外資に関する規制
最終更新日:2024年02月08日
- 最近の制度変更
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2022年11月11日
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2022年11月9日
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2021年1月8日
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2020年6月26日
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2020年5月26日
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規制業種・禁止業種
分野により、非居住者による一定の基準を超える議決権の取得には連邦経済・気候保護省への届出が必要。
外資に限らず、公衆衛生や安全などの観点から、以下の業種は許認可が必要:私立病院、賭博業、質屋、警備業、オークション業、不動産仲介業、銀行業、飲食店・ホテル業、保険業、薬局、手工業、人材派遣業など。
- ドイツの外資政策および外資企業によるドイツ企業への出資・買収規制
ドイツの外資政策は、EUの共通政策とも連動しつつ、「対外的な経済取引は自由」を基本原則としている(対外経済法1条1項)。ただし、「例外」として、ドイツや他のEU加盟国の公の秩序や安全保障への脅威につながる案件については、規制の対象としている(同法4条1項・2項)。
所管庁である連邦経済・気候保護省は、対外経済法と対外経済法施行令に基づき、外国の買い手による国内企業の買収について、個々の事案を審査することができる。同法における投資規制は、分野横断的な審査と、防衛産業やITセキュリティー機能を有する製品など特定分野が対象となる審査に分かれる。- 分野横断的な審査
分野横断的な投資規制の枠組みでは、基本的に、EUおよび欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国以外の投資家や企業がドイツ国内企業の議決権25%以上を取得する買収が審査の対象になる(対外経済法施行令55条1項・2項、56条1項3号)。
買収の対象となる国内企業が、連邦情報セキュリティー庁法(BSI-Gesetz)が定める「重要インフラ」を運営、あるいは情報通信セキュリティー関連サービス提供、報道などの業種である場合には、10%以上の議決権取得が審査対象となる(同施行令55a条1項1~7号、56条1項1号)。
医薬品、医療機器や臨床検査に関連する国内企業、また人工知能(AI)、ロボティクス、半導体、サイバーセキュリティー、自動運転、航空宇宙、量子情報工学、重要な資源等に関する国内企業は、20%以上の議決権取得が審査対象となる(同施行令55a条1項8~27号、56条1項2号)。
審査は原則として職権で行われるが、連邦経済・気候保護省は、売買契約が締結されたことを認識した2カ月以内に、買い手と被買収国内企業に審査の開始を伝える必要がある(対外経済法14a条1項1号、同施行令55条3項)。もっとも、買い手は、同施行令58条に基づき、いわゆる「異議なし証明書」(Unbedenklichkeitsbescheinigung)を申請することができる。買い手は同証明書を取得することで、公共の秩序や安全保障に反する恐れがない買収であることを証明できる。連邦経済・気候保護省は、公共の秩序や安全保障を確保するため、連邦政府の同意を得たうえで、書類を受領してから4カ月以内に、買収の禁止等を命じることができる(同法14a条1項2号、同施行令59条1項)。
- 特定分野の審査
特定分野の審査の場合、外国の投資家、企業が国内企業の議決権の10%以上を取得した場合、審査の対象になる(対外経済法施行令60条1項、60a条)。特定分野の審査は、同施行令60条1項1~4号に定められた事業(防衛産業、ITセキュリティー関連など)を行う企業の買収が対象。審査の基準は、分野横断的な審査と異なり、ドイツの重要な安全保障上の利益が買収により脅かされるか否かである。連邦経済・気候保護省は買収に関する書類の受理から2カ月以内に決定を下す必要がある(対外経済法14a条1項1号、同施行令61条)。
- 審査プロセスのデジタル化
2023年12月1日より、審査に必要な申請書や関連書類は、連邦ポータルサイト(Bundesportal)経由での電子的な提出の必要がある。
連邦ポータルサイト経由で申請書等を提出した場合、審査に関する期日の起算日は、申請者が連邦ポータルサイト内で資料を提出した日ではなく、提出されたすべてのドキュメントが連邦ポータルサイトから連邦経済・気候保護省のITシステムに移管された日となる(対外経済法施行令3条4項)。
連邦経済・気候保護省は、同省のウェブサイト(ドイツ語、英語)で、審査に関連する情報を公開している。
- 連邦ポータルを通じた申請書提出の方法や申請用フォーマット(Anträge und Meldungenの項を参照)(ドイツ語)
- 審査プロセスの図解
- 2023年の審査の件数や概況(Investment Screening in Germany:Facts & Figures)
連邦司法省:
- 分野横断的な審査
- 許認可が必要な業種
公衆衛生や治安、従業員・消費者の安全が問題となり得る業種については、国内企業・外国企業に限らず、特別の許認可が必要となる。以下は許認可が必要となる業種の例(カッコ内は根拠法)。外国企業であることを理由に適用される規制はない(例外:外国法人であることを理由に、人材派遣許可を与えないことがあり得る)。
- 私立病院、賭博業、質屋、 警備業、オークション業、不動産仲介業、施工者・施工コンサルタント、保険ブローカー・保険コンサルティング投資仲介業者(営業法 Gewerbeordnung)
- 銀行業、投資会社(銀行法=信用制度法 Kreditwesengesetz)
- 飲食店・ホテル業(飲食店法 Gaststättengesetz)
- 保険業(保険監査法 Versicherungsaufsichtsgesetz)
- 医薬品製造・輸出入、薬局(医薬品法 Arzneimittelgesetz、薬局法 Apothekengesetz)
- 手工業(手工業法 Gesetz zur Ordnung des Handwerks)
- 人材派遣業(労働者派遣法 Arbeitnehmerüberlassungsgesetz)
- 旅客運送業(旅客自動車運送事業法 Verordnung über den Betrieb von Kraftfahrunternehmen im Personenverkehr)
- 信書の配達(郵便法 Postgesetz)
- 法律相談、徴収、貨物検査(法律サービス法 Rechtsdienstleistungsgesetz)
- 税務相談、会計監査(税理士法 Steuerberatergesetz/会計士法 Wirtschaftsprüferordnung )
- 電子通信網事業(通信法 Telekommunikationsgesetz)
- 武器の製造および売却(武器法 Gesetz über die Kontrolle von Kriegswaffen)
- 運送業(貨物自動車輸送法 Güterkraftverkehrsgesetz)など
出資比率
分野により、非居住者が一定の基準を超える議決権を取得する場合、連邦経済・気候保護省へ届出が必要な場合がある。
主に対外経済法施行令60条により、外国の投資家や企業が、防衛産業やITセキュリティーなどの特定分野で、ドイツ企業の議決権を10%以上取得する場合、連邦経済・気候保護省への届出と審査・承認が必要(前項「規制業種・禁止業種」参照)。
また、主に同施行令55a条により、EUおよび欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国以外の外国の投資家や企業がIT分野を含む重要インフラ、通信、報道など同施行令55a条1項1~7号の分野のドイツ企業の議決権を10%以上取得する場合、連邦経済・気候保護省への届出と審査・承認が必要。また、EUおよびEFTA加盟国以外の外国の投資家や企業が、同項8~27号の分野で、ドイツ企業の議決権を20%以上取得する場合、連邦経済・気候保護省への届出と審査・承認が必要(前項「規制業種・禁止業種」参照)。
すでに特定の出資比率(議決権)を超えることにより審査・承認済みであった場合も、追加出資により20%、25%、40%、50%、75%の基準値を超える場合、再度、審査対象となる。さらに、間接的に株式を保有している出資者がすでに報告をしている場合も、株式を直接保有する出資者は、独自に報告を行う必要がある(対外経済法施行令56条および60a条)。
外国企業の土地所有の可否
外資のみを対象とした規制はなし。
資本金に関する規制
外資のみを対象とした規制はなし。
その他規制
外資のみを対象とした規制はなし。