特集:妥結した日EU・EPAの活用に向けてTPP協定と比較した場合の日EU・EPAの特徴

2018年2月14日

本稿では、日EU・EPA(以下、日EU)と TPP協定(以下、TPP、注1)の二つの協定の協定文(2016年2月合意のTPP協定と、欧州委員会が公表した2017年12月時点の日EU・EPA協定文案。以下、両協定)を分野別に概観し、それぞれの特徴を大まかに捉えてみたい。TPPは米国型自由貿易協定(FTA)をモデルとしながら(注2)も、途上国を含む多様な12カ国への配慮や、将来のアジア太平洋経済協力(APEC)諸国などへの拡大を見据えた内容も見られる。日EUは先進国・地域間の協定であり、これまでのFTAに見られない高度なルールを含む。日本は両協定の当事国として、ある意味で、現時点での国際貿易ルールの共通項、最大公約数を導き出す役割を果たしたとも言える。

章立てから見た特徴

まず両協定の章立てを比較すると、いずれも通商協定として包括的な内容をカバーしている。細部では、まずTPPでは金融サービス、電気通信サービス、ビジネスパーソンの一時的入国といったサービス分野の個別論点が協定上それぞれ単独の章を構成している。これは北米自由貿易協定(NAFTA、1994年発効)以来の米国FTAの特徴である。また、繊維分野もTPPでは他の物品分野から独立した章であり、特別な原産地規則などが規定されている。FTAでは一般に、当事国間で関心が高いテーマが「章」の位置付けになることがしばしばある。例えばEUシンガポールFTA(2014年交渉終了、未署名)の協定案では「再生可能エネルギー」章を設けているほか、日本インドネシアEPA(2008年発効)では「エネルギー・鉱物資源」章がある。「繊維・繊維製品」章は米豪FTA(2005年発効)や米韓FTA(2012年発効)にも見られる米国FTAの特徴である。

日EUでは、「サービス貿易(自然人の移動を含む)・投資自由化・電子商取引」を合わせて一つの章になっている。電子商取引分野がサービス章の一部を構成するのはEUのFTAの特徴であり、世界貿易機関(WTO)や「新サービス貿易協定(TiSA)」などでの通商交渉で電子的手段を用いたコンテンツの移送を原則としてサービス取引と位置付けてきたEUの立場を反映している(注3)。TPPには見られない日EUに固有の章としては、「補助金」章と、「コーポレート・ガバナンス(企業統治)」章が挙げられる。補助金章は、EU韓国FTA(2011年暫定適用、2015年発効)と同様に、禁止される補助金の範囲をWTO補助金協定よりも広げて定義している。補助金の定義の見直しはWTOルール交渉でも議論には挙がるものの国際的な合意は見られていない論点である。FTA先進国・地域間のFTAならではの、国際ルールを先取りした協定内容と言える。「コーポレート・ガバナンス」章は、コーポレート・ガバナンスの重要性を確認した上で、適切な情報開示の確保や、取締役会の透明性(適切な数の社外取締役の選任)などについて規定している。世界的にもFTAの章としては類を見ない先進的な規定と評価できる。

物品貿易のルール

物品貿易に関する規定(物品市場アクセス、原産地規則、貿易円滑化、貿易救済の各章)について、全般的には、他のルール領域に比べると、共通した原則が多いことが指摘できる。内国民待遇原則や、現在の実行関税水準以上には関税を引き上げない現状維持ルールといった輸入品への扱いはもちろんのこと、輸出税の禁止といった輸出制限措置に対する規律も両協定に含まれる。原産地規則でも、品目別規則は当然異なるものの、原産性を確認する基準の基本的な構造は共通している(本特集「原産地規則の概要」参照)。原産地証明制度ではいずれも自己申告(自己証明)制度を唯一の制度に採用している。自己証明制度は第三者機関による証明書の発給にかかる時間やコストを低減でき、世界的に導入が拡大する傾向にある。FTAの物品貿易ルールが、利用企業の立場からある程度成熟して共通化してきた面の現れとも言えるだろう。

各協定に固有の条項としてはまず、TPPの物品市場アクセス章では「農業」に関する節を設けている。特徴的なルールとしては例えば、「現代のバイオテクノロジーによる生産品の貿易」(2.27条)があり、遺伝子組み換え作物の安全性評価や、同作物の混入にかかる規制などの透明性を高めることを目的としている。これに対して、日EUではワインに関する単独の節があり、双方の流通・販売拡大を目的にした規制の撤廃や手続きを規定している。その他、両協定には自動車貿易に関する付属書を含み、規制協力などを規定するが、TPPにおける自動車付録は、日本と米国およびカナダ間に適用される。従ってTPP11下では日本とカナダの間のみに適用される。日EUは、国連欧州経済委員会(UNECE)の規則に基づく自動車の安全認定基準などにおいて、従来から基準の調和と相互承認を進めてきた共通基盤があり、附属書はその取り組みを強化する内容となっている。

税関協力および貿易円滑化の分野も、電子的手段を活用した通関の簡素化など、利用企業の観点から基本的な構造は類似している。内容の多くは、既にWTOの貿易円滑化協定に取り込まれているが、TPPでは、物品の引き取り許可(原則48時間以内)、とりわけ急送貨物の引き取り許可(原則6時間以内)と、通関手続きにかかる時間の上限を設定し義務化した点に特徴がある。日EUでは、物品の原産地にかかわらず、展示会などで一時的に輸入する産品の通関を簡略化する「ATAカルネ」の利用を認めることを明文化している。

貿易救済(アンチダンピング、補助金相殺措置、セーフガード)に関するルールでは、セーフガードの発動要件が多少異なる。TPPでは、協定の影響による輸入の急増に対する経過的セーフガードの適用期間を、協定発効後3年間または当該産品の関税撤廃が段階的に行われている期間中のみと、厳しく制限している。日EUでは当該品目の関税撤廃が完了してから10年間、経過的セーフガードを発動することができる。

物品以外の市場アクセスルール

次に物品以外の市場アクセス分野(サービス、投資、政府調達)について比較する。まずサービスでは、EUでもTPPと同様に、限定列挙した非適合措置(例外的に自由化から除外する措置)以外は原則として自由化する「ネガティブ・リスト」方式を採用した。EUはカナダとのFTAでも同方式を採用している。ネガティブ・リスト方式は世界的に見ても、中国が韓国とのFTA(2015年発効)の追加交渉で同方式の採用を認めるなど、FTAにおける踏み込んだサービス自由化方式として定着しつつある。

サービス分野別にみると詳細な規定を置く分野が異なり、それぞれ当事国間の関心分野に差異があることが読み取れる。TPPでは、まずサービス章の協定本文中に航空関連サービスに関する規定を置き、定義、適用範囲、将来の航空サービス自由化に向けた検討などが細かく規定されている。また、自由職業サービスおよび急送便サービスの2分野では、別途附属書が置かれ、このうち自由職業サービス附属書ではエンジニアや弁護士などの登録の円滑化などを規定する。日EUでは、サービス関連章本文の「規制枠組み」のセクションで、郵便・クーリエサービス、電気通信サービス、金融サービス、国際海上運送サービスについてサブセクションを設けて、それぞれ双方のアクセスを改善する諸規定を置いている。日EUの特徴としては、国際海上運送サービスについて、港湾における各種サービス提供における無差別待遇など、手厚く規定する点が挙げられる。また金融サービスでは、附属書で金融規制協力について規定している点もTPPにはない要素である。両金融当局で構成される金融規制協力の日EU合同枠組みの設置が目玉となっている。金融規制協力は金融システムの安定性確保などの観点からEUが近年通商交渉で重視するテーマの一つである。

投資ルールでは、TPPは、米国が2012年に公表したモデル投資協定をベースにした投資保護ルールと紛争解決制度を設定している。TPPでは投資家対国家の紛争解決手続きとして、紛争ごとに仲裁人を選定しアドホック(臨時)の仲裁廷を設置する投資仲裁制度を柱に据えている。これに対し、EUは近年のFTA(EUベトナム(2015年交渉終了、未署名)、EUカナダ)では固定化した仲裁人を擁する常設仲裁廷(二審制)の設置を規定している。さらにEU(欧州委員会)は、将来的には常設仲裁廷をFTAごとに設置するのではなく、多国間での国際投資裁判所へと拡張する構想を提唱している。日EUでは、投資紛争解決と投資保護ルールが別途、継続協議となっている。

政府調達では、両協定の条文構成は大きく異なる。TPPは加盟国の過半がWTO政府調達協定(GPA)に加盟していないため、TPP政府調達ルールの大きな目的は非GPA加盟TPPメンバーに、GPAに準拠した公共調達ルールに合意してもらうことと言って差し支えない。TPPの政府調達章における調達参加条件などの条文構成および入札手続きの規定は、WTO政府調達協定に非常に近似している。これに対し、日本とEUは共にGPAの加盟国であり、日EUでは、まずGPA上の義務が日EUの紛争解決手続きの対象となることを確認した上で、GPAにプラスして合意した入札上の諸条件を列挙する形をとっている。「GPAプラス」の規定としては、例えば入札条件に技術的仕様が含まれる場合に、その仕様基準への適合性を判断する試験結果について、双方による適合性評価結果の相互承認を認めるなど、高度な内容を含んでいる。

国際ビジネスに影響を与える諸ルール

その他のルール分野の代表例として、貿易の技術的障害(TBT)、および知的財産権の特徴について概観する。TBT分野では、TPPは各国で新規強制規格の導入や、既存規格の改正が行われる場合に、利害関係者に十分な情報提供が行われることや、意見表明のための適切な機会を与えられることなど、透明性の強化を重要視している。TPP・TBT章の透明性条項(8.7条)は19項に及ぶ詳細な規定である。ワインおよび蒸留酒、情報通信技術産品、医薬品、化粧品、医療機器、包装された食品・同添加物、有機産品の7分野で個別の附属書を設けている点も特徴であり、その中においても規制の導入手続きの透明性強化に関する規定が目立つ。日EUのTBT章は、国際規格に関して特徴的な規定を持つ。具体的には、国際規格を策定する具体的な標準化機関名を列挙していることや、国際規格の数が膨れ上がる中、国際規格間の重複回避を奨励していることなどが挙げられる(注4)。これらは、標準化分野の調和という目的を共有する日EU間ならではの踏み込んだ内容だと評価できる。TBT分野では、WTO・TBT協定との関係においてもTPPと日EUは違いが見られる。TPP・TBT章では例えばカバーする規格が、中央政府機関が策定する規格に限定されており、WTO・TBT協定が対象とする地方政府機関や非政府機関の規格は含まれない。また、TPPでは同協定の組み込みは選択的である(注5)のに対し、日EUでは、WTO・TBT協定の主要な規定を網羅的に協定の一部に組み込んでいる。

知的財産権では、著作権の保護期間を著作者の死後70年とする点など、TPP(著作権保護期間の規定はTPP11では凍結)、日EUに共通に見られる踏み込んだ内容も含まれる。TPPでは、医薬品分野やインターネット関連で特徴的な規定が見られる。医薬品分野では、医薬品承認審査に基づく特許の不合理な遅延に対する特許期間の調整や、医薬品・生物製剤データの保護など、インターネット関連ではインターネット・サービス・プロバイダーへの法的な救済および免責などが盛り込まれたが、これらはTPP11で凍結対象となっており、米国が導入を主張した項目とみられる。日EUでは、農産品や酒類の地理的表示について、リスト化した対象産品を相互に保護していくことを確認している(本特集「総論」参照)。

両協定のルール全般を概観してみると、TPPは透明性の強化という原則や、詳細な産業分野別の規定にみられるようにビジネス界の要望をベースにした実践的な内容に主眼を置いている印象がある。他方、日EUは例えば補助金の規律強化や、WTO・TBT協定では定義の存在しない、国際規格の定義の明確化を試みるなど、国際貿易ルールを先取りする先進的なテーマに取り組んでいる点に代表的な特徴があるように見受けられる。

最後に、両協定の特徴的内容を協定分野別にまとめた(表)。なお、同表では、主に他方の協定に対して、それぞれの協定に固有の論点や、詳細な内容が際立っている点を中心にまとめており、各協定の内容や特徴を網羅したものではない。

表:TPP協定および日EU・EPAの特徴的な協定内容の対比
分野 TPP 日EU
物品
  • 農業分野の独立した節を設け、食糧安全保障目的の輸出制限に関する要件や、バイオテクノロジーによる生産品の貿易の透明性などを規定。
  • 日米カナダ3カ国間でのみ、自動車の貿易に関する付録(強制規格の透明性など)を適用。
  • ワイン輸出の円滑化に関する独立した節を設ける。
  • 自動車に関する付属書で規制当局間の協力や基準の調和などを規定。
原産地規則
  • 繊維・繊維製品の原産地規則を独立した章として規定。
  • 自動車関連の純費用方式など独自の付加価値算出方式に特徴。
  • 原産地証明書は輸入者、輸出者または生産者が作成する自己証明制度。輸入者が自己証明書を作成するための条件は各国の法令に基づく。
  • 自動車・同部品の一部について実質的な第三国累積を適用。
  • 原産地証明は輸出者(生産者を含む)の作成する原産地申告書または輸入者の知識に基づく申告による自己証明制度。
貿易円滑化
  • 物品の引き取り許可、とりわけ急送貨物の引き取り許可に時間制限を設ける。
  • 一時輸入品はその原産地に関わらず、ATAカルネの利用を認める。
貿易救済
  • 経過的セーフガードは発効後3年または当該産品の関税撤廃期間のみ適用。発動は最長3年。
  • 附属書にアンチダンピング・相殺関税調査手続きの透明性を高める規定を置く。
  • 経過的セーフガードは当該品目の関税撤廃から10年。発動は最長4年。
  • アンチダンピング・相殺措置の最終決定を前に重要事実が開示されるべきことや、調査における公共の利益の考慮などを規定。
衛生植物検疫措置(SPS)
  • SPS措置が科学的な原則に基づいていることを確保するための輸入国の義務を具体的に規定。
  • 附属書に食品添加物の指定手続きにおける透明性、国際規格の考慮、情報交換などを規定。
貿易の技術的障害(TBT)
  • 適合性評価手続きにおいて、他国の評価機関に対し、自国の評価機関より不利でない待遇を与える。
  • WTO・TBT協定の組み込みは選択的。
  • ワイン/蒸留酒、情報通信技術産品、医薬品、化粧品、医療機器、包装された食品/食品添加物、有機産品に関するルールをそれぞれ附属書に規定。
  • WTO・TBT協定の主要規定を網羅的に組み込む。
  • 国際規格を策定する機関を具体的に例示。
  • 相互承認の手法として当事者による自己認証宣言の積極的な活用を推進。
サービス
  • 金融サービス、電気通信、ビジネスパーソンの移動について独立した章を置くほか、航空サービス、自由職業サービス、急送便サービス自由化に関して詳細に規定。
  • 郵便、電気通信、金融、国際海上運送の各サービスのほか、サービス・投資分野に影響を及ぼす国内規制の透明性、自然人の移動に関するサブセクションを規定。
投資
  • 主要な投資協定の実体規定を網羅するほか、「企業の社会的責任」の奨励を明記。「収用」概念については附属書で定義を明確化。
  • 紛争ごとの仲裁廷設置を中心とする投資家国家紛争解決制度を規定。
  • 投資における権利義務規定は内国民待遇、最恵国待遇、役員国籍基準の禁止などに限定。その他の投資保護ルールおよび紛争解決制度は継続協議。
政府調達
  • WTO政府調達協定に加盟していない国が過半を占めるため、同協定におおむね相当する規定を条文化。
  • 地方自治体による調達は協定の対象としない国が多い。
  • 双方ともWTO政府調達協定に加盟するため、調達における追加的義務のみを附属書に規定。
  • 日本はWTO政府調達協定における鉄道安全注釈(運転の安全に関する調達を対象から除外する規定)をEUに対して解除し、鉄道分野への参入を容認。
電子商取引
  • 「デジタル・プロダクト」を定義し、その無差別待遇を規定。
  • コンピューター関連設備の設置要求を禁止。
  • 情報の電子的手段による越境移転の許可を規定。
  • 電子商取引に影響を及ぼす国内規制が、合理的・客観的・公平に実施されることを確保。
  • 自由なデータ流通については協定発効後3年以内に再評価。
  • 個人のデータ保護については2018年の早期に(協定とは別の枠組みで)合意を図る。
知的財産
  • 医薬承認審査に基づく特許の不合理な短縮についての期間の調整、開示されていない医薬品試験データとその他のデータの保護など医薬品分野の詳細な規定が特徴だが、主な項目はTPP11で凍結。
  • インターネット・サービス・プロバイダーが提供するオンライン・サービスに関する適当な免責を確立し、または維持する規定も凍結された。
  • 地理的表示の保護について、双方の産品を明記したリスト(追加・修正可能)を設けるなど、詳細に規定。
  • 不正競争行為に対する効果的な保護、ウェブ上のドメイン名(.jpおよび.eu)の不正登録行為に対する救済について規定。
  • オンライン上の知的財産権保護についての詳細な規定は持たない。
労働・環境
  • 労働章では、労働者の権利と両立しない方法で貿易投資を奨励する措置を取ってはならない義務を規定。
  • 「企業の社会的責任」に関する活動を奨励する規定。
  • FTAとして初めて気候変動に関する「パリ協定」の義務に言及。
  • 貿易投資の持続可能な発展に対する影響を測る上では、国際規格のほか適切な場合、予防原則を考慮する。
競争・補助金
  • 競争法の執行における公正な手続きとして、競争当局と事業者間の合意による自主的な解決制度の導入を義務化。
  • 競争法が、民間・公的企業を問わず適用対象となることを確認。
  • 2年ごとにそれぞれが支出する特定性のある補助金の状況を報告することや、負の影響を及ぼす補助金について申し立てる諮問手続きを規定。
  • 財務上問題のある企業への補助金を禁止補助金として明記。
国有企業
  • 国有企業に対する非商業的な援助によって、他の締約国の利益に悪影響を及ぼさないことを規定。
  • 自国の国有企業の一覧を公開することや、他の締約国からの要請により、当該国有企業の収益や資産総額などの情報を速やかに提供することを規定(国有企業の透明性)。
  • OECDの国有企業のコーポレート・ガバナンス(企業統治)に関するガイドラインを含む、国際的な基準の活用を尊重し最大限利用することを規定(規制の枠組み)。
透明性
  • 透明性および腐敗行為の防止について独立した章として規定。締約国に、国際貿易・投資に影響を及ぼす、公務員などによる不当な利益の授受を犯罪とするために必要な措置をとることなどを義務付ける。
  • 透明性のある規制環境の提供や、協定の対象となる事項に関する法令などの公表などを規定する透明性の章を規定。
  • コーポレート・ガバナンスの重要性を確認し、適切な情報開示の確保や、取締役会の透明性(適切な数の社外取締役など)について規定する、コーポレート・ガバナンスに関する独立した章を規定。
注:
それぞれの協定に固有の特徴的な規定を例示したものであり、協定内容を網羅していない。
資料:
TPP協定文、日EU・EPAテキスト案(欧州委員会公表)、日EU・EPAに関するファクトシート(外務省)、「TPPコンメンタール」(『貿易と関税』)を基に作成。

注1:
2016年2月に署名された環太平洋パートナーシップ(TPP)協定。同協定のうち、米国の離脱表明後、2017年11月に11カ国で大筋合意した「包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)」では、20の凍結項目および大筋合意時点で継続協議とされた4項目を除き、TPP協定のほとんどの条文がそのまま組み込まれた。凍結項目に指定された内容に言及する場合は、本稿では「TPP11」と表記する。なお、CPTPPは、2017年11月時点では首脳レベルの合意発表に難色を示していたカナダのトルドー首相が2018年1月23日、交渉の妥結を表明した(1月25日付通商弘報参照)。
注2:
Allee, Todd and Andrew Lugg. "Who wrote the rules for the Trans-Pacific Partnership?" (Research & Politics, July-September 2016, pp.1-9)参照。
注3:
EUカナダFTA(CETA、2017年暫定適用開始)では、EUのFTAとしては初めて、電子商取引に関する単独の協定章を設け、かつ「電子商取引」を定義している。同協定によれば、電子商取引とは「(単独または他の情報通信技術を付随した)電気通信によって実施される商取引」となっている。日EU・EPAには電子商取引の定義は含まれていない。
注4:
詳細は、ジェトロセンサー「日EU・EPA交渉に見る標準化ルール」を参照。同原稿は、日EU交渉大筋合意時点(2017年7月欧州委員会公表テキスト案)の内容に基づくが、同12月の交渉妥結時点において、7月公表のTBT章テキストから変更はない。
注5:
詳細は、『ジェトロ世界貿易投資報告2017年版PDFファイル(3.5MB)』80-82ページ「WTO・FTAにおける規制・規格の扱い」を参照。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部国際経済課 課長代理
安田 啓(やすだ あきら)
2002年、ジェトロ入構。経済情報部、ジェトロ千葉、海外調査部、公益財団法人世界平和研究所出向を経て現職。共著『WTOハンドブック』、編著『FTAガイドブック2014』(ジェトロ)、共著『メガFTA時代の新通商戦略』(文眞堂)など。