フランスの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2023年の実質GDP成長率は1.1%と前年から鈍化。
  • 輸出は前年に続き増加。輸入はエネルギー価格の低下を受けて減少。
  • 対内直接投資は前年比46.2%減。戦略産業保護を目的にした外資審査制度の強化措置を恒久化。
  • 日本からの直接投資は前年比74.1%減、対日直接投資は24.1%減と双方向で減少。

公開日:2024年11月13日

マクロ経済 
2023年は物価高騰で内需が低迷

2023年の実質GDP成長率は1.1%と前年の2.6%から鈍化した。財貨・サービスの輸出は前年比2.5%増、輸入は0.7%増と、前年のそれぞれ8.4%増、9.1%増から減速した。輸出の伸びが輸入の伸びを上回り、純輸出は実質GDP成長率を0.6ポイント押し上げた。

内需(在庫調整を除く)の寄与度は0.9ポイントと前年の2.4ポイントから減少した。民間最終消費支出の伸びは物価高騰による家計購買力の低下を受けて、前年の3.0%増から0.9%増に低下した。住宅投資は金利上昇の影響から8.2%減と前年(3.3%減)からさらに落ち込んだ。民間設備投資は3.1%増と堅調に推移した。公共投資は7.1%増と前年の0.1%増から急伸した。

エマニュエル・マクロン大統領は2021年10月、戦略分野における再工業化や2050年でのカーボンニュートラル(炭素中立)達成に向けた脱炭素化を目的に、総額540億ユーロの国家投資計画「フランス2030」を発表した。2023年12月までの2年間に脱炭素水素 注)のサプライチェーンの構築や低炭素モビリティの開発と国内生産、クリティカル・マテリアルの資源循環促進、スタートアップ企業の育成支援など3,650件以上のプロジェクトに合わせて299億ユーロの投資支援を決定した。

フランス銀行(以下、中銀)は2024年6月11日に発表したマクロ経済予測の中で、2024年の実質GDP成長率を0.8%と予測した。消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率)の低下は家計購買力を強化するものの、金利上昇の影響で企業設備投資および住宅投資が鈍化し、内需は低迷が続く。在庫調整が進むなか、外需は輸入が減少を続ける一方、輸出は航空機を中心に堅調に推移し実質GDP成長率を1.0ポイント押し上げると見通した。

2024年のインフレ率はエネルギー、食品、工業製品の値下がりを受けて年平均で2.5%と2023年の5.7%から低下する。失業率は景気減速に伴う雇用創出数の減少から7.5%と前年を0.2ポイント上回り、2025年は7.8%まで上昇する。財政赤字のGDP比は、政府が2024年2月に打ち出した100億ユーロの歳出削減措置を受けて、前年の5.5%から5.2%に縮小すると見通した。

注)製造工程・利用過程で二酸化炭素(CO2)を排出しない水素のこと。フランスでは、原子力または再生可能エネルギー由来の電力を利用して生産された水素とする。

表1 フランスの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率(その他含む) 2.6 1.1 0.1 0.6 0.1 0.4
階層レベル2の項目民間最終消費支出 3.0 0.9 0.2 △ 0.1 0.6 0.1
階層レベル2の項目政府最終消費支出 2.6 0.8 △ 0.3 0.1 0.4 0.4
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 0.1 0.7 △ 0.1 0.4 △ 0.1 △ 0.9
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 8.4 2.5 △ 1.3 2.9 △ 1.2 0.7
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 9.1 0.7 △ 1.6 1.5 △ 0.8 △ 2.1

〔注〕四半期の伸び率は前期比。
〔出所〕フランス国立統計経済研究所(INSEE)

貿易 
電力輸出は持ち直し、貿易赤字は縮小

フランスの2023年の貿易は、輸出が前年比1.7%増の5,873億7,300万ユーロ、輸入は7.1%減の7,175億4,400万ユーロだった。貿易収支は1,301億7,100万ユーロの赤字となった。輸入が大幅に減ったため、貿易赤字は前年に比べ約648億ユーロ縮小した。

航空機・宇宙飛行体、精油・調整香料・化粧品類、革製品・旅行用具・ハンドバッグなどの品目で黒字額が前年から増加した。最大の赤字品目である鉱物性燃料は、原油・ガス、電力の価格上昇が収束したことから赤字額は704億4,300万ユーロと前年から467億1,400万ユーロ減少した。2022年はロシアのウクライナ侵攻を機に深刻化したエネルギー危機に加え、定期検査や配管の腐食問題により原子力発電所の運転停止が重なり電力輸出は急減したが、2023年は原発の再稼働を受け輸出量は倍増し、フランスは再び電力の純輸出国となった。

輸出を品目別に見ると、最大のシェアを占める原子炉・ボイラー・機械類(構成比11.6%)が前年比11.2%増、鉄道用または軌道用を除く自動車(9.5%)は18.0%増、電気機器(7.8%)は3.2%増と増加した。航空機・宇宙飛行体(6.0%)は12.0%増と前年に続き好調な伸びを示した。

エアバス航空機の輸出額は225億2,600万ユーロ(引き渡し機数262機)と前年の206億4,000万ユーロ(236機)を上回ったが、部素材の調達不足から生産の回復が遅れており、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)拡大前の2019年(320億1,500万ユーロ、358機)のほぼ7割の水準にとどまった。欧州が94億5,300万ユーロと前年から29%増と急増し、アジアを抜いて最大輸出相手地域となった。アジアは1.9%減の78億3,700万ユーロ、米州は17.1%減の25億9,300万ユーロと両地域ともに2年連続で縮小した。中近東は21億3,400万ユーロと前年から27.9%増となった。アフリカは17.7%減の4億3,600万ユーロと縮小が続いた。

エネルギー価格が下落したことから、鉱物性燃料輸出(構成比4.9%)は前年比11.7%減となり、化学品、金属などエネルギー集約型製品の輸出額も低下した。鉄鋼(2.5%)は20.5%減、有機化学品(2.4%)は0.8%減、各種化学工業製品(2.3%)は5.4%減だった。

国・地域別では、輸出全体の55.7%を占めるEUは前年比0.9%増と前年からほぼ横ばいとなった。最大輸出相手国のドイツ(構成比13.7%)が0.2%減となったほか、主要相手国のイタリア(8.9%)が3.3%減と落ち込んだ。

EU域外で最大輸出相手国の米国(構成比7.5%)は前年比5.9%減となった。主力の飲料・アルコール(特にコニャック)、医療用品、航空機・宇宙飛行体の輸出減が響いた。また前年は大型客船の引き渡しで膨らんだ船舶が前年から半減した。

英国(構成比6.1%)は自動車・部品や電力などが牽引し前年比7.2%増の伸びを示した。中国(香港含む)(5.2%)は同国の新型コロナ規制(ゼロコロナ政策)廃止の影響などから5.5%増とプラスの伸びを取り戻した。ロシア(0.3%)はウクライナ侵攻に伴うEUの対ロシア制裁措置を受けて33.5%減と前年からの縮小が続いた。

表2‐1 フランスの主要品目別輸出(FOB)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
原子炉・ボイラー・機械類 61,386 68,290 11.6 11.2
自動車(鉄道用または軌道用除く) 47,192 55,672 9.5 18.0
電気機器 44,557 45,982 7.8 3.2
航空機・宇宙飛行体 31,572 35,355 6.0 12.0
医療用品 35,797 35,162 6.0 △ 1.8
鉱物性燃料 32,374 28,583 4.9 △ 11.7
精油・調整香料・化粧品類 21,785 23,758 4.0 9.1
プラスチック 23,923 21,447 3.7 △ 10.3
飲料・アルコール・食酢 21,036 20,257 3.4 △ 3.7
光学機器・写真用機器・映画用機器 15,822 16,862 2.9 6.6
鉄鋼 18,222 14,493 2.5 △ 20.5
有機化学品 14,244 14,136 2.4 △ 0.8
各種化学工業製品 14,361 13,587 2.3 △ 5.4
革製品・旅行用具・ハンドバッグ 12,177 12,852 2.2 5.5
真珠・貴石・貴金属 9,998 11,085 1.9 10.9
鉄鋼製品 8,284 8,473 1.4 2.3
衣類・衣類付属品(メリヤス編み除く) 7,308 8,031 1.4 9.9
酪農品・鳥卵・天然はちみつ 7,804 7,916 1.3 1.4
穀物 11,279 7,630 1.3 △ 32.4
ゴム 6,233 6,296 1.1 1.0
合計(その他を含む) 577,500 587,373 100.0 1.7

〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕フランス税関

表2‐2 フランスの主要品目別輸入(CIF)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料 149,531 99,026 13.8 △ 33.8
原子炉・ボイラー・機械類 81,004 83,279 11.6 2.8
自動車(鉄道用または軌道用除く) 69,643 80,860 11.3 16.1
電気機器 63,309 64,298 9.0 1.6
医療用品 30,766 33,562 4.7 9.1
プラスチック 28,750 25,025 3.5 △ 13.0
光学機器・写真用機器・映画用機器 21,446 21,625 3.0 0.8
有機化学品 17,810 13,462 1.9 △ 24.4
鉄鋼 16,307 13,220 1.8 △ 18.9
鉄鋼製品 14,037 12,946 1.8 △ 7.8
衣類・衣類付属品(メリヤス編み除く) 12,458 11,910 1.7 △ 4.4
航空機・宇宙飛行体 12,110 11,874 1.7 △ 1.9
衣類・衣類付属品(メリヤス編み含む) 13,322 11,775 1.6 △ 11.6
家具・寝具 13,180 11,698 1.6 △ 11.2
各種化学工業製品 12,737 11,586 1.6 △ 9.0
真珠・貴石・貴金属 8,870 9,511 1.3 7.2
紙および板紙・製紙用パルプ 10,579 9,240 1.3 △ 12.7
履物 9,028 8,591 1.2 △ 4.8
アルミニウム 9,189 7,896 1.1 △ 14.1
ゴム 7,596 7,787 1.1 2.5
合計(その他を含む) 772,469 717,544 100.0 △ 7.1

〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕フランス税関

表3‐1 フランスの主要国・地域別輸出(FOB)[再輸出を含む総額ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
EU 324,392 327,239 55.7 0.9
階層レベル2の項目ユーロ圏 283,242 284,225 48.4 0.4
階層レベル3の項目ドイツ 80,441 80,314 13.7 △ 0.2
階層レベル3の項目イタリア 54,246 52,437 8.9 △ 3.3
階層レベル3の項目ベルギー 45,499 47,847 8.1 5.2
階層レベル3の項目スペイン 44,460 44,536 7.6 0.2
階層レベル3の項目オランダ 24,262 22,772 3.9 △ 6.1
階層レベル2の項目非ユーロ圏 41,151 43,015 7.3 4.5
階層レベル3の項目ポーランド 13,820 14,416 2.5 4.3
階層レベル3の項目チェコ 5,880 6,217 1.1 5.7
階層レベル3の項目ルーマニア 4,906 5,192 0.9 5.8
階層レベル3の項目ハンガリー 4,398 4,359 0.7 △ 0.9
英国 33,329 35,725 6.1 7.2
スイス 20,784 20,539 3.5 △ 1.2
トルコ 9,229 11,808 2.0 28.0
ロシア 3,066 2,040 0.3 △ 33.5
アジア大洋州 68,442 73,413 12.5 7.3
階層レベル2の項目中国(香港含む) 28,782 30,349 5.2 5.5
階層レベル2の項目ASEAN 14,711 16,423 3.8 11.6
階層レベル3の項目シンガポール 8,873 9,814 1.7 10.6
階層レベル3の項目タイ 1,434 1,678 0.3 17.0
階層レベル3の項目インドネシア 862 1,223 0.2 41.8
階層レベル3の項目ベトナム 1,163 1,188 0.2 2.1
階層レベル2の項目インド 5,941 7,058 1.2 18.8
階層レベル2の項目日本 6,350 6,648 1.1 4.7
階層レベル2の項目韓国 5,877 5,976 1.0 1.7
階層レベル2の項目オーストラリア 3,355 3,626 0.6 8.1
北米(USMCA) 54,312 51,414 8.8 △ 5.3
階層レベル2の項目米国 46,601 43,868 7.5 △ 5.9
アフリカ 27,807 27,006 4.6 △ 2.9
階層レベル2の項目モロッコ 6,312 6,283 1.1 △ 0.5
階層レベル2の項目アルジェリア 4,497 4,474 0.8 △ 0.5
階層レベル2の項目チュニジア 3,766 3,376 0.6 △ 10.4
階層レベル2の項目ナイジェリア 573 632 0.1 10.4
中東 14,267 15,027 2.6 5.3
階層レベル2の項目湾岸協力会議(GCC) 10,531 11,790 2.0 12.0
中南米 9,421 9,543 1.6 1.3
階層レベル2の項目ブラジル 4,021 4,337 0.7 7.9
合計(その他含む) 577,500 587,373 100.0 1.7

〔注1〕アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
GCCは、UAE、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアの6カ国の合計値。
USMCAは、米国、カナダ、メキシコの3カ国の合計値。このため、中南米にメキシコは含まず。
〔注2〕軍需品は除く。
〔注3〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕フランス税関

表3‐2 フランスの主要国・地域別輸入(CIF)[再輸出を含む総額ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
EU 395,210 382,813 53.4 △ 3.1
階層レベル2の項目ユーロ圏 346,852 331,312 46.2 △ 4.5
階層レベル3の項目ドイツ 92,659 90,482 12.6 △ 2.4
階層レベル3の項目ベルギー 68,490 60,370 8.4 △ 11.9
階層レベル3の項目イタリア 52,857 52,480 7.3 △ 0.7
階層レベル3の項目スペイン 52,887 50,292 7.0 △ 4.9
階層レベル3の項目オランダ 32,453 31,287 4.4 △ 3.6
階層レベル2の項目非ユーロ圏 48,357 51,502 7.2 6.5
階層レベル3の項目ポーランド 15,782 16,324 2.3 3.4
階層レベル3の項目チェコ 8,560 9,541 1.3 11.5
階層レベル3の項目ルーマニア 5,768 6,362 0.9 10.3
階層レベル3の項目ハンガリー 5,642 5,963 0.8 5.7
英国 28,821 26,075 3.6 △ 9.5
スイス 17,897 16,932 2.4 △ 5.4
トルコ 10,476 11,252 1.6 7.4
ロシア 15,542 3,661 0.5 △ 76.5
アジア大洋州 135,752 127,684 17.8 △ 5.9
階層レベル2の項目中国(香港含む) 78,820 71,847 10.0 △ 8.8
階層レベル2の項目ASEAN 22,945 20,189 2.8 △ 12.0
階層レベル3の項目ベトナム 6,947 6,422 0.9 △ 7.6
階層レベル3の項目バングラデシュ 4,677 3,875 0.5 △ 17.1
階層レベル3の項目タイ 3,748 3,454 0.5 △ 7.8
階層レベル3の項目マレーシア 4,117 3,115 0.4 △ 24.3
階層レベル2の項目韓国 7,531 9,792 1.4 30.0
階層レベル2の項目日本 9,344 9,786 1.4 4.7
階層レベル2の項目インド 9,116 8,988 1.3 △ 1.4
階層レベル2の項目台湾 5,191 4,759 0.7 △ 8.3
北米(USMCA) 68,263 58,943 8.2 △ 13.7
階層レベル2の項目米国 61,350 51,899 7.2 △ 15.4
アフリカ 38,841 36,608 5.1 △ 5.7
階層レベル2の項目モロッコ 6,960 7,401 1.0 6.3
階層レベル2の項目アルジェリア 6,653 7,067 1.0 6.2
階層レベル2の項目チュニジア 5,084 5,180 0.7 1.9
階層レベル2の項目ナイジェリア 4,776 4,416 0.6 △ 7.6
中東 18,390 14,648 2.0 △ 20.3
階層レベル2の項目湾岸協力会議(GCC) 15,260 11,334 1.6 △ 25.7
中南米 10,186 9,789 1.4 △ 3.9
階層レベル2の項目ブラジル 4,269 3,987 0.6 △ 6.6
合計(その他含む) 772,469 717,544 100.0 △ 7.1

エネルギー価格の下落を受け鉱物性燃料の輸入が大幅減

輸入を品目別にみると、最大輸入品目の鉱物性燃料(構成比13.8%)は990億2,600万ユーロと前年から33.8%減った。エネルギー価格の下落が主因で、石油ガス(主に天然ガス)が37.3%減、原油が13.3%減、石油が24.6%減と減少幅が大きかった。前年に急増した電力の輸入は原子力発電所の再稼働に伴い国内の電力不足が解消し、金額ベースで82.4%減、数量ベースで52.2%減と大幅なマイナスに転じた。

鉄道用または軌道用を除く自動車(構成比11.3%)の輸入は前年比16.1%増加した。このうち乗用車は20.7%増の428億9,400万ユーロとなり新型コロナ拡大前の2019年(345億8,800万ユーロ)の水準を超えた。特に環境報奨金(エコカー購入補助金)制度を背景に市場が拡大するバッテリー式電気自動車(BEV)は78.4%増の94億3,000万ユーロ、プラグインハイブリッド車(PHEV)79.5%増の50億9,500万ユーロと大幅増を記録した。

医療用品(構成比4.7%)は免疫産品の輸入拡大が新型コロナウイルス対応ワクチンの輸入減を相殺し、前年から9.1%増加した。エネルギー多消費分野はエネルギー価格の低下に伴い輸入額が減少した。有機化学品(1.9%)は前年比24.4%減、鉄鋼(1.8%)は18.9%減、鉄鋼製品(1.8%)は7.8%減となった。

国・地域別にみると、全体の53.4%を占めるEUが前年比3.1%減少した。ドイツ(構成比12.6%)、ベルギー(8.4%)、イタリア(7.3%)、スペイン(7.0%)など主要国が減少に転じた。

EU域外では、アジア大洋州(構成比17.8%)が前年比5.9%減となった。中国(香港含む)(10.0%)は主力品が軒並み縮小して8.8%減となったが、自動車はBEVが27億1,900万ユーロと前年の7億9,900万ユーロから大幅増を記録した。ASEAN(2.8%)はベトナム、バングラデシュ、タイを中心に12.0%減となった。主力の電気機器のほか、履物、衣類・衣類付属品の輸入が縮小した。韓国(1.4%)は30.0%増と大幅に伸びた。医療用品でアルツハイマー病免疫療法に関わる新薬などの免疫産品が前年から190倍の水準に達した。また自動車はBEVおよびPHEVを軸に11.7%増となった。

鉱物性燃料を主力とするアフリカ(構成比5.1%)、中東(2.0%)からの輸入はエネルギー価格の低下を背景に前者が5.7%減、後者が20.3%減となった。ロシア(0.5%)はEUのロシア産原油および石油製品の輸入禁止の影響などから鉱物性燃料が大幅に縮小し、全体で76.5%減となった。フランス税関によればロシア産エネルギーがフランスのエネルギー輸入に占める割合は2022年の11%から2023年は4%に低下した。

対内・対外直接投資 
対内直接投資は前年比46.2%減

中銀によると、2023年の対内直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は391億600万ユーロと前年の726億6,500万ユーロから46.2%減少した。企業買収や工場建設など株式に関わる直接投資額は前年比44.3%減の254億7,900万ユーロ、収益の再投資は186億ユーロと前年を約3億ユーロ下回った。海外の親会社からフランス子会社への貸付といった「その他の直接投資額」は前年の79億7,700万ユーロから49億7,400万ユーロの引き揚げ超過に転じた。

業種別にみると、製造業は89億7,700万ユーロと前年の131億6,600万ユーロから前年比31.8%減となった。製造業の内訳をみると、化学が30億ユーロと前年からほぼ4倍に膨らむ一方、食品は29.0%減の15億9,700万ユーロ、医薬は65.1%減の6億3,700万ユーロ、ゴム・プラスチックは71.1%減の3億7,400万ユーロと軒並み減少した。衣類・繊維は前年の59億9,800万ユーロから2,700万ユーロに激減した。非製造業では金融・保険が68億9,800万ユーロと前年から70.2%減少した。法務・監査など専門的な知識・技術を必要とする法人向けサービスは55億7,900万ユーロと拡大したが、情報・通信、ホテル・レストランは前年からそれぞれ64.9%減、88.1%減と共に縮小した。

国・地域別にみると、EUが前年比45.1%減の290億7,300万ユーロで、このうちユーロ圏は285億7,500万ユーロだった。オランダからの投資額が14.1%増の117億5,300万ユーロとなる一方、ドイツ、ルクセンブルク、ベルギー、スペインと主要国からの投資が軒並み縮小した。EU域外ではシンガポールが28億8,200万ユーロと前年比で約6倍に膨らんだ。英国、米国からの投資は前者が89.7%減の7億9,300万ユーロ、後者が93.8%減の2億6,700万ユーロと後退した。

表4 フランスの業種別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
業種 対内直接投資 対外直接投資
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
製造業 13,166 8,977 23.0 △ 31.8 16,471 22,013 32.8 33.6
階層レベル2の項目化学 780 3,000 7.7 284.6 3,043 2,186 3.3 △ 28.2
階層レベル2の項目食品 2,249 1,597 4.1 △ 29.0 2,541 5,350 8.0 110.5
階層レベル2の項目医薬 1,823 637 1.6 △ 65.1 2,200 △ 53
階層レベル2の項目ゴム・プラスチック 1,295 374 1.0 △ 71.1 2,133 △ 701
階層レベル2の項目設備機械 △ 866 255 0.7 △ 103 △ 211
階層レベル2の項目自動車 0 56 0.1 4,390 625 0.9 △ 85.8
階層レベル2の項目衣類・繊維 5,998 27 0.1 △ 99.5 △ 4,703 9,882 14.7
階層レベル2の項目金属製品 1,135 △ 310 1,516 △ 87
階層レベル2の項目情報・電子・光学機器 788 △ 335 1,903 △ 805
階層レベル2の項目木材、製紙 730 △ 520 317 △ 516
階層レベル2の項目精油 797 △ 984 730 △ 1,113
階層レベル2の項目航空機・宇宙 △ 2,822 1,839 2.7
金融・保険 23,145 6,898 17.6 △ 70.2 7,137 2,673 4.0 △ 62.5
専門的な知識・技術を必要とする法人向けサービス(法務・監査、コンサルタントなど) 1,589 5,579 14.3 251.1 678 7,002 10.4 932.7
情報・通信 6,488 2,277 5.8 △ 64.9 7,198 4,226 6.3 △ 41.3
階層レベル2の項目テレコム 2,444 613 1.6 △ 74.9 3,728 2,619 3.9 △ 29.7
階層レベル2の項目情報関連サービス 1,474 1,862 4.8 26.3 1,667 1,418 2.1 △ 14.9
ホテル・レストラン 1,600 191 0.5 △ 88.1 1,006 385 0.6 △ 61.7
水・廃水処理、廃棄物処理、汚染浄化 105 0 △ 5,400 1,686 2.5
運送・倉庫業 12,653 △ 14 6,783 761 1.1 △ 88.8
不動産 1,348 △ 41 △ 67 △ 1,473
鉱業 △ 212 △ 138 △ 9,318 4,406 6.6
建設 △ 1,227 △ 163 1,408 △ 642
電力・ガス・蒸気・空調 163 △ 1,916 8,867 △ 2,911
商業・修理業 6,352 △ 4,437 8,131 △ 9,653
合計(その他含む) 72,665 39,106 100.0 △ 46.2 50,624 67,151 100.0 32.6

(出所)フランス銀行

表5 フランスの国・地域別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
欧州 66,418 34,283 87.7 △ 48.4 28,766 58,680 87.4 104.0
階層レベル2の項目EU 52,949 29,073 74.3 △ 45.1 32,559 39,290 58.5 20.7
階層レベル3の項目ユーロ圏 51,409 28,575 73.1 △ 44.4 30,425 39,133 58.3 28.6
階層レベル4の項目オランダ 10,299 11,753 30.1 14.1 △ 984 11,936 17.8
階層レベル4の項目ドイツ 12,842 6,520 16.7 △ 49.2 5,766 1,224 1.8 △ 78.8
階層レベル4の項目ルクセンブルク 11,349 6,489 16.6 △ 42.8 10,276 8,131 12.1 △ 20.9
階層レベル4の項目ベルギー 8,345 5,342 13.7 △ 36.0 △ 1,526 6,188 9.2
階層レベル4の項目スペイン 1,835 1,203 3.1 △ 34.4 2,035 5,661 8.4 178.2
階層レベル4の項目イタリア 4,098 △ 938 5,596 6,212 9.3 11.0
階層レベル4の項目アイルランド 1,761 △ 1,717 7,069 △ 1,145
階層レベル3の項目非ユーロ圏 1,540 498 1.3 △ 67.7 2,134 157 0.2 △ 92.6
階層レベル4の項目チェコ △ 129 144 0.4 △ 334 733 1.1
階層レベル4の項目ルーマニア △ 44 14 0.0 553 △ 19
階層レベル4の項目ポーランド △ 60 △ 226 1,887 515 0.8 △ 72.7
階層レベル2の項目スイス 4,691 2,912 7.4 △ 37.9 △ 20,297 △ 4,697
階層レベル2の項目英国 7,700 793 2.0 △ 89.7 14,748 23,916 35.6 62.2
階層レベル2の項目ロシア 200 81 0.2 △ 59.5 1,707 489 0.7 △ 71.4
階層レベル2の項目トルコ △ 84 17 0.0 843 162 0.2 △ 80.8
アジア 1,651 3,842 9.8 132.7 △ 10,531 3,410 5.1
階層レベル2の項目シンガポール 464 2,882 7.4 521.1 6,964 △ 140
階層レベル2の項目日本 1,197 310 0.8 △ 74.1 1,082 821 1.2 △ 24.1
階層レベル2の項目韓国 △ 638 104 0.3 242 76 0.1 △ 68.6
階層レベル2の項目インド 45 3 0.0 △ 93.3 80 959 1.4 1,098.8
階層レベル2の項目中国(香港含む) 596 △ 91 △ 6,566 1,165 1.7
米州 4,331 572 1.5 △ 86.8 31,253 2,795 4.2 △ 91.1
階層レベル2の項目カナダ △ 123 391 1.0 1,358 5,369 8.0 295.4
階層レベル2の項目米国 4,330 267 0.7 △ 93.8 15,452 △ 1,590
階層レベル2の項目ブラジル 222 △ 21 4,587 △ 325
アフリカ 245 498 1.3 103.3 △ 1,230 650 1.0
中近東 △ 1,832 295 0.8 △ 890 341 0.5
合計(その他含む) 72,665 39,106 100.0 △ 46.2 50,624 67,151 100.0 32.6

〔出所〕フランス銀行

外資規制の対象投資件数は309件

フランス政府は外資規制の強化策として、欧州経済領域(EEA)外企業によるフランス上場企業の経営権掌握について、2024年1月のデクレ(政令)により、事前届け出の基準となる議決権を25%超から10%超に引き下げる特例措置を恒久化した。

また、経済安全保障の観点から外資規制の適用範囲を製造業の主権確保に必要な重要原材料の採掘・加工・リサイクルに関わる事業活動などに広げ、フォトニクス(光工学)や低炭素エネルギーの生産技術に関わる研究開発についても、同技術が規制対象分野への利用を目的とする場合は外資規制の適用対象に加えた。

経済・財政・産業およびデジタル主権省財務総局の2024年6月の発表によれば、2023年に事前認可の審査対象となった投資件数は309件と前年の325件から小幅ながら減少した。審査の結果、135件が認可されたが、このうち60件は条件付きでの認可となった。

対外直接投資はユーロ圏および英国向けを軸に32.6%増

中銀によると、2023年の対外直接投資額は671億5,100万ユーロと前年から32.6%増加した。株式資本に関わる直接投資額は154億4,300万ユーロと前年の450億7,600万ユーロから大幅に縮小した。収益の再投資は前年からほぼ横ばいの351億ユーロだった。フランスの親会社から海外子会社への貸付といった「その他の直接投資」は166億700万ユーロとなり、296億1,400万ユーロの引き揚げ超過を計上した前年から流出超に転じた。

業種別にみると、製造業が220億1,300万ユーロと前年を33.6%上回った。製造業の内訳をみると、前年は引き揚げ超過だった衣類・繊維が98億8,200万ユーロの大幅増を記録したほか、食品が53億5,000万ユーロと前年からほぼ倍増した。非製造業では専門的な知識・技術を必要とする法人向けサービス(法務・監査、コンサルタントなど)が70億200万ユーロと前年の6億7,800万ユーロから10倍以上に膨らんだ。情報・通信は42億2,600万ユーロ、金融・保険は26億7,300万ユーロとなり、前者が前年から41.3%減、後者が62.5%減少した。

国・地域別にみると、EUが392億9,000万ユーロと前年から20.7%増加した。ユーロ圏は前年比28.6%増の391億3,300万ユーロだった。前年は引き揚げ超過を計上したオランダが119億3,600万ユーロの流出超に転じた。オランダとともに多国籍企業の資本移動が活発に行われる拠点であるルクセンブルクは81億3,100万ユーロと前年を約20億ユーロ下回った。イタリアは62億1,200万ユーロと前年の55億9,600万ユーロから11.0%増加した。EU域外では、英国が62.2%増の239億1,600万ユーロとなった。米国は15億9,000万ユーロの引き揚げ超過を計上した。アジアでは中国(香港を含む)が前年の引き揚げ超過から11億6,500万ユーロの流出超に転じたほか、インドが9億5,900万ユーロと前年の10倍以上に拡大した。

表6-1 フランスの主な対内直接投資案件(2023年)[M&A以外]
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
エネルギー プロロジウム(ProLogium) 台湾 2023年5月 52億ユーロ プロロジウムは5月、北部オー・ド・フランス地域圏ダンケルク市に次世代全固体電池工場(年間生産能力48ギガワット時(GWh))とR&D施設の建設計画を発表した。2026年末に稼働予定。
製薬 ノボ・ノルディスク(Novo Nordisk) デンマーク 2023年11月 21億ユーロ ノボ・ノルディスクは11月、中部サントル=バル・ド・ロワール地域圏シャルトル市にある自社工場に21億ユーロを投資し、糖尿病治療薬などの生産能力を拡大すると発表した。2026年から2028年にかけて段階的に製造設備を拡張する。
バッテリー材料 XTCニューエナジー(XTC New Energy) 中国 2023年5月 15億ユーロ XTCニューエナジーとオラノ(Orano、核燃料リサイクル)は5月、バッテリーの材料となる正極活物質等を製造しリサイクルする合弁会社の設立で合意した。ダンケルクに工場建設を計画。
エネルギー オクトパスエナジー(Octopus Energy) 英国 2023年3月 10億ユーロ オクトパスエナジーは3月、パリに欧州テックハブを設立し、今後2年間にフランスのグリーン・エネルギー市場に10億ユーロを投資すると発表した。フランスのエネルギー移行を促進し、国内30万世帯にグリーンエネルギーを供給する計画。
デジタルインフラ整備 テレハウス(Telehouse) 日本 2023年10月 10億ユーロ KDDI傘下のテレハウス・ヨーロッパ(Telehouse Europe)は10月、パリ市に新たにデータセンターを開設すると発表した。欧州におけるデータセンターのネットワークを強化する。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-2 フランスの主な対内直接投資案件(2023年)[M&A]
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
IT ウェブヘルプ(Webhelp) コンセントリックス(Concentrix) 米国 2023年9月 40億ドル カスタマーエクスペリエンス (顧客体験、以下CX) サービスの米コンセントリックスは9月、ウェブヘルプとの合併を完了したことを発表した。合併により生成AIソリューション、デジタル機能、高付加価値サービスの幅を拡大し、グローバルCXリーダーとしての地位をさらに強化する。
医薬 ポリプラス・トランスフェクション(Polyplus’ transfection) ザルトリウス(Sartorius) ドイツ 2023年7月 24億ユーロ バイオ医薬のザルトリウスは3月、仏同業ポリプラス・トランスフェクションを買収することで民間投資会社と合意したと発表した。
ガラスボトル製造 セーバーグラス(Savarglass) オローラ(Orora) オーストラリア 2023年9月 12億9,000万ユーロ 包装材オローラは9月、高級ガラスボトルメーカーのセーバーグラスの買収を完了したと発表した。
工業用鉱物 イメリス(Imerys) プラチナム・エクイティ
(Platinum Equity)
米国 2023年1月 9億3,000万ユーロ 投資会社プラチナム・エクイティは1月、イメリスの耐火物ソリューション事業(refractory solutions)の買収を完了したことを発表した。
自動車 アンペア
(Ampere)
日産自動車 日本 2023年7月 6億ユーロ 日産は7月、ルノーグループが欧州に設立するEV&ソフトウエア新会社アンペアの戦略的投資家として同社へ取締役を派遣するため、最大6億ユーロの出資を決定したと発表した。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表7-1 フランスの主な対外直接投資案件(2023年)[M&A以外]
業種 企業名 投資国 時期 投資額 概要
エネルギー HDFエナジー(HDF Energy) モロッコ 2023年11月 200億モロッコ・ディルハム(約18億7,000万ユーロ)   水素関連インフラ・燃料電池製造HDFエナジーは11月、モロッコ・ダフラ地方にグリーン水素製造拠点を設置する「ホワイト・デューン」プロジェクト事業(10ギガワット(GW)風力発電、7GW太陽光発電、8GW水電解装置)に同国の不動産開発ファルコン・キャピタル・ダフラ(Dakhla)と共同で参画すると発表した。
エネルギー トタルエナジーズ(TotalEnergies) カザフスタン 2023年6月 14億ドル トタルエナジーズは6月、カザフスタンのジャンブール州に建設する風力発電施設(発電容量1GW、600メガワット時(MWh)の蓄電池設備を併設)についてカザフスタン政府と電力販売契約(PPA)に調印したと発表した。
IT データ4(カートル)(Data4) ドイツ 2023年2月 10億ユーロ 欧州でデータセンター開発を手掛けるデータ4は2月、ドイツのフランクフルト近郊に総受電容量180メガワット(MW)の大型データセンターを建設すると発表した。
エネルギー トタルエナジーズ(TotalEnergies) ブラジル 2023年1月 10億ドル トタルエナジーズは1月、米シェル(Shell、30%)、レプソル・シノペック(Repsol Sinopec、25%)と共同でブラジル沖ラパの海洋油田開発プロジェクトへの投資を決定したと発表した。
エネルギー ペレンコ(Perenco) ガボン 2023年2月 10億ドル ペレンコは2月、ガボンのキャップ・ロペス・ターミナルで液化天然ガス(LNG)生産設備の建設プロジェクトで最終決定に達したと発表した。早くて2026年からLNG年間70万トンの生産を目指す。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表7-2 フランスの主な対外直接投資案件(2023年)[M&A]
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
ソシエテ・ジェネラル(Societe Generale) 自動車リース リースプラン(LeasePlan) オランダ 2023年5月 49億ユーロ 金融大手ソシエテ・ジェネラル(Société Générale)の自動車リース子会社ALDが、同業リースプランの買収を完了。
タレス(Thales) サイバーセキュリティ インぺルバ(Imperva) 米国 2023年12月 36億ドル タレスは12月、米サイバーセキュリティのインぺルバ買収を完了したと発表した。
ロレアル(L'Oréal) 化粧品 イソップ(Aēsop) オーストラリア 2023年8月 25億2,500万ドル ロレアルは8月、オーストラリアのスキンケアブランドのイソップ買収を完了したと発表した。
サノフィ(Sanofi) 医薬 プロベンション・ビオ(Provention Bio) 米国 2023年4月 29億ドル サノフィは4月、1型糖尿病の新薬を保有するプロベンション・ビオの買収を完了したと発表した。
エデンレッド(Edenred) 福利厚生サービス リワード・ゲートウェイ(Reward Gateway) 英国 2023年5月 11億5,000万ポンド エデンレッドは、英国最大の福利厚生プラットフォームを提供するリワード・ゲートウェイの株式100%を取得したと発表した。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係 
対日貿易は輸出入ともに増加、輸入は自動車が牽引

2023年の対日貿易は、輸出が前年比4.7%増の66億4,800万ユーロ、輸入は4.7%増の97億8,600万ユーロとなった。対日貿易赤字は31億3,800万ユーロと前年から約1億4,400万ユーロ拡大した。フランスの貿易全体に占める日本の構成比は、輸出は1.1%、輸入が1.4%で、輸出は前年から横ばい、輸入はほぼ0.2ポイント上昇した。

対日輸出は最大輸出品目の飲料・アルコール・食酢(構成比11.5%)は前年比4.5%減少したが、主力の航空機・宇宙飛行体(10.9%)が36.1%増、メリヤス編みを除く衣類・衣類付属品(6.4%)が26.8%増、革製品・旅行用具・ハンドバッグ(6.0%)が27.8%増と大幅増となった。医療用品(6.1%)、原子炉・ボイラー・機械類(6.0%)は前年から減少した。

日本からの輸入は原子炉・ボイラー・機械類(構成比25.8%)、鉄道用または軌道用を除く自動車(18.9%)、電気機器(15.3%)、光学機器・写真用機器・映画用機器(6.9%)、医療用品(5.1%)の上位5品目が全体の72%を占めた。原子炉・ボイラー・機械類が前年比1.2%減、電気機器が2.3%減、光学機器・写真用機器・映画用機器が2.7%減と減少したが、鉄道用または軌道用を除く自動車はBEVを中心に増加し、38.3%増となった。

表8-1 フランスの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
飲料・アルコール・食酢 801 765 11.5 △ 4.5
航空機・宇宙飛行体 531 723 10.9 36.1
衣類・衣類付属品(メリヤス編み除く) 334 424 6.4 26.8
医療用品 452 403 6.1 △ 10.8
原子炉・ボイラー・機械類 476 401 6.0 △ 15.7
革製品・旅行用具・ハンドバッグ 311 398 6.0 27.8
精油・調整香料・化粧品類 322 337 5.1 4.6
自動車(鉄道用または軌道用除く) 223 250 3.8 12.1
真珠・貴石・貴金属 175 221 3.3 26.3
電気機器 209 220 3.3 5.3
光学機器・写真用機器・映画用機器 222 219 3.3 △ 1.6
無機化学品 248 217 3.3 △ 12.3
有機化学品 198 203 3.1 2.5
各種化学工業品 135 151 2.3 11.8
プラスチック 165 149 2.2 △ 9.3
合計(その他含む) 6,350 6,648 100.0 4.7

〔出所〕フランス税関

表8-2 フランスの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
原子炉・ボイラー・機械類 2,559 2,529 25.8 △ 1.2
自動車(鉄道用または軌道用除く) 1,338 1,851 18.9 38.3
電気機器 1,535 1,500 15.3 △ 2.3
光学機器・写真用機器・映画用機器 692 673 6.9 △ 2.7
医療用品 468 502 5.1 7.3
各種化学工業品 340 350 3.6 3.0
プラスチック 270 245 2.5 △ 9.4
有機化学品 259 226 2.3 △ 12.9
がん具、遊戯用具及び運動用具 236 186 1.9 △ 21.2
染料、顔料その他の着色料 182 179 1.8 △ 1.7
写真用又は映画用の材料 175 165 1.7 △ 6.1
雑品 128 115 1.2 △ 10.5
航空機および宇宙飛行体 28 100 1.0 262.6
ゴム 102 89 0.9 △ 12.5
鉄鋼製品 90 79 0.8 △ 11.7
合計(その他含む) 9,344 9,786 100.0 4.7

〔出所〕フランス税関

日本からの直接投資、日本向け直接投資の双方向で減少

中銀の国際収支統計によれば、2023年のフランスにおける日本からの直接投資受入額は3億1,000万ユーロと前年の11億9,700万ユーロから大幅減となった。株式資本に関わる直接投資額は2億7,500万ユーロと前年の3億9,900万ユーロから31.1%減少した。収益の再投資は2億7,000万ユーロとほぼ前年並みとなったが、その他の直接投資は2億3,500万ユーロの引き揚げ超過に転じた。

リコー・フランス(Ricoh France)は1月、コレリア(Corelia)の買収を完了したと発表した。サイバーセキュリティ、インフラサービスなど体験情報サービスの提供を補填し、顧客のデジタル化を支援する。

村田製作所の生産子会社であるMurata Integrated Passive Solutionsは3月、シリコンキャパシタの生産能力を拡大するため、フランス北西部カーン市にて200ミリメートルウエハーの生産ラインを新設すると発表した。2023年から2025年にかけて、新たに100人を超える雇用創出を予定している。

KDDI傘下のテレハウス・ヨーロッパ(Telehouse Europe)は10月、パリ市に10億ユーロをかけて新たにデータセンターを開設すると発表した。これにより欧州におけるデータセンターのネットワークを強化する。

東レは10月、フランスの子会社Toray Carbon Fibers Europeの中・高弾性率炭素繊維の生産設備増強を決定した。フランス南西部アビドス工場の生産能力を現行の年産5,000トンから6,000トンに増強する。カーボンニュートラル社会の推進を背景に民間航空機の二次構造材やエンジン、ウラン濃縮回転胴、人工衛星、高級自動車等の用途に使用される中・高弾性率炭素繊維の需要拡大に対応する。

ルノーグループと日産自動車(以下、日産)は11月、資本関係の見直しが完了したと発表した。ルノーグループの日産に対する出資比率を15%に引き下げ、相互に15%ずつを出資する。ルノーグループは保有する日産の株式(43.4%)のうち、28.4%をフランスの信託会社に移した。日産はルノーグループが欧州に設立するEVとソフトウエア新会社アンペア(Ampere)の戦略的投資家として同社へ取締役を派遣するため、最大6億ユーロを出資することを決めた。

2023年の対日直接投資額は8億2,100万ユーロと前年の10億8,200万ユーロから24.1%減少した。株式資本に関わる直接投資額は前年の1億3,100万ユーロから7,200万ユーロの引き揚げ超過に転じた。収益の再投資は4億4,900万ユーロと前年から62.1%減った。その他の直接投資額は4億4,400万ユーロだった。

グローバル音楽会社のビリーブ・デジタル(BLV)は3月、日本法人ビリーブジャパン(Believe Japan)を設立した。日本市場においてあらゆるジャンルのアーティストやレーベルのキャリアの各段階における発展を支援する。

エンジー(Engie)は10月、東京にエネルギー供給事業を行う日本事務所を設置したと発表した。日本におけるプレゼンスの強化だけでなく、アジア太平洋地域でのポジションを強化する。

コスメティック製品に配合される自然由来の有効成分を開発・製造するシラブ(Silab)は11月、日本で販売子会社を開設したと発表した。東京を拠点に日本における自然由来の有効成分の普及に向け顧客開拓や大学とのパートナーシップの確立を目指す。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2021年 2022年 2023年
実質GDP成長率 (%) 6.9 2.6 1.1
1人当たりGDP (米ドル) 45,161 42,306 46,001
消費者物価上昇率 (%) 1.6 5.2 4.9
失業率 (%) 7.4 7.1 7.5
貿易収支 (億ユーロ) △ 1,130 △ 1,950 △ 1,302
経常収支 (億ユーロ) 69 △ 311 △ 281
外貨準備高(グロス) (100万米ドル、期末値) 101,703 100,429 79,201
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ、期末値) 6,451,942 6,451,566 6,912,055
為替レート (1米ドルにつき、ユーロ、期中平均) 0.8454 0.9496 0.9248

注:
失業率はフランス本土のみ、各年第4四半期の数値、対外債務残高は12月末の数値
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所:
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:フランス国立統計経済研究所(INSEE)、貿易収支:フランス税関、経常収支、対外債務残高(グロス):フランス銀行
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF