1. サイトトップ
  2. 国・地域別に見る
  3. 欧州
  4. フランス
  5. マーケティング情報
  6. 多様化する日本食レストラン ‐ 本物志向派のフランス人に好まれる日系レストラン
外食産業の動向

多様化する日本食レストラン ‐ 本物志向派のフランス人に好まれる日系レストラン

2011年1月
分野:食品・農林水産物

フランスにおける日本食レストラン数は、1980年代までは50件程度であったが、2000年代に入り急増し、現在では約1,500件(一部識者への聞き取りによると、うち日本人経営は約80件)にのぼる。

本レポートでは、このような日本人経営レストランの中で、開業の背景や店舗のコンセプトは異なるが、近年開業で地元フランス人客に人気の高い日本人経営レストラン3軒を紹介する。なお、レポートは、代表者へのインタビューと試食結果による。

エリアへの密着と発想の転換

パリ市南西に隣接する人口約11万人のブローニュ・ビヤンクール市に、2009年秋開業した日本食レストラン「四季」。同市に唯一あった日本人経営のレストラン「さんき」のオーナーと他2名の日本人が共同で開業したものだ。

同店は、立地エリア内に勤務または居住するフランス人を中心客層とする日本食レストランの成功例の1つといえる。共同オーナーの一人である叶料理長によると、席数は60(うち10席が夏のみ使うテラス)で、昼食(1.5~2回転)と夕食(1回転)を、6名の従業員(調理3人、サービス3人ですべて日本人)が年間を通じコンスタントに入る顧客に対応しているという。「さんき」が酒のつまみ類が豊富で日本人サラリーマンに人気があるのに対し、「四季」は、アッパーミドル層のフランス人が9割(昼はビジネスマン、夜は家族中心)、日本人が1割(週末の家族中心)で、うち半数以上がリピーターという。

料理は、4割がすし・刺身定食類で6割が調理物となっている。昼は、焼き魚または肉類を中心にした定食(全6種の中から選択、月に1、2種を変更)またはすしで、客単価は、25ユーロ程度になる。夜は、客単価は40ユーロ前後(前菜、メイン、デザート)で、前菜として、すし・刺身または一品物(揚げ出し豆腐、あさりの酒蒸、魚のたたき等15種)をとり、メインに、肉類(味噌カツ、鶏から揚げ、すき焼き、鴨ロース焼きなど)、デザートに抹茶ティラミスやどら焼きなどをとる顧客が多いという。飲み物は、昼は水、日本茶、ワインが好まれ、夜はビール、ワインが多く出る。

叶料理長は、同店の成功要因として次の5つを挙げる。

  1. 顧客の本物志向
    ブローニュ・ビヤンクール市にここ数年日本食レストランが急増しているが、すべて中国系オーナーによるもの。その中で、日本人の経営・料理・サービスによる本物を求める顧客が多い。
  2. 好立地
    ブローニュ・ビヤンクール市は日本人が多い住宅地区であるだけではなく、ルノーをはじめ、多くのメーカー、放送局、出版社、IT関連企業が本社を構える地区であり、同市の住民一人当たりの所得は、フランスの他市町村に比べ相対的に高い。
  3. 発想の転換
    日本では一般的に、すしはメイン料理になるが、「四季」のフランス人客の多くが、すしや刺身を前菜にとるように、料理・サービス体制を組む。
  4. 日本的サービス(笑顔、呼ばれる前に察するおもてなし)
  5. 木を多く使った日本的な内装

パリ市内18区、モンマルトル寺院の裏手に拡がる住宅地区に2007年秋に開業した日本食レストラン「縁(えにし)」は、地域密着型日本食レストランの成功例の1つといえよう。

砂澤オーナーは、パリへの留学後に当地に残りたいという娘に合流するかたちで、日本での仕事に見切りをつけ、フランスに渡り「縁」を開業した。

これまで親子とも飲食業の経験はなく、しかも異国の地パリでの挑戦であった。最初はお好み焼きレストランを開こうと考えていたが、フランスにおけるすし中心の日本食ブームを目の当たりにし、すし定食も提供するがそのほかの日本食も提供する、選択肢が豊富な家族的雰囲気のレストランをコンセプトに、1年半の準備期間を経て「縁」を開業した。

当初は、資金計画、衛生管理、現地スタッフの労務管理、店舗セキュリティー面などで苦労が多かったというが、今は半径数100メートルに勤務または居住するフランス人を中心に固定客が多く入る。席は30席で(昼食:1.5~2回転、夕食:1回転)、すし、天ぷら、海老フライ、トンカツ、すき焼きなどの定食類(昼食:14~19ユーロ、夕食:23~26ユーロ)、うどん定食(昼食:13~15ユーロ、夕食:16~17ユーロ)、丼定食(昼食:14~18ユーロ、夕食:20~25ユーロ)を提供し、すべてテイクアウトもできる。

砂澤オーナーは同店の成功要因として、次の2点を挙げる。

  1. 真摯なおもてなしと笑顔での対応
  2. 好立地

同店がある地区には中国系オーナーによる日本食レストランが多いが、日本人運営としては唯一の存在

独自性と創作性を追求

パリ市内19区モンマルトルの丘の中腹に、アッパーミドル層のフランス人常連客に人気の日本食レストラン「枝魯枝魯(ぎろぎろ)パリ」。京都の鴨川沿いにある一元さんお断りのモダンなくずし割烹「> 枝魯枝魯(ぎろぎろ) 」を経営・運営する有限会社豆の子会社として2008年4月に開業した。

枝國栄一氏(京都店オーナー、日本で3つのレストランをプロデュース)が、自ら渡仏滞在し、パリ店の経営・調理・サービスを先導指揮している。料理は年に4回変わる「シェフお任せコース」のみで、現地と日本の季節感ある旬のかつ多様な素材を使った、モダンかつカジュアルな割烹を提供する。料金は45ユーロで、飲み物含め60~65ユーロが相場だ。席は34席で(夕食のみ19時からと21時からの2回転)、そのうち、22席が調理場を取り囲むカウンター席となっており、3人の調理人が創作する料理を観察でき、料理説明も含め調理人と顧客との会話が飛び交う。客層は、アッパーミドル層のフランス人が大半を占め、8割がリピーターという。

枝國オーナーは、同店の成功要因として次の4つを挙げる。

  1. オンリーワン
    同店でしか食べられない料理とサービスを提供
  2. ウンタースタイル
    顧客が調理シーンを見ることができ、調理人との対話を楽しめる。
  3. 京都風「一見さんお断り」の基本精神
    予約は約2カ月前で、これを過ぎると席が埋まって取り難くなるため、食事後、次回の予約をして帰る顧客を増やすよう努力
  4. 多様性を考慮した接客
    日本と異なり顧客の文化・価値観の多様性を考慮した接客を心がける

(パリ・センター)