 | 15,662 | 16,650 | 31,351 | 32,774 |
対外直接投資額 | 1,986 | 4,804 | 4,132 | 7,960 | 6,804 |
〔出所〕ポーランド国立銀行(NBP)
2022年の主な対内直接投資案件をみると、自動車、物流、エネルギー関連の投資が目立った。ドイツのメルセデス・ベンツグループは2022年12月、電動バンの生産工場を建設すると発表した。約2,500人の雇用を見込む。米国のヒルウッドは2022年10月、ドイツのエルメス・フルフィルメントは2022年4月に、それぞれポーランドに大型物流センターを建設すると発表した。米国のニュースケール・パワーとポーランドの鉱業大手KGHMポルスカ・ミエッジは2022年2月、ポーランドに最大12基の小型モジュール式原子炉(SMR)の開発・建設に関する契約を締結したと発表した。また、エネルギー分野において、ポーランド政府が2022年11月、国内初の原子力発電所を米国の原子力企業ウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニーの技術に基づいて建設すると決議したことは注目を浴びた。
業種 | 企業名 | 国籍 | 時期 | 投資額 | 概要 |
---|---|---|---|---|---|
自動車 | メルセデス・ベンツグループ | ドイツ | 2022年12月 | 13億ユーロ | メルセデス・ベンツグループ傘下のメルセデス・ベンツ・バンズは、電動バンの生産工場を建設すると発表。2,500人の雇用を見込む。投資は2023年11月、生産は2026年1月に開始される予定。 |
航空 | ライアンエアー | アイルランド | 2022年4月 | 8億ドル | 格安航空会社ライアンエアーは2022年夏、ポーランド最大のハブとして10の新規路線を含む73路線を運航するため、クラクフ空港に投資することを発表。パイロットや客室乗務員、地上スタッフなど420人の新規直接雇用を見込む。 |
物流 | ヒルウッド | 米国 | 2022年10月 | 15億ズロチ | ポーランドのデベリアは、ヒルウッドと西部ブロツワフ近郊のマリンに物流センター建設のための合弁契約を締結。本契約の一環として、少なくとも40万GLA(総賃貸面積)の物流センターを建設予定。 |
物流 | エルメス・フルフィルメント | ドイツ | 2022年4月 | 3億ユーロ | 米国の工業用不動産開発大手パナットーニのポーランド法人は、ドイツの物流企業エルメス・フルフィルメントの欧州最大のハブとなる、15万平方メートルの物流センターをポーランド西部のイウォバに建設すると発表。同センターは約1,900人の雇用を創出し、2023年末までに開設する予定。 |
エネルギー | ダイキン工業 | 日本 | 2022年7月 | 3億ユーロ | ダイキン工業は、中部ウッチ県のクサベルフ工業団地に3億ユーロを投資し、ヒートポンプ式暖房機の新工場を設立することを発表。欧州で急増するヒートポンプ式暖房機の需要に応える生産拠点として、2024年7月に稼動を開始する予定。 |
エネルギー | ニュースケール・パワー | 米国 | 2022年2月 | 非公開 |
ニュースケール・パワーとポーランドの鉱業大手KGHMポルスカ・ミエッジは、小型モジュール式原子炉(SMR)の契約を締結したと発表。 この契約は、2021年9月に表明されたSMR技術に関する協力の覚書に基づき、最大12基の小型モジュール式原子炉(設置容量約1ギガワット)の開発と建設が可能になる。2029年までに稼働予定。 |
〔出所〕 各社発表および報道などから作成
被買収企業(事業) | 買収企業 | 時期 | 投資額 | 概要 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
業種 | 企業名 | 企業名 | 国籍 | |||
通信 | プレイ・グループ | インフラビア・キャピタル・パートナーズ | フランス | 2023年4月 | 17億7,500万ズロチ | インフラビア・キャピタル・パートナーズはポーランドの大手通信事業者プレイ・グループ子会社ポルスキ・シフィアトウォド・オトワルティ(PSO、旧:ファイバーフォース)の株式50%の取得を完了したと発表。 |
通信 | エミテル | コーディアント・デジタル・インフラストラクチャ | 英国 | 2022年11月 | 非公開 | ポーランド最大の地上波放送インフラ事業者エミテルの買収を完了。 |
物流関連ソフトウェア | イネロ | ユーロワーグ | チェコ | 2022年10月 | 3億600万ユーロ | 商用道路輸送業界向けに統合決済およびモビリティ・プラットフォームを提供するユーロワーグの子会社W.A.G. ペイメント・ソリューションズは、ポーランドとスロベニアにおけるフリート管理ソリューションと時間管理ソフトウエアのプロバイダー、イネロを買収すると発表。 |
ヘルスケア | キュリオシティ・ダイアグノスティックス | バイオ・ラッド ラボラトリーズ | 米国 | 2022年8月 | 1億7,000万ドル | ライフサイエンス研究および臨床診断製品のバイオ・ラッド・ラボラトリーズは、ポーランドで医療診断およびヘルスケア市場向けの革新的な技術ソリューションを開発するスコープ・フルイディクスからキュリオシティ・ダイアグノスティックスの発行済み全株式を取得することで合意したと発表。 |
〔出所〕 各社発表および報道などから作成
ポーランド投資・貿易庁(PAIH)が支援し実現した2022年の対内直接投資案件は126件(ポーランド企業からの19件を含む)だった。企業が申告した投資予定額は合計37億4,538万ユーロに上り、過去最高となった。国別では、件数が多い順に、ベラルーシ50件、米国18件、ドイツ9 件、中国5件、韓国 4 件、ウクライナ4件、スイス3件、日本2件だった。政府による情報通信技術(ICT)の専門技術者や企業を対象としたポーランドへの移転をサポートする「ポーランド・ビジネスハーバー」プロジェクトがベラルーシの件数の増加に大きく寄与した。分野別では、ビジネス・サービス分野58 件(うちIT 51 件、シェアード・サービスセンター 7件)、研究開発(R&D) 13 件、食品8件、機械5件、自動車 5件、エレクトロモビリティ4 件、繊維4件などだった。投資額では、ドイツが最大で、2位がスイス、3位が日本だった。
対外直接投資は前年比14.5%減
2022年の対外直接投資は68億400万ユーロ、前年比で14.5%減となった。エネルギー大手のアール・パワーは2022年1月、イタリアで太陽光発電所プロジェクト7件を落札したことを発表した。使い捨て医療用ニトリル手袋のメーカーであるメルカトール・メディカル・グループは2022年2月、タイ生産拠点にある同国3カ所目の新工場で、最初の生産ラインを稼働させたと表明した。豪華ヨットや双胴船(カタマラン)を建造するサンリーフ・ヨットは2022年7月、アラブ首長国連邦(UAE)で海外初の造船所の新設に3,000万ユーロの投資を行うと発表し、翌月にはトルコのイスタンブール、2023年2月にはUAEのドバイに営業所を開設し、中東への進出を積極的に進めている。
業種 | 企業名 | 投資先国 | 時期 | 投資額 | 概要 |
---|---|---|---|---|---|
医療用品 | メルカトール・メディカル・グループ | タイ | 2022年2月 | 2億ズロチ | 使い捨て医療用ニトリル手袋のメーカー、メルカトール・メディカル・グループは、タイ生産拠点の同国3カ所目の新工場で、最初の生産ラインを稼働させたと発表。 |
造船 | サンリーフ・ヨット |
アラブ首長国連邦 トルコ アラブ首長国連邦 |
2022年7月 2022年8月 2023年2月 |
3,000万ユーロ 非公表 非公表 |
豪華ヨットや双胴船(カタマラン)を建造するサンリーフ・ヨットは2022年7月、アラブ首長国連邦(UAE)で海外初の造船所の新設を発表し、翌8月にはトルコのイスタンブール、2023年2月にはUAEのドバイに営業所の開設を発表し、中東への進出を拡大させている。 |
エネルギー | アール・パワー | イタリア | 2022年1月 | 非公表 | 太陽光パネルなどの再生可能エネルギープロジェクトを行うアール・パワーは、合計容量21.1MWp(メガワットピーク)の太陽光発電所プロジェクト7件をイタリアにおけるオークションで落札したことを発表。 |
アパレル、小売り | LPPグループ | ルーマニア | 2023年1月 | 非公表 | ポーランドの大手アパレルメーカーLPPグループは、ルーマニアに同国2カ所目の物流拠点を新設すると発表。新たな投資先の戦略的立地により、LPPはルーマニア、ブルガリア、ハンガリー、クロアチア、北マケドニア、セルビア、ギリシャにある450店舗にサービスを提供できるようになる。 |
フィンテック | ブリック | ルーマニア | 2023年2月 | 非公表 | モバイルを使った送金決済サービスを提供するポーランドのフィンテック企業ブリックが、ルーマニアに法人を設立したと発表。 |
〔出所〕 各社発表および報道などから作成
買収企業 | 被買収企業(事業) | 時期 | 投資額 | 概要 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
業種 | 企業名 | 国籍 | ||||
グルーパ・プラーツイ | IT(HRテック) | スプーンビル・ホールディング | ドイツ | 2022年6月 | 1億1,760万ユーロ | 欧州の大手HRテック企業グルーパ・プラーツイは、オンライン求人プラットフォームの開発などを行う企業への金融投資サービスを提供するスプーンビル・ホールディングの買収を完了。 |
べルコム | IT(マーケティングツール) | メーラーライト | 米国 | 2022年6月 | 4億ズロチ | CPaaS(コミュニケーション・プラットフォーム・アズ・ア・サービス)モデルでクラウドベースのソリューションを提供するべルコムは、メールマーケティングツールのグローバルプロバイダーであるメーラーライトの買収を完了した。世界180カ国、約5万7,000人の顧客にサービスを提供する。 |
ネウカ・グループ | 医療 | オンコベイ・クリニカル | 米国 | 2023年1月 | 3,350万ドル | ポーランドの大手医薬品卸売・販売のネウカ・グループの子会社であるネウカ・クリニカル・トライアルズは、米国フロリダ州に本拠を置く、腫瘍免疫療法の早期臨床試験を実施するオンコベイ・クリニカルの72.6%の株式を取得。 |
〔出所〕 各社発表および報道などから作成
対日関係
対日貿易額も輸出入ともに増加
2022年の対日貿易は、輸出が前年比7.1%増の7億8,600万ユーロ、輸入が19.9%増の53億7,100万ユーロとなり、輸出入ともに増加した。貿易赤字は前年の37億4,600万ユーロから45憶8,500ユーロに拡大した。
対日輸出を品目別にみると、最大の輸出品目である機械・輸送用機器(構成比48.7%)が前年比 8.0%増、続く食料品および動物(13.6%)が16.6%増と堅調に増加した。他にも食用に適さない原材料(5.0%)が34.3%増と対日輸出の増加に大きく貢献した。一方、原料別製品(12.3%)、雑製品(12.0%)はそれぞれ6.1%減、0.2%減と減少した。
対日輸入を品目別にみると、最大の輸入品目である機械・輸送用機器(構成比52.9%)が前年比 22.6%増と大幅に拡大し、化学工業製品(18.4%)は28.2%増、原料別製品(9.8%)は42.1%増と対日輸入の伸びに大きく寄与した。一方、3番目に輸入額の大きい雑製品(16.7%)は2.8%減と3年連続で縮小した。
品目 | 2021年 | 2022年 | ||
---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
機械・輸送用機器 | 354 | 382 | 48.7 | 8.0 |
食料品および動物 | 92 | 107 | 13.6 | 16.6 |
原料別製品 | 103 | 96 | 12.3 | △ 6.1 |
雑製品 | 94 | 94 | 12.0 | △ 0.2 |
化学工業製品 | 57 | 64 | 8.1 | 10.9 |
食用に適さない原材料 | 29 | 39 | 5.0 | 34.3 |
飲料およびたばこ | 1 | 2 | 0.2 | 44.5 |
合計(その他含む) | 733 | 786 | 100.0 | 7.1 |
〔出所〕ポーランド中央統計局(GUS)
品目 | 2021年 | 2022年 | ||
---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
機械・輸送用機器 | 2,318 | 2,842 | 52.9 | 22.6 |
化学工業製品 | 770 | 987 | 18.4 | 28.2 |
雑製品 | 923 | 897 | 16.7 | △ 2.8 |
原料別製品 | 370 | 526 | 9.8 | 42.1 |
食用に適さない原材料 | 80 | 96 | 1.8 | 20.9 |
その他 | 10 | 10 | 0.2 | 2.6 |
食料品および動物 | 5 | 7 | 0.1 | 55.8 |
合計(その他含む) | 4,479 | 5,371 | 100.0 | 19.9 |
〔出所〕ポーランド中央統計局(GUS)
日系企業も各分野で投資を拡大
日系企業による2022年の主な直接投資事例としては、ダイキン工業が2022年7月、欧州で急増するヒートポンプ式暖房機の需要に応えるための生産拠点として、ウッチ県に3億ユーロを投資し、新工場を設立することを発表した。ファーストリテイリング傘下のアパレルブランド、ユニクロは2022年10月、東欧初の店舗をワルシャワに開いた。日立製作所の米国子会社のグローバルロジックは2023年2月、自動車メーカーのステランティスと提携し、ポーランドに自動車特化型のソフトウエア開発施設を新たに設立すると発表した。国際協力銀行(JBIC)と経営共創基盤(IGPI)による共同設立会社のJBIC IG Partnersは2023年5月、米国およびポーランドを拠点とするffベンチャーキャピタルとともに、中東欧地域7カ国のスタートアップ向けに投資を行うファンドをポーランドに設立すると発表した。民間企業5社が戦略投資家としてJBICとともに出資し、これら企業と自動化・遠隔化・省力化技術等に貢献するスタートアップとの事業提携や資本提携等を促進することで、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を戦略面から支援するとしている。
基礎的経済指標
- 人口
- 3,777万人(2022年)
- 面積
- 32万2,719平方キロメートル
- 1人当たりGDP
- 1万8,280米ドル(2022年)
項目 | 単位 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|---|---|
実質GDP成長率 | (%) | △2.0 | 6.9 | 5.1 |
消費者物価上昇率 | (%) | 3.4 | 5.1 | 14.4 |
失業率 | (%) | 6.8 | 5.8 | 5.2 |
貿易収支 | (100万米ドル) | 8,111 | △8,727 | △ 25,545 |
経常収支 | (100万米ドル) | 14,764 | △ 9,562 | △ 20,762 |
外貨準備高(グロス) | (100万米ドル) | 140,316 | 152,522 | 153,340 |
対外債務残高(グロス) | (100万米ドル) | 377,462 | 365,585 | 370,844 |
為替レート | (1米ドルにつき、ズロチ、期中平均) | 3.90 | 3.86 | 4.46 |
注:
貿易収支:財のみ
貿易収支、経常収支:国際収支ベース
出所:
人口、面積、実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:ポーランド中央統計局(GUS)
1人あたりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):ポーランド国立銀行(NBP)