チェコの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2023年の実質GDP成長率は前年比0.2%減、民間消費支出の減少が主因。
  • 貿易は機械・輸送用機器の堅調な伸びにより輸出が過去最高を記録。
  • 対内直接投資は前年比18.1%減。一方対外直接投資は20.8%増。
  • 対日貿易赤字は過去最高額を更新。
  • 日系企業は、環境関連製品や自動車部品の製造で投資を展開。

公開日:2024年11月14日

マクロ経済 
民間消費の低迷により経済成長がマイナスに

2023年の実質GDP成長率は前年比0.2%減で、前年の2.4%からマイナス成長に転じた。高インフレ率(10.7%)を反映した民間最終消費支出の3.0%減が、マイナスの主因となった。一方、好調な輸出(3.1%増)が成長率を下支えした。産業別にみると、製造業が2.0%増と堅調な伸びを示した一方、金融・保険が前年比2.1%減、運輸、小売・卸売、宿泊・飲食サービスが1.9%減、建設が1.4%減とマイナスに転じ、実質GDP成長率を押し下げた。

チェコ国立銀行(以下、中銀)は、2024年のインフレ率が目標値の2.0%に近い水準にまで低下し、民間消費支出が回復することで、2024年の実質GDP成長率がプラスに転じ、1.4%に達すると予測している。

表1 チェコの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2021年 2022年 2023年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 3.5 2.4 △ 0.2 0.3 0.3 △ 0.8 0.4
階層レベル2の項目民間最終消費支出 4.1 △ 0.6 △ 3.0 △ 1.6 0.9 △ 0.3 0.5
階層レベル2の項目政府最終消費支出 1.4 0.3 3.5 1.3 0.6 1.3 0.6
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 0.7 3.1 4.2 0.5 4.4 △ 0.8 2.0
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 6.8 7.2 3.1 0.7 △ 0.7 △ 1.1 2.1
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 13.2 6.3 △ 0.4 △ 1.0 △ 0.9 △ 0.6 △ 2.4

〔注〕四半期の伸び率は前期比。季節調整済み
〔出所〕チェコ統計局(CZSO)

貿易 
貿易黒字は過去最高を更新

2023年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比2.8%増の2,366億9,300万ユーロと1993年の共和国独立以降の最高額を更新したが、輸入は5.0%減の2,139億5,000万ユーロにとどまった。貿易収支は227億4,400万ユーロで、貿易黒字額は4.5倍に拡大し、1999年以降の統計で過去最高を記録した。

輸出を品目別にみると、最大の輸出品目である機械類・輸送用機器(構成比58.6%)が前年比8.4%増と堅調な伸びを示した。同品目全体の3分の1強を占める道路走行車(20.3%)が19.1%増、電気機器(11.4%)が10.7%増加し、輸出額全体を押し上げた。一方、鉱物性燃料(2.0%)が43.0%減と大幅減となったが、これは主として電力(0.9%)の輸出が55.5%減少したことによる。

輸出を国・地域別にみると、全体の約8割を占めるEUが前年比2.6%増大した。最大輸出先のドイツ(構成比32.8%)は2.8%増となっている。同国向けの最大輸出品目である道路走行車(18.1%)が17.1%増、電気機器(14.0%)が14.0%増と堅調な伸びを示した。一方電力(1.6%)は50.6%、事務機器(6.4%)は11.6%、それぞれ減少した。ドイツに次いで輸出額が大きいスロバキア(7.8%)は4.3%減少した。最大輸出品目である道路走行車(17.6%)は22.5%、電気機器(8.2%)は17.5%増加したが、ドイツ同様、電力(2.7%)が71.3%減と大幅に減少した。第3の輸出先であるポーランド(7.3%)は6.4%増加した。最大輸出品目の道路走行車(15.8%)が25.0%増と大幅な伸びを示し、輸出額を押し上げた。EU域外ではトルコ(1.4%)が31.4%増と好調な伸びを示した。同国向け輸出額の3分の1以上を占める道路走行車が68.5%増と大幅に増加した。一方ロシア(0.3%)は、ウクライナ侵攻に伴うチェコ企業のロシア事業縮小・撤退が続くなか、53.4%減と前年に続き大幅減を記録した。特に前年の主要項目だった機械類・輸送用機器のうち、道路走行車(1.2%)が93.0%減、一般産業機械・設備(11.1%)が56.3%減、電気機器(3.8%)が77.7%減とそれぞれ大幅に減少した。

輸入を品目別にみると、最大の輸入品目である機械類・輸送用機器(構成比48.1%)が前年比1.1%の微増にとどまった。道路走行車(10.1%)が16.5%増、電気機器(13.3%)が5.6%増と堅調な伸びを示した一方で、事務機器(5.0%)が22.3%減、通信・録音機器(8.1%)が11.7%減と2桁台の減少率となった。前者では主としてPC(3.6%)の21.9%減、後者では電話機・部品(7.4%)の9.6%減が影響した。また主として価格下落の影響で石油・石油製品(3.5%)が14.3%、ガス(1.7%)が60.5%とそれぞれ減少したことから、鉱物性燃料(6.2%)が37.8%と大幅に縮小した。

国・地域別では、全体の57.4%を占めるEUが前年比0.3%減と微減した。最大の輸入元であるドイツ(構成比20.8%)が前年からほぼ横ばいとなった。同国からの最大の輸入品目である道路走行車(14.5%)が11.6%、続く電気機器(11.6%)が8.8%それぞれ増加した一方で、石油・石油製品(4.8%)が17.7%減少、鉄・鉄鋼(4.4%)が7.8%減少した。EU域外では、ドイツに次いで輸入額が大きい中国(17.1%)が13.4%減少した。事務機器(18.6%)が25.3%と大幅に減少したほか、同国輸入額の約3分の1を占める通信・録音機器(32.7%)が16.0%減少したことが影響している。対中貿易赤字額は342億3,900万ユーロで、前年より55億ユーロ縮小したが、依然として2位以下を大きく引き離して最大の貿易赤字相手国となっている。ロシア(1.5%)は主としてガス(9.6%)の95.9%減、石油・石油製品(62.6%)の10.4%減を受けて、全体で71.0%減少した。対ロシアの貿易赤字額は73.7%縮小し、24億6,800万ユーロにとどまった。

表2 チェコの主要品目別輸出入[通関ベース](単位:百万ユーロ、%)(△はマイナス値)
項目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械類・輸送用機器 127,926 138,640 58.6 8.4 101,671 102,832 48.1 1.1
階層レベル2の項目道路走行車 40,371 48,083 20.3 19.1 18,485 21,528 10.1 16.5
階層レベル2の項目電気機器 24,316 26,916 11.4 10.7 27,000 28,513 13.3 5.6
階層レベル2の項目通信・録音機器 19,179 19,099 8.1 △ 0.4 19,608 17,321 8.1 △ 11.7
階層レベル2の項目一般産業機械・設備 14,132 15,437 6.5 9.2 10,064 10,417 4.9 3.5
階層レベル2の項目事務機器 16,422 14,242 6.0 △ 13.3 13,795 10,718 5.0 △ 22.3
原料別製品 33,671 31,609 13.4 △ 6.1 34,347 31,284 14.6 △ 8.9
階層レベル2の項目金属製品 10,550 10,314 4.4 △ 2.2 7,690 7,453 3.5 △ 3.1
階層レベル2の項目鉄、鉄鋼 6,150 5,095 2.2 △ 17.2 9,838 8,175 3.8 △ 16.9
雑製品 26,388 28,313 12.0 7.3 24,161 24,561 11.5 1.7
階層レベル2の項目専門、科学、検査器具 4,329 4,910 2.1 13.4 3,667 4,220 2.0 15.1
階層レベル2の項目家具 4,198 4,660 2.0 11.0 3,352 3,614 1.7 7.8
階層レベル2の項目玩具、スポーツ用品(SITC3) 4,084 4,142 1.7 1.4 2,078 1,854 0.9 △ 10.8
階層レベル2の項目プラスチック製品(SITC3) 3,227 3,356 1.4 4.0 3,535 3,504 1.6 △ 0.9
階層レベル2の項目衣類・服飾 2,906 3,149 1.3 8.4 4,279 4,093 1.9 △ 4.4
化学製品 16,738 16,056 6.8 △ 4.1 26,032 24,430 11.4 △ 6.2
食料品・生きた動物 8,295 9,313 3.9 12.3 9,822 10,989 5.1 11.9
鉱物性燃料 8,339 4,757 2.0 △ 43.0 21,281 13,240 6.2 △ 37.8
食料に適さない原材料 5,692 4,350 1.8 △ 23.6 4,583 3,858 1.8 △ 15.8
飲料・たばこ 1,540 2,197 0.9 42.6 1,515 1,653 0.8 9.1
動植物性油脂 567 574 0.2 1.3 599 417 0.2 △ 30.4
合計(その他含む) 230,254 236,693 100.0 2.8 225,197 213,950 100.0 △ 5.0

〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕チェコ統計局(CZSO)

表3 チェコの主要国・地域別輸出入[通関ベース](単位:百万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 187,760 192,693 81.4 2.6 123,033 122,722 57.4 △ 0.3
階層レベル2の項目ユーロ圏 152,839 155,590 65.7 1.8 93,084 92,533 43.2 △ 0.6
階層レベル3の項目ドイツ 75,416 77,532 32.8 2.8 44,539 44,550 20.8 0.0
階層レベル3の項目スロバキア 19,326 18,492 7.8 △ 4.3 9,379 9,812 4.6 4.6
階層レベル3の項目フランス 10,715 11,429 4.8 6.7 6,173 6,279 2.9 1.7
階層レベル3の項目オーストリア 10,224 9,837 4.2 △ 3.8 6,024 5,557 2.6 △ 7.8
階層レベル3の項目イタリア 9,382 9,640 4.1 2.7 8,633 8,473 4.0 △ 1.9
階層レベル3の項目オランダ 8,315 8,305 3.5 △ 0.1 6,196 5,562 2.6 △ 10.2
階層レベル2の項目非ユーロ圏 34,922 37,103 15.7 6.2 29,950 30,189 14.1 0.8
階層レベル3の項目ポーランド 16,291 17,339 7.3 6.4 18,049 17,239 8.1 △ 4.5
階層レベル3の項目ハンガリー 7,842 8,507 3.6 8.5 5,148 5,653 2.6 9.8
階層レベル3の項目ルーマニア 3,587 3,854 1.6 7.4 2,664 2,972 1.4 11.6
階層レベル3の項目スウェーデン 3,757 3,793 1.6 1.0 1,710 1,794 0.8 4.9
英国 8,196 8,903 3.8 8.6 3,489 3,717 1.7 6.5
ロシア 1,450 676 0.3 △ 53.4 10,830 3,144 1.5 △ 71.0
アジア大洋州 7,947 7,673 3.2 △ 3.4 62,087 56,633 26.5 △ 8.8
階層レベル2の項目中国 2,595 2,430 1.0 △ 6.3 42,335 36,669 17.1 △ 13.4
階層レベル2の項目インド 1,027 1,084 0.5 5.6 1,999 2,320 1.1 16.1
階層レベル2の項目日本 1,208 1,007 0.4 △ 16.7 3,783 3,897 1.8 3.0
階層レベル2の項目オーストラリア 603 558 0.2 △ 7.4 278 118 0.1 △ 57.5
階層レベル2の項目韓国 526 517 0.2 △ 1.7 4,286 4,371 2.0 2.0
階層レベル2の項目ベトナム 103 122 0.1 18.3 2,170 2,565 1.2 18.2
階層レベル2の項目ASEAN 1,142 1,280 0.5 12.1 7,717 7,647 3.6 △ 0.9
中東 5,653 6,268 2.6 10.9 3,503 3,585 1.7 2.3
階層レベル2の項目トルコ 2,547 3,347 1.4 31.4 2,606 2,760 1.3 5.9
米国 5,847 5,585 2.4 △ 4.5 5,872 6,048 2.8 3.0
アフリカ 2,072 2,303 1.0 11.1 2,108 1,863 0.9 △ 11.6
メキシコ 874 1,133 0.5 29.6 1,034 1,025 0.5 △ 0.9
ブラジル 412 403 0.2 △ 2.1 265 294 0.1 11.1
合計(その他含む) 230,254 236,693 100.0 2.8 225,197 213,950 100.0 △ 5.0

〔注〕アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕チェコ統計局(CZSO)

対内・対外直接投資動向 
対内直接投資は減少するも、対外直接投資は増大

中銀によると、2023年の対内直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年比18.1%減の71億9,900万ユーロだった。業種別にみると、全体の58.9%を占める サービス業が19.9%減少し、42億3,900万ユーロにとどまった。特に金融・保険が92.2%減と大幅に落ち込んだほか、小売・卸売、自動車修理が11.3%減となった。一方、情報・通信は2.4倍に増加し、専門・科学・技術も21.0%増と堅調な伸びを示した。情報・通信部門の投資案件としては、英国の通信大手、コーディアント・デジタル・インフラストラクチャー(Cordiant Digital Infrastructure) のチェコ子会社チェコ・ラジオコミュニカツェ(Ceske Radiokomunikace) が2023年6月に発表した、データセンターの増設(2024年4月開設)などが挙げられる(投資額は非公表)。また製造業への投資は13億5,100万ユーロで、59.6%減と大幅に縮小した。うち最大の自動車向けは53.3%減の5億4,200万ユーロにとどまった。電気・ガス等供給向けの投資額は、前年の引揚超過から13億8,500万ユーロに増加した。

対内直接投資を国・地域別にみると、全体の88.5%を占めるEUからの投資は63億7,200万ユーロで、前年から2.8%減少した。最大の投資元はドイツで、投資額は約2.8倍の19億7,000万ユーロに達した。同国からの投資案件としては、設備設計請負サービスを展開するエキサイト (Exyte) が2023年3月に発表した、チェコ北部2カ所での半導体部品生産拠点の設立(投資額2,000万ユーロ超)や、物流大手ダクサ(DACHSER) が同年6月に発表した、中部クラドノ のロジスティックス・センター拡張(投資額1,260万ユーロ)、自動車・航空機産業向けの断熱部品のメーカー、イゾライト(ISOLITE) が同年11月に発表した北部クラーシュテレツ・ナド・オフジーの生産拠点設立(投資額非公開)などがある。またドイツに次ぐ投資元であるルクセンブルクに関しては、米国の投資グループ、カーライル(Carlyle) のルクセンブルク法人CEP Vインベストメント(CEP V Investment ) によるチェコの大手光学機器メーカー、メオプタ(Meopta)の買収案件が挙げられる(投資額非公開)。

2023年の対外直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は65億2,100万ユーロで、前年の53億9,600万ユーロから20.8%増となった。業種別にみると、小売・卸売、 自動車修理が前年から約3.9倍の20億5,200万ユーロに増加した。金融・保険は27億1,600万ユーロで19.2%減少した。同部門では、保険会社レノミア (RENOMIA)が2023年4月にブルガリアの再生可能エネルギー源専門保険会社、リニューアブル・エネジー・インシュアランス・ブローカー(REIB) の過半数株式を取得したほか、同年11月にはオーストリアの同業シュタインマイル&Co ( Steinmayr & Co)の株式を取得した(両案件とも投資額非公開)。不動産は8億200万ユーロと、前年から2.2%増加した。不動産CTPインベスト(CTP Invest) が2023年3月にポーランド北部グダンスクで7,200万ユーロを投じて物流パークの建設に着工すると発表したほか、アラコデ・グループ(Acolade Group) は同年7月、9月にそれぞれオランダとポーランドにビジネスパーク、工業団地を建設すると発表した。

表4 チェコの業種別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:百万ユーロ、%)(△はマイナス値)
業種 対内直接投資 対外直接投資
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 伸び率 金額 金額 伸び率
サービス業 5,293 4,239 △ 19.9 4,124 5,859 42.1
階層レベル2の項目専門・科学・技術 1,107 1,340 21.0 △ 243 539
階層レベル2の項目小売・卸売、自動車修理 1,455 1,290 △ 11.3 532 2,052 286.0
階層レベル2の項目情報・通信 388 932 140.3 △ 313 △ 116
階層レベル2の項目金融・保険 8,276 649 △ 92.2 3,360 2,716 △ 19.2
階層レベル2の項目管理・支援 △ 2,725 195 16 28 78.8
階層レベル2の項目不動産 △ 3,393 △ 57 785 802 2.2
製造業 3,348 1,351 △ 59.6 357 735 106.2
階層レベル2の項目自動車 1,160 542 △ 53.3 △ 220 △ 244
階層レベル2の項目石油、化学、医薬品、ゴム、プラスチック製品 671 410 △ 38.9 192 39 △ 79.6
階層レベル2の項目コンピューター、電子・光学製品 380 252 △ 33.7 n.a. 1
階層レベル2の項目卑金属、金属製品 630 217 △ 65.6 30 0
階層レベル2の項目木材、製紙、印刷 194 72 △ 63.2 △ 6 27
階層レベル2の項目自動車以外の輸送用機器 16 6 △ 62.7 6 829 12,850.0
電気・ガス等供給 △ 1,047 1,385 574 △ 84
建設 725 245 △ 66.1 309 10 △ 96.9
上下水道、廃棄物管理 49 116 137.6 1 △ 1
農林水産業 △ 19 10 3 1 △ 63.0
鉱業 △ 104 △ 30 13 1 △ 96.2
合計(その他含む) 8,794 7,199 △ 18.1 5,396 6,521 20.8

〔注〕2023年は暫定値。
〔出所〕チェコ国立銀行

表5 チェコの国・地域別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:百万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 伸び率 金額 金額 伸び率
EU 6,556 6,372 △ 2.8 5,411 5,770 6.6
階層レベル2の項目ユーロ圏 3,912 6,532 67.0 5,065 5,732 13.2
階層レベル3の項目ドイツ 715 1,970 175.6 494 △ 59
階層レベル3の項目ルクセンブルク 524 1,458 178.2 2,706 1,838 △ 32.1
階層レベル3の項目オランダ △ 198 1,287 160 641 299.9
階層レベル3の項目スロバキア 431 620 44.1 386 393 1.6
階層レベル3の項目オーストリア 1,686 545 △ 67.7 △ 4 1,242
階層レベル3の項目キプロス 133 403 202.0 463 281 △ 39.3
階層レベル3の項目フランス △ 547 244 156 280 80.0
階層レベル3の項目フィンランド 4 72 1,738.5 25 899 3,453.0
階層レベル2の項目非ユーロ圏 2,644 △ 159 325 38 88.2
階層レベル3の項目ポーランド 1,403 239 △ 83.0 336 17 △ 95.0
階層レベル3の項目ハンガリー 540 124 △ 77.0 △ 8 △ 72
英国 499 287 △ 42.5 △ 1,449 △ 258
スイス 881 499 △ 43.3 767 658 △ 14.2
ウクライナ △ 29 23 8 5 △ 32.9
ロシア △ 175 △ 15 △ 84 △ 132
韓国 578 70 △ 87.8 n.a. 0
ベトナム 0 45 0 291
米国 234 19 △ 91.9 25 25 △ 2.8
香港 △ 7 23 15 4 △ 75.3
インド △ 20 △ 3 △ 186 △ 82
台湾 215 △ 6 n.a. n.a.
中南米 △ 57 △ 20 △ 18 24
階層レベル2の項目ブラジル 0 △ 15 △ 11 10
階層レベル2の項目メキシコ △ 17 △ 4 8 10 17.3
アフリカ △ 68 △ 36 △ 110 11
中国 63 △ 65 △ 35 △ 90
日本 △ 82 △ 144 △ 11 30
合計(その他含む) 8,794 7,199 △ 18.1 5,396 6,521 20.8

〔注〕2023年は暫定値。
〔出所〕チェコ国立銀行

対外直接投資を国・地域別にみると、EU域内への投資は前年比6.6%増の57億7,000万ユーロだった。最大の投資先は前年同様ルクセンブルクで、投資額は18億3,800万ユーロとなった。同国に関連した案件としては、2023年12月に完了した、国営送電事業者CEPSによる、ガス輸送システム管理事業者ネット4ガス・ホールディングス(NET4GAS Holdings)の買収がある。ネット4ガス・ホールディングスはチェコ国内のパイプラインを利用したガス輸送権を保有しており、その株主はルクセンブルグ法人のアリアンツ・インフラストラクチャー(Allianz Infrastructure)とオランダ法人のボレアリス・ノブス・パレント(Borealis Novus Parent)だった。またオーストリアへの投資が前年の引揚超過から12億4,200万ユーロに急増し、同国を2位の投資先に押し上げた。同国への案件としては、農産物・食品・化学最大手のアグロフェルト(Agrofert)が、2023年7月に、プラスチック樹脂製造大手ボレアリス(Borealis)の窒素加工部門(肥料、メラミン、工業用窒素製品の生産を含む)の買収完了を発表した。買収額は8億1,000万ユーロだった。投資先3位はフィンランドで、前年の2,500万ユーロから8億9,900万ユーロに拡大した。同国では2023年6月にペットフード製造大手のバフォ・グループ(VAFO Group)が1,600万ユーロ超を投じて、南部のノキア市内に生産施設を開設した。欧州域外では、ベトナムへの投資が前年の10万ユーロから2億9,100万ユーロと大幅に増加した。同国では、2023年11月に、エネルギー部門投資会社セブ・エン・グローバル・インベストメンツ(Sev.en Global Investments)が、ベトナム北部のモンドン2火力発電所の過半数を米国のAESコーポレーション( AES Corporation)から取得することで合意したと発表した(買収額は非公開)。

表6‐1 チェコの主な対内直接投資案件(2023年)[M&A以外]
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
高性能ポリマー製品 ゼムペリート(Semperit) オーストリア 2023年6月 1億1,000万ユーロ 既存のチェコ東部・オドリ工場で、世界初の二酸化炭素(CO2)ニュートラルなホース生産工場の建設を開始したと発表した。2025年に新工場を稼働し、2028年までに生産能力を約20%拡大する。
軸受
(ベアリング)
大同メタル工業 日本 2023年5月 60億円 大同メタルチェコ(ブルノ市)敷地内に、欧州向け洋上風力発電機用主軸受の生産工場建設を2023年4月に着工したことを発表。2025年に生産開始予定。数百基の発電機用軸受の生産能力を確保し、将来的な需要拡大にも対応していく。
EPC(設備設計請負)サービス エキサイト(Exyte) ドイツ 2023年3月 2,000万ユーロ ハイテク施設の設備設計請負における世界的リーダーであるエキサイトは、チェコ北部クルプカの既存生産拠点に加え、ホストミツェ工業団地の新工場で半導体クリーンルーム環境向け製品の生産を開始し、さらにジャテッツのトライアングル工業団地に半導体業界向け製品を生産する工場を追加で設立することを発表した。2つの新工場で200名を新規雇用予定。
倉庫・物流 ダクサ(DACHSER) ドイツ 2023年6月 1,260万ユーロ チェコ中部・クラドノ市にある既存のロジスティックス・センターを拡張し、先進的な方法で欧州に大量輸送することを目指すと発表。2024年末完成予定。
印刷 凸版印刷 日本 2023年3月 非公開 欧州市場からの環境配慮型パッケージの需要に対応するための生産力強化に向け、チェコ北部・モストに透明バリアフィルムの生産拠点を設立することを発表。2024年末に稼働開始予定。
断熱部品 イゾライト(ISOLITE) ドイツ 2023年11月 非公開 自動車・航空機産業用途の断熱部品を製造するイゾライトは、2023年11月にチェコ北部のクラーシュテレツ・ナド・オフジーに、持続可能性と環境に配慮した最先端の設備を持つ生産拠点を開設したことを発表。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成。

表6‐2 チェコの主な対内直接投資案件(2023年)[M&A]
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
AI、サイバーセキュリティ レジスタント AI(Resistant AI) ノーション・キャピタル(Notion Capital) 英国 2023年6月 1,100万ドル 急速に進化する自動化された AI 駆動型攻撃への取り組みに対するフィンテックや金融機関からの高まる需要に応えるため、英国のノーション・キャピタルより資金を調達したと発表。
データ、通信用ケーブル ベル・スチュワート(Bel-Stewart) PEI-
ジェネシス(PEI-Genesis )
米国 2023年6月 非公表 コネクター、ケーブルの組立、ソリューション提供大手・PEI-ジェネシスが、米国の「ベル・フューズ(Bel Fuse)」のチェコ子会社「ベル・スチュワート」の買収を完了したと発表。データおよび通信相互接続技術の分野における最先端の技術を持つ同社の買収により、より幅広い顧客のニーズへの対応を目指す。
光学機器 メオプタ(Meopta) カーライル(Carlyle) 米国 2023年11月 非公表 米国の投資グループ、カーライルは、CEP(Carlyle Europe Partners )とCETP(Carlyle Europe Technology Partners)が、チェコの大手光学機器メーカー、メオプタ を買収することに合意したと2023年5月に発表し、同年11月に買収を完了。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成。

表7‐1 チェコの主な対外直接投資案件(2023年)[M&A以外]
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
不動産 CTPインベスト(CTP Invest) ポーランド 2023年3月 7,200万ユーロ ポーランド北部グダンスクで物流パークの建設に着工すると発表した。新物流パークは、バルト海地域で唯一の深水ターミナルであるバルティック ハブに近く、広範な鉄道路線もあり、北欧やバルト諸国とのビジネスを行う企業にとって好立地な場所に建設予定。
不動産 アコラデ・グループ(Acolade Group) オランダ 2023年7月 約5,500万ユーロ アコラデは5番目の海外進出先として、オランダに初のビジネスパークをを建設したと発表。2つの建物にオフィス、物流施設等を備え、投資額は建屋のみ(内部の設備を除く)で5,500万ユーロ。
不動産 アコラデ・グループ(Acolade Group) ポーランド 2023年9月 5,500万ユーロ ポーランド南西部のアッパーシレジアに工業パークを建設中と発表した。ドイツやチェコへのアクセスが良く、道路インフラも整備されているアッパーシレジアはワルシャワに次いで大きな倉庫市場。
ペットフード バフォ・グループ(VAFO Group) フィンランド 2023年6月 1,600万ユーロ 欧州の高級ペットフード製造大手であるバフォ・グループは、フィンランド初の工場を南部のノキアに開設したと発表。年間2万トンのペットフードを生産能力を有し、同種の工場としてはフィンランド最大規模となる。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成。

表7‐2 チェコの主な対外直接投資案件(2023年)[M&A]
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
アグロフェルト(Agrofert) プラスチック樹脂製造 ボレアリス(Borealis) オーストリア 2023年7月 8億1,000万ユーロ 農業含む多岐にわたる事業を手掛けるアグロフェルトは、オーストリア、ドイツ、フランスに生産工場を有するボレアリスの窒素加工部門(肥料、メラミン、工業用窒素製品の生産を含む)の買収完了を発表した。アグロフェルトの欧州全土の顧客へのサービスの拡充と新規市場参入を目指す。
チェコ・メディア・インベスト(Czech Media Invest:CMI) 出版 エディティス(Editis) フランス 2023年11月 6億5,300万ユーロ エディティスの親会社であるメディア大手のヴィヴァンディ(Vivendi)は、エディティスについて、CMIグループ傘下のインターナショナル・メディア・インベスト(International Media Invest:IMI)への売却が完了したと発表。
ZDRインベストメンツ(ZDR Investments) 不動産 ガレリア・バカル(Galeria Bakar) クロアチア 2023年9月 4,000万ユーロ超 投資会社ZDRインベストメンツは、クロアチア・リエカ市内最大のショッピング・センター「ガレリヤ・バカル」を買収したと発表した。
インベン・キャピタル(Inven Capita) ソフトウエア エリク(Eliq) スウェーデン 2023年11月 1,000万ユーロ チェコ電力の子会社インベン・キャピタルは、他の投資企業とともにすでに資本参加しているエリクへの増資に参加した。この投資によりエリクの家庭用エネルギー効率プラットフォームを欧州全土に拡大することが目的。
CEPS(Česká energetická přenosová soustava) ガス輸送システム管理 ネット4ガス・ホールディングス(NET4GAS Holdings) チェコ(ルクセンブルク、オランダ) 2023年12月 非公表 国営送電事業者CEPSは、チェコ国内のパイプラインを利用したガス輸送権を持つネット4ガスについて、その株主であるルクセンブルク法人のアリアンツ・インフラストラクチャー(Allianz Infrastructure)とオランダ法人のボレアリス・ノブス・パレント(Borealis Novus Parent)からの買収を完了したと発表。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成。

対日関係 
対日貿易赤字額は過去最高を記録

2023年の対日輸出は前年比16.7%減の10億700万ユーロ、輸入は3.0%増の38億9,700万ユーロで、貿易赤字額は12.3%増の28億9,000万ユーロに拡大し、前年に続いて過去最高額を更新した。日本は中国、韓国に次ぐ第3の貿易赤字相手国となっている。

対日輸出を品目別にみると、最大の輸出品目である機械類・輸送用機器(構成比37.3%)が前年比15.9%増と堅調な伸びを示した。電気機器(9.8%)が2.4倍に増え、事務機器(8.6%)が10.6%増加したことが、通信・録音機器(6.8%)の19.4%減を補い、牽引する形となった。一方、金のくず(32.0%)が38.1%減と大幅に減少し全体を押し下げた。なお、ビールの原料であるホップ(1.1%)は12.7%減少したが、前年に続き中国に次ぐ第2の輸出相手国となった。

表8-1 チェコの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:百万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
機械類・輸送用機器 324 376 37.3 15.9
階層レベル2の項目電気機器 41 98 9.8 137.7
階層レベル2の項目事務機器 79 87 8.6 10.6
階層レベル2の項目一般産業機械・設備 72 78 7.8 9.3
階層レベル2の項目通信・録音機器 85 68 6.8 △ 19.4
他に分類されない品目 521 323 32.1 △ 38.1
階層レベル2の項目金のくず(金を使った金属のくずを含む)(SITC5) 521 323 32.0 △ 38.1
雑製品 124 129 12.8 3.9
階層レベル2の項目専門、科学、検査器具 78 72 7.1 △ 7.9
化学製品 72 66 6.5 △ 8.7
食料品・生きた動物 51 55 5.5 7.5
階層レベル2の項目動物用飼料 29 26 2.6 △ 7.9
階層レベル2の項目穀物 7 16 1.5 119.3
階層レベル2の項目ホップ(SITC5) 12 11 1.1 △ 12.7
原料別製品 59 31 3.1 △ 47.0
階層レベル2の項目ゴム製品 10 10 1.0 △ 2.0
食料に適さない原料 51 26 2.6 △ 48.7
飲料・タバコ 5 1 0.1 △ 79.5
合計(その他含む) 1208 1,007 100.0 △ 16.7

〔出所〕チェコ統計局 (CZSO)

表8-2 チェコの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:百万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
機械類・輸送用機器 2,461 2,717 69.7 10.4
階層レベル2の項目道路走行車 492 818 21.0 66.4
階層レベル2の項目電気機器 822 712 18.3 △ 13.4
階層レベル2の項目発電機器 306 301 7.7 △ 1.6
階層レベル2の項目一般産業機械・設備 286 294 7.5 2.6
階層レベル2の項目事務機器 272 276 7.1 1.4
階層レベル2の項目特定産業に特化した機械 142 177 4.5 25.0
雑製品 522 558 14.3 6.9
階層レベル2の項目専門、科学、検査器具 236 271 7.0 14.9
化学製品 486 315 8.1 △ 35.2
階層レベル2の項目化学物質、製品 179 110 2.8 △ 38.9
階層レベル2の項目担体付き触媒 貴金属またはその化合物を使用したもの(SITC5) 140 71 1.8 △ 48.9
原料別製品 288 278 7.1 △ 3.6
階層レベル2の項目金属製品 102 98 2.5 △ 3.4
食料に適さない原料 12 15 0.4 24.5
階層レベル2の項目生ゴム(合成ゴム及び再生ゴムを含む) 11 14 0.4 35.2
鉱物性燃料 6 7 0.2 17.0
食料品・生きた動物 4 5 0.1 9.9
合計(その他含む) 3,783 3,897 100.0 3.0

〔出所〕チェコ統計局(CZSO)

対日輸入を品目別にみると、全体の69.7%を占める機械類・輸送用機器が前年から10.4%増加した。最大輸入品目である道路走行車が前年比66.4%増と大幅に増大したが、これは乗用車(構成比15.7%)が約2.5倍に増えたことによる。一方電気機器(18.3%)は、内燃機関用電気機器(2.6%)の31.3%減、バッテリーと蓄電池(1.8%)の23.5%減などを受けて、13.4%減少した。また、化学製品(8.1%)が35.2%減となり、全体の伸び率を押し下げた。

2023年の日本からチェコへの投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は1億4,400万ユーロの引き揚げ超過だった。日本企業の個別案件をみると、同年3月に凸版印刷が透明バリアフィルムの生産拠点を設立し、2024年末から稼働すると発表した(投資額は非公表)。環境先進地域である欧州で、リサイクル性能に優れたパッケージの供給能力を高めることを目的としている。また2023年5月には大同メタル工業が60億円を投じて、主に自動車向けの軸受を生産している既存製造拠点の敷地内に、欧州向け洋上風力発電機用主軸受の生産拠点の建設を開始したと発表した。2025年に生産開始を目指すとしている。さらにAGCグループのAGCオートモーティブ・チェコ(AGC Automotive Czech)は2023年9月、2,500万コルナ超を投じたアフターマーケット向け自動車用ガラスの生産自動化を完了したと発表した。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2021年 2022年 2023年
実質GDP成長率 (%) 3.6 2.4 △ 0.2
1人当たりGDP 米ドル 26,795 26,836 30,600
消費者物価上昇率 (%) 3.8 15.1 10.7
失業率 (%) 3.8 3.4 3.6
貿易収支 (100万ユーロ) 2,616 △ 922 12,102
経常収支 (100万ユーロ) △ 6,639 △ 13,557 1,205
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 172,999 139,284 146,345
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 205,850 198,673 206,570
為替レート (1米ドルにつきチェコ・コルナ、期中平均) 22 23 22


1人当たりGDP:2023年のみ推定値
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
経常収支:国際収支ベース
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:チェコ統計局(CZSO)
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):チェコ国立銀行
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF