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日本産および日系企業現地生産品小売での販売動向

堅調な日本食材の消費動向 ‐ 日本食材専門店の見解

2010年10月
分野:食品・農林水産物

近年フランスでは、日本食への関心が急速に高まってきた。本レポートは、パリで事業展開する日系小売企業への取材結果も含め、日本食への関心が高まるフランスならではの理由、売れ筋の日本食材にについて報告する。

日本食材店にフランス人客が急増

フランス最大規模の日本食材専門小売企業「京子食品(仏語名: KIOKO SARL外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )」は、1972年にパリに店を構えて以来、38年にわたり日本の食文化をフランス市場に紹介し続け、同市場における日本食への関心と消費動向の変遷を見てきた。総面積が約150平方メートルある同店舗は、パリ市内の中心部オペラ座近くプチ・シャン通りにある。1~2階のフロアーに並べられる取扱商品は、さまざまな分野をカバーする。例を挙げると、米とその加工品、和風調味料、香辛料、乾物類、瓶缶詰類、肉・魚とその加工品、野菜、麺類、冷凍食品、酒類、清涼飲料、日本茶、菓子類、ベビーフード、パン、弁当、調理器具・食器・雑貨などである。なお、一部を除く商品は、親会社である吉川商事株式会社(横浜市)から仕入れている。

京子食品の代表によると、ここ数年フランス人の日本食に対する関心の急激な高まりは、販売数値からはもちろん、店に訪れる客層の変遷を見れば明らかだという。設立後十数年は、在仏邦人と日本人旅行者などが大半を占めていた。ところが、2000年代中頃には、フランス人の割合が全体の3割となり、現在では5割を占めるという。同店では、今後もこのフランス人比率は高まる傾向にあると予測しており、健全な店舗運営と拡大のためには、フランス人の食に対する習慣、価値観、トレンドに対し、これまで以上に敏感になる必要があるという。

食文化に深い関心をもつフランス人

パリ市内や一部の地方都市では、欧州各国はもとより中東・アフリカやアジア各国の専門レストランや食材店が、共存している。これは、ロンドン、ニューヨークなどの国際都市でも共通に見られる傾向だろう。しかし、他の欧米諸国の人々と比べ、料理に接する人々の姿勢の面で、フランス人に強くみられる価値観や行動があると、京子食品の代表はいう。フランス人は、食文化への理解と関心が深い傾向が見られる。料理や飲み物そのものへの興味だけではなく、食材、保存・調理方法、料理の見栄え等に至るまで、その背景となる各地域の文化・社会・歴史に対する好奇心が強い。例えば、フランス人と食事をすると、「この食材はどこでどういう人が作っているのか」「このソースや調味料は歴史的にどういう意味があるのか」「この料理はどの時代にどの地域で生まれ、どういう社会的階層の人達に好まれたのか」「この料理にはどういう飲み物が合い、その飲み物はどういう製法で作られるのか」等の会話や質問が多く飛び交う。

また、英国や米国などでは、すしやその他の日本食に対し、通常日本で使わない食材、調味料や香辛料を代替品として使ったとしても消費者に受け入れられやすいのに対し、フランス人は、日本で使う食材・調理法・味付け・食感に近いものを求める傾向があり、本物志向が強いという。

食文化に対する日本人とフランス人の共通価値観

日本人とフランス人との間には、食文化に対する感性や価値観に共通性が多く見受けられる。前述の、「料理や飲み物の背後にある各地域の文化・歴史に対する関心の高さ」や「強い本物志向」も、これに含まれるだろう。

これに加え、次の4つが共通の価値観としてあげられる。

1つは、地元産品へのこだわりで、これは日本人も強くもつ価値観ではないだろうか。フランス語では地元産品を「PRODUIT TERROIR」というが、フランス各地のレストラン、食料品店、朝市では、地元産品を好んで消費する傾向が強い(これは郷土料理やフランス料理に対してであり、日本食や他国の料理にもフランスでとれる素材を優先するということではない。逆に、日本料理であればその地元である日本産の素材を好むという意味となる)。2つ目は、料理人の感性を重んじる点である。料理は芸術であり、芸術であるからには、それを作る人の感性がその価値を左右する。料理人が、自らの感性で素材を選び、調理方法を編み出し、仕上げを工夫する点に料理の価値と楽しみを見出す。逆に、米国発のファストフードに多い、機械により大量生産された食材や、マニュアルやコンピューター管理によって標準化された料理プロセスなどは、まさしく「人間味がなく文化的香りがしない食べ物」となり、フランス市場では受け入れられにくい。3つ目は、素材や料理の舌触りや歯ごたえなど食感にこだわる点で、これも同様に日本人にも強い価値観ではないだろうか。数多くのフレンチ料理の有名シェフは、日本料理から大なり小なり影響を受けているが、特に、素材の崇高かつデリケートな食感は、彼らが最も日本料理に尊敬の念を抱く要因の1つであるといわれている。4つ目は、料理と器を一体化し、色、香、デザイン等あらゆる面で創作性と美的センスをとがらせ、盛り合わせする点である。フランスのヌーベル・キュイジンヌ(近代料理)が、日本の懐石料理の強い影響を受けたことからわかるように、料理を目と鼻で楽しむ点においても日仏共通の価値観がみられる。

多様化する消費者層と売れ筋商品

京子食品の代表によると、近年同店を訪れるフランス人客の属性が変化してきたという。以前は、一部の日本文化に興味をもつ又は在日経験のある中高年層が多かったが、近年は、年齢性別とも多様化が進んでいるとのことだ。

こうした日本食材消費者の大衆化の最大の理由には、日本食レストランの増加、業態の多様化、地方への拡散があげられる。1970年代以降、フランスでは、限られた数の、しかもパリに集中する日本人経営の日本食レストランが、日本人客(企業関係者、観光客、留学生)を主な顧客に営業していた。この限定的な市場は1990年代後半まで長年続き、レストラン数も決して大きく増えることはなかった。ところが、2000年代に入り、その数が急速に増えた(1,500件−ジェトロ食品卸会社調査)。特に、アジア系オーナーが営んでいた中華レストランが、次々に日本食レストランに衣替えした。これと並行して、フランス系資本によるカジュアルなすしショップ(レストラン、ケータリング、宅配)が、急速にフランチャイズ店舗を増やした。これら非日本人オーナー系のレストランは、パリ市内のみならず郊外や地方都市(リヨン、ボルドー、リール、マルセイユ等)での開店を急ぎ、すし、刺身、焼鳥を中心に、比較的手ごろな値段設定で一般のフランス人(中間層)に浸透していった。もちろん、こうした日本食レストランの大衆化の背景には、年々高まる健康志向がある。京子食品では、日本産の緑茶は、品質の高いものを中心にここ3年ほどで売り上げが倍増、特に有機栽培無農薬の煎茶と抹茶に人気が高いとのことだ。また、その他近年販売の伸びが大きい商品として、日本産の良質な白米(こしひかり等)、抹茶入りのお菓子・デザート類、豆腐、納豆、コンニャク、寒天、生姜、ゆず等があげられるという。

若者に牽引されるトレンディな日本食材

京子食品代表によると、近年の同店に訪れる客層の大きな変化として、特に学生も含め日本のポップカルチャーに敏感な若者層のフランス人客の増加傾向が見られるとのことだ。彼らに特に人気があるのが、インスタントラーメン(味としては、しょうゆ、とんこつ、みそ、塩の順)とインスタントみそ汁らしいが、日本発の漫画、テレビアニメや映画で目にした食品を購入するともいう。例えば、「ロッテの雪見だいふく」、「ラムネやメロンクリームソーダ」「サクマドロップ」などを例にあげる。たしかに、フランスは日本に次ぐ世界第2のマンガ市場といわれ、日本のポップカルチャー全般への関心がここ数年急速に高まっている。例えば、世界最大規模の日本のポップカルチャーの祭典「ジャパン・エキスポ」が毎年7月にパリ郊外で開催されるが、1999年の開催初年度の入場者数は数千人規模だったのが、2010年の祭典では、18万人を越えている。このように、毎年増え続けるニッポン好きの若者は、日本の食材に対する関心も高く、現在日本でトレンドとなっている若者のライフスタイルの一部となる食材への購買欲求は強い。従って、こうした日本で起きる新しい流れを常に注視する必要があると同社代表は話す。

手ごろでヘルシーな和食弁当が人気

パリ市内中心部オペラ座近く日本人通りとも称されるサンタンヌ通り、ここに店を構える「十時や」は、弁当販売と日本食材の小売を手がける。

同社代表によると、ここ数年、弁当販売が年率10%でコンスタントな伸びを示し、現在は1日平均400食の弁当を販売しているとのことだ。店内に入ると、まず弁当の注文カウンターがあり、20種類の値段入り弁当の写真が壁に貼られている。これを見て弁当を注文し、目の前で従業員がセットする弁当をテイクアウトするか、その横にあるテーブル(20席)で食べる。また店の後方には、日本食材の販売スペースがあり、様々な日本食材が販売されている。以前、フランスで弁当を食べる人達は、日系企業に勤める日本人社員か旅行代理店を通じパリにやってくる日本人観光客が大半を占めていた。「十時や」でも、10年前は、日系旅行代理店向けと個人向け店頭販売は、半々であったが、近年は、前者が2割、後者が8割に達し、しかも店頭で購入する客の大多数がフランス人だという。

フランス人の弁当購入者が増える大きな理由として、十時や代表は、弁当の値ごろ感(値段の割にはボリュームがあり、しかも素早く買えて時間が稼げる)とヘルシーさ(栄養バランスの良さ)を強調する。通常、フランス人のオフィスワーカーは、毎日レストランで外食する人は少ない。週の何回かは、朝自宅で準備したサンドイッチをオフィスで食べるか、サンドイッチ等の軽食を外で購入し近くの公園やオフィスで食べる人が多い。理由は、レストランでの食事は通常1時間の休憩時間をオーバーする危険性もさることながら、金銭的な制約が大きい。特に、「十時や」があるパリ中心部のレストランでランチをとると最低でも15ユーロはかかる。そこで、テイクアウトの軽食屋やスーパーで、サンドイッチなどを買って食べるとしても、7~9ユーロはかかり、しかもボリューム感が薄く栄養バランスも偏る。「十時や」の弁当は、7.8 ~9.8ユーロだが、サンドイッチに比べ、このボリュームと栄養バランスでファンを増やしているといえよう。従って、同店の弁当の中で、男性を中心に人気が高いのが、ボリューム感のある唐揚げ弁当、トンカツ弁当、かつ丼弁当、女性を中心に人気が高まっているのが、最近販売を開始した玄米を使い有機栽培食品を多く使うヘルシー弁当だという。

(パリ・センター)