EUの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2023年のEUの実質GDP成長率は0.4%と低調。11カ国がマイナス成長に。
  • 貿易額の前年比伸び率は、輸出入とも前年から一転して減少。
  • 対内直接投資額はEU27カ国中17カ国で減少、4カ国で引き揚げ超過。
  • 対日貿易は約65億ユーロの赤字に転落。
  • 日本からの直接投資額は、前年比6.0%増と増加。

公開日:2024年11月7日

マクロ経済 
2023年の実質GDP成長率は0.4%と低調

EU統計局(ユーロスタット)によると、2023年の実質GDP成長率はEU、ユーロ圏でいずれも0.4%だった。前年に比べ、それぞれ3.1ポイント、3.0ポイントの減少となった。新型コロナウイルス感染症拡大後、前年まで続いた力強い回復の勢いは失われ、2023年のEU経済は、購買力の低下、金融の引き締め、財政支援の一部廃止、外需の落ち込みで成長が抑制された。

EUの実質GDP成長率を需要項目別にみると、全体の52.3%を占める民間最終消費支出が前年比0.4%増と、前年から3.7ポイント減少し、成長率への寄与度は0.2ポイントであった。財貨・サービスの輸出は0.2%減、輸入は1.4%減と、いずれも前年の伸びからマイナスに転じた。

EU加盟国の実質GDP成長率を比較すると、マルタ(前年比5.6%)やクロアチア(3.1%)が好調を維持した一方、マイナス成長を記録した国がドイツ(マイナス0.3%)を筆頭に11カ国におよび、エストニア(マイナス3.0%)とアイルランド(マイナス3.2%)は、3%を超えるマイナス成長となった。

2024年 実質GDP成長率の予測は1.0%に下方修正

今後の経済見通しについて、欧州委員会は2024年5月に発表した春季経済予測で2024年の実質GDP成長率をEUで1.0%、ユーロ圏で0.8%と予測した。前回2023年11月の予測から、それぞれ0.3ポイント、0.4ポイント下方修正した。消費者物価指数上昇率(インフレ率)の低下により、緩やかな経済成長が見込まれ、2024 年はEU加盟国のほぼすべての国でプラス成長が予測される。継続的な実質賃金の伸びと雇用の拡大が可処分所得の増加を後押しし、個人消費が成長を牽引する見込みだ。ただし、貯蓄性向は依然として強く、個人消費を抑制する可能性もあるとした。一方、住宅投資の冷え込みにより、投資の伸びは限定的となる見通し。世界貿易の回復はEUの輸出を後押しするものの、域内の内需回復に伴って輸入は拡大し、輸出の実質GDP成長率へのプラス寄与度はほぼ相殺される見込みである。経済活動の停滞にもかかわらず、雇用は高水準を維持し、多くの加盟国で労働市場は依然として逼迫している。2024年のEUの失業率は6.1%と予測し、「歴史的な低水準」で推移する見込み。2025年の実質GDP成長率は、EUが1.6%、ユーロ圏が1.4%と緩やかな成長が続くと予測されている。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化と、イスラエルとハマスの衝突などの地政学的緊張が経済に不確実性をもたらしている。

ユーロ圏における中期的なインフレ見通しの評価に基づき、欧州中央銀行(ECB)は2024年6月、2019年9月以来、約4年9カ月ぶりに主要政策金利を0.25ポイント引き下げたものの、翌7月の会合では金利を据え置いた。物価上昇圧力は依然として高く、サービス価格の上昇率も高く、インフレ率は2025年も目標の2%を上回る可能性が高いとの見方を示している。ECBの金融政策は引き続き難しいかじ取りを迫られるとみられる。

表1 EUの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
EU 実質GDP成長率 3.5 0.4 0.1 0.1 0.0 0.0
階層レベル2の項目民間最終消費支出 4.1 0.4 △ 0.1 0.2 0.3 0.2
階層レベル2の項目政府最終消費支出 1.3 1.0 0.2 0.4 0.6 0.4
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 2.7 1.5 0.1 0.5 0.1 0.9
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 7.4 △ 0.2 △ 0.1 △ 1 △ 1.1 0.9
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 8.0 △ 1.4 △ 1.5 △ 0.1 △ 1.6 1.3
ユーロ圏 実質GDP成長率 3.4 0.4 0.0 0.1 △ 0.1 △ 0.1
階層レベル2の項目民間最終消費支出 4.2 0.5 0.1 0.1 0.3 0.1
階層レベル2の項目政府最終消費支出 1.6 0.8 △ 0.3 0.3 0.7 0.5
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 2.5 1.2 0.3 0.2 0.0 1.0
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 7.1 △ 1.1 △ 0.5 △ 1.1 △ 1.2 0.0
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 7.8 △ 1.6 △ 1.6 △ 0.1 △ 1.4 0.6

〔注1〕四半期の伸び率は前期比、季節調整値。
〔注2〕民間最終消費支出には対家計非営利団体(NPISH)消費支出も含む。
〔注3〕2023年1月にクロアチアがユーロ導入したことに伴い、ユーロ圏は2022年まで19カ国、2023年から20カ国のデータを採用した。
〔出所〕EU統計局(ユーロスタット)

貿易 
貿易額は輸出入とも前年より減少

ユーロスタット(2024年5月10日時点)によると、2023年のEUの貿易は、輸出が前年比1.9%減となる6兆6,878億2,800万ユーロ、輸入が22.2%減の6兆5,309億600万ユーロだった。物価上昇が緩やかに減速し、輸出入ともに前年より縮小した。EUの域内貿易と域外貿易の構成比は、輸出が域内61.8%、域外38.2%、輸入が域内61.4%、域外38.6%だった。

EUの2023年の域内貿易は、輸出が前年比2.7%減の4兆1,310億7,300万ユーロ、輸入が2.6%減の4兆120億8,400万ユーロと、輸出入ともに前年の伸びから減少に転じた。ユーロ圏内の貿易では、輸出が4.4%減、輸入が3.5%減となった。域内貿易を品目別にみると、輸出入ともに機械・輸送機器類が構成比35%以上を占めて最大品目となり、同品目の輸出は8.6%増、輸入は8.7%増とともに増加したが、それ以外の主要品目は食料品、飲料およびたばこの輸出(8.1%増)と輸入(8.9%増)を除き、すべて減少した。輸出入ともに最も減少したのは鉱物性燃料・潤滑油などで、輸出は29.3%減、輸入は28.6%減だった。

表2 EUの主要品目別輸出入(域内貿易)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械・輸送機器類 1,348,654 1,464,775 35.5 8.6 1,323,392 1,438,637 35.9 8.7
雑製品 1,125,914 1,081,967 26.2 △3.9 1,066,131 1,016,598 25.3 △4.6
化学工業製品 753,514 685,624 16.6 △9.0 754,601 686,117 17.1 △9.1
鉱物性燃料・潤滑油など 425,580 301,054 7.3 △29.3 389,826 278,512 6.9 △28.6
食料品、飲料およびたばこ 404,603 437,316 10.6 8.1 395,767 430,843 10.7 8.9
原料別半製品 157,101 137,240 3.3 △12.6 161,610 142,429 3.6 △11.9
合計(その他含む) 4,245,884 4,131,073 100.0 △2.7 4,117,740 4,012,084 100.0 △2.6

〔注1〕各企業のインボイス報告などに基づく。
〔注2〕輸出がFOB、輸入がCIFのため、輸出入金額が一致しない。
〔出所〕EU統計局(ユーロスタット)

EUの2023年の域外貿易は、輸出が前年比0.5%減の2兆5,567億5,500万ユーロ、輸入が16.2%減の2兆5,188億2,200万ユーロだった。輸出入ともに拡大した前年から減少に転じたが、貿易収支は379億3,300万ユーロの黒字となり、過去10年間で初めて赤字に転じた前年から持ち直した。

域外貿易を品目別にみると、輸出では、最大品目の機械・輸送機器類(構成比40.2%)が前年比7.8%増の1兆269億8,300万ユーロとなった。乗用車(11.0%)が前年に引き続き伸びた。一方、横ばいだった食料品、飲料およびたばこを除き、他の主要品目は全て減少した。2位の雑製品(21.6%)はその他の種々製品(3.5%)、光学・医療用・分析機器など(3.3%)がそれぞれ1.7%増、4.3%増と増加したが、3.1%減となった。化学工業製品(20.4%)は約半分を占める医薬品(10.8%)が3.5%減となり、5.1%減となった。20.9%減と減少率が最大となった鉱物性燃料・潤滑油など(5.6%)は、大半を占めた石油・石油製品(4.9%)が19.0%減と減少したことが主因だった。エネルギー価格は下落傾向となり、最大の輸出先である米国向けが1.2%減、英国向けは2.0%増。数量ベースではいずれも減少した。

輸入では、主要品目の全てで減少を記録した。最大品目の機械・輸送機器類(構成比32.4%)は前年比1.5%減とわずかに縮小した。続く、雑製品(22.3%)は15.1%減となった。前年に最大の輸入品目だった鉱物性燃料・潤滑油など(21.9%)は33.6%減と大幅減となり、輸入全体の縮小に寄与した。前年はエネルギー価格の高騰と、ユーロ安・ドル高の影響によって大幅に増加した石油・石油製品(14.1%)は20.1%減、天然・製造ガス(6.1%)は47.8%減といずれも大きく減少した。数量ベースでは、石油・石油製品は5.3%減、天然・製造ガスは6.0%減となった。

表3 EUの主要品目別輸出入(域外貿易)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械・輸送機器類 952,288 1,026,983 40.2 7.8 828,545 816,096 32.4 △1.5
雑製品 569,996 552,447 21.6 △3.1 662,791 562,492 22.3 △15.1
化学工業製品 550,913 522,848 20.4 △5.1 363,135 325,123 12.9 △10.5
食料品、飲料およびたばこ 203,854 203,839 8.0 0.0 148,503 144,066 5.7 △3.0
鉱物性燃料・潤滑油など 180,356 142,614 5.6 △20.9 831,147 551,891 21.9 △33.6
原料別半製品 76,186 67,763 2.7 △11.1 125,295 96,904 3.8 △22.7
合計(その他含む) 2,570,038 2,556,755 100.0 △0.5 3,006,149 2,518,822 100.0 △16.2

〔注〕通関ベース
〔出所〕EU統計局(ユーロスタット)

域外貿易を国・地域別にみると、輸出では、EU域外で最大の相手国の米国(構成比19.6%)が前年比1.2%減と前年の伸びから減少に転じ、5,023億2,600万ユーロとなった。米国向けの輸出額で最大品目である医薬品(18.3%)が1.5%減となった。道路走行車両(10.8%)、一般産業機械・機器(6.5%)、電気機器(5.9%)はそれぞれ10.5%増、9.8%増、3.2%増と前年に引き続き増加した。有機化合物(3.6%)は27.3%減、石油・石油製品(3.1%)は15.8%減となり、いずれも前年の伸びから落ち込んだ。米国に次ぐ輸出相手国である英国(13.1%)は、最大品目の道路走行車両(16.2%)が20.4%増、続く電気機器(5.3%)が6.7%増となり、いずれも前年に続いて堅調に増加し、全体では2.0%増となった。英国向け輸出ではそのほか、前年に拡大した医薬品(5.1%)と石油・石油製品(3.8%)が、それぞれ16.1%減、13.4%減と減少に転じ、輸出額全体を押し下げた。

輸入では、最大相手国の中国(構成比20.5%)が前年比17.8%減の5,158億6,100万ユーロと、30%以上増加した前年から一転、減少した。主要品目のほとんどで減少し、最大品目の電気機器(21.2%)が5.2%減となったほか、続く通信機器(12.3%)、事務用機器(8.7%)はそれぞれ13.4%減、25.1%減となった。次いで米国(13.8%)も、3.5%減と減少に転じた。前年に続き、石油・石油製品(14.2%)、医薬品(13.5%)はそれぞれ10.6%増、19.3%増と堅調だった。前年に5.6倍と大幅増を記録した天然・製造ガス(9.0%)が42.3%減となったことが輸入額の減少の主因だった。

表4 EUの主要国・地域別輸出入(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU域内 4,245,884 4,131,073 61.8 △ 2.7 4,117,740 4,012,084 61.4 △ 2.6
階層レベル2の項目ユーロ圏内 2,773,565 2,651,652 39.6 △ 4.4 2,675,237 2,581,937 39.5 △ 3.5
EU域外 2,570,037 2,556,755 38.2 △ 0.5 3,006,149 2,518,822 38.6 △ 16.2
階層レベル2の項目EU加盟候補国 180,530 200,058 7.8 10.8 165,366 155,785 6.2 △ 5.8
階層レベル3の項目トルコ 99,541 111,339 4.4 11.9 98,844 95,668 3.8 △ 3.2
階層レベル3の項目ウクライナ 30,088 39,059 1.5 29.8 27,643 22,837 0.9 △ 17.4
階層レベル2の項目ロシア 54,985 38,346 1.5 △ 30.3 202,659 50,674 2.0 △ 75.0
階層レベル2の項目英国 328,401 335,060 13.1 2.0 217,157 179,985 7.1 △ 17.1
階層レベル2の項目スイス 187,908 188,634 7.4 0.4 145,573 138,511 5.5 △ 4.9
階層レベル2の項目アジア大洋州 605,741 588,423 23 △2.9 1,093,030 951,468 37.8 △ 13.0
階層レベル3の項目中国 230,404 223,576 8.7 △3.0 627,362 515,861 20.5 △ 17.8
階層レベル3の項目ASEAN 91,937 94,525 3.7 2.8 180,493 158,025 6.3 △ 12.4
階層レベル4の項目マレーシア 14,736 15,594 0.6 5.8 35,564 29,063 1.2 △ 18.3
階層レベル4の項目タイ 14,772 14,995 0.6 1.5 27,316 25,193 1.0 △ 7.8
階層レベル4の項目シンガポール 31,679 32,151 1.3 1.5 20,751 20,435 0.8 △ 1.5
階層レベル3の項目日本 71,323 63,988 2.5 △10.3 70,023 70,467 2.8 0.6
階層レベル3の項目韓国 60,122 57,818 2.3 △3.8 72,278 73,048 2.9 1.1
階層レベル3の項目インド 47,450 48,366 1.9 1.9 67,738 65,086 2.6 △ 3.9
階層レベル3の項目オーストラリア 38,476 38,467 1.5 △0.0 17,709 13,630 0.5 △ 23.0
階層レベル2の項目北米 556,976 551,991 21.6 △0.9 389,605 375,047 14.9 △ 3.7
階層レベル3の項目米国 508,647 502,326 19.6 △1.2 359,102 346,541 13.8 △ 3.5
階層レベル3の項目カナダ 47,324 48,663 1.9 2.8 29,756 27,719 1.1 △ 6.8
階層レベル2の項目湾岸協力会議(GCC)諸国 87,753 93,786 3.7 6.9 87,596 76,347 3.0 △ 12.8
階層レベル3の項目アラブ首長国連邦(UAE) 35,687 38,834 1.5 8.8 14,142 17,109 0.7 21.0
階層レベル2の項目ブラジル 42,730 42,923 1.7 0.5 49,900 44,593 1.8 △ 10.6
階層レベル2の項目南アフリカ共和国 26,320 25,936 1.0 △1.5 29,203 23,270 0.9 △ 20.3
合計(その他含む) 6,815,921 6,687,828 100 △ 1.9 7,123,888 6,530,906 100 △ 22.2

〔注1〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔注2〕EU貿易統計の金額は、輸出がFOB、輸入がCIF。そのため域内貿易で輸出入金額が一致しない。
〔注3〕EU加盟候補国はトルコ、セルビア、モンテネグロ、北マケドニア、アルバニアおよび、2022年に加盟候補国となったウクライナ、モルドバ、ボスニア・ヘルツェゴビナを含む。
〔出所〕EU統計局(ユーロスタット)

ロシアへの輸出、輸入はともに大幅減

EUは2022年2月23日以降、2024年6月までに14回、対ロシア制裁パッケージを発表した。エネルギー、運輸、機械、電子機器、化学工業製品分野などを中心に、輸出入の制限措置の対象品目を拡大してきた。制裁措置によりロシアへの輸出入は前年に続き縮小した。

ロシアへの輸出(構成比1.5%)は、前年比30.3%減と前年に引き続き大幅に減少した。制裁措置の対象拡大により、主要品目のほとんどが減少したことが原因である。最大輸出品目である化学工業製品(38.7%)は18.3%減となり、うち、医薬品が12.0%減少した。次ぐ機械・輸送機器類(18.9%)は55.0%減と大幅減となった。ロシアからの輸入(2.0%)は、前年の増加から一転、75.0%減と大幅に減少した。全体の半分以上を占める鉱物性燃料・潤滑油(57.8%)が80.1%減となり、うち天然・製造ガスが65.3%減だった。前年に高騰したエネルギー価格が低下したほか、EUのロシア産化石燃料からの依存脱却が加速したことで石油・石油製品や天然ガスを中心に輸入量が大幅に減少した。ロシアは前年には域外輸出国の9位だったが15位に転落し、域外輸入国としても4位から9位に順位を下げた。

域外貿易に占めるウクライナへの輸出(構成比1.5%)は前年比29.8%増と大幅増だったが、輸入(0.9%)は17.4%減となった。輸出では、最大品目は前年に続き機械・輸送機器類(29.8%)で、前年の減少から34.8%増と増加に転じた。次ぐ鉱物性燃料・潤滑油(16.6%)は7.4%増となったほか、化学工業製品(14.4%)、雑製品(11.7%)は、それぞれ27.2%増、33.7%増と高い伸びをみせた。雑製品のうち、武器・弾薬は47.5%増と前年に引き続き大幅増となった。輸入では、食料品(33.1%)が前年に続き最大品目となり、12.0%増だった。一方、食料に適さない原材料(燃料を除く)(20.1%)が30.5%減、原料別製品(16.8%)が24.5%減となり、全体の輸入額を押し下げた。

対内・対外直接投資 
17カ国で対内直接投資が減少

国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、2023年のEU加盟国への対内直接投資(EU加盟国間の投資も含む)は、586億4,520万ドル(国際収支ベース、ネット、フロー)だった。

1990年以降初めてEU加盟国への対内直接投資が引き揚げ超過となった前年からプラスに持ち直したものの、オランダの1,684億4,970万ドルの引き揚げ超過が影響し、対内直接投資額を押し下げた。前年の引き揚げ超過の主因となったルクセンブルクも前年に続き628億760万ドルの引き揚げ超過となった。EU27加盟国中17カ国で、投資額が前年から減少し、4カ国が引き揚げ超過、増加したのは6カ国と限定的だった。2023年末時点のEU加盟国の対内直接投資残高は、12兆4,537億3,310万ドルだった。2023年のEU加盟国へのグリーンフィールド投資件数の合計は、前年より571件少ない5,419件となった。ドイツ(1,036件)、スペイン(795件)、フランス(654件)、ポーランド(454件)などに集中した。2023年のEU域内企業を合併や買収の対象とするクロスボーダーM&Aの合計は、前年より580件少ない2,563件だった。

対内直接投資のM&A案件では、米投資会社デジタルブリッジ(DigitalBridge)とカナダの資産運用会社ブルックフィールド・アセット・マネジメント(Brookfield Asset Management)が2023年2月、ドイツの通信大手ドイツテレコム(Deutsche Telekom)の子会社でドイツとオーストリアの基地局や電波塔の管理・運営を行うGDタワーズ(GD Towers)の株式51%を175億ユーロで取得した。日本の発電大手JERAは同年7月に、ベルギーの洋上風力発電事業者パークウィンド(Parkwind)の全株式を約15億5,000万ユーロで取得した。また、米国のビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)会社コンセントリクス(Concentrix)は同年9月、フランスの同業ウェブヘルプ(Webhelp)の全株式を約40億ドルで取得した。 M&A以外では、米半導体大手インテルが同年6月、ポーランド国内に半導体組み立て・検査工場を46億ドルで新設することを発表した。インテルは同年6月、ドイツ連邦政府との間でドイツ東部ザクセンアンハルト州マクデブルクの半導体工場建設計画に関する基本合意書を締結し、総投資額は300億ユーロとなる見込みだ。さらに、英国のエネルギー大手BPは同年7月、ドイツの洋上風力発電の入札ラウンドで2件のプロジェクトの開発権を約68億ユーロで獲得したと発表した。

一方、2023年のEU加盟国の対外直接投資(EU加盟国間の投資も含む)の合計は、前年比7.6%増の1,827億4,630万ドル(国際収支ベース、ネット、フロー)だった。オランダが1,421億8,460万ドルの引き揚げ超過となったが、EU加盟国の中では最大のドイツが1,012億5,380万ドル、続くフランスが723億5,590万ドルと伸び、対外直接投資を支えた。2023年末時点の対外直接投資残高は、14兆4,996億1,660万ドルだった。同年のEU域内企業が出資したグリーンフィールド投資件数は前年より229件多い6,341件で、フランス(1,072件)、オランダ(609件)などの企業が牽引した。2023年のEU域内企業によるクロスボーダーM&A件数は、前年より380件少ない1,946件だった。

対外直接投資のM&A案件としては、オランダ飲料大手ハイネケン(Heineken)が2023年4月、同業の南アフリカ共和国のディステル・グループ(Distell Group)とナミビアのナミビア・ブルワリーズ(Namibia Breweries)を、それぞれ約22億ユーロと約15億ユーロで買収した。また、オランダの特殊化学大手DSMとスイスの香料大手フィルメニッヒ(Firmenich)が同年5月に合併し、スイスに持株会社DSM-フィルメニッヒ(DSM-Firmenich)を設立した(投資額は非公表)。また、アイルランドの太陽光発電企業アマレンコ(Amarenco)が同年5月、ヨルダンの再生エネルギー企業スペクトラム・インターナショナル(Spectrum International)を買収することを発表した(投資額は非公表)。

M&A以外では、バッテリー関連の投資案件が目立った。ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン・グループと同社傘下のバッテリー企業パワーコ(PowerCo)は2023年4月、カナダ・オンタリオ州のセント・トーマスに電気自動車(EV)用バッテリー生産工場を建設する計画を発表し、2030年までに最大70億カナダ・ドル(約7,700億円、Cドル、1Cドル=約110円)を投資するとした。自動車大手ステランティス(Stellantis)と韓国のサムスンSDI(Samsung SDI)との合弁会社スタープラス・エナジー(StarPlus Energy)が2023年7月に、32億ドル以上を投じ、米国インディアナ州で2カ所目となるEV用バッテリーの生産工場を建設すると発表した。さらに、同年9月にスウェーデンのリチウムイオン電池メーカー、ノースボルト(Northvolt)が、総額70億Cドルを投じて、カナダのケベック州モントリオール郊外にリチウムイオンバッテリーのギガファクトリーを建設すると発表した。

EU域内の大型案件としては、M&Aではフランス金融大手ソシエテジェネラル(Société Générale)の自動車リース子会社ALDが2023年5月に、オランダの同業リースプラン(LeasePlan)を49億ユーロで買収した。またM&A以外では、ステランティスと、ドイツのメルセデス・ベンツ、フランスのエネルギー大手トタルエナジーズ(TotalEnergies)によるEV用バッテリー製造合弁会社オートモーティブ・セルズ・カンパニー(ACC)が5月に、フランス北部オー・ド・フランス地域圏のドゥブラン市郊外に国内初となるバッテリーのギガファクトリーを開所した。総投資額は約73億ユーロとなる見通し。また、オーストリアのエネルギー大手OMVペドロム(OMV Petrom)とルーマニア国営石油会社ロムガス(Romgaz)は6月、ルーマニア黒海沿岸における欧州最大級の海底ガス田プロジェクトへ最大40億ユーロを共同出資することを決定した。

対日関係 
対日貿易は化学工業製品の輸出減などで赤字に

2023年のEUの対日貿易は、輸出が前年比10.3%減の639億5,448万ユーロ、輸入が0.6%増の704億6,834万ユーロだった。EUの貿易収支は前年の12億9,996万ユーロの黒字から一転、65億1,386万ユーロの赤字となった。

対日輸出を品目別にみると、機械・輸送機器類(構成比35.2%)が前年比7.1%増となり、最大品目となった。道路用走行車両(13.3%)が10.7%増と伸びた。前年の最大品目だった化学工業製品(25.8%)は26.8%減で2位に転落した。そのうち、医薬品が37.5%減と大幅減となった。次いで、雑製品(15.8%)は5.8%増だった。食料品・動物(6.9%)は10.2%減、原料別半製品(6.2%)は15.0%減とともに減少した。

対日輸入は最大品目の機械・輸送機器類(構成比63.0%)が前年比3.6%増と前年に続き伸び、うち道路走行車両(22.5%)は21.6%増と好調だった、一方、電気機器(12.8%)は4.9%減、一般産業機械(6.7%)は6.5%減となった。他の主要品目も前年から軒並み減少した。化学工業製品(13.3%)、雑製品(12.4%)はそれぞれ、2.3%減、2.9%減となった。食品に適さない原材料(燃料を除く)(1.1%)も11.4%減、食料品・動物(0.5%)も8.6%減となった。

表5-1 EUの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
機械・輸送機器類 21,019 22,502 35.2 7.1
化学工業製品 22,498 16,474 25.8 △26.8
雑製品 9,557 10,109 15.8 5.8
食料品・動物 4,949 4,442 6.9 △10.2
原料別半製品 4,654 3,956 6.2 △15.0
飲料・たばこ 2,767 2,912 4.6 5.2
合計(その他含む) 71,323 63,954 100 △ 10.3

出所:EU統計局(ユーロスタット)

表5-2 EUの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
機械・輸送機器類 42,868 44,424 63.0 3.6
化学工業製品 9,583 9,363 13.3 △2.3
雑製品 8,994 8,730 12.4 △2.9
原料別半製品 6,349 6,261 8.9 △1.4
食料に適さない原材料(燃料を除く) 860 763 1.1 △11.4
食料品・動物 354 324 0.5 △8.6
合計(その他含む) 70,023 70,468 100 0.6

出所:EU統計局(ユーロスタット)

日本からEUへの直接投資額は前年比6.0%増

日本の財務省によると、2023年の日本からEUへの直接投資額は、前年比6.0%増の3兆9,866億円だった。製造業が27.9%増の1兆9,232億円となった。主に食料品で4,908億円、化学・医薬で4,373億円などの投資が目立った。非製造業では、金融・保険業で6,909億円、卸売・小売業で5,805億円など、前年に続き大規模な投資を受け、全体で2兆635億円となった。国別では、オランダの1兆2,013億円、アイルランドの1兆131億円、ドイツの6,060億円、スイスの6,035億円の順に大きかった。EUから日本への直接投資受入額は1,526億円だった。53.1%減と大きく縮小した。業種別では、輸送機械器具が2,135億円と好調で、製造業全体で2,776億円の投資を受け入れた。一方、卸売・小売業の2,958億円の引き揚げ超過などが足かせとなり、非製造業全体では1,250億円の引き揚げ超過となった。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2021年 2022年 2023年
実質GDP成長率 (%) 6.1 3.5 0.4
1人当たりGDP (米ドル) 38,950 37,659 41,129
消費者物価上昇率 (%) 2.9 9.2 6.4
失業率 (%) 7.1 6.2 6.1
貿易収支 (100万ユーロ) 235,902 △ 172,248 230,776
経常収支 (100万ユーロ) 404,151 △ 52,448 321,940
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 565,772 557,194 552,535
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ、期末値) 16,313,841 16,078,826 16,048,320
為替レート (1米ドルにつき、ユーロ、期中平均) 0.8454 0.9496 0.9248


貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
外貨準備高(グロス)、対外債務残高(グロス):EU20(ユーロ圏)のデータに基づく。
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支、経常収支:EU統計局(ユーロスタット)
対外債務残高(グロス):欧州中央銀行(ECB)
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF