貿易管理制度

最終更新日:2024年03月15日

管轄官庁

欧州委員会通商総局

欧州委員会通商総局(Directorate-General for Trade, European Commission外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

所在地:170, Rue de la Loi-Wetstraat, B-1049 Brussels, Belgium
Tel:00 800 67891011(EU内)、+32-2-299 11 11(EU以外)

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輸入品目規制

特定危険化学品、食品・農水産品、飲料、特殊な野生動植物、薬物、鉄鋼製品、廃棄物

特定危険化学品に関する規制

  1. 化学品規制
  2. 化粧品に関する規制
  3. 残留性有機汚染物質(POPs)規制
  4. 有害化学物質などの輸出に関する事前のかつ情報に基づく同意(PIC)規則

食品、農水産品に対する規制、検疫、輸出入ライセンス

  1. 一般食品法
  2. 食品衛生
  3. 動物検疫
  4. 農産品:輸入ライセンス

なお、食品、農水産品を日本から輸出する際の制度情報については、品目別にまとめた以下ページも参照のこと。

飲料に関する規制

  1. ボトル詰ミネラルウォーターなど飲料水に関する規制
  2. 蒸留酒(スピリッツ)に関する規制
  3. ワインに関する規制
  4. ワイン・蒸留酒(スピリッツ)に関する容量規制
  5. その他、アルコール飲料に関係する規制

特殊な野生動植物保護規制

ワシントン条約に準拠。

薬物規制

EUと第三国間で合法的に取引される物質が、麻薬・向精神性物質の密造に流用されることを防ぐための規制がある。

鉄鋼製品に適用される輸入監視措置

  1. 適用法令
    第三国から輸入される特定の鉄鋼製品に対し、事前監視措置を導入する2016年4月28日付欧州委員会実施規則2016/670(Commission Implementing Regulation (EU) 2016/670 of 28 April 2016 introducing prior Union surveillance of imports of certain iron and steel products originating in certain third countries外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2020年5月16日失効)
  2. 概要
    EUは、近年、中国などを原産国とする低価格の鉄鋼製品の輸入が急拡大し、域内の鉄鋼産業に大きな打撃を与えたことを受け、2016年4月30日に監視措置を導入した(監視措置については、後述の「輸入管理その他」の項目を参照)。同措置は産業界からの要請を受けて2020年5月16日に廃止され、事後的なモニタリング制度に移行した。
    旧措置は、鉄鋼輸入の推移と現況を把握・分析し、必要に応じて措置を講じることが目的で、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン以外の第三国から輸入される、重量2,500キログラム超の鉄鋼製品に適用されていた。

廃棄物輸送規制

EUでは、廃棄物の輸送について、EU加盟国間の輸送、EU加盟国内における輸送、EUから第三国への輸出、第三国からEUへの輸入、EUを通過するトランジットのそれぞれについて、廃棄物輸送の2つの目的([1] 埋め立てまたは焼却による廃棄物の「処分」、[2] リサイクル目的の「リカバリー(recovery)」)に区別して詳細規定が定められている。
適用法令として、廃棄物輸送に関する2006年6月14日付欧州議会・理事会規則1013/2006がある。また、同規則に盛り込まれた規定の順守を支援するため、廃棄物輸送の通関手続きに関するガイドラインが公表されている。

輸入地域規制

国連制裁に基づく禁輸措置、特定第三国に適用される共通輸入規則、ウクライナ情勢を巡る特別措置

国連制裁に基づく禁輸措置

EUは、国連の安全保障理事会の決定による輸出入に関するあらゆる制裁を適用する。

特定第三国に適用される共通輸入規則

  1. 適用法令
    特定第三国に適用される共通輸入規則に関する2015年4月29日付欧州議会・理事会規則2015/755(Regulation (EU) 2015/755 of the European Parliament and of the Council of 29 April 2015 on common rules for imports from certain third countries外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  2. 概要
    独占的国家貿易が行われている特定の第三国を原産とする製品(特別な共通輸入規則の対象となる繊維製品を除く)の輸入に対する共通のルール、ならびに必要に応じて監視措置やセーフガード措置を取るための手続きが規定されている。対象となる第三国は、1.の規則の付属書Ⅰにおいて、現在、アゼルバイジャン、ベラルーシ、北朝鮮、トルクメニスタン、ウズベキスタンの5カ国が指定されている。なお、これらの国がWTOに加盟した場合、同規則の対象から除外される。

ウクライナ情勢を巡る特別措置

  1. 対ロシア経済制裁
    ウクライナ情勢を巡るロシアに対する経済制裁の一環として、EUはロシアからの武器・関連品の輸入を禁止している。
    2022年2月23日以降、ロシアによるウクライナのドネツクおよびルガンスク両地域に対する独立国家としての一方的な承認とそれに続くウクライナへの侵攻を受け、EUはロシアに対する制裁を強化するために、一連の制限措置を実施している。

    EU理事会(閣僚理事会)は2月23日、EU域内の資産凍結、資金提供の禁止、域内入域禁止などのロシア政府や軍関係者などの特定の個人・団体に対する制裁の対象を拡大するとともに、ロシア政府・中央銀行によるEUの資本・金融市場へのアクセスを制限する措置などを採択した。また、同25日には金融、エネルギー、半導体などを含む二重用途物品、在留許可などの分野における追加制裁を採択。さらに、同28日にはロシア中央銀行が保有する資産や外貨準備に関連した取引の禁止と、ロシアの航空会社やロシア国籍者・法人が所有、管理する航空機の域内乗り入れ禁止を採択。
    3月2日には、国外送金の国際銀行間通信協会(SWIFT)システムからロシアの一部銀行を排除する措置を採択。同9日には、航海関連製品と無線通信技術に関して、直接的か間接的かにかかわらず、ロシア在住者やロシア船舶向けの販売、供給、譲渡、輸出を禁止したほか、金融制裁などを拡大。同15日には、ロシアからの鉄鋼製品の輸入禁止、ロシアのエネルギー分野への新規投資禁止、ロシアへの高級車や宝飾品などぜいたく品の輸出禁止などを採択。また同日、WTOにおけるロシアの最恵国(MFN)待遇の適用停止について合意した。ただし、MFN税率の撤回による一律の関税率の引き上げは行わず、特定品目の輸出入禁止を拡大することで現状は対応している。
    4月8日には、ロシア産の石炭等化石燃料の輸入禁止、EU域内港湾へのロシア船舶の入港禁止、ロシア籍の陸上運送業者の入域禁止、木材、セメント、海産物、酒類の一部輸入禁止、ロシア主要4銀行との取引完全停止などを採択した。
    6月3日には、ロシア産原油および石油精製品の輸入禁止を採択。海上輸送によるロシア産原油の輸入は、スポット取引および既存契約を履行する取引は6カ月間、石油精製品については同じく8カ月間の猶予期間が設けられた。パイプライン経由の原油輸入は、ハンガリーの主張を受けて、禁止対象から除外された。このほか、化学兵器に使用される可能性のある化学品80品目を輸出禁止品目に追加、SWIFTシステムからの排除対象銀行の追加、EU域内の資産凍結、資金提供の禁止、域内入域禁止の対象となる個人および団体の追加などの制裁措置を採択。
    7月21日には、ロシア産の金(宝飾品含む)の購入やEUへの輸入等の禁止、ロシア船舶による港湾利用の制限拡大などを含む追加制裁パッケージを採択している。また新たに、モスクワ市長含む54名とズベルバンクなど10の団体が資産凍結等の制裁対象となった。
    9月9日、EU・ロシア間の査証円滑化協定の全面停止が決定され、ロシア国民に対するビザ発給手続きの優遇措置が撤回された。
    10月6日には、鉄鋼製品と半製品、木材パルプ、紙、巻きたばこ、プラスチック、化粧品、自動車、繊維製品、宝石、希少金属のほか、一部の機械製品や化学品などに輸入禁止措置を拡大した。
    12月3日、EU理事会はEU域外向けのロシア産原油に1バレル60ドルの上限取引価格を設定することを決定した。12月16日、ロシア地域開発銀行との取引を全面的に禁止し、資産凍結の対象となる銀行を追加で指定した。

    2023年2月4日、EU理事会はEU域外国向けに海上輸送されるロシア産石油製品の上限価格を、製品により1バレル当たり100ドルと45ドルとすることを決定し、2月5日から適用を開始した。2月25日、アスファルトや合成ゴムのロシアからの輸入を制限した。制裁リストにさらなる個人や団体を追加するとともに、資産凍結の実効性を高めるために制裁対象者の資産等に係る情報を加盟国当局に報告する義務を強化した。資産凍結対象となる銀行を追加し、ロシア中央銀行の資産や準備金に関する新たな報告義務も導入した。
    6月23日、制裁回避行為の取り締まりの一環として、二重用途物品や技術に関して、より厳格な輸出制限の対象に、ロシアやイランの企業に加え、新たに中国、ウズベキスタン、アラブ首長国連邦(UAE)、シリア、アルメニアの企業を追加した。また、ロシアのトレーラー等によるEUへの輸送を完全に禁止し、ロシア産原油の輸送に関しては所定の条件を満たさない船舶のEU港湾へのアクセスも禁止する。制裁対象の鉄鋼製品の輸入にあたりロシア産原料を使用していないことの証明義務を課した。さらなる個人・団体が資産凍結等の対象に指定された。

    12月18日、ロシア産ダイヤモンドの輸入を2024年1月から禁止した。鉄鋼生産用原材料やアルミニウム加工品などの輸入制限を強化した。ロシア産原油価格の上限規制の一環で、第三国へのタンカー販売をより厳しく監視する。資産凍結等の対象範囲を拡大し、加盟国の追跡義務を強化した。新たに140を超す個人・団体が制裁対象者に指定された。

    2024年2月23日、鉄鋼輸入措置に係る協力国リストに英国が加えられた。協力国は、鉄鋼製品の輸入にあたってEU規則と同等の制限・管理措置を導入する。制裁対象者リストに、新たに106の個人と88の団体が追加指定された。特に、北朝鮮からの武器輸送を支援する企業や個人が含まれる。北朝鮮の国防相もその名を連ねた。これにより、制裁対象者は合計2,000を超えた。

  2. 対ベラルーシ経済制裁
    EUは2022年3月2日以降、ロシアによるウクライナ侵攻に協力しているとされるベラルーシに対する経済制裁を強化。EU理事会は3月2日に、EU域内の資産凍結や資金提供などの禁止、域内への入域禁止の対象にベラルーシの軍関係者を追加し、たばこ、鉱物性燃料、木材、セメント、鉄鋼、ゴム製品などの生産・製造に関連する産品の取引や、二重用途物品・技術の輸出を制限する措置を採択。同9日、金融制裁などロシアと同様の制裁措置を課した。6月3日には、二重用途物品・技術の輸出制限の対象企業・団体を拡大した。2023年2月27日、経済制裁の期限が1年延長された(2024年2月28日まで)。
  3. クリミア自治共和国およびセバストポリ市からの輸入制限
    ウクライナ情勢を巡る経済制裁の一環で、クリミア自治共和国およびセバストポリ市を原産とする製品の域内への輸入を原則的に禁止している。ただし、ウクライナ当局による承認があれば、これを認可する。

輸入関連法

共通輸入規則、輸入数量割当、繊維製品に適用される共通輸入規則、その他(サービスに関する共通規則)

共通輸入規則

  1. 適用法令
    共通輸入規則に関する2015年3月11日付欧州議会・理事会規則2015/478(Regulation (EU) 2015/478 of the European Parliament and of the Council of 11 March 2015 on common rules for imports外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  2. 概要
    共通輸入規則(欧州議会・理事会規則2015/478)は、a) 繊維製品に適用される共通輸入規則(欧州議会・理事会規則2015/936)と、b) 特定第三国に適用される共通輸入規則(欧州議会・理事会規則2015/755)の対象以外のすべての製品の域内への輸入に関する規則を法典化したもので、輸入規制が行われる際の手続きを定めている。
    特定の製品の輸入が域内の生産者の経済活動に深刻な影響を及ぼすと認められた場合、欧州委員会は、監視措置またはセーフガード措置を導入することができる。欧州委員会は加盟国から要請を受けた後、1カ月以内に本格的な調査を開始し、セーフガードに関する専門委員会への諮問などを経て、9カ月以内(最長2カ月間の延長可)に措置導入の可否についての結論を下す。なお、監視措置とセーフガード措置については、次項の「輸入管理その他」を参照。

輸入数量割当

詳細はPDF参照。

繊維製品に適用される共通輸入規則

詳細はPDF参照。

その他:サービスに関する共通規則

加盟国間でのサービス提供者の事業設立の自由およびサービスの自由移動の障壁を撤廃し、域内でのサービス提供の自由化を確立するための法的な枠組みを規定する。

輸入管理その他

貿易救済関連措置:監視措置、セーフガード措置、アンチダンピング措置、相殺関税、貿易障壁に対する対抗措置。域内流通に関する規制:食品ラベル表示規則、製品包装容量サイズ規制、CEマーク。電子商取引・サイバーセキュリティ・個人情報保護に関する規制:越境電子商取引に関する規則、サイバーセキュリティに関する規則、個人データ保護に関する規則。その他:EUへの輸入に関する情報(Access2Markets)。

貿易救済関連措置

監視措置

  1. 適用法令
    共通輸入規則に関する2015年3月11日付欧州議会・理事会規則2015/478(第Ⅳ章)(Regulation (EU) 2015/478 of the European Parliament and of the Council of 11 March 2015 on common rules for imports外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  2. 概要
    輸入製品がEU域内の生産者に重大な損害を与える恐れがあり、かつ共同体の利益保護が必要となる場合、欧州委員会の決定により、監視措置(輸入統計の遡及的監視や事前審査)を導入することができる。事前審査の対象となった製品の輸入には、監視書類(surveillance document)の発給を受ける必要がある。監視書類は、申請する輸入業者がどこで事業を実施しているかを問わず、その申請の受理から5日以内に加盟国により、無償で発行される。

WTOに基づくセーフガード措置

  1. 適用法令
    共通輸入規則に関する2015年3月11日付欧州議会・理事会規則2015/478(第Ⅴ章)(Regulation (EU) 2015/478 of the European Parliament and of the Council of 11 March 2015 on common rules for imports外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  2. 概要
    欧州委員会による調査の結果、EUへの輸入が、域内の生産者に、重大な損害を与えるか、または与える恐れがある場合、欧州委員会はEUの利益を保護するために、セーフガード措置として関税引き上げや数量割当制度を導入することができる。アンチダンピング措置などと異なり、企業が直接に調査の開始を申し立てることはできない。

    数量割当制度が導入された場合、当該措置の発効前に締結された契約による貿易量、および従来の取引のフローを維持することが望ましいかを考慮し、原則として、過去3年間の輸入の平均レベルを下回る設定はしない。複数の第三国を対象に数量割当が設定された場合は、割当分はこれらの国の間で配分される。

    セーフガード措置の適用期間は、原則として、暫定措置の発動から最長4年と定められている。なお、一定の条件下で適用期間の延長が認められるが、これを含めた措置期間が8年を超えることはない。

日EU・EPAにおけるセーフガード措置

  1. 適用法令
    欧州連合と第三国が締結した一部の貿易協定における特恵措置の一時停止を可能とする二国間セーフガードおよびその他制度を実施する2019年2月13日付欧州議会・理事会規則2019/287(Regulation (EU) 2019/287 of the European Parliament and of the Council of 13 February 2019 implementing bilateral safeguard clauses and other mechanisms allowing for the temporary withdrawal of preferences in certain trade agreements concluded between the European Union and third countries外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2019年3月14日より適用開始)
  2. 概要

    日EU経済連携協定(EPA)は、同協定による関税の引き下げの影響により特定産品の輸入が増加し、国内産業に重大な損害、または、その恐れがある場合のセーフガード措置を規定している。この規定は、協定の発効日から、当該産品の関税の引き下げの完了または撤廃の完了から10年以内の「経過期間」に限り、最長2年(延長する場合は最長4年)の期間、関税の引き下げの停止、または関税の一定水準までの引き上げを認めている。

    この内容は、「経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定(日EU・EPA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(4MB)」第五章(貿易上の救済)で規定されている。また、日EU・EPAにおけるEU側のセーフガードの適用プロセスは、欧州議会・理事会規則2019/287に規定されている。

アンチダンピング措置

詳細はPDF参照。
ジェトロ:EU 輸入管理その他 アンチダンピング措置PDFファイル(237KB)

相殺関税

  1. 適用法令
    欧州連合加盟国以外の国からの補助金を受けた輸入品に対する保護に関する2016年6月8日付欧州議会・理事会規則2016/1037
    Regulation (EU) 2016/1037 of the European Parliament and of the Council of 8 June 2016 on protection against subsidised imports from countries not members of the European Union外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  2. 概要
    EUは、域外で補助金を享受した輸入品が、不当に安い価格などにより、域内産業に損害を与えていると認めた場合、相殺関税を課すことができる。同措置の要件や手続きなどは、欧州議会・理事会規則2016/1037(2016年7月20日発効)にまとめられている。

    欧州委員会は、企業、産業団体など利害関係者の申立てに基づき、調査手続きを開始する。欧州委員会は、当該輸入品が補助金による利益を享受していること、域内産業が損害を受けていること、補助金を受けた輸入品と損害の因果関係があること、相殺関税がEUの共通利益に相反しないことの4点が調査で認められた場合、原則5年間の相殺関税を賦課する。必要に応じて、中間見直しや相殺関税課税措置の延長が行われる。

貿易障壁に対する対抗措置

  1. 適用法令
    国際通商規則、特にWTOで制定された規則の下での欧州連合の権限を行使するための共通通商政策における欧州連合手続きを定める2015年10月6日付欧州議会・理事会規則2015/1843
    Regulation (EU) 2015/1843 of the European Parliament and of the Council of 6 October 2015 laying down Union procedures in the field of the common commercial policy in order to ensure the exercise of the Union’s rights under international trade rules, in particular those established under the auspices of the World Trade Organization (codification)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  2. 概要
    EUでは、域外の第三国が講じた貿易障壁に対抗するための手続きを、欧州議会・理事会規則2015/1843(いわゆる貿易障壁規則:TBR、2015年11月5日発効)にまとめている。

    域内産業や企業が第三国市場と取引を行う際に、当該国が課した障壁により悪影響を受ける場合、または将来損害を蒙る恐れがある場合に、当該産業や企業、EU加盟国は、欧州委員会に調査を要請することができる。

    調査により、国際通商規則に反する貿易障壁が存在し、域内産業や企業に影響が及ぶことが判明した場合、相互協定による交渉やWTOによる紛争解決、あるいは通商政策による対抗措置などの是正策を講じる。

    主な是正策は次のとおり。

    1. 貿易障壁を導入した第三国が問題解決のために措置を講じた場合、欧州委員会は、調査手続きを一時中断し、第三国が講じた解決策の実行を監視する。
    2. EUと当該第三国との間の交渉に基づく協定の締結が紛争解決のために最善であると考えられる場合は、欧州委員会は調査手続を中断し、第三国と交渉を実施する。
    3. EUと当該第三国との間に友好的な解決が不可能なことが明らかである場合、既存の優遇措置の一時停止・撤廃や、関税率の引き上げまたは輸入特別税の導入、輸入割当制の適用やその他の輸出入要件の変更などの対抗措置を講じる。
    4. 国際レベルでの諮問手続きを経る必要がある場合は、通商政策による対抗措置に先立ち、WTOの紛争解決手続きか、またはその他の適切な国際紛争解決機関に当該紛争の処理を依頼する。

    なお、WTOを中心とする多国間の国際通商規則だけでなく、二国間協定の違反に基づく申し立ても可能となっている。

域内流通製品に関する規制

食品ラベル表示、添加物に関する規制

  1. 一般的な食品の表示
  2. 特定の表示事項
  3. 食品添加物
  4. 製造ロットの表示
  5. 重・容量表示
  6. 遺伝子組み換え食品の表示
  7. 有機食品の表示
  8. 新規食品に関する規則

なお、食品、農水産品を日本から輸出する際の制度情報については、品目別にまとめた以下ページも参照のこと。

製品包装容量サイズ規制

包装済み製品の実際の重・容量が名目表示量よりも少ない場合の誤差の許容範囲は、理事会指令76/211/EECの付属書Ⅰの項目2.4に基準が定められている。

(表)包装済み製品の重・容量誤差の許容範囲‐:設定なし
名目表示量
(g または ml)
許容範囲(表示重・容量より少ない場合)
表示量に対する割合 実際の誤差(g または ml)
5~50 9%
50~100 4.5
100~200 4.5%
200~300 9
300~500 3%
500~1,000 15
1,000~10,000 1.5%

(出所)理事会指令76/211/EEC附属書I、項目2.4.

包装済み製品のうち、実際の重・容量が名目表示量よりも許容範囲の2倍を超えて少ないものは、指令76/211/EECの順守を示す「e」マークを添付することができない。また、これら製品を包装する事業者または輸入事業者は、許容範囲を超えて実際の重・容量が名目表示量より少ないものの割合を一定以下に抑えることが要求される。なお、ワインと蒸留酒(スピリッツ)の容量規制については、前述の「輸入品目規制、飲料に関する規制」を参照。

CEマーク

EUでは1985年に、製品の安全性や品質の基準を域内で統一し、円滑な流通を目指す理事会決議「技術的調和および基準に対するニューアプローチ」が採用された。同決議に基づいて定められた指令の対象となる製品は、輸入品も含め、指令が定める要件を満たした上で、「CEマーク」を添付することが義務付けられている。

  1. 技術的調和および基準に対するニューアプローチ
  2. CEマーク(CE Marking
  3. エコデザイン指令
  4. RoHS改正指令
  5. 相互承認協定(MRA)

電子商取引・サイバーセキュリティ・個人情報保護に関する規制

越境電子商取引に関する規則

サイバーセキュリティに関する規則

個人データ保護に関する規則

ジェトロ:EU 電子商取引・サイバーセキュリティ・個人情報保護に関する規制 詳細PDFファイル(319KB)
なお、本規制を含むEU「デジタル単一市場(DSM)戦略」については、ジェトロ 地域・分析レポート 特集「EUデジタル単一市場 構築への進捗状況と課題」も参照のこと。

その他

EUへの輸入に関する情報

域内外の輸出業者向けに、EUへの輸入関連情報(関税、要件、特恵、割当、統計等)を提供する。

輸出品目規制

二重用途物品、特定危険化学品、農産品輸出入ライセンス制度、食品衛生、特殊な野生動植物保護、薬物規制、模造品および海賊版、廃棄物輸送

二重用途物品

ワッセナー条約に準拠。

特定危険化学品

ロッテルダム条約の実施規則である規則649/2012が適用される。同規則については 、次のPDFの「4. 有害化学物質などの輸出に関する事前のかつ情報に基づく同意(Prior Informed Consent:PIC)規則」を参照されたい。

農産品輸出入ライセンス制度、食品衛生

特殊な野生動植物保護

ワシントン条約に準拠。

薬物規制

EUと第三国間で合法的に取引される物質が、麻薬・向精神性物質の密造に流用されることを防ぐための規制がある。

模造品および海賊版

模造品または海賊版である疑いのある物品に対しては販売停止措置がとられ、域内流通市場への上市、域外への輸出・再輸出は禁止される。違法が判明した物品にはペナルティ(当該物品の破壊も含まれる)が適用される。

廃棄物輸送規制

廃棄物の輸送について、EU加盟国間の輸送、EU加盟国内における輸送、EUから第三国への輸出、第三国からEUへの輸入、EUを通過するトランジットのそれぞれについて、廃棄物輸送の2つの目的([1]埋め立てまたは焼却による廃棄物の「処分」、[2]リサイクル目的の「リカバリー(recovery)」)に区別し詳細規定が定められている。
適用法令として、廃棄物輸送に関する2006年6月14日付欧州議会・理事会規則1013/2006がある。また、同規則に盛り込まれた規定の順守を支援するため、廃棄物輸送の通関手続きに関するガイドラインが公表されている。

輸出地域規制

国連制裁に基づく禁輸措置、武器輸出禁止措置、ウクライナ情勢を巡る対ロシア経済制裁

国連制裁に基づく禁輸措置

EUは、国連の安全保障理事会の決定による輸出入に関するすべての制裁を適用する。

武器輸出禁止措置

国連勧告により、武力衝突がある世界のすべての地域への武器輸出は、原則として禁止される。国連勧告は、理事会共通の立場(Common Position)を経て、EUでも導入されている。

ウクライナ情勢を巡る輸出禁止措置

  1. ロシア
    ウクライナ情勢を巡るロシアに対する経済制裁の一環で、EUは次の輸出規制措置を実施している。
    1. ロシアへの武器・関連品の輸出の禁止
    2. 軍事目的または軍をエンドユーザーとする二重用途物品・技術(民生と軍事目的の双方に使用可能なすべての物品、ソフトウエア、技術)のロシア向け輸出の禁止
    3. ロシア軍部にサービスを提供する軍需企業9社に対する軍需技術の輸出禁止措置
    4. 特定のエネルギー関連製品・技術のロシア向け輸出について、加盟国当局による事前許可(輸出ライセンス)制の導入(ロシアの深海や北極海の油田探査・生産やシェールガス開発・生産プロジェクト向けは禁止)
    5. ロシアの深海や北極海の油田探査・生産やシェールガス開発・生産プロジェクトに必要なサービス(掘削、坑井試験、検層と仕上げ、特殊船舶の提供)の禁止

    EU理事会(閣僚理事会)は2022年2月25日、エネルギー分野では、石油精製に関連する商品や技術の販売・供給・移転・輸出を禁止。運輸では、航空・宇宙産業関連の商品と技術の輸出を禁止。さらに、軍事産業への転用が可能な二重用途品や、半導体技術を含む防衛・安全保障分野に影響する重要品目と技術への輸出制限を強化。
    3月9日には、航海関連製品と無線通信技術に関して、直接的か間接的かにかかわらず、ロシア在住者やロシア船舶向けの販売、供給、譲渡、輸出を禁止。同15日には、ロシアへの高級車や宝飾品、化粧品などのぜいたく品の輸出禁止、ロシアへのエネルギー産業への新規および拡大投資、エネルギー産業に必要な物品、技術、サービスなどの輸出の原則禁止、ロシアの軍事産業の強化につながる可能性のある二重用途物品や技術の輸出制限の対象となる産業(航空、宇宙分野)や対象企業の拡大を採択。
    4月8日には、EUに対し依存度の高い品目のロシアへの輸出禁止(ジェット燃料、量子コンピュータ、先端半導体、ソフトウエア、精密機器、輸送機器、化学品など)を採択。
    6月3日には、化学兵器に使用される可能性のある化学品80品目を輸出禁止品目に追加するなど、さらにロシアへの輸出制限措置を拡大した。また、軍事産業の強化につながる可能性のある二重用途物品や技術の輸出制限の対象企業・団体も拡大。
    7月21日、二重用途物品の輸出管理の更なる強化を図る目的で、制限対象となる物品や先端技術の範囲を拡大。
    10月6日には、ロシアからEU域外国に向けて輸出される石油(原油・石油製品)に関して、EU域内の事業者が海上輸送を提供することや、それに関連した技術支援、仲介、資金援助を提供することを原則として禁止した(9月のG7の合意に基づき、ロシア産石油価格に上限を設定し、上限以下の石油の取引は例外として認める)。また、航空分野の製品、軍事や技術強化に利用される可能性のある一部の電子部品や化学品などの輸出制限を拡大。建築、エンジニア、IT、法律の各分野でのロシアへのサービスの提供を禁止した。
    12月16日、ロシア軍の能力や技術力強化につながる二重用途物品や高度技術を輸出制限品目に新たに追加し、さらなる企業・団体が輸出制限対象に指定された。ドローンのエンジンなど輸出禁止品目も拡大され、また、広告、市場調査、技術検査等のサービスをロシアに提供することもできない。ロシアの鉱業セクターへの新規投資も禁止された。

    2023年2月25日、ロシアの軍備や軍事技術の発展につながる恐れのある電子機器・部品、特殊車両、機械部品、建設機材等の重要技術や工業品が、新たな禁輸措置対象に加えられた。イランの軍事用ドローン製造業者7社を含む96団体に対し二重用途物品の輸出制限が課せられた。制裁措置の迂回防止のため二重用途物品をロシア経由で輸出することも禁止された。
    6月23日、制裁の迂回防止策の最終手段として、EUがリスクの高い域外国に対し制裁対象物品・技術の輸出等を制限することを許容した。二重用途物品や技術に関しては、より厳格な輸出制限の対象に、ロシアやイランの企業に加え、新たに中国、ウズベキスタン、アラブ首長国連邦(UAE)、シリア、アルメニアの企業を追加した。制限対象製品の生産に必要な知的財産や企業秘密の移転等も禁止された。電気自動車など、追加の品目が輸出制限対象となった。ロシア軍需産業を支援する団体が制裁リストに追加された。

    12月18日、化学品、リチウムバッテリー、ドローン用モーター、機械部品や企業向けソフトウエアなどの二重用途品や先進技術工業品等に関する輸出制限措置を拡大し、新たな輸出管理義務を課した。また、迂回防止措置の強化を図るため、特定物品の販売においてはロシアへの再輸出禁止条項を契約に織り込む義務を事業者に課した。ロシア軍需産業の関係団体の制裁リストに、ウズベキスタンやシンガポールの団体を含む29の団体が追加された。

    2024年2月23日、制裁の迂回防止のため、特にドローン製造に使用される電子部品の開発・生産・供給に携わるロシア企業や、中国などの第三国企業 27社を、新たに制裁対象に加えた。これらの企業への二重用途品や技術等の輸出制限を課す。また、輸出制限対象物品に、ドローン開発・製造に使用される先端技術部品等が追加された。

  2. ベラルーシ
    EUは2022年3月2日以降、ロシアによるウクライナ侵攻に協力しているとされるベラルーシに対する経済制裁を強化。輸出制限措置としては、EU理事会は3月2日に、たばこ、鉱物性燃料、木材、セメント、鉄鋼、ゴム製品などの生産・製造に関連する産品の取引や、二重用途物品・技術の輸出を制限する措置を採択。6月3日には、二重用途物品や技術の輸出制限の対象企業・団体も拡大した。
    2023年2月27日、経済制裁の期限が1年延長された(2024年2月28日まで)。8月3日、国営石油化学会社等、新たな団体と個人が追加の制裁対象に指定され、資産の凍結、EUへの渡航制限が課せられた。また、航空機エンジンやドローン、銃火器、半導体装置などに加え、二重用途物品・技術の輸出制限も拡大された。
  3. クリミア自治共和国およびセバストポリ市
    クリミア自治共和国およびセバストポリ市で計画・実施される輸送、電気通信、エネルギー、石油・ガス・天然資源の試掘・探査・生産向けの輸出および投資を禁止している。また、当該分野のインフラに関連した技術支援、仲介、建設、エンジニアリングサービスや、同地域に拠点を持つ企業に対する金融サービス、海事を含む観光サービスの提供も禁止されている。

輸出関連法

共通輸出規則

共通輸出規則

  1. 適用法令
    共通輸出規則に関する2015年3月11日付欧州議会・理事会規則2015/479(Regulation (EU) 2015/479 of the European Parliament and of the Council of 11 March 2015 on common rules for exports外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  2. 概要

    共通輸出規則(欧州議会・理事会規則2015/479)は、EUから第三国への輸出は自由(つまり、いかなる量的規制の対象ともならない)という基本原則に基づく輸出に関する規則を法典化したもので、特定の場合において要求される保護的な措置を導入するための手続きを定めている。なお、公衆道徳や、公共政策、公共の安全、人体の健康や生命、国宝などの保護のために、加盟国が輸出の制限や量的規制を維持・導入することは認められている。

    1. 範囲
      当該規則は、一部の農産物および加工農産物を除くすべての工業製品および農産物に適用される。
    2. 情報提供および諮問手続き
      当該規則は、EU加盟国が保護的措置の導入を検討する場合に従うべき情報提供および諮問のための手続きを確立している。加盟国が保護的措置の必要性を認識した場合、欧州委員会に報告する。欧州委員会は、加盟国の代表者で構成されるセーフガードに関する専門委員会に諮問を行った上で、保護的措置の導入の可否についての結論を下す。
    3. 保護的措置

      EU全体の利益の観点からは、特に一次産品などについて、必需品の不足による危機的状況の回避・打開や、EUまたは全EU加盟国が締結した国際的合意の履行に向けて、適切な措置の採択が要求される場合がある。これらの保護的措置は、一般的には輸出の量的規制が採用される。

      保護的措置は、特定国・地域への輸出あるいはEUの特定地域からの輸出に限定されることもある。
      当該措置は、既にEUの国境に向かう途上の生産物には適用されない。

      原則として保護的措置は、欧州委員会の調査(専門委員会への諮問も含む)の結果に基づき、導入が決まる。欧州委員会が採用した措置は、欧州議会と理事会、加盟国に通知され、直ちに実行される。

輸出管理その他

第三国による保護貿易的措置等への対応:第三国による保護貿易的措置への対応、貿易障壁に対する対抗措置。電子商取引・サイバーセキュリティ・個人情報保護に関する規制

第三国による保護貿易的措置等への対応

第三国による保護貿易的措置への対応

第三国が、EU域内を原産とする特定の製品に対して保護貿易的措置を講じた場合、欧州委員会は、進捗を監視するとともに、適宜、域内産業を支援している。

貿易障壁に対する対抗措置

貿易障壁に対する対抗措置については、前述の「輸入管理その他 貿易障壁に対する対抗措置」を参照。

電子商取引・サイバーセキュリティ・個人情報保護に関する規制

本規制については、前述の「輸入管理その他 電子商取引・サイバーセキュリティ・個人情報保護に関する規制」を参照。