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日本食品の輸入動向

急拡大する緑茶の輸入 ‐ 健康志向と日本ブームの高まりに後押しされる

2010年10月
分野:食品・農林水産物

フランスでは伝統的に、緑茶はもとより紅茶も含めお茶を飲む習慣はあまりなかった。しかし、近年の健康志向の高まりもあり、緑茶の人気が急上昇している。様々なタイプの小売業が緑茶を販売し、緑茶をだすカフェ(※1)やサロン・ド・テ(※2)も増加、緑茶を使った洋菓子や料理も続々登場、これに伴い、高品質を謳う商品を中心に日本からの輸入量も急増している。

※1, 主に飲み物をだす。
※2, 軽食も出す。喫茶店。

アジア系だけでなくフランス系小売にも拡がる緑茶

十数年前まで、フランスで緑茶を購入できる小売店舗は、アジア系食材専門店(TANG FRERES等)と日本食材専門店(京子食品、十時やなど)にほぼ限られていた。国際連合食糧農業機関(FAO)によると、2006年度の世界の緑茶生産量の国別シェアは、中国80.8%、日本9.5%、その他アジア8.9%である。フランスでは、緑茶を取り扱う小売業者も愛飲者も、こうした緑茶生産国の出身者に片寄り、多くのフランス人にとっては、緑茶は数あるエキゾチックな飲料の1つでしかなく、実際に試した経験者もかなり限定されていた。

ところが1990年代後半からの世界的な緑茶ブームの波(1996年から2006年の間の年平均増加率が、生産量で4.7%、輸出量で14.1%−FAO)は、フランスにも押し寄せてきた。特に5年ほど前から、フランス系の一般のスーパーや茶専門店による緑茶の取り扱いが急増し、これまでの生産国系小売による取扱量を逆転する勢いを呈してきた。同時に、パリを中心に緑茶をだすカフェも多くなり、高級洋菓子店を中心に、抹茶を使った商品(マカロン、アイスクリーム、チョコレート、クリームタルト、ティラミス等)も続々登場した。また、抹茶、煎茶、ほうじ茶を使用したフランス料理(肉や魚料理、サラダ、デザート、カクテルドリンク類)を紹介するウェブサイトも続々立ちあがっている。(例:緑茶利用のフランス料理献立紹介サイト PTIT CHEF外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

緑茶を取り扱う小売業態の多様化

近年フランスで緑茶を取扱う現地系小売業態は、表1に示すように多極化が進んできた。

表1:緑茶を取扱う現地系小売業態
業態 概況 緑茶ブランド
一般スーパー
(MONOPRIX、INNO等)
(例)MONOPRIX
これまで紅茶とハーブティーがお茶売り場の多くを占めていたが、緑茶商品の種類と売り場面積を拡大
(価格:ティーバッグ20個入りパック1~2ユーロ)
TWININGS
LIPTON
TETLEY
KUSMI TEA
自社PB(プライベートブランド)
郊外型ハイパーマーケット
(Carrefour、AUCHAN等)
(例)Carrefour
これまで紅茶とハーブティーがお茶売り場の多くを占めていたが、緑茶商品の種別、売り場面積を拡大
(価格:ティーバッグ20個入りパック1~2ユーロ)
TWININGS
LIPTON
TETLEY
ALTER ECO
自社PB
高級デパート
(Galeries Lafayette、PRINTEMPS等)
(例)Galeries Lafayette
これまで紅茶とハーブティーがお茶売り場の多くを占めていたが、高級茶専門ブランドに絞り、緑茶商品の種別、売り場面積を拡大
(価格:ティーバッグ20個入りパック7~13ユーロ)
MARIAGE FRERES
DAMMANN FRERES
KUSMI TEA
高級食材店
(FAUCHON、HEDIARD、PIERRE HERME等)
(例)FAUCHON
中国産7種と玉露1種の8種を販売
(価格:中国産100g当たり10~14ユーロ。玉露100g当たり22ユーロ)
自社PB
お茶専門店
(PALAIS DES THES、 KUSMI TEA、 MARIAGE FRERES、 NINA'S DAMMANN FRERES等)
(例)PALAIS DES THES
緑茶54種類を販売。内、中国産22種,日本産13種。
(価格:中国産100g当たり3~42ユーロ。日本産100g当たり5~57ユーロ)
自社PB
お茶特化型ECサイト
ADMIRABLE TEA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
THE−PASSION外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
TAMAE.NET外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
MONTHEVERT.COM外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
(例) THE−PASSION外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
緑茶27種類を販売。内、中国産16種、日本産11種。
(価格:中国産100g当たり3~19ユーロ。日本産100g当たり6~60ユーロ)
バルク販売中心

注目されるブレンド緑茶とオーガニック緑茶

フランスの各種小売店舗で販売される緑茶の大多数は、フルーツ、ハーブ、樹木の香料または乾燥皮や花弁を混入したブレンド商品になっている。

例えば、フランス全土で280店舗を展開する都市型スーパー MONOPRIX外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます は、紅茶やハーブティーを含め104品目のお茶を取り扱う。そのうち、緑茶は23品目だが、緑茶100%のものは3種類のみで残りの20品目はブレンド緑茶となる(グレープフルーツ、レモン、いちご、野いちご、フランボワーズ、ブラックベリー、カシス、赤スグリ、ミント等をブレンド)。

また、老舗の高級ティーブランド MARIAGE FRERES外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます は、35カ国500種類の自社ブランド品目を取り扱う。そのうち、緑茶は約200品目だが、8割以上がブレンド緑茶となる(ジャスミン、ミント、桜、ベルガモット、ゆず、バニラ、キンセンカ、月桂樹、ヤグルマギク、ラベンダ、タイム、エニシダ等をブレンド)。

さらに、こうした色・香・味のブランド商品に加え、近年新たに2つのタイプの緑茶が市場に出てきた。1つ目は、オーガニック緑茶で、フランスにおける有機農産物認定(Certifie Agriculture Biologique)を受けた商品だ(パッケージ商品の場合は、左下の写真にある「ABラベル」を表示)。例えば、お茶特化型ECサイト THE−PASSION外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます では31種の緑茶の内、9種がオーガニック緑茶になっている。2つ目は、主にインド産の緑茶を使ったフェアトレード商品(生産者を経済的に支援し、彼らが安心して働ける場を作り出し貧困から抜け出す手助けをすることを目的とするもの)で、中央下の写真にある「FAIRTRADEラベル」を表示する。中には、オーガニック兼フェアトレード商品もある。例えば、右下の写真は、大手郊外型ハイパーマーケットのCarrefourが販売する商品で、「ABラベル」と「FAIRTRADEラベル」が表示されている。

緑茶専門のサロン・ド・テが増加

現在フランスで緑茶をだす飲食店をタイプ別に大別すると、1)レストラン(和食、中華、一部のフレンチ)、2)パリを中心にした一部のカフェ、3)サロン・ド・テの3つになる。さらに、サロン・ド・テは、次の4つのタイプに分類できる。

1つ目は、「高級ティーブランドのサロン併設型直営店」で、MARIAGE FRERES、KUSMI TEA、NINA'S、DAMMANN FRERES等が代表例だ。こうした店では各社のPB(プライベートブランド)緑茶が飲める。2つ目は、「高級総菜・パティスリー・ショコラティエなどのサロン併設型直営店」で、FAUCHON、HEDIARD、PIERRE HERMES、JEAN-PAUL HEVIN等では、各社のPBの緑茶が飲める。3つ目は、YAM'TCHA, DELYAN等の「レストラン系サロン」で、コーヒー、紅茶に加え緑茶が飲める。最後は、ここ数年増加する「緑茶中心または緑茶専門サロン」である。中国系では、MAISON DE 3 THES、ENDRA、L'EMPIRE DES THES、ZEN ZOO、LA MAISON DU THE、SALON DE THE CHINOIS, CHA YUAN等がパリ市内を中心に展開している。一方、日系では、1980年に開店し、パリにおける日本茶文化の第一人者とも言えるパリ 虎屋外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます と、日本茶に魅せられたフランス人とアメリカ人の夫婦が2001年に開店した 茶人外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます があった。さらに2008年10月、株式会社丸山海苔店が手がける日本茶専門店「寿月堂」が、海外第一号店として、茶室を併設する日本茶葉専門店「 寿月堂パリ店外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」をオープンしている。

中国茶に対する日本茶の市場ポジション

フランス市場で流通する中国茶と日本茶では、製品種別の幅に違いがある。中国茶には緑茶、白茶、黒茶、紅茶、黄茶、青茶と幅広い種類があるのに対し、日本茶は緑茶に絞られる。ここで緑茶に焦点を絞り、中国茶と日本茶を比較すると、大きく次の2つの違いがあげられる。

1つは価格帯で、日本産緑茶は中国産緑茶より比較的高価格帯にある商品が多い。例えば、バルク製品を見ると、MARIAGE FRERESの中国産緑茶は、100g当たり4ユーロから最高値でも龍井茶の55ユーロであるのに対し、日本産緑茶は5ユーロから、最高値で朝比奈玉露の98ユーロとなる。また、PALAIS DES THESの中国産緑茶は、100g当たり4ユーロから、最高値でも雲南省緑茶の39ユーロであるのに対し、日本産緑茶は5ユーロから最高値で玉露の57ユーロとなる。さらに、パッケージ製品では、例えば、アジア系食材専門店で扱われる中国産緑茶が、100g当たり0.5~4ユーロであるのに対し、日本食材専門店で扱われる日本産緑茶は、4~10ユーロとなっている。

2つ目は、緑茶輸出量の違いがあげられる。表2は、中国、ベトナム、インドネシア、日本の4カ国について、2006年度の緑茶の生産量と輸出量(単位:1,000メトリックトン)と国別構成比を示したものだ(FAO)。これを見ると、中国は、生産量だけでなく輸出量でも日本を圧倒している。輸出構成比(生産量に対する輸出量比率)は、中国が28.0%であるのに対し、日本は1.7%となっている。

表2:2006年度 緑茶の生産量と輸出量と国別構成比(単位:1,000メトリックトン)
国名 生産量
(1,000メトリックトン)
(構成比)
順位 輸出量
(1,000メトリックトン)
(構成比)
順位 輸出構成比(%)
中国 782.4(80.8%) 1 218.7(83.0%) 1 28.0%
日本 91.8(9.5%) 2 1.6(0.6%) 4 1.7%
ベトナム 66.0(6.8%) 3 26.0(9.9%) 2 39.4%
インドネシア 20.0(2.1%) 4 9.1(3.5%) 3 45.5%

出所:国際連合食糧農業機関(FAO)

これは、日本産緑茶よりもいかに中国産緑茶が国外輸出販売へ依存しているかを示す。ALIBABA.COM(輸出入・貿易取引に関するB to Bのマッチングサイト)の緑茶カテゴリーに登録し世界のバイヤーを探すメーカーや輸出業者の数を比較すると、中国が9,862社で日本は322社となっていることからも同様のことがみてとれる。

この輸出量の違いは、フランスにおける流通にも影響を及ぼしている。多くの中国産緑茶商品が、アジア系食材専門店はもとより、前述の表1に示したすべての現地系小売チャネルを通じ販売されている。これに対し、日本産緑茶は、一部の高級品を除き現地系小売チャネルでの取扱商品数は極めて少なく、輸入される日本産緑茶の多くは、日系食材専門店や一部のアジア系食品専門店への依存度が高くなっているようだ。

(パリ・センター)