海外ビジネス情報

ジェトロの海外ネットワークを通じて収集した最近のビジネスニュースや政治・経済の概況、貿易・投資実務に役立つ制度・手続き情報や各種統計、調査レポートなどをお届けしています。

各国・地域別にご覧になりたい場合は「国・地域別情報」をご覧ください。

国・地域別に見る
外国産品の先行事例分析

グローバル競合が激化するワイン市場 ‐ ブランディングの再強化が始まる

2010年11月
分野:食品・農林水産物

フランスは、世界の三大珍味のうちキャビアを除く、フォアグラとトリュフの主産地となっている。さらに、ワイン、コニャック、クレープ、最近ではマカロンなど世界に一定のブランド価値が浸透した特産品が数多くある。本レポートでは、ワインを例に、市場を取り巻く環境と、国、地域レベルでのマーケティングの取り組みを紹介する。

ライバルはイタリアだけではない

葡萄・ワイン国際機構(OIV)のデータによると、2007年度の各地域別ワインの年間生産量は、欧州が68%(うち7割はフランス、イタリア、スペインの3国)を占め、南北アメリカ(19%)、アジア(5%)、オセアニア(4%)、アフリカ(4%)と続く。一方、世界的なワインの生産・消費推移では、1980年代後半から1990年代にかけ減少したが、2000年代に入り徐々に回復し、緩やかな増加傾向が見られる。

グラフ1:世界のワイン生産量と消費量の推移(単位:10万キロリットル)

注:1971年から2000年の間は、5年ごとの平均値
(出所:葡萄・ワイン国際機構−OIV)

グラフ2は世界全体で8割の生産量を占める上位10カ国の生産量推移を示している。1980年代から、上位2カ国(フランスとイタリア)が、減少傾向にあるのに対し、ほか8カ国(特に、スペイン、中国、オーストラリア、チリ)が相対的に伸びている。トップ2カ国とほか8カ国の差が徐々に縮まり、もはやフランスにとってのライバルは、イタリアだけではなくなってきた。

グラフ2:上位10カ国の生産量推移(単位:10万キロリットル)

注:1986年から2000年の間は、5年ごとの平均値
(出所:葡萄・ワイン国際機構−OIV)

急拡大する世界のワイン貿易

世界のワイン消費量に対する貿易取引量の割合は、1986年から1990年にかけては、年平均18.2%にすぎなかったが、90年代に入り急拡大し、2007年には、36.2%に膨れ上がった。また、2007年のワインの貿易取引量は、89万4,500キロリットルで、対前年6.8%増、2001~2005年の平均値に比べ24%伸び(葡萄・ワイン国際機構−OIVデータ)急拡大を見せている。

表1は、上位10カ国(2007年度生産量)の輸出比率(生産量に対する輸出量の割合)および輸入比率(消費量に対する輸入量の比率)を示している。米国、中国、ドイツの3カ国だけが、自国の生産量に対し消費量が上回り、自国産の輸出量に対し国外産の輸入量が上回る。一方、残りの7カ国はいずれも輸出量が輸入量を上回り、大幅な輸出超過となっている。

表1:上位10カ国の消費量および輸出入比率(単位:生産量・輸出量・輸入量−1,000キロリットル)
国名 生産量 消費量
(カッコ内は世界順位)
輸出量 輸出比率
(輸出量/生産量)
輸入量 輸入比率
(輸入量/消費量)
イタリア 4,598 2,670(3) 1,851 40% 174 7%
フランス 4,567 3,217(1) 1,525 33% 536 17%
スペイン 3,476 1,310(7) 1,508 43% 46 4%
米国 1,987 2,825(2) 423 21% 837 30%
アルゼンチン 1,505 1,117(9) 360 32% 0.4 0%
中国 1,200 1,359(6) 16 1% 174 13%
ドイツ 1,026 2,078(4) 354 35% 1,455 70%
南アフリカ 978 356(14) 355 36% 14 4%
オーストラリア 962 477(11) 786 82% 44 9%
チリ 823 298(18) 610 74% 6 2%

出所:葡萄・ワイン国際機構−OIV 2007年データ

輸出市場獲得に競り負けるフランス

フランスワインは、1980年代半ばまではワインの王様として世界的地位を確立しており、輸出量ではイタリアと激しい競り合いを見せていた。ところが、1980年代後半以降、第2位のイタリアに抜かれ、スペインにも追いつかれるとともに、ワイン新興国(オーストラリア、チリ、米国、アルゼンチン、南アフリカ)による輸出攻勢に押され、輸出市場でシェアを落としていった。(グラフ3)。

産地、銘柄、品種にもよるが、フランスの輸出市場での相対的地位の低下理由として、グローバル市場を視野に入れた消費者嗜好への対応の遅れを指摘する専門家は多い。さらに、「ものづくりは上手だが、売り方が下手」、「小規模生産者が多いため、国外市場へのマーケティング力と資金が不足している」「商品群が多彩すぎて、消費者にわかりにくい」等さまざまな指摘がなされている。

グラフ3:ワイン輸出上位10カ国の輸出量推移(単位:1,000キロリットル)

(出所:葡萄・ワイン国際機構−OIV)

国、地域、業界が総力をあげて輸出力強化へ

フランスの輸出市場における相対的なプレゼンス低下に対し、2000年代半ば以降、シェア回復に向けた動きが加速し始めた。

政府レベルでは、サルコジ大統領の要請に応じ、2009年から2013年の5カ年計画「ワイン産業近代化5カ年計画(PLAN QUINQUENNAL DE MODERNISATION DE LA FILIÈRE VITIVINICOLE FRANCAISE)」がフランス農水省より発表された(2008年5月29日)。本計画の目的は、1)世界のワイン市場におけるフランスワインのシェア拡大、2)変化する世界の消費者ニーズに対する製品対応、3)製品の理解・認知度、フランスのイメージの向上、4)ワイン関連企業の競争力と市場変化への対応力の強化という4項目からなっている。

また、国、地域、業界の連携によるフランスワインの輸出プロモーション活動への注力も見られ始めた。その中心的な役割を果たすのが、 SOPEXA(フランス食品振興会)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます である。同団体は、1961年にフランス農水省により設立され、2008年2月に完全民営化された(株式会社として各種農業関連団体と企業が100%株式保有、ただし2012年までは、フランス農水省が年間1,500万ユーロの国家事業を委託)。SOPEXAの事業目的は、フランスの農産物およびその加工品の輸出促進で、日本を含め世界29カ国35カ所の拠点を通じ広報・プロモーション活動を行っている。さまざまな農産物およびその加工品のうち、ワイン関連活動予算(2009年)は、全年間予算約7,500万ユーロ(約83億円:1ユーロ110円換算)のうち43%を占める。活動内容としては、世界各地の酒類関連見本市への出展(2011年度‐9カ所)、飲食店、ホテル、流通業者(輸入・卸・小売)を対象に、フランスワインの理解促進のためのセミナーの開催、タイアップ販促キャンペーンの実施、フランスの輸出企業とのビジネスマッチング、コンセイユ(「あなたの街のワイン案内人」としてフランス各地のワインについて的確なアドバイスが消費者にできるようワイン販売店に対し与える資格)の認定と組織化などを行っている。

ボルドー、シャンパーニュ、ブルゴーニュ、ボージョレなど各産地の業界団体も、輸出力強化に向けて、国内外での広報活動(ポスター、雑誌広告、カフェ・ホテル・レストラン、大規模商業施設等でのイベントプロモーション、広報活動など)に注力し始めた。

例えば、地域の約1万2,000軒の生産者と400軒の卸商が加入する ボルドー委員会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます では、1)生産者への技術・経営支援(耕作技術、醸造等ものづくり技術、マーケティング、企業経営に関する情報支援と講習会)、2)市場動向調査と情報提供(国内外の市場動向、消費者調査、業界調査)、3)広報とプロモーション(世界の食品関連見本市への出展参加、メディアキャンペーン、フランス食品振興会との共同イベントの企画・運営、世界各地に点在する協会認定講師を通じたボルドーワイン講習会等)を実施している。

また、シャンパーニュ委員会では、新興市場開拓の一環として、2010年10月12~14日にインド(ムンバイとデリー)で、シャンパーニュ週間を開催し、レストラン関係者(ソムリエ、料理長)とジャーナリストを招き、セミナーと試飲会を開催した。さらに、同委員会では、2005年より、欧州8カ国(ドイツ、ベルギー、フランス、英国、イタリア、オランダ、スイス)のワイントレーナー、ソムリエ等を対象に、シャンパーニュ大使コンクールを実施するなどシャンパーニュの国際的なブランド力強化に注力している。

(パリ・センター)

ご相談・お問い合わせ

現地日系企業の皆様

最寄りのジェトロ事務所にご連絡ください。

マイリスト マイリスト一覧を開く マイリストに追加する

閉じる

マイリスト
マイリスト機能を使ってみませんか?
ジェトロ・ウェブサイトのお好きなページをブックマークできる機能です。
ブックマークするにはお好きなページで+ボタンを押してください。