ドイツの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2023年の実質GDP成長率は前年のプラス成長から反転しマイナス0.1%。
  • 貿易は、輸出入ともに減少、国別で最大の中国からの輸入が大幅に減少。
  • 対内直接投資・対外直接投資、ともに引き揚げ超過。
  • 日本からの直接投資および対日直接投資も引き揚げ超過を計上。

公開日:2024年11月25日

マクロ経済 
2023年の実質GDPは前年から反転しマイナス成長

2023年のドイツの実質GDP成長率(物価、季節、稼働日調整済み)は前年比0.1%減と、前年の1.9%から減速した。ドイツ経済は、ロシアのウクライナ侵攻などの影響による物価の高騰、金利上昇や国内外での需要減退など複数の要因が重なり、経済成長が鈍化した。2023年の実質GDP成長率は新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)禍以前の2019年と比較して0.5%増に留まった。

需要項目別(物価調整済み)にみると、内需は全体で前年比0.8%減と停滞した。民間最終消費支出は0.7%減となり、前年の3.9%増から大幅に減速した。家計消費は、消費者物価の高騰を背景に伸び悩み、特に家具や家電製品といった耐久消費財の支出の減少が目立った。政府最終消費支出も、予防接種や医療機関への補償といった政府補助による新型コロナ感染防止対策の終了に伴い支出が減少したことなどから、前年の1.6%増から1.0%減とマイナスに転じた。国内総固定資本形成は0.7%減となった。そのうち建設投資は、建設価格の高騰に加え、金利の大幅な上昇の影響も受け、2.7%減となった。設備投資は、2023年8月まで適用された企業向けの電気自動車の環境ボーナス(Umweltbonus)の後押しにより商業用乗用車が増加したことを背景に、2.8%増とプラスを維持した。

財貨・サービスの輸出入は、輸出は0.7%減、輸入は2.4%減と、前年から一転して輸出入ともに減少し、輸入の縮小幅が輸出の縮小幅を上回った。

表1 ドイツの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2021年 2022年 2023年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 3.1 1.9 △ 0.1 0.3 △ 0.1 0.1 △ 0.5
階層レベル2の項目民間最終消費支出 1.5 3.9 △ 0.7 △ 0.7 0.3 0.0 0.4
階層レベル2の項目政府最終消費支出 3.1 1.6 △ 1.0 △ 1.3 0.1 1.4 0.6
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 △ 0.2 0.1 △ 0.7 1.0 △ 0.1 0.1 △ 2.1
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 9.7 3.3 △ 0.7 0.5 △ 0.7 △ 0.9 △ 0.9
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 8.9 6.6 △ 2.4 △ 1.1 0.2 △ 1.8 △ 1.6

〔注〕四半期の伸び率は前期比。物価、季節、稼働日調整済み。需要項目別は物価調整済み。
〔出所〕ドイツ連邦統計局

貿易 
輸出は微減、自動車は堅調も化学製品は低下

ドイツ連邦統計局(以下、連邦統計局)によると、2023年の貿易は、輸出が前年比0.3%減の1兆5,899億5,300万ユーロ、輸入は9.3%減の1兆3,657億9,900万ユーロで、輸出入ともに過去2年連続の増加から反転して減少となった。貿易黒字は2,241億5,400万ユーロだった。黒字額は前年の886億ユーロから1,355億5,400万ユーロ増加し、伸び率では2.5倍だった。黒字額は2016年以来、7年ぶりに増加に転じた。

輸出を品目別にみると、最大の輸出品目である機械および輸送用機器(構成比46.6%)が前年比5.8%増となり、輸出全体の伸びに最も貢献した。同品目の内訳をみると、乗用車(10.3%)の10.3%増や貨物自動車(1.0%)の24.7%増が牽引した道路走行車両(16.5%)の8.9%増と、荷役機械(1.0%)の12.0%増が牽引した一般工業用機械類およびその部分品(7.2%)の4.8%増の伸びが目立った。連邦統計局によると、2023年にドイツから輸出された新車の約4台に1台が電気自動車で、電気自動車の輸出台数は58.0%増となった。次に輸出額が大きい化学製品(16.9%)は10.9%減となり、特に医薬品(7.0%)が7.0%減、有機化学品(1.7%)が23.9%減と縮小した。原料別製品(11.6%)も7.7%減と低調だった。機用品、再輸入品などの特殊取扱品(4.7%)は68.7%増と大幅に増加した。

輸出を国・地域別にみると、最大の輸出先であるEU(構成比55.0%)は前年比0.5%減となった。EU域内で最大の輸出先であるフランス(7.6%)は1.7%増で、電力(0.4%)が81.8%減、石油製品(1.1%)が37.1%減となったが、機用品、再輸入品(5.5%)が93.0%増、乗用車(8.3%)が18.1%増と伸長し、全体では微増となった。続くオランダ(7.3%)も乗用車(8.3%)と機用品、再輸入品(7.0%)が好調で、それぞれ56.4%増、52.5%増となり、全体として2.8%増だった。イタリア(5.5%)はその他医薬品(5.2%)の30.2%減や医薬品(3.2%)の33.9%減などから、2.2%減となった。中・東欧への輸出では、ポーランド(5.8%)が0.8%減、チェコ(3.4%)が3.3%減と、いずれも縮小した。

EU域外では、最大の輸出先である米国(構成比9.9%)は、医薬品(8.9%)が前年比46.3%増となった一方、その他医薬品(7.5%)の25.3%減や、銀・白金族金属(1.1%)の46.1%減などから、全体では1.1%増にとどまった。中国(6.1%)は、主力輸出品目の乗用車(15.5%)の22.5%減のほか、自動車部品(8.6%)の10.2%減、無機元素・酸化物(0.8%)の52.7%減も重なり、全体で8.9%減となった。英国(4.9%)は6.4%増となり、EU離脱の移行期間が終了した2021年の減少から転じて2年連続での拡大となった。経済制裁の対象となっているロシア(0.6%)は38.8%減となった。ロシア向けでは、有機・無機化合物(1.9%)の3.2倍や農業用機械(6.8%)の16.9%増など、一部の品目では増加も見られたが、最大の輸出品目であるその他医薬品(19.6%)の28.3%減や乗用車(1.8%)の70.3%減が大きく響いた。

輸入は減少に転じる、鉱物性燃料が大幅減

2023年の輸入を品目別にみると、最大の輸入品目である機械および輸送用機器(構成比37.7%)は前年比3.9%増と拡大した。同品目の内訳をみると、乗用車(5.3%)が11.1%増、自動車部品(3.2%)が11.5%増と好調だった結果、道路走行車両(10.3%)が10.1%増となり、同品目全体の押し上げに貢献した。電気機器およびその部分品(10.8%)は、その他電気機器(3.2%)が16.1%増、電力用機器(1.0%)も17.4%増と堅調だったことから、全体で5.8%増となった。次に輸入額が大きい化学製品(13.5%)は、有機化学品(2.9%)が37.1%減、医薬品(5.1%)が10.9%減となり、全体で19.7%減と、前年から一転して縮小した。鉱物性燃料、潤滑剤(8.6%)は38.3%減で、輸入額を押し下げた。中でも天然ガスおよび製造ガス(2.1%)が58.0%減、石油、石油製品(5.4%)が22.0%減と、前年の価格高騰の影響を受けた輸入額の大幅伸長から一転して、縮小した。

輸入を国・地域別にみると、最大の輸入元であるEU(構成比52.7%)は前年比2.4%減、うちユーロ圏(35.2%)は5.3%減だった。ユーロ圏で最大の輸入元であるオランダ(7.7%)は、石油製品(14.8%)の8.7%減や電力(0.9%)の56.9%減などが下押しし8.8%減となり、全体を押し下げた。ベルギー(3.9%)の15.5%減、オーストリア(4.0%)の6.1%減もユーロ圏からの輸入減の要因となった。一方、ポーランド(6.0%)が4.3%増、ハンガリー(2.7%)が9.3%増、ルーマニア(1.4%)が10.6%増となり、非ユーロ圏(17.5%)からの輸入は3.7%増となった。

EU域外では、最大の輸入元の中国(構成比11.5%)が前年比18.5%減となり、前年までの伸長から一転して減少した。乗用車(2.6%)は2.7倍となったが、有機・無機化合物(1.7%)の84.4%減、自動データ処理機械(8.7%)の22.6%減などが影響した。米国(6.9%)は、貴金属鉱・くず(1.0%)の60.1%減や原油・粗油(8.7%)の13.9%減があった一方、医薬品(8.8%)の31.2%増、乗用車(8.9%)の5.8%増が寄与し、全体としては1.4%の増加となった。ロシア(0.3%)は、経済制裁とロシア産エネルギー輸入からの脱却を進めた影響を受け、原油・粗油(1.1%)が99.7%減、石油製品(17.5%)が88.3%減、石炭(5.2%)が94.4%減と、いずれも大幅に減少し、全体で89.9%減となった。

表2-1 ドイツの主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
機械および輸送用機器 699,683 740,130 46.6 5.8
階層レベル2の項目道路走行車両 240,706 262,035 16.5 8.9
階層レベル3の項目乗用車 148,523 163,757 10.3 10.3
階層レベル3の項目貨物自動車 12,960 16,161 1.0 24.7
階層レベル2の項目電気機器およびその部分品 138,476 142,983 9.0 3.3
階層レベル2の項目一般工業用機械類およびその部分品 109,216 114,507 7.2 4.8
階層レベル3の項目荷役機械 14,017 15,701 1.0 12.0
階層レベル2の項目産業用機械 64,489 69,531 4.4 7.8
階層レベル2の項目原動機 45,000 47,652 3.0 5.9
階層レベル2の項目その他輸送機器 37,052 39,284 2.5 6.0
化学製品 302,336 269,349 16.9 △ 10.9
階層レベル2の項目医薬品 119,964 111,512 7.0 △ 7.0
階層レベル3の項目その他医薬品 71,208 62,447 3.9 △ 12.3
階層レベル2の項目有機化学品 35,452 26,984 1.7 △ 23.9
階層レベル3の項目アルコール・フェノール 8,380 4,367 0.3 △ 47.9
原料別製品 200,030 184,664 11.6 △ 7.7
階層レベル2の項目非鉄金属 44,316 38,943 2.4 △ 12.1
階層レベル2の項目鉄鋼 29,564 25,204 1.6 △ 14.7
雑製品 169,509 169,477 10.7 △ 0.0
階層レベル2の項目計測機器および制御機器 54,885 57,313 3.6 4.4
階層レベル3の項目測定・分析・制御機器 32,864 33,870 2.1 3.1
階層レベル2の項目その他雑製品 48,590 46,345 2.9 △ 4.6
食料品および生きた動物 73,782 77,058 4.8 4.4
特殊取扱品 44,155 74,476 4.7 68.7
鉱物性燃料、潤滑剤 61,316 36,567 2.3 △ 40.4
非食用原材料(鉱物性燃料除く) 30,137 25,030 1.6 △ 16.9
飲料およびたばこ 8,908 9,619 0.6 8.0
動植物性油脂、脂肪、ろう 4,177 3,583 0.2 △ 14.2
合計(その他含む) 1,594,034 1,589,953 100.0 △ 0.3

〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ドイツ連邦統計局

表2-2 ドイツの主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
機械および輸送用機器 495,722 514,955 37.7 3.9
階層レベル2の項目電気機器およびその部分品 139,600 147,678 10.8 5.8
階層レベル3の項目その他電気機器 37,264 43,251 3.2 16.1
階層レベル3の項目電力用機器 11,386 13,370 1.0 17.4
階層レベル2の項目道路走行車両 128,113 141,070 10.3 10.1
階層レベル3の項目乗用車 65,231 72,445 5.3 11.1
階層レベル3の項目自動車部品 39,730 44,293 3.2 11.5
階層レベル2の項目一般工業用機械類およびその部分品 57,783 57,963 4.2 0.3
化学製品 229,997 184,691 13.5 △ 19.7
階層レベル2の項目医薬品 77,826 69,362 5.1 △ 10.9
階層レベル3の項目医薬品 44,823 39,250 2.9 △ 12.4
階層レベル2の項目有機化学品 62,308 39,222 2.9 △ 37.1
階層レベル3の項目有機・無機化合物 38,358 21,235 1.6 △ 44.6
雑製品 172,384 155,970 11.4 △ 9.5
原料別製品 186,478 153,398 11.2 △ 17.7
鉱物性燃料、潤滑剤 191,425 118,129 8.6 △ 38.3
階層レベル2の項目石油,石油製品 95,294 74,322 5.4 △ 22.0
階層レベル3の項目原油・粗油 59,971 42,580 3.1 △ 29.0
階層レベル2の項目天然ガスおよび製造ガス 69,876 29,348 2.1 △ 58.0
階層レベル3の項目天然ガス 68,093 27,970 2.0 △ 58.9
特殊取扱品 76,708 93,124 6.8 21.4
食料品および生きた動物 83,439 85,634 6.3 2.6
非食用原材料(鉱物性燃料除く) 53,245 43,409 3.2 △ 18.5
飲料およびたばこ 10,228 12,015 0.9 17.5
動植物性油脂、脂肪、ろう 5,806 4,473 0.3 △ 23.0
合計(その他含む) 1,505,434 1,365,799 100.0 △ 9.3

〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ドイツ連邦統計局

表3-1 ドイツの主要国・地域別輸出(FOB)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
EU 878,642 874,620 55.0 △ 0.5
階層レベル2の項目ユーロ圏 617,068 614,762 38.7 △ 0.4
階層レベル3の項目フランス 118,168 120,141 7.6 1.7
階層レベル3の項目オランダ 112,261 115,416 7.3 2.8
階層レベル3の項目イタリア 89,191 87,237 5.5 △ 2.2
階層レベル3の項目オーストリア 90,270 81,968 5.2 △ 9.2
階層レベル3の項目ベルギー 62,944 62,402 3.9 △ 0.9
階層レベル3の項目スペイン 49,935 54,521 3.4 9.2
階層レベル2の項目非ユーロ圏 261,574 259,858 16.3 △ 0.7
階層レベル3の項目ポーランド 92,679 91,964 5.8 △ 0.8
階層レベル3の項目チェコ 55,834 53,984 3.4 △ 3.3
階層レベル3の項目ハンガリー 32,974 32,686 2.1 △ 0.9
階層レベル3の項目スウェーデン 29,730 30,233 1.9 1.7
階層レベル3の項目デンマーク 23,997 22,731 1.4 △ 5.3
英国 73,764 78,461 4.9 6.4
アジア大洋州 222,816 212,098 13.3 △ 4.8
階層レベル2の項目ASEAN 28,086 28,222 1.8 0.5
階層レベル3の項目シンガポール 7,693 7,429 0.5 △ 3.4
階層レベル3の項目マレーシア 6,219 6,269 0.4 0.8
階層レベル3の項目タイ 5,435 5,292 0.3 △ 2.6
階層レベル2の項目中国 106,762 97,312 6.1 △ 8.9
階層レベル2の項目韓国 21,527 20,434 1.3 △ 5.1
階層レベル2の項目日本 20,511 20,231 1.3 △ 1.4
階層レベル2の項目インド 14,878 16,493 1.0 10.9
米国 156,208 157,907 9.9 1.1
スイス 70,611 66,569 4.2 △ 5.7
トルコ 26,973 30,709 1.9 13.9
メキシコ 16,350 18,957 1.2 15.9
ブラジル 12,904 12,794 0.8 △ 0.9
カナダ 12,762 12,730 0.8 △ 0.3
ロシア 14,545 8,907 0.6 △ 38.8
合計(その他含む) 1,594,034 1,589,953 100.0 △ 0.3

〔注1〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告書などに基づく。
〔注2〕アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕ドイツ連邦統計局

表3-2 ドイツの主要国・地域別輸入(CIF)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
EU 737,668 719,642 52.7 △ 2.4
階層レベル2の項目ユーロ圏 506,865 480,244 35.2 △ 5.3
階層レベル3の項目オランダ 114,998 104,896 7.7 △ 8.8
階層レベル3の項目イタリア 73,177 72,205 5.3 △ 1.3
階層レベル3の項目フランス 69,969 69,831 5.1 △ 0.2
階層レベル3の項目オーストリア 58,137 54,596 4.0 △ 6.1
階層レベル3の項目ベルギー 63,010 53,235 3.9 △ 15.5
階層レベル3の項目スペイン 37,756 39,222 2.9 3.9
階層レベル3の項目アイルランド 28,534 25,566 1.9 △ 10.4
階層レベル2の項目非ユーロ圏 230,803 239,398 17.5 3.7
階層レベル3の項目ポーランド 78,322 81,680 6.0 4.3
階層レベル3の項目チェコ 59,217 60,984 4.5 3.0
階層レベル3の項目ハンガリー 34,131 37,299 2.7 9.3
階層レベル3の項目ルーマニア 17,638 19,508 1.4 10.6
階層レベル3の項目スウェーデン 18,690 18,911 1.4 1.2
英国 40,314 36,668 2.7 △ 9.0
アジア大洋州 330,029 286,330 21.0 △ 13.2
階層レベル2の項目ASEAN 57,901 52,822 3.9 △ 8.8
階層レベル3の項目ベトナム 14,761 13,641 1.0 △ 7.6
階層レベル3の項目マレーシア 12,520 11,502 0.8 △ 8.1
階層レベル3の項目タイ 8,664 8,740 0.6 0.9
階層レベル2の項目中国 192,830 157,101 11.5 △ 18.5
階層レベル2の項目日本 25,413 25,644 1.9 0.9
階層レベル2の項目台湾 17,024 15,859 1.2 △ 6.8
階層レベル2の項目インド 15,082 14,306 1.0 △ 5.1
米国 93,338 94,635 6.9 1.4
スイス 55,723 51,820 3.8 △ 7.0
ノルウェー 63,086 30,548 2.2 △ 51.6
トルコ 24,717 24,350 1.8 △ 1.5
南アフリカ共和国 14,334 12,085 0.9 △ 15.7
ロシア 36,352 3,681 0.3 △ 89.9
合計(その他含む) 1,505,434 1,365,799 100.0 △ 9.3

〔注1〕 EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告書などに基づく。
〔注2〕アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕ドイツ連邦統計局

対内・対外直接投資 
対内直接投資額は減少

ドイツ連邦銀行(以下、中銀)によると、2023年の対内直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は149億7,500万ユーロと2022年の581億3,700万ユーロから大幅に減少した。ドイツ貿易・投資振興機関(GTAI)によると、2023年に発表された国外からの投資案件数は前年比289件増の2,243件となった。このうち、拡張と移転を含むグリーンフィールド投資案件数は24件減の1,759件となった。国・地域別にみると、米国からの投資が235件と前年に引き続き最多となった。次いで、スイスが202件となった。また、前年は141件であった中国からの投資が、59件増の200件と大幅に増えたほか、オランダが11件増の122件となった。一方で、英国が17件減の153件、トルコが54件減の85件と減少した。M&A案件数は313件増の484件となった。

2023年の対内直接投資額を国・地域別にみると、EU域内からの投資は240億1,900万ユーロの引き揚げ超過となり、前年の173億5,900万ユーロから大幅に後退した。このうちユーロ圏からの投資は、前年の129億3,000万ユーロに対し、322億5,100万ユーロの引き揚げ超過となった。オランダの297億900万ユーロの引き揚げ超過、アイルランドの100億9,300万ユーロの引き揚げ超過が大きく影響を与えた。一方、前年は207億3,300万ユーロの引き揚げ超過だったルクセンブルクからの投資は、7億5,900万ユーロとプラスに転じたものの、近年これら金融取引が活発なEU加盟国からの資本撤退の動きが目立っている。フランスは28億5,700万ユーロに減少した。非ユーロ圏は前年の44億2,800万ユーロから82億3,200万ユーロと倍増した。ハンガリーは18億4,900万ユーロと7.9倍に、ポーランドは13億8,100万ユーロと8.5倍に、それぞれ拡大した。

EU域外からは、英国が382億7,300万ユーロと前年の引き揚げ超過から大きく回復し、国別で最大の投資元となった。米国は、国別で最大の投資元であった前年の226億7,500万ユーロから反転して72億6,300万ユーロの引き揚げ超過となった。中国はアジア最大の投資元となった前年の29億7,800万ユーロから6億6,500万ユーロに減少した一方、シンガポールは14億7,200万ユーロでアジア最大の投資元となった。

2023年の主な投資案件としては、M&Aでは、カナダの投資運用会社ブルックフィールド・アセット・マネジメント(Brookfield Asset Management)と米国のデジタルインフラ投資会社デジタルブリッジ・グループ(DigitalBridge Group)が同年2月に、通信大手ドイツテレコム(Deutsche Telekom)のドイツおよびオーストリアにおける電波塔事業の一部(評価額175億ユーロ)を買収した。M&A以外では、同年7月に英国のエネルギー大手bpが、ドイツ連邦政府が実施した洋上風力発電開発権の入札において、67億8,000万ユーロで落札した。そのほか、英国のデータセンター保有・運営会社ヴィルトゥスデータセンターズ(Virtus Data Centres)は同年9月に、30億ユーロを投資しベルリン近郊のブランデンブルク州に欧州最大規模のデータセンターを建設する計画を発表した。

外国資本によるドイツ企業の買収や資本参加は、対外経済法に基づく事前投資審査制度の対象とすることができる。事前審査によりドイツや他のEU加盟国の公の秩序や安全保障への脅威につながる投資案件と判断されれば、ドイツ連邦政府は買収の禁止を含め投資制限を命じることができる。ドイツ経済・気候保護省によれば、事前審査が行われた投資案件は、2021年と2022年は306件と横ばいだったところ、2023年は257件に減少した。投資元国別にみると、米国が96件と3分の1を占めており、英国(チャネル諸島含む)が36件、中国が21件、EUと欧州自由貿易連合(EFTA)が21件、日本が16件と続いた。2023年に事前審査対象となった257件のうち、投資制限を受けたのは10件(暫定値、2024年1月の発表時点で26件が審査継続中)となっている。

対外直接投資も減速、北米への投資は大幅な引き揚げ超過

中銀によると、2023年の対外直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は746億7,900万ユーロとなり、前年の1,703億300万ユーロから減少した。

国・地域別にみると、最大の投資先であるEU域内への投資は679億1,500万ユーロと前年の1,148億4,700万ユーロからは4割減だった。うち、ユーロ圏は410億100万ユーロだった。EU域内最大の投資先は前年に引き続きルクセンブルクで、134億2,600万ユーロだったが、前年の274億2,400万ユーロからは半減した。

EU域外では、米国が前年の228億1,200万ユーロから一転して180億5,400万ユーロの引き揚げ超過となった。英国は191億9,500万ユーロと大きく拡大し、国別で最大の投資先となった。一方、中国は64億4,800万ユーロと2022年に比べて12.2%減少した。

2023年の主な投資案件としては、M&Aでは、フランクフルト証券取引所(FWB)を運営するドイツ証券取引所(Deutsche Börse AG)が同年9月に、デンマークの投資管理プラットフォームを運営するシムコープ(SimCorp)を39億ユーロで買収した。M&A以外では、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)グループ傘下の電池会社パワーコ (PowerCo)が同年4月に、同社にとって北米初のバッテリーセル工場をカナダに設置し、2030年までに最大48億ユーロを投資すると発表した。

表4 ドイツの国・地域別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 金額 金額
EU 17,359 △ 24,019 114,847 67,915
階層レベル2の項目ユーロ圏 12,930 △ 32,251 105,063 41,001
階層レベル3の項目ベルギー △ 5,274 6,789 5,244 5,615
階層レベル3の項目フランス 13,691 2,857 15,749 6,830
階層レベル3の項目オーストリア 2,626 1,954 4,281 5,038
階層レベル3の項目スロバキア 182 899 533 241
階層レベル3の項目ルクセンブルク △ 20,733 759 27,424 13,426
階層レベル3の項目フィンランド 195 387 913 402
階層レベル3の項目アイルランド 7,067 △ 10,093 6,840 △ 581
階層レベル3の項目オランダ 11,918 △ 29,709 27,385 1,065
階層レベル2の項目非ユーロ圏 4,428 8,232 △ 3,465 7,719
階層レベル3の項目スウェーデン 1,605 4,240 △ 15,363 △ 2,308
階層レベル3の項目ハンガリー 235 1,849 1,555 △ 50
階層レベル3の項目ポーランド 162 1,381 4,875 2,900
階層レベル3の項目デンマーク 1,306 707 2,237 4,943
英国 △ 1,397 38,273 13,249 19,195
スイス 3,347 6,067 4,862 1,873
トルコ 421 110 2,057 2,154
ロシア △ 269 △ 857 △ 3,478 2,707
ノルウェー 2,202 △ 1,252 257 363
北米 23,490 △ 6,690 24,028 △ 18,006
階層レベル2の項目米国 22,675 △ 7,263 22,812 △ 18,054
アジア大洋州 7,626 1,338 20,433 14,926
階層レベル2の項目シンガポール 1,296 1,472 2,666 989
階層レベル2の項目中国 2,978 665 7,344 6,448
階層レベル2の項目日本 2,183 192 2,783 1,095
階層レベル2の項目香港 1,103 △ 1,397 △ 783 △ 220
中南米 2,901 △ 4,943 5,133 △ 1,162
階層レベル2の項目ブラジル 304 234 969 1,620
階層レベル2の項目メキシコ 1,490 151 1,686 2,352
階層レベル2の項目バミューダ 1,327 △ 1,808 1,837 △ 2,030
中近東 1,886 1,489 28 2,258
アフリカ 267 88 1,620 484
合計(その他含む) 58,137 14,975 170,303 74,679

〔出所〕ドイツ連邦銀行

表5-1 ドイツの主な対内直接投資案件(2023年)[M&A以外]
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
エネルギー bp 英国 2023年7月 67億8,000万ユーロ ドイツ連邦政府が実施した洋上風力発電開発権の入札 において、67億8,000万ユーロで落札。同社は、北海の2カ所の開発権を獲得し、落札額の10%に相当する6億7800万ユーロの初回支払いが2024年7月までに行われ、残りの90%は今後10年間にプロジェクトが稼動した時点で、20年間にわたって支払われる。
情報通信 ヴィルトゥス・データセンターズ(Virtus Data Centres) 英国 2023年9月 30億ユーロ ベルリン近郊のブランデンブルク州に、メガスケールデータセンターを建設すると発表。ネットゼロの達成に向け、再生可能エネルギーの利用や廃熱の再利用などに取り組み、2026年までの稼働を目指す。
医薬品 イーライリリー・アンド・カンパニー(Eli Lilly and Company) 米国 2023年11月 25億ドル 西部ラインラント・プファルツ州に、注射剤製造施設を建設すると発表。糖尿病や肥満症の治療薬を製造予定。2027年の工場稼働を目指しており、エンジニア、オペレーター、科学者など、最大1,000人の熟練労働者を雇用を見込んでいる。
情報通信 DATA4 フランス 2023年1月 10億ユーロ 西部ヘッセン州ハーナウに、20ヘクタールを超える大規模データセンターを新設すると発表。同社にとって初のドイツ国内への投資で、約500名の雇用創出を見込む。2024年頃から順次稼働し、2032年までに完成する予定。
半導体 ウルフスピード(Wolfspeed) 米国 2023年2月 非公表 フランス国境に近いザールラント州エンスドルフに、200ミリメートルの炭化ケイ素(SiC)半導体ウエハー工場を新設すると発表。フル稼働時には600人以上の従業員を雇用する予定。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表5-2 ドイツの主な対内直接投資案件(2023年)[M&A]
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
情報通信 GDタワーズ(GD Towers) デジタルブリッジ(DigitalBridge Group)、
ブルックフィールド・アセット・マネジメント(Brookfield Asset Management)
米国、
カナダ
2023年2月 100億ユーロ以上 ドイツテレコム(Deutsche Telekom)は、ドイツおよびオーストリアにおける電波塔事業部門GDタワーズの株式の51%を、米国企業とカナダ企業のコンソーシアムに売却した。GDタワーズの企業価値を175億ユーロと見積り、売却によりドイツテレコムは100億ユーロ以上の現金収入を得た。なお、ドイツテレコムは、引き続きGDタワーズの株式の49%を保有する。
化学 MBCCグループ シーカ(Sika) スイス 2023年5月 55億スイスフラン スイスの土木・建築・工業用化学品のシーカは、建設システムと混和剤システムのMBCCグループの買収を完了。買収によりシーカは事業基盤を強化し、建設ライフサイクル全体にわたる製品とサービス範囲の拡大を狙う。
エネルギー ステアグ(STEAG) アステリオン・インダストリアル・パートナーズ(Asterion Industrial Partners) スペイン 2023年8月 26億ユーロ 欧州のインフラに特化した独立系投資運用会社であるアステリオン・インダストリアル・パートナーズは、ドルトムント、デュイスブルク、ボーフム、エッセン、オーバーハウゼン、ディンスラーケンの各市の自治体公益事業を代表するコンソーシアムKSBGから、エネルギー事業会社STEAGを買収すると発表。ステアグ全体を持続可能なエネルギー事業体へと発展させることを目指す。
化学 ランクセス(LANXESS) アドベント・インターナショナル(Advent International) 米国 2023年4月 13億ユーロ 特殊化学品メーカーのランクセスは、プライベートエクイティファンドのアドベント・インターナショナルと、エンジニアリングマテリアル合弁会社の設立を発表。ランクセスは合弁会社の約40%、アドベントは約60%の株式を保有。
ITサービス ソフトウェア(Software) シルバー・レイク(Silver Lake) 米国 2023年9月 非公表 米国プライベートエクイティファンドシルバー・レイクが、IT大手ソフトウエアを買収。クラウドアプリケーションとデータ統合市場に事業を集中しさせ、SaaSファースト企業への移行を目指すソフトウェアAGを支援する。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-1 ドイツの主な対外直接投資案件(2023年)[M&A以外]
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
自動車 フォルクスワーゲン・グループ 〔パワーコ(PowerCo)〕 カナダ 2023年4月 48億ユーロ フォルクスワーゲンの車載電池子会社パワーコは、北米初のバッテリーセル工場をカナダに設置し、2030年までに最大48億ユーロを投資すると発表。同社のギガファクトリーの中で最大の規模となり、工場では最大3,000人を雇用。同工場にはCO2フリーのエネルギーが供給される予定。
自動車 フォルクスワーゲン・グループ〔スカウト・モーターズ(Scout Motors)〕 米国 2023年3月 20億ドル サウスカロライナ州コロンビア近郊に過去に生産されていた米国車ブランド「スカウト」をほうふつとさせるデザインの次世代小型トラック(ピックアップトラック)と、スポーツ用多目的車(SUV)を生産する新工場を建設すると発表。両モデルともEVとする。2023 年半ばに着工し、2026 年末までに生産を開始、4,000人以上を雇用の予定。
自動車 フォルクスワーゲン・グループ(パワーコ) ポーランド 2023年10月 17億ユーロ フォルクスワーゲンは、車載電池子会社パワーコとベルギー非鉄金属大手ユミコア(Umicore)の合弁会社「IONWAY」の初めての工場をポーランド南西部のニサに建設すると発表。EV向け正極材(CAM)を生産し、パワーコの欧州のバッテリーセル・ギガファクトリーに供給予定。
自動車 フォルクスワーゲン・グループ 中国 2023年4月 約10億ユーロ 安徽省合肥市に、インテリジェント・コネクテッド・ビークル(ICV)関連会社を新設すると発表した。プロジェクト名を「100%TechCo」とし、投資額は約10億ユーロで、2024年の操業を計画している。部品調達および研究開発分野で合計2,000人以上の雇用創出を計画している。
化学 メルク(Merck) 米国 2023年4月 3億ユーロ 化学大手のメルクは、米国ペンシルベニア州ホームタウンの半導体製造拠点の拡張計画への支援について、同州との間で合意したことを発表した。本合意には、最低68人の新規雇用創出といったインセンティブ目標も含まれている。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-2 ドイツの主な対外直接投資案件(2023年)[M&A]
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
シーメンス・エナジー(Siemens Energy) エネルギー シーメンス・ガメサ・リニューアブルエナジー(SGRE) スペイン 2023年6月 40億5,000万ユーロ シーメンス・エナジー(Siemens Energy)はスペインの風力発電機子会社シーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー(SGRE)を完全子会社化した。SGREの業績悪化により対策の必要性が高まっていたところ、統合後3年以内に、年間約3億ユーロのコストシナジーを見込んでいる。
ドイツ証券取引所(Deutsche Börse AG ) フィンテック シムコープ(SimCorp) デンマーク 2023年9月 39億ユーロ フランクフルト証券取引所(FWB)を運営するドイツ取引所が2023年9月、デンマークの投資管理プラットフォームを運営するシムコープ買収を完了した。ドイツ証券取引所の既存のデータおよび分析ビジネスを補完し、投資管理ソリューション事業の拡大を可能にする。
ザルトリウス(Sartorius) ライフサイエンス ポリプラス(Polyplus) フランス 2023年7月 24億ユーロ ライフサイエンス大手のザルトリウスは、フランス同業のポリプラスを買収した。ポリプラスは細胞・遺伝子治療の革新的技術を提供するリーディングカンパニーで、ザルトリウスの取り扱い製品とも近いことから、製品ラインナップの補完・相乗効果を図る。
シーメンス(Siemens) 電機 シーメンス・インディア(Siemens India) インド 2023年11月 21億ユーロ シーメンスは、子会社シーメンス・エナジー(Siemens Energy)から、インド法人シーメンス・インディアの株式の18%を追加取得すると発表。シーメンスとシーメンス・エナジーは、インドのエネルギー事業の分社化を提案し、2025年までの分割化を目指している。
チェプラファーム(CHEPLAPHARM) 医薬品 イーライリリー・アンド・カンパニー(Eli Lilly and Company) 米国 2023年7月 13億5,100万ドル チェプラファームは、イーライリリーから、統合失調症や双極性障害の治療薬「ジプレキサ」の全世界における商業権の買収について合意したことを発表した。チェプラファームは、錠剤および筋肉内投与製剤を含むジプレキサの全製品ポートフォリオを取得。チェプラファーム社史上最大の取引となった。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係 
対日貿易は横ばい

2023年の対日貿易は、輸出は前年比1.4%減の202億3,100万ユーロとやや縮小した一方、輸入は0.9%増の256億4,400万ユーロと小幅ながら拡大した。輸入については、既に2022年に新型コロナ感染拡大前の2019年の水準を上回っており、3年連続の拡大となった。対日貿易赤字は54億1,300万ユーロと2022年から5億1,100万ユーロ増加した。日本はドイツにとって輸出では19位、輸入では15位の相手国となっている。

対日輸出を主要品目別にみると、主力の乗用車(構成比19.2%)が前年比10.8%増、有機・無機化合物(5.7%)が53.3%増、その他化学工業生産品(2.5%)が23.5%増、熱電子管・半導体(2.4%)が17.6%増と好調だったが、その他医薬品(6.9%)が26.2%減となったことなどが全体を押し下げた結果、対日輸出は縮小した。

対日輸入では、乗用車(構成比9.3%)が前年比23.2%増と2年連続で拡大したほか、機用品・再輸入品(3.4%)が66.7%増、有機・無機化合物(3.2%)が56.6%増となった一方、医薬品(1.4%)の25.0%減が響き、小幅な拡大に留まった。

日本からの対ドイツ投資も対日投資もともに減少

2023年の日本からの直接投資額は、2022年の21億8,300万ユーロから1億9,200万ユーロへ大幅に減少した。2023年の日本企業の主な投資案件としては、日本板硝子が同年5月に、ザクセン・アンハルト州のアーケン工場敷地内に設置された750キロワット(kW)の発電能力を持つ太陽光発電設備の稼働を開始したと発表した。投資額は非公表。同社グループのドイツ国内のすべての拠点では、2017年から使用電力を100%グリーン電力で賄っている。今回の投資により、エネルギー調達コストを持続的に削減するとしている。また、富士通は2023年5月に、グローバルなリテール業界向けクラウドソリューションを提供するGKソフトウエア(GK Software)を4億3,200万ユーロで買収した。クラウドビジネスおよび SaaS ビジネスへの移行を加速させるとともに、顧客への新しい DX オファリングの提供によりグローバルリーチの拡大を目指す。

日本への直接投資額は10億9,500万ユーロと、前年の27億8,300万ユーロから減少したものの、対日投資額が日本からの対ドイツ投資額を上回った。2023年の日本への主な投資案件としては、物流大手のダクサ(Dachser)が同年5月に、西日本鉄道との合弁契約を締結し、日本で初めての拠点を東京に開設することを発表した。ヨーロッパの緊密な陸上輸送網と接続された航空輸送と海上輸送を提供し、日本市場での拡大を目指す。また、製薬大手のバイエル(Bayer)は同年11月に、ライフサイエンス・インキュベーターである「Co.Lab」を神戸に拡大したことを発表した。インキュベーションラボ「CoLaborator Kobe」をリブランディングし、グローバルCo.Labでの取り組みを活用することで、さらなるエコシステムの醸成を図る。

表7-1 ドイツの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
乗用車 3,514 3,893 19.2 10.8
医薬品 1,608 1,539 7.6 △ 4.3
その他医薬品 1,899 1,401 6.9 △ 26.2
有機・無機化合物 758 1,162 5.7 53.3
測定・分析・制御機器 861 821 4.1 △ 4.6
その他化学工業生産品 409 506 2.5 23.5
自動車部品 497 494 2.4 △ 0.6
熱電子管・半導体 409 481 2.4 17.6
その他産業用機械 422 441 2.2 4.7
銀・白金族金属 486 417 2.1 △ 14.2
内燃機関 309 376 1.9 21.7
電気回路開閉機器 379 343 1.7 △ 9.6
合計(その他含む) 20,511 20,231 100.0 △ 1.4

〔出所〕 ドイツ連邦統計局

表7-2 ドイツの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
乗用車 1,932 2,380 9.3 23.2
その他電気機器 1,781 1,844 7.2 3.6
熱電子管・半導体 1,468 1,496 5.8 1.9
測定・分析・制御機器 1,512 1,433 5.6 △ 5.2
事務用機器 1,391 1,315 5.1 △ 5.4
その他の産業用機械 921 947 3.7 2.7
機用品,再輸入品 521 870 3.4 66.7
有機・無機化合物 524 820 3.2 56.6
その他の化学工業生産品 753 819 3.2 8.8
玩具・スポーツ用品 829 721 2.8 △ 13.0
電気回路開閉機器 704 667 2.6 △ 5.3
医療用機器 597 574 2.2 △ 3.8
合計(その他含む) 25,413 25,644 100.0 0.9

〔出所〕 ドイツ連邦統計局

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2021年 2022年 2023年
実質GDP成長率 (%) 3.1 1.9 △ 0.1
1人当たりGDP (米ドル) 51,461 48,756 52,727
消費者物価上昇率 (%) 3.1 6.9 5.9
失業率 (%) 5.7 5.3 5.7
貿易収支 (100万ユーロ) 196,491 125,916 241,414
経常収支 (100万ユーロ) 263,454 164,630 257,705
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 99,169 98,414 100,392
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ) 6,175,717 6,068,293 6,108,802
為替レート 0.85 0.95 0.92


貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率:ドイツ連邦統計局
失業率:ドイツ連邦雇用庁
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):ドイツ連邦銀行