スペインの貿易と投資(世界貿易投資動向シリーズ)

要旨・ポイント

  • 2022年のGDP成長率は5.8%と、大幅な伸び。
  • ウクライナ情勢による価格高騰や供給混乱の影響で、輸出入ともに過去最高額を更新。
  • 外国直接投資は対内・対外ともに、再生可能エネルギーやデジタル分野が活発で、米国の重要性が増す。
  • 対日貿易は乗用車が好調。投資は日西間で既存の製造拠点の増設が相次ぐ。

公開日:2023年10月16日

駐在員による3分解説動画

動画再生のためのモーダルウィンドウを開く

マクロ経済 
インフレ後の内需減速を観光回復による外需が相殺

2022年の実質GDP成長率は5.8%と、2021年の6.4%に続きコロナショックからの力強い回復を遂げた。第3四半期までは、主に個人消費と観光の回復により好調な景気となったが、第4四半期には、ロシアによるウクライナ侵攻後のエネルギー価格高騰やインフレ圧力により内需がやや減速した。需要項目別では、6割近くを占める民間最終消費支出が4.7%増、国内総固定資本形成が2.4%増、財貨・サービスの輸出は15.2%増となった。政府は2023年の実質GDP成長率を2.1%と予測している。2022年の失業率は12%台後半まで改善された。

表1 スペインの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2021年 2022年 2023年
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
実質GDP成長率 6.4 5.8 6.8 7.2 5.4 3.8 4.2
階層レベル2の項目民間最終消費支出 7.1 4.7 6.6 4.9 5.3 2.1 2.6
階層レベル2の項目政府最終消費支出 3.4 △ 0.2 0.0 △ 1.7 △ 0.6 1.6 1.2
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 2.8 2.4 2.8 3.1 4.0 △ 0.4 0.0
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 13.5 15.2 18.0 21.9 12.9 8.7 9.6
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 14.9 7.0 12.2 9.8 6.5 0.1 1.9

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
〔出所〕スペイン国家統計局(INE)

貿易 
輸出は地政学的影響受ける

2022年の貿易は、輸出が前年比23.6%増の3,892億900万ユーロ、輸入は32.1%増の4,573億2,100万ユーロと、いずれも前年に続き過去最高を更新した。ウクライナ情勢下でのエネルギー価格急騰に端を発した輸出入価格の全般的な上昇が主な理由である。貿易赤字は前年比2.2倍の681億1,200万ユーロで、うち8割近くはエネルギーの輸入超過による。

輸出を品目別にみると、化学品(構成比18.6%)が前年比33.0%増で最大品目になった。新型コロナウイルスワクチンの輸出により、医薬品(7.1%)が5割伸びた。資本財(自動車を除く)(17.5%)は14.7%増と堅調で、特に航空機(1.3%)が29.0%増だった。食料品(16.5%)は12.8%増で、オリーブ油(1.0%)は金額で21.1%増、数量で2.6%減と微減した。豊作だったにもかかわらず、エネルギー価格高騰に加えて、ウクライナが主要生産国であるヒマワリ油の逼迫による食用植物油脂の高騰により、オリーブ油価格が急騰した。自動車(部品含む)(11.5%)は13.3%増と新型コロナ禍前の水準に回復した。完成車(8.3%)は13.6%、部品(3.1%)も12.7%伸びた。中間財(11.0%)は金額では20.0%増だったが、数量では8.2%減少した。主要品目の鉄鋼(3.3%)はエネルギー価格高騰などにより、金額で21.9%増、数量で14.2%減だった。鉱物・エネルギー(9.8%)はエネルギー・資源価格高騰の中、94.0%増と全品目で最大の伸びだった。うち、石油精製品(5.8%)は金額で93.4%増と過去最高を記録し、数量では18.4%増だった。電力(1.7%)も前年の2.5倍だった。消費財(8.8%)は14.6%増で、うち半分弱を占める衣料品(4.0%)が19.1%増と好調だった。

輸出を国・地域別にみると、EU(構成比62.8%)は前年比26.2%増だった。うちユーロ圏(55.2%)はワクチン、石油精製品、電力などがけん引し、25.8%増となった。EU域外最大の輸出先である英国(5.5%)は12.7%増だったものの、乗用車や青果類などが伸び悩んだ。欧州域外で最大の輸出先である米国(4.9%)はガソリンが好調で27.5%増だった。アジア大洋州地域で最大の輸出先である中国(2.1%)は、銅や医薬品などが増加したものの、最大品目の豚肉が半減したことにより7.6%減となった。前年比で最も変動が大きかったのはサウジアラビア(0.8%)で、軍艦の納入などにより54.9%増となった。ロシア(0.3%)は、衣料品などの消費財や自動車部品などが大幅に減少し、41.9%減となった。他方、電動機および発動機や殺虫剤・殺菌剤が大幅増となるなど、従来とは異なる動きを示した。

輸入は原油・ガスの調達構造に変化

輸入を品目別にみると、鉱物・エネルギー(構成比19.9%)が前年比95.5%増と引き続き大幅増となった。主要品目の原油(9.9%)は金額で81.2%増と過去最高となり、数量でも12.6%増だった。主要調達先はナイジェリア、米国、メキシコで、液化天然ガス(LNG)は4.7%増、金額で3.1倍、数量で38.3%増と、ともに過去最高だった。ガス全体の輸入量に占めるLNGの割合は約8割に達し、主要調達先は米国とロシアで、輸入数量はそれぞれ2.2倍、37.8%増だった。従来の主要供給国アルジェリアからのパイプライン経由での輸入量は、2本のうち1本が停止されていることにより3割減少した。食料品(11.4%)は30.7%増だったが、特に穀物(1.4%)はウクライナ情勢による高騰を受け、金額で84.0%増、数量で33.6%増と過去最高となった。最大の調達先はウクライナで、金額ベースで全体の2割を占めた。需給逼迫懸念により在庫を積み上げる動きがみられ、ブラジルなどからの輸入も拡大した。資本財(自動車を除く)(19.7%)は、太陽光発電設備の設置容量が前年比3割増となった中、ソーラーパネルが2.2倍と伸びた。リチウムイオン電池も85.2%増と顕著な伸びを示した。消費財(10.6%)は、うち半分近くを占める衣料品(4.9%)が3割伸び、24.5%増となった。自動車(部品含む)(8.5%)は16.4%増だった。完成車(4.1%)は26.6%増、部品(4.3%)は8.0%増だったが、それぞれ新型コロナ禍以前の水準は回復していない。

輸入を国・地域別にみると、EU(構成比44.7%)はバイオディーゼルや航空機の大幅増により前年比18.1%増だった。英国(2.5%)からの輸入は原油の増加などで29.1%増だった。米国(7.4%)は、ヘリコプターなどその他航空機や前述の原油やLNGの大幅増により、ほぼ倍増した。ブラジル(2.0%)も原油やトウモロコシの大幅増で96.1%伸び、中南米で最大の輸入相手国となった。中国(10.9%)は、乗用車やソーラーパネルがそれぞれ31.4倍、2.7倍に伸びるなど40.0%増となり、ドイツを抜いて最大の輸入相手国となった。中国からの乗用車輸入は日本、韓国を抜き、うち8割は電気自動車(EV)であった。ロシア(1.7%)は、LNGの増加が原油・石油製品の減少を上回り、26.4%増加した。

表2 スペインの主要品目別輸出入[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
化学品 54,352 72,309 18.6 33.0 63,916 75,321 16.5 17.8
資本財(自動車を除く) 59,266 67,976 17.5 14.7 72,233 89,888 19.7 24.4
食料品 56,964 64,248 16.5 12.8 39,736 51,917 11.4 30.7
自動車(部品含む) 39,473 44,739 11.5 13.3 33,311 38,762 8.5 16.4
中間財 35,654 42,785 11.0 20.0 26,799 34,603 7.6 29.1
鉱物・エネルギー 19,727 38,263 9.8 94.0 46,475 90,880 19.9 95.5
消費財 29,938 34,302 8.8 14.6 39,013 48,579 10.6 24.5
原材料 8,361 9,631 2.5 15.2 12,692 13,821 3.0 8.9
耐久消費財 5,331 6,238 1.6 17.0 9,953 10,918 2.4 9.7
合計(その他を含む) 314,859 389,209 100.0 23.6 346,283 457,321 100.0 32.1

〔注〕EU域外貿易は通関ベース(輸出はFOB、輸入はCIF)、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕スペイン税関

表3 スペインの主要国・地域別輸出入[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 193,505 244,258 62.8 26.2 173,186 204,506 44.7 18.1
階層レベル2の項目ユーロ圏 170,626 214,701 55.2 25.8 147,421 172,462 37.7 17.0
階層レベル3の項目フランス 49,363 60,007 15.4 21.6 35,471 40,957 9.0 15.5
階層レベル3の項目ドイツ 32,352 37,438 9.6 15.7 38,570 43,096 9.4 11.7
階層レベル3の項目ポルトガル 24,858 32,079 8.2 29.1 13,632 16,304 3.6 19.6
階層レベル3の項目イタリア 25,927 31,482 8.1 21.4 22,779 27,909 6.1 22.5
階層レベル2の項目非ユーロ圏 22,879 29,557 7.6 29.2 25,764 32,044 7.0 24.4
階層レベル3の項目ポーランド 7,483 8,396 2.2 12.2 6,576 7,990 1.7 21.5
英国 18,873 21,273 5.5 12.7 8,702 11,237 2.5 29.1
スイス 5,790 6,810 1.7 17.6 8,583 6,736 1.5 △ 21.5
トルコ 5,483 6,777 1.7 23.6 8,335 9,989 2.2 19.8
ロシア 2,209 1,283 0.3 △ 41.9 6,032 7,624 1.7 26.4
アジア太平洋 21,602 23,065 5.9 6.8 58,390 80,819 17.7 38.4
階層レベル2の項目中国 8,670 8,014 2.1 △ 7.6 35,474 49,653 10.9 40.0
階層レベル2の項目ASEAN 3,185 4,220 1.1 32.5 10,140 13,583 3.0 34.0
階層レベル2の項目日本 2,938 3,282 0.8 11.7 2,982 3,936 0.9 32.0
階層レベル2の項目韓国 1,935 2,181 0.6 12.7 2,748 3,933 0.9 43.2
階層レベル2の項目インド 1,494 1,825 0.5 22.1 4,209 5,726 1.3 36.0
北米 16,963 21,286 5.5 25.5 19,122 36,837 8.1 92.6
階層レベル2の項目米国 14,837 18,913 4.9 27.5 17,119 33,859 7.4 97.8
アフリカ 18,509 21,125 5.4 14.1 28,012 42,528 9.3 51.8
階層レベル2の項目モロッコ 9,486 11,748 3.0 23.8 7,310 8,692 1.9 18.9
階層レベル2の項目アルジェリア 1,888 1,021 0.3 △ 45.9 4,795 7,597 1.7 58.4
階層レベル2の項目ナイジェリア 423 382 0.1 △ 9.7 5,742 9,088 2.0 58.3
中南米 14,991 18,887 4.9 26.0 17,846 27,632 6.0 54.8
階層レベル2の項目メキシコ 4,125 5,197 1.3 26.0 4,688 5,960 1.3 27.1
階層レベル2の項目ブラジル 2,598 3,569 0.9 37.4 4,649 9,116 2.0 96.1
中東 7,561 9,682 2.5 28.0 7,411 13,177 2.9 77.8
階層レベル2の項目サウジアラビア 1,914 2,965 0.8 54.9 2,969 5,116 1.1 72.3
階層レベル2の項目イスラエル 1,810 2,170 0.6 19.9 824 1,052 0.2 27.7
合計(その他を含む) 314,859 389,209 100.0 23.6 346,283 457,321 100.0 32.1

〔注〕(1)EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
(2)アジア大洋州はASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に
香港・台湾を加えた合計値。
〔出所〕スペイン税関

対内・対外直接投資 
対内投資は5Gインフラが活発化

産業・商業・観光省によると、2022年の対内直接投資(届け出ベース、ネット、フロー)は前年比6.4%増の250億8,800万ユーロとなった。業種別で最大の運輸・通信分野(63億5,600万ユーロ)は、5G整備に向けた国外投資会社との提携が加速した。12月にテレフォニカが設立した地方部の光ファイバー回線敷設事業会社ブルービアに仏保険会社クレディ・アグリコル・アシュアランスなどのコンソーシアムが10億2,100万ユーロを出資し、出資比率は45%となった。また、プログラミング・ITサービスは、ITバブル期の2000年以来最高の17億4,300万ユーロに達した。米IT大手によるデータセンター開設の動きも活発で、アマゾン ウェブ サービス(AWS)やグーグルが稼働開始したほか、メタの設置計画も報じられている。スタートアップでは、出張管理システム「トラベルパーク」が1月に1億1,500万ユーロの資金を調達し、ユニコーン企業となった。製造業と不動産・企業向けサービスがそれぞれ前年から4倍、2.8倍の大幅増となった。製造業の大型案件は、独シーメンス・エナジーによる風力発電機器製造シーメンス・ガメサ・リニューアブルエナジーの完全子会社化を目指した株式公開買い付け(TOB)で、32億ユーロを投じ12月に持ち株比率を92.7%に引き上げた。電気・ガス・水道・環境は20億4,800万ユーロで前年比65.8%減だった。再生可能エネルギー投資は引き揚げもあり、59.3%減の14億5,200万ユーロとなった。エネルギー大手による独立発電事業者の買収は引き続き活発で、5月に仏電力大手エンジーとクレディ・アグリコル・アシュアランスが再エネ大手エオリア・レノバブレスの株式97.3%を取得した。国内エネルギー大手によるエネルギー移行資金調達のための資産売却も活発で、レプソルは9月と2023年3月に、世界全体の再エネ事業と上流事業の持ち分25%をフランスとスイスのエネルギー投資会社などに合計57億ユーロで譲渡した。

国・地域別では、米国が最大の投資国となった。前述の案件に加え、昇降機大手オーチス・ワールドワイドが5月、出資先の未保有株式に15億ユーロ規模のTOBを実施し子会社化した。非EU諸国で米国に次ぐ英国では、エネルギー大手SSEが9月にシーメンス・ガメサの南欧の風力発電資産を6億1,300万ユーロで買収した。

対米投資は風力への関心高まる

2022年の対外直接投資(届け出ベース、ネット、フロー)は引き揚げ超過となった前年から、135億3,600万ユーロのプラスに転じたが、グロスでは301億ユーロと前年から微減した。M&Aは例年よりも少なく、投資の8割以上はグリーンフィールド投資や二次投資だった。業種別では製造業が最大で、金融・銀行・保険、電力・ガス・水道・環境が続いた。製造業のうち、再エネ分野はグロスで前年の2.1倍の35億ユーロにのぼった。太陽光発電では、ポルトガル電力公社(EDP)の再エネ子会社(本社スペイン)が活発な企業・資産買収を行い、2月にシンガポールの分散型太陽光発電大手サンシープの株式91%を取得したほか、9月にベトナムで2件の太陽光発電プロジェクトを取得した。10月には独クロノス・ソーラー・プロジェクツの株式70%を取得し、ドイツとオランダ市場に新規参入した。

国・地域別で最大の投資先は前年に引き続き英国となり、グロスで8割強がセメント業だった。その他、テレフォニカのITサービス子会社が3月、英国のDXサービス大手インクリメンタル・グループを2億900万ユーロで買収するなど、デジタル分野での投資が相次いだ。8月にはイベルドローラが77億ユーロを投じる英国の大型洋上風力発電所イースト・アングリア・スリーの建設を開始し、再エネ投資も引き続き好調だ。第2位の投資先の米国は、3割が風力投資となっている。イベルドローラは同国で計6.3ギガワットの洋上風力発電所を開発中で、11月には今後3年間の総投資額470億ユーロのうち47%が米国向けとなると発表した。また、レプソルが4月に初の米国での太陽光発電所を稼働するなど、石油・ガス大手の参入もみられた。対新興国では、スペイン空港・航空管制公団(AENA)が8月、ブラジルで11空港の運営権を7億8,000万ユーロで落札した。

表4 スペインの業種別対内・対外直接投資[届け出ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
業種 対内直接投資 対外直接投資
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 伸び率 金額 金額 伸び率
運輸・通信 4,867 6,356 30.6 6,991 △ 5,192
製造業 1,469 5,999 308.3 2,654 6,114 130.4
階層レベル2の項目機械・自動車などその他の製造業 309 4,693 1,416.9 1,250 5,736 358.7
階層レベル2の項目食品 1,164 679 △ 41.6 222 67 △ 69.7
階層レベル2の項目石油精製・化学・プラスチック 233 423 81.9 1,090 303 △ 72.2
階層レベル2の項目製紙・出版 △ 285 166 88 11 △ 87.6
階層レベル2の項目繊維・衣類 48 37 △ 22.5 2 △ 3
不動産・企業向けサービス 1,378 3,909 183.8 △ 3,320 1,332
電力・ガス・水道・環境 5,996 2,048 △ 65.8 3,264 3,328 2.0
金融・銀行・保険 722 1,562 116.4 △ 8,139 5,239
流通・小売・卸売り 1,470 1,413 △ 3.9 △ 2,296 135
ホテル・レストラン 445 885 98.9 392 188 △ 52.1
建設 5,789 564 △ 90.3 144 2,534 1,655.5
鉱業 11 112 942.4 100 △ 570
農業・牧畜業・林業・漁業 286 44 △ 84.8 △ 30 38
合計(その他含む) 23,571 25,088 6.4 △ 619 13,536

〔出所〕 スペイン産業・商業・観光省

表5 スペインの国・地域別対内・対外直接投資[届け出ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 伸び率 金額 金額 伸び率
EU 11,758 11,132 △ 5.3 △ 893 1,335
階層レベル2の項目ユーロ圏 10,105 10,734 6.2 △ 1,695 1,179
階層レベル3の項目ドイツ 762 4,589 502.4 △ 2,807 1,550
階層レベル3の項目フランス 7,679 3,053 △ 60.2 127 242 91.1
階層レベル3の項目イタリア 405 869 114.2 522 654 25.3
階層レベル3の項目オランダ 704 861 22.2 310 △ 530
階層レベル2の項目非ユーロ圏 1,654 398 △ 75.9 802 157 △ 80.5
階層レベル3の項目スウェーデン 1,344 328 △ 75.6 644 35 △ 94.6
階層レベル3の項目ポーランド 17 26 54.6 106 131 23.4
英国 2,202 3,748 70.2 8,030 8,304 3.4
スイス △ 339 231 △ 4,372 34
ロシア 935 56 △ 94.0 32 △ 20
北米 3,635 8,261 127.2 △ 5,159 3,437
階層レベル2の項目米国 3,499 8,569 144.9 △ 5,182 3,477
アジア大洋州 4,140 1,526 △ 63.1 488 922 88.9
階層レベル2の項目オーストラリア 2,365 1,345 △ 43.1 65 198 203.6
階層レベル2の項目香港 △ 14 629 15 △ 63
階層レベル2の項目日本 1,055 303 △ 71.3 81 △ 1
階層レベル2の項目インド △ 15 7 10 65 523.2
階層レベル2の項目中国 433 △ 50 △ 27 29
階層レベル2の項目ASEAN 316 △ 638 341 695 104.1
アフリカ 197 768 289.9 △ 240 62
階層レベル2の項目南アフリカ 108 742 584.7 26 8 △ 70.4
中南米 1,284 △ 42 △ 1,874 △ 7,072
階層レベル2の項目メキシコ 480 428 △ 10.7 2,410 427 △ 82.3
階層レベル2の項目ブラジル △ 67 △ 927 656 △ 8,098
中東 189 △ 112 △ 176 79
階層レベル2の項目アラブ首長国連邦 102 255 150.5 △ 132 52
階層レベル2の項目カタール 8 △ 496
合計(その他含む) 23,571 25,088 6.4 △ 619 13,536

〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、
インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕 スペイン産業・商業・観光省

表6 スペインの主な対内直接投資案件(2022年~2023年7月)[M&A]
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
再エネ シーメンス・ガメサ・リニューアブルエナジー シーメンス・エナジー ドイツ 2022年12月 32億ユーロ ドイツのシーメンス・エナジーが、風力発電機器製造シーメンス・ガメサ・リニューアブルエナジーの完全子会社化を目指し、株式公開買い付け(TOB)で32億ユーロを投じ持ち株比率を67.1%から92.7%に引き上げた。
物流 ノアトゥム アブダビ港湾公社
アラブ首長国連邦
2023年7月 6億6,000万ユーロ 港湾物流・貨物輸送会社のアブダビ港湾公社が、総合物流企業ノアトゥムの買収を完了。世界における主要な貿易物流企業となることを目指す。
再エネ エオリア・レノバブレス エンジーなど フランス 2022年5月 非公表 再エネ導入拡大を目指すフランスの大手電力エンジーが、再エネ開発大手エオリア・レノバブレスの株式97.3%をフランスの保険大手と合同で取得。急成長するスペインの再エネ市場でのプレゼンスを高め、グリーン電力発電容量の導入を拡大する。
再エネ エラワンエナジー オリックス 日本 2022年12月 非公表 オリックスが、出資先の再エネ開発大手エラワンエナジーの全株式を取得し、完全子会社化することを発表。欧米での再エネ事業拡大に加え、グリーン水素事業も視野に入れる。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表7 スペインの主な対外直接投資案件(2022年)[M&A]
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA) 金融 ガランティ銀行 トルコ 2022年5月 14億ユーロ ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA)にとって戦略的市場であるトルコの傘下銀行の出資比率を、TOBを通じて49.85%から85.97%に引き上げた。
フェロビアル 建設・コンセッション ニュー・ターミナル・ワン 米国 2022年6月 11億ドル ニューヨークJFK国際空港の新ターミナル建設・運営コンソーシアムの株式半数弱を買収することに合意したと発表。
EDPリニューワブルズ(EDPR) 再エネ サンシープ シンガポール 2022年2月 11億シンガポール
・ドル
ポルトガル電力公社(EDP)の再エネ子会社が、東南アジア4位の分散型太陽光発電事業者の株式91%を取得。EDPRのアジア大洋州のクリーンエネルギー事業統括本社となる。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係 
対日輸入、鉄鋼製品やプリンター、エアコンが増加

スペイン税関によると、2022年の対日貿易は輸出が前年比11.7%増の32億8,200万ユーロ、輸入が32.0%増の39億3,600万ユーロとなり、貿易赤字は前年の15倍の6億5,400万ユーロに拡大した。

対日輸出を品目別にみると、最大品目の豚肉(構成比 22.3%)が金額・数量ともに約4割伸び、過去最高となった。乗用車(10.0%)は3.0%増、台数ベースでは14.1%増の2万1,309台となった。主力の小型車はほぼ横ばいだった。石油精製品(6.8%)や灰および残留物(4.9%)のエネルギー・資源製品が数量で減少したほか、価格が高騰したオリーブ油(4.1%)も数量で前年比16.6%減の3万トンとなった。

対日輸入を品目別にみると、最大品目の乗用車(26.5%)が21.9%増と回復した。鉄または非合金鋼のフラットロール製品(8.0%)が2.7倍となった。その他、航空機エンジン部品(2.9%)や印刷機器(2.6%)、エアコン(1.5%)が拡大した。食料品(0.8%)は、味噌、しょうゆや清酒、ウイスキー、緑茶、和牛などが金額・数量ともに過去最高を記録した。

スペイン、日本で既存進出企業の再投資が活発に

2022年の日本からの直接投資受入額は、エネルギー関連の大型案件で過去最高水準となった前年からの反動減により71.3%減の3億300万ユーロとなったが、幅広い分野での投資がみられた。特に顕著だったのは既存の進出企業による再投資だ。AGCは4月にバルセロナ県北部の合成医薬品生産拠点の生産能力を3割拡大するべく設備増強を決定し、投資総額の見込みは約120億円となる。また、花王は8月、欧州の香料事業強化に向けて合成香料生産設備を増設すると発表し、2023年1月より稼働を開始した。デジタル分野では、NTTデータが10月、多国籍企業によるIT投資を集める南部マラガに拠点を開設した。M&Aでは、引き続き再エネ分野が好調で、リニューアブル・ジャパンが同社初の海外案件として、9月と12月に稼働済み太陽光発電所2カ所を相次いで取得した。その他、オリックスが2023年3月、2021年に買収した再エネ開発エラワンエナジーの残りの株式を取得し、完全子会社化した。今後、欧州や米国での事業拡大やグリーン水素事業などの新規事業の展開を図る。東芝三菱電機産業システム(TMEIC)は4月、米国子会社を通じてバレンシアのエンジニアリング中堅オルビタ・インヘニエリアの港湾・ターミナル向け自動化事業を買収した。日本食が普及拡大する中、宝酒造インターナショナルは9月、傘下の日本食材輸入卸事業を行うコミンポートを通じて飲食店向け卸売業アマランの株式100%を取得し、アンダルシア地方の拠点を強化した。

スペインの対日直接投資額は、115万ユーロの引き揚げ超過となったが、グロスでは洋上風力関連で1,235万ユーロの再投資がみられた。自動車プレス部品大手ゲスタンプ・オートモシオンは日本の自動車メーカーからの部品需要拡大に対応すべく、2022年5月に三重県の工場の増設を発表した。スタートアップ関連では、3Dフードプリンターを開発・販売するフードテックのナチュラルマシーンズが、2022年後半に日本法人を設立した。

表8-1 スペインの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
豚肉 533 731 22.3 37.2
乗用車 317 327 10.0 3.0
石油精製品 319 223 6.8 △ 30.2
灰および残留物 119 159 4.9 33.9
オリーブ油 130 135 4.1 3.9
自動車部品 178 126 3.8 △ 29.3
ワイン 92 103 3.1 12.0
革製バッグ・小物類 72 93 2.8 30.1
⿂のフィレその他の魚肉(生鮮、冷蔵、冷凍) (クロマグロ等) 41 63 1.9 52.4
複素環式化合物 47 60 1.8 27.9
合計(その他含む) 2,938 3,282 100.0 11.7

〔出所〕 スペイン税関

表8-2 スペインの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
乗用車 854 1,042 26.5 21.9
鉄または非合金鋼のフラットロール製品 119 316 8.0 165.5
自動二輪車 136 158 4.0 16.2
航空機エンジン部品 71 113 2.9 59.2
印刷機器 71 104 2.6 46.7
自動二輪車・自転車部品 66 85 2.2 29.2
自動車部品 89 81 2.0 △ 8.9
医療機器 69 72 1.8 4.4
集積回路 64 64 1.6 0.5
エアコン 42 57 1.5 37.5
合計(その他含む) 2,982 3,936 100.0 32.0

〔出所〕 スペイン税関

基礎的経済指標

人口
4,806万人 (2023年1月、暫定値)
面積
50万5,983平方キロメートル(2022年)
1人当たりGDP
2万9,421 米ドル (2022年)
(△はマイナス値)
項目 単位 2020年 2021年 2022年
実質GDP成長率 (%) △ 11.2 6.4 5.8
消費者物価上昇率 (%) △ 0.3 3.1 8.4
失業率 (%) 15.5 14.8 12.9
貿易収支 (100万ユーロ) △ 8,625 △ 19,705 △ 58,233
経常収支 (100万ユーロ) 6,789 11,523 7,254
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 64,168 75,724 76,498
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ、期末値) 2,234,000 2,334,000 2,327,000
為替レート ( 1 米ドルにつき、ユーロ、期中平均) 0.8755 0.8455 0.9496

注:
人口、1人当たりGDP、実質GDP成長率、貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):暫定値
貿易収支:国際収支ベース(財・サービス)
出所:
人口、面積、実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:スペイン国家統計局(INE)
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替ルート:IMF
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):スペイン銀行