外資に関する規制

最終更新日:2024年07月01日

規制業種・禁止業種

加盟各国法規に従う。

ただし、日EU経済連携協定(EPA)では、第八章「サービスの貿易、投資の自由化及び電子商取引」において投資、サービスの自由化について規定しており、市場アクセス、内国民待遇、最恵国待遇等の原則を定めた上で、自由化を留保する措置や分野を特定する「ネガティブ・リスト」方式を採用している。具体的には、日EU・EPA附属書八-Bにおいて、自由化を留保する加盟各国の現行規制(附属書Ⅰ現在留保)および将来規制(附属書Ⅱ将来留保)が法令名とともに列挙されている。
日EU・EPAではまた、現在留保の表に記載される措置が、将来の改正において現行措置の水準を低下させないことについても規定しており、日EU・EPAにより加盟各国の外資規制に関する透明性、予見性が確保されている。
EU側の留保表は、附属書八-B英文テキストにおいて、次の分野ごとに、各国の留保措置を列挙する構成となっている。

  1. すべての分野
  2. 専門サービス(保健関連を除くすべての専門サービス)
  3. 専門サービス(保健関連専門サービスおよび医薬品の小売)
  4. 研究開発サービス
  5. 不動産サービス
  6. ビジネスサービス
  7. 通信サービス
  8. 流通サービス
  9. 教育サービス
  10. 環境サービス
  11. 金融サービス
  12. 保健サービスおよび社会サービス
  13. 観光および旅行関連サービス
  14. 娯楽、文化およびスポーツサービス
  15. 輸送サービスおよび輸送サービスを補助するサービス
  16. エネルギー関連サービス
  17. 農業、漁業および製造業

日EU経済連携協定本文(和文テキスト)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(6.54MB)
日EU経済連携協定 附属書八―B(英文テキスト:ANNEX 8-B)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(8.61MB)

また、EU域内の安全保障や公共秩序を維持する観点から、外国直接投資のスクリーニングにあたっての戦略的に重要な産業や技術などの考慮要素の取り決めと共有、欧州委員会と加盟各国との協調の枠組みが欧州議会・理事会規則2019/452(2019年4月10日発効、2020年10月11日適用開始)によって整備された。本枠組みが定めるポイントは主として次のとおり。

  1. 加盟国と欧州委員会が、EU域外からの投資について情報交換し、安全保障や公的秩序の観点から懸念を表明するメカニズムを創設すること
  2. ベストプラクティスや投資トレンドに関する情報共有などの協力を促進すること
  3. EU域外からの投資に複数の加盟国が関与する場合や、EU全体の利益への影響が予測される場合は、欧州委員会が意見書を発出すること
  4. 既存メカニズムの修正や新規メカニズムの導入については、その修正や発効から30日以内の欧州委員会への通知を義務付け

国内の安全保障は従来通り各加盟国の責任であり、既存のスクリーニング制度の維持や新制度の導入等は加盟各国が判断する。また国内における特定の投資案件の可否の最終判断についても従来通り加盟各国が行う。なお、EU加盟国中、22カ国が2024年2月現在、独自の投資スクリーニング制度を導入している。

(参考)欧州委員会:投資スクリーニング制度に関するウェブサイト "Investment screening外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"
※加盟国が欧州委員会に通知したスクリーニングメカニズムの一覧は、当ウェブサイト内の「List of screening mechanisms notified by Member States」よりPDFをダウンロードの上、参照できる。

出資比率

加盟各国法規に従う。

外国企業の土地所有の可否

加盟各国法規に従う。

資本金に関する規制

加盟各国法規に従う。

銀行の資本規制

EUは2013年6月、金融危機の再発を防ぎ、国際金融システムのリスク耐性を高めることを目的に改定された新しい国際決済銀行(Bank for International Settlements)の自己資本比率に関する国際統一基準(BIS規制)「バーゼルⅢ」の本格導入に向け、「CRD Ⅳ(資本要求指令Ⅳ)」と呼ばれる資本要件パッケージを採用した。CRD Ⅳは、金融機関および投資会社の財務健全性の監督を目的とする欧州議会・理事会指令2013/36/EUおよび、財務健全性の要件を規定する欧州議会・理事会規則575/2013で構成され、2014年1月に適用が開始された。

指令2013/36/EUは、「バーゼルⅡ」に準拠した2つの先行指令(欧州議会・理事会指令2006/48/ECおよび2006/49/EC)を一本化するとともに、財務健全性の確保に向けた域内共通の要件を定めている。規則575/2013は、加盟各国が同指令を国内法に反映する際にばらつきが生じることを防ぐため、拘束性の高い、より直接的なルールを規定しており、域内の「シングル・ルール・ブック」としての役割を果たす。

EUでは、CRD Ⅳの対象を「バーゼルⅢ」が定める国際的に事業を展開する銀行だけでなく、域内で営業するすべての銀行と投資会社に広げている。また、金融機関の健全性維持に向け、資本のほか、流動性やレバレッジ比率の要件に重点を置くほか、ボーナスの上限を年間給与と同額とする賞与規制や、リスク管理の強化に向けたコーポレートガバナンス(企業統治)に関するルール、複数の司法管轄にまたがり事業を展開する金融機関の営業活動の透明化に関する要請、一連の資本バッファーの定義などを盛り込んでいる。欧州委員会はCRD Ⅳの施行に当たり、「シングル・ルール・ブック」を補完・強化するため、規制技術基準(Regulatory Technical Standards:RTS)や実施技術基準(Implementing Technical Standards:ITS)を定めている。これらは、CRD Ⅳに関する委任規則や実施規則として発行されている。

さらに、CRD Ⅳを改正する資本要件パッケージ「CRD Ⅴ(資本要求指令Ⅴ)」が2019年6月に発効した。CRD Ⅴは、欧州議会・理事会指令2019/878および欧州議会・理事会規則2019/876からなる。指令2019/878により、EUで活動する大手外資系金融グループは、EU域内に持株会社を設置し、グループでの健全化要請を満たすことが求められる。また、報酬に関するルールの追加規定や適用免除、自己資本要件等の調整・明確化が図られている。加えて、自己資本要件等の健全性の確保要請に関して、規則2019/876が、更なる比率規制や追加要件を導入している。

なお、域内の金融機関は財務健全性に関する定期報告書を関連当局に提出することが義務付けられている。一連の報告書のテンプレート(ひな形)は、金融機関の自己資本要件の情報開示に関する技術基準を規定する欧州委員会実施規則1423/2013の付属書に掲載されている。また、欧州委員会の依頼で欧州銀行監督局(EBA)は、当局に提出する報告書に記載する内容や提出期限などの情報をウェブサイトにまとめている。EBAはこのほか、CRD Ⅳの規制技術基準(RTS)および実施技術基準(ITS)の草案を策定し、欧州委員会に提出している。

詳細は次の各ウェブページを参照。

その他規制

日EU経済連携協定(EPA)における関連規定

日EU経済連携協定(EPA)は、原則すべての分野における投資を自由化の対象としたことに加え、資本移動・資金支払等も原則自由とした。具体的には、直接投資を行う企業家と設立した企業を対象とする数量や法的制約等による市場へのアクセス制限を禁止し、設立・運営段階での内国民待遇や最恵国待遇を確保、また、特定の国籍を有する者を、役員等に任用することを要求してはならないことなどを規定している。加えて、一定水準以上の現地調達率の達成や技術移転、ライセンス契約の使用料の上限の設定など、特定措置の履行要求を課すことも禁止している。