オーストリアの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2023年の実質GDP成長率は2022年の高い伸びから一転、マイナス成長に転向。
  • 貿易赤字は大幅に縮小、16年ぶりの最小値を記録。
  • 対内直接投資は前年から半減、対外直接投資は24.2%増。
  • 対日貿易赤字は23年ぶりの最高値、乗用車の日本からの輸入は前年比約2.5倍。

公開日:2024年10月31日

マクロ経済 
実質GDPはマイナス成長、インフレ率も引き続き高水準

2023年のオーストリアの実質GDP成長率はマイナス0.8%だった。景気は2022年第3四半期から冷え込んだ。外需の縮小と同時にエネルギー価格が急騰し、高インフレは可処分所得を減らし、個人消費を抑制した。2023年第2四半期に実質GDP成長率が前年同期比1.7%減となり、第3四半期も2.0%減少した。製造業、商業(卸・小売り)、運輸業はそれぞれ2023年通年でマイナスだった。2024年第1四半期も1.1%減と景気後退が続いた。製造業の売り上げは2023年3月以降、毎月減少を続けている。

需要項目別でみると、民間最終消費支出は前年比0.2%減となった。高インフレにより、耐久消費財(5.5%減)は減少した。投資は建設投資(4.7%減)、設備投資(1.9%増)で、国内総固定資本形成は1.3%減となった。財貨・サービスの輸出入はそれぞれ、0.2%減、2.3%減となった。

物価上昇は2023年も大きな課題だった。2022年と異なり、主な原因はエネルギー価格ではなく、レストラン、宿泊、修理などの労働集約型のサービスだった。政府はインフレ対策のためにEU内でも有数の規模とみられる70億ユーロを支出した。高インフレ下のため賃金交渉が難航した結果オーストリアでは珍しくストライキが行われた業種もあり、賃上げ率は各業種で名目7~8%と例年より高かった。ただし、インフレ率が7.8%だったため実質賃金はほぼ停滞し、政府の支援策により平均0.8%上昇した。失業率は2023年4月から緩やかに上昇し、2023年の5.1%の後、2024年に5.2%に上がる見通しだ。

表1 オーストリアの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年 2024年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
実質GDP成長率 4.8 △ 0.8 2.2 △ 1.7 △ 2.0 △ 1.6 △ 1.1
階層レベル2の項目民間最終消費支出 5.7 △ 0.2 1.0 0.0 △ 1.1 △ 0.5 0.3
階層レベル2の項目政府最終消費支出 0.0 △ 0.1 △ 2.1 △ 0.2 3.1 △ 1.2 △ 0.4
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 0.1 △ 1.3 0.3 0.4 △ 2.7 △ 2.8 △ 4.1
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 11.2 △ 0.2 11.1 △ 0.9 △ 5.0 △ 5.4 △ 1.4
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 7.9 △ 2.3 0.0 △ 0.9 △ 3.9 △ 4.4 0.2

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
〔出所〕オーストリア経済研究所(WIFO)

貿易 
貿易赤字は大幅に減少

2023年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比3.0 %増の2,005億4,700万ユーロ、輸入は6.3%減の2,016億3,700万ユーロとなった。貿易収支は10億8,900万ユーロの赤字で、2022年の205億9,300万ユーロから大幅に縮小し、16年ぶりの最小値となった。

輸出を品目別にみると、構成比37.5%で最大シェアの機械・輸送機器が前年比8.2%増と好調であった。うちシェアの大きい道路輸送機器(9.4%)は7.3%増、電気・電子機器(7.3%)は6.1%増、産業用機械(6.5%)は11.8%増、一般機械(6.1%)は9.5%増、原動機(4.0%)は15.9%増とそれぞれ順調に伸びた一方、通信機器(1.2%)が6.5%減となった。原料別製品(19.6%)は鉄製品(5.3%)の4.6%減、金属製品(5.1%)の5.9%減、非鉄製品(2.7%)の9.3%減、紙パルプ(2.2%)の21.7%減などが影響し、8.3%減となった。化学品(17.2%)は、プラスチック製品(1.3%)の10.0%減、化学製品(1.3%)の19.0%減、プラスチック原料(1.2%)の20.8%減など減少した品目が多かったが、有機化学品(3.4%)の3倍増と医薬品(8.2%)の20.6%増により18.8%増となった。

輸出を国・地域別でみると、EU(構成比68.4%)は前年比2.6%増となった。最大の輸出相手国であるドイツ(29.2%)は0.8%と微増した。対ドイツ輸出の構成に大きな変化はなかったが、構成比が機械・輸送機器(38.2%)に次いで大きい原料別製品(21.8%)は8.1%減となり、そのうち紙パルプ(2.0%)の23.3%減、鉄製品(5.3%)の9.3%減と非鉄金属(4.1%)の12.9%減の輸出額はそれぞれ3億ユーロ以上減少した。続くイタリア(6.2%)も、機械・輸送機器(21.9%)が2.5%増となったが、原料(11.4%)の21.3%減、化学品(14.2%)の10.3%減、原料別製品(26.8%)の9.2%減などが寄与し、6.7%減となった。ユーロ圏内3位のフランス(3.6%)は化学品(15.4%)の32.1%減という大幅な減少により6.6%減となった一方、ベルギー(3.7%)とアイルランド(0.7%)は、医薬品の原料となる有機化学品の輸出増加により、それぞれ2.5倍、2.8倍と急増した。中・東欧のEU加盟11カ国は、主にスロベニア(2.1%)の14.6%減やハンガリー(3.6%)の6.0%減などにより1.9%減となった。

EU域外向け輸出(構成比31.6%)は前年比3.9%増の633億8,400万ユーロだった。最大の輸出先である米国(7.4%)は14.2%増になり、3年連続2桁で拡大した。対米輸出の51.6%を占める機械・輸送機器は17.4%増になり、うち道路輸送機器(12.7%)の35.6%増と産業用機械(11.2%)の24.8%増が特に拡大した。化学品(20.6%)も医薬品(16.9%)の2.4倍によりほぼ倍増した。アジア・大洋州 (7.2%)は3.4%減となった。同地域最大の輸出相手国である中国(2.5%)は主に道路輸送機器(10.6%)の29.0%減、金属製品(4.4%)の28.7%減や有機化学品(0.3%)の73.2%減などにより3.9%減となり、韓国も最大の輸出品目である道路輸送機器(26.6%)の39.9%減により17.5%減となった。

ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、対ロシア輸出(構成比0.6%)は前年比29.4%減と前年に続き減少した一方、対ウクライナ輸出(0.3%)は21.5%増になった。経済制裁のため、対ロシア輸出では機械・輸送機器(18.7%)は51.2%減、原料別製品(7.5%)は46.8%減、化学品(48.9%)は12.2%減など多くの品目がマイナスとなり、輸出額が5億ユーロ以上減少した。対ウクライナ輸出では、化学品(32.1%)の28.2%増、原料別製品(20.5%)の33.6%増、食料品(8.0%)の21.2%増などが増加に寄与した。

輸入を品目別にみると、エネルギー価格の大幅な下落による燃料・エネルギー(構成比9.1%)の減少が目立つ。同品目の輸入量は前年比4.2%で増加したにもかかわらず輸入額は32.7%減となった。特に天然ガス(2.5%)の輸入量は6.8%増、輸入額は45.3%減であった。その他、原料別製品(14.7%)と原料(3.6%)が15.4%減、18.9%減と、それぞれ減少した。一方、機械・輸送機器(34.5%)は5.6%増加した。

輸入を国・地域別にみると、EU(構成比64.6%)は前年比7.1%減となり、26カ国中20カ国からの輸入が減少した。最大輸入元のドイツ(31.7%)の7.5%減のほか、特に中・東欧加盟11か国(15.4%)からの輸入が、チェコ(4.1%)の15.2%減を筆頭に、9.9%減少した。EU域外は、輸入元2位の中国は13.1%減となり、化学品(6.4%)の30.9%減、原料別製品(9.2%)の23.9%減、機械・輸送機器(57.0%)の5.7%減、雑製品(25.8%)の18.3%減となり、輸入額はそれぞれ億ユーロ単位で減少した。ロシア(2.0%)は、経済制裁やエネルギー価格の下落により50.8%減と減少幅が最も大きかった。一方、米国(3.9%)は主に医薬品(38.1%)の23.9%増が寄与して9.1%増となった。

表2 オーストリアの主要品目別輸出入(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械・輸送機器 69,497 75,218 37.5 8.2 65,852 69,553 34.5 5.6
階層レベル2の項目道路輸送機器 17,604 18,893 9.4 7.3 17,760 20,944 10.4 17.9
階層レベル3の項目乗用車 7,538 8,317 4.1 10.3 8,559 10,441 5.2 22.0
階層レベル3の項目自動車部品 4,468 4,930 2.5 10.3 4,853 5,564 2.8 14.7
階層レベル2の項目電気・電子機器 13,799 14,641 7.3 6.1 15,318 15,590 7.7 1.8
階層レベル2の項目産業用機械 11,706 13,089 6.5 11.8 6,897 6,826 3.4 △ 1.0
階層レベル2の項目一般機械 11,112 12,172 6.1 9.5 10,338 10,342 5.1 0.0
階層レベル2の項目原動機 6,955 8,058 4.0 15.9 4,845 5,315 2.6 9.7
階層レベル2の項目通信機器 2,522 2,357 1.2 △ 6.5 4,721 4,642 2.3 △ 1.7
原料別製品 42,774 39,237 19.6 △ 8.3 34,924 29,550 14.7 △ 15.4
階層レベル2の項目鉄製品 11,178 10,665 5.3 △ 4.6 7,270 5,261 2.6 △ 27.6
階層レベル2の項目金属製品 10,808 10,173 5.1 △ 5.9 9,182 8,460 4.2 △ 7.9
化学品 29,080 34,553 17.2 18.8 29,674 28,863 14.3 △ 2.7
階層レベル2の項目医薬品 13,690 16,505 8.2 20.6 12,554 14,076 7.0 12.1
雑製品 20,310 19,847 9.9 △ 2.3 27,417 28,366 14.1 3.5
食品・動物・飲料・たばこ 15,104 15,847 7.9 4.9 14,766 16,098 8.0 9.0
燃料・エネルギー 7,599 7,349 3.7 △ 3.3 27,119 18,251 9.1 △ 32.7
階層レベル2の項目電力 4,507 4,159 2.1 △ 7.7 4,574 2,181 1.1 △ 52.3
階層レベル2の項目原油・石油製品 2,024 2,388 1.2 18.0 11,886 9,918 4.9 △ 16.6
階層レベル2の項目天然ガス 1,066 776 0.4 △ 27.2 9,312 5,093 2.5 △ 45.3
原料 6,537 5,416 2.7 △ 17.1 9,029 7,327 3.6 △ 18.9
階層レベル2の項目コルク・木材 2,645 1,908 1.0 △ 27.9 2,010 1,651 0.8 △ 17.9
その他製品 3,779 3,081 1.5 △ 18.5 6,492 3,628 1.8 △ 44.1
階層レベル2の項目金・金貨 3,661 3,009 1.5 △ 17.8 6,320 3,454 1.7 △ 45.3
合計(その他含む) 194,679 200,547 100.0 3.0 215,273 201,637 100.0 △ 6.3

〔注〕EU 域外貿易は通関ベース、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕オーストリア統計局

表3 オーストリアの主要国・地域別輸出入(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 133,678 137,163 68.4 2.6 140,240 130,213 64.6 △ 7.1
階層レベル2の項目ユーロ圏 103,213 107,153 53.4 3.8 111,354 104,141 51.6 △ 6.5
階層レベル3の項目ドイツ 58,012 58,504 29.2 0.8 69,022 63,848 31.7 △ 7.5
階層レベル3の項目イタリア 13,244 12,362 6.2 △ 6.7 13,437 12,905 6.4 △ 4.0
階層レベル3の項目フランス 7,757 7,247 3.6 △ 6.6 5,121 5,320 2.6 3.9
階層レベル3の項目ベルギー 3,005 7,482 3.7 148.9 3,211 2,910 1.4 △ 9.4
階層レベル3の項目スロバキア 3,796 3,922 2.0 3.3 3,795 3,410 1.7 △ 10.2
階層レベル2の項目非ユーロ圏 30,465 30,010 15.0 △ 1.5 28,886 26,072 12.9 △ 9.7
階層レベル3の項目ポーランド 7,359 7,345 3.7 △ 0.2 7,027 6,647 3.3 △ 5.4
階層レベル3の項目ハンガリー 7,734 7,272 3.6 △ 6.0 5,348 5,019 2.5 △ 6.2
階層レベル3の項目チェコ 7,083 7,156 3.6 1.0 9,819 8,327 4.1 △ 15.2
階層レベル3の項目ルーマニア 3,756 3,920 2.0 4.4 2,487 2,238 1.1 △ 10.0
アジア・大洋州 14,840 14,341 7.2 △ 3.4 29,126 27,538 13.7 △ 5.5
階層レベル2の項目中国 5,262 5,057 2.5 △ 3.9 17,453 15,162 7.5 △ 13.1
階層レベル2の項目ASEAN 2,010 2,069 1.0 3.0 4,679 4,400 2.2 △ 6.0
階層レベル2の項目日本 1,787 1,777 0.9 △ 0.6 2,521 2,804 1.4 11.2
階層レベル2の項目インド 1,185 1,278 0.6 7.8 1,560 1,391 0.7 △ 10.8
米国 12,913 14,744 7.4 14.2 7,257 7,917 3.9 9.1
スイス 9,991 9,957 5.0 △ 0.3 10,026 10,276 5.1 2.5
英国 5,106 5,447 2.7 6.7 3,495 3,061 1.5 △ 12.4
ロシア 1,838 1,297 0.6 △ 29.4 8,250 4,061 2.0 △ 50.8
アフリカ 2,030 2,269 1.1 11.8 2,523 2,753 1.4 9.1
ブラジル 1,120 1,029 0.5 △ 8.2 449 380 0.2 △ 15.4
合計(その他含む) 194,679 200,547 100.0 3.0 215,273 201,637 100.0 △ 6.3

〔注1〕EU 域外貿易は通関ベース、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔注2〕アジア・大洋州はASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港および台湾を加えた合計値。
〔出所〕オーストリア統計局

対内・対外直接投資 
対内直接投資は前年から半減、一方で対外直接投資は拡大

オーストリア国立銀行(OeNB、中央銀行)によると、2023年の対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年の88億5,600万ユーロから41億3,000万ユーロに半減した。一方、対外直接投資は前年比24.2%増で88億7,300万ユーロに拡大した。

2023年の対内直接投資を国・地域別でみると、EUのうちユーロ圏は前年比71.0%減と大幅に減少した一方、非ユーロ圏は16.5%増の3億6,800万ユーロとなった。従来の主要な投資国のドイツとルクセンブルクはそれぞれ、67.6%減、82.5%減となった。非ユーロ圏ではチェコからの投資が2億6,700万ユーロとほぼ倍増した。

EU域外の国は、ブラジルからの引き揚げ超過は2022年の25億9,800万ユーロに続いて2023年は12億2,500万ユーロとなった。ロシアからは制裁にもかかわらず10億6,500万ユーロが流入した。

オーストリア経済振興会社(ABA)が2023年に誘致した外国企業は、前年比33社減の325社だったが、投資額は2022年の4億9,100万ユーロから13億7,200万ユーロに大幅に増加した。雇用創出は474人減の2,419人となった。誘致案件を国別にみると、ドイツが前年比25社減の95社でこれまで同様最も多く、8社減のイタリアが23社、1社増のスイスが22社と続いた。欧州以外では米国が10社以上で最多であった。業種別ではICT分野が68社と最も多く、企業向けサービスの52社、卸売業の41社が続いた。エネルギー・環境技術業からは23社が進出した。ノルウェーのエネルギー大手スタットクラフト(Statkraft)の子会社メル・オーストリア(Mer Austria )は電気自動車(EV)用の急速充電インフラを設置する予定である。スタートアップの誘致は7社減の39社だった。そのうち、日本のディープテックスタートアップ・ゴドーはウィーンで研究開発拠点を設立した。中国のユナイテッド・マイクロ・テクノロジー(United Micro Technology)はリンツ市で、IoT用の集積回路の開発を開始した。

2023年の対外直接投資を国・地域別でみると、対EUは前年比20.2%増の65億9,100万ユーロになった。ユーロ圏は12.5%減となった一方、非ユーロ圏は2022年の3,400万ユーロの引き揚げ超過から17億6,400万ユーロの投資に転じた。その多くがハンガリーへの投資だった。対中国投資は2年連続引き揚げ超過となり、中国の経済・政治状況を踏まえて中国戦略を再検討するオーストリア企業が多いとも指摘されている。

表4 オーストリアの国・地域別対内・対外直接投資[国際収支ベース,ネット,フロー](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 金額 金額
EU 7,505 2,450 5,483 6,591
階層レベル2の項目ユーロ圏 7,189 2,082 5,517 4,827
階層レベル3の項目フランス 209 1,063 233 244
階層レベル3の項目ドイツ 1,933 627 484 2,147
階層レベル3の項目ルクセンブルク 2,862 501 372 463
階層レベル3の項目オランダ 382 165 2,458 518
階層レベル3の項目キプロス 69 44 24 52
階層レベル2の項目非ユーロ圏 316 368 △ 34 1,764
階層レベル3の項目チェコ 135 267 △ 617 △ 526
階層レベル3の項目ポーランド 30 28 626 △ 80
日本 64 1,167 25 △ 135
ロシア 2,887 1,065 △ 582 △ 773
アフリカ 286 231 △ 381 △ 117
中国 25 97 △ 19 △ 341
インド 81 46 17 △ 49
トルコ 23 33 460 74
米国 133 △ 90 773 1,567
アラブ首長国連邦 △ 278 △ 206 △ 466 △ 573
スイス 744 △ 338 356 155
英国 49 △ 772 2,171 △ 541
ブラジル △ 2,598 △ 1,225 173 △ 67
合計(その他含む) 8,856 4,130 7,144 8,873

〔注〕2023年は暫定値、2022年は改正値
〔出所〕 オーストリア国立銀行(OeNB)

表5-1 オーストリアの主な対内直接投資案件(2023年~2024年2月)[M&A以外]
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
薬品 ノバルティス(Novartis) スイス 2024年2月 5億ユーロ チロル州の製造拠点の拡大(新しい細胞培養装置)に2025年までに5億ユーロを投資する。
再生可能エネルギー エコウィンド(Ecowind) ドイツ 2023年2月 非公表 オーストリアのエネルギー大手EVNとジョイントベンチャー(JV)を組み、浮体式太陽光発電所を建設完了を発表。
自動車 エダグ(Edag) ドイツ 2023年12月 非公表 ドイツの車両・ロボティクスのエンジニアリング企業「エダク」はオーバーエースタライヒ州の2カ所で研究開発拠点の稼働を開始。
紙パルプ ノルスケ・スコグ(Norske Skog) ノルウェー 2023年6月 非公表 シュタイヤーマーク州ブルック・アン・デア・ムーア市の工場で、古紙から段ボールの素材を生産する機械設備への更新完了を発表。
自動車 トヨタ・モーター・ヨーロッパ(TME) 日本 2023年6月 非公表 トヨタの欧州統括会社であるTMEは、新たな部品配達センターの開所を発表。
IT Godot 日本 2023年5月 非公表 ディープテックスタートアップ「ゴドー」はウィーンで研究開発拠点を設立したことを発表。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表5-2 オーストリアの主な対内直接投資案件(2023年~2024年2月))[M&A]
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
運輸 カーゴ・パートナー(Cargo-Partner) ニッポン・エクスプレス・ホールディングス 日本 2023年5月 8.45億ユーロ ニッポン・エクスプレス・ホールディングスは同業のカーゴ・パートナーの買収に合意したと発表。
化学品 ボレアリス(Borealis) アグロフェルト(Agrofert) チェコ 2023年7月 8.1億ユーロ ボレアリスは同社の肥料を含む窒素部門のチェコの化学大手アグロフェルトへのに売却完了を発表。
化学品 センペリット(Semperit) ハープス(Harps) シンガポール 2023年8月 1.15億ユーロ ゴム製品大手センペリットは、同社の医療品部門(主に医療用ゴム手袋)のシンガポールの手袋メーカー・ハープスへの売却完了を発表。
燃料 トゥルムエール(Turmöl) オルレン(Orlen) ポーランド 2024年1月 非公表 ポーランドのエネルギー大手オルレンはドップラー・エネルギーのガソリンスタンドであるトゥルムエールの買収完了を発表。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-1 オーストリアの主な対外直接投資案件(2023年~2024年2月)[M&A以外]
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
エネルギー OMVペトロム ルーマニア 2023年6月 最大40億ユーロ OMVペトロムとルーマニア国営石油会社ロムガスが、ルーマニア黒海沿岸における欧州最大級の海底ガス田プロジェクトへの共同出資を発表した。
リサイクル OMV ドイツ 2023年10月 1.7億ユーロ
(OMVの投資額)
オーストリアのエネルギー大手OMVとドイツのインターゼロ(Interzero)は廃棄物分別装置建設のためのJVを設立することについて、最終投資決定を行ったと発表。
化学品 センペリット・グループ(Semperit Group) チェコ 2023年6月 1.1億ユーロ プラスチック大手センペリットは、炭素中立な油圧ホース生産のため、チェコのオドリ市の工場拡大に着工したと発表。2028年に完成予定。
包装 アルプラー(ALPLA) 南アフリカ共和国 2023年6月 6,000万ユーロ 包装技術大手のアルプラーは、南アにPETボトルのリサイクル工場を建設することを発表。2024年秋に完成予定。
無人航空機 シーベル(Schiebel) アラブ首長国連邦 2024年2月 非公表 ドローン大手シーベルは、アブダビでの大型無人ヘリコプターCamcopterS300 のための開発・生産施設を大幅に拡大することを発表。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-2 オーストリアの主な対外直接投資案件(2023年~2024年2月)[M&A]
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
フェアブント(Verbund) 再生可能エネルギー ビエスゴ・リニューアブルズ(Viesgo Renovables)、ビエスゴ・ヨーロッパ(Viesgo Europa) スペイン 2023年7月 4.6億ユーロ フェアブントは、スペインのEDPリニューアブルズ・ヨーロッパ(EDP Renewables Europe)から、子会社のビエスコ・リニューアブルズおよびビエスゴ・ヨーロッパを買収すると発表。買収する2社はスペイン国内9カ所に合計257MW の稼働中の風力発電所を有する。
エッガー(EGGER) 家具 ラウヒ(Rauch) ドイツ 2023年9月 非公表 木材大手エッガーは、ドイツの家具メーカー・ラウヒの木質チップ工場の買収に合意したことを発表。欧州市場でのさらなる地位向上を目指す。
RHIマグネシタ(RHI Magnesita) 耐火材 P-D耐火材 ドイツ 2023年10月 非公表 耐火材大手RHIマグネシタは、ドイツのプライス・ダイムラー・グループ(Preiss-Daimler Group)の耐火材部門(P-D耐火材)の買収完了を発表。
オーストリア国鉄(ÖBB) 鉄道 ゴー・アヘッド(Go-Ahead) ドイツ 2023年10月 非公表 オーストリア国鉄(ÖBB)は、ドイツ・バイエルン州の地方鉄道ゴー・アヘッド〔英ゴー・アヘッド・グループ(Go-Ahead Group)の子会社〕の買収に合意したと発表。同買収によりオーストリア国鉄は更なる路線の国際化を進める。
ボレアリス(Borealis) 化学品 リアルティ(Rialti) イタリア 2023年11月 非公表 OMVの子会社であるボレアリスはイタリアのポリプロペレンコンパウンド製造会社リアルティの買収完了を発表。
アルプラー(ALPLA) 包装 フォルティフレックス(Fortiflex) プエルトリコ 2024年2月 非公表 包装技術大手のアルプラーは、プエルトリコの同業のフォルティフレックス社を買収完了を発表。同買収により、アルプラーの大容量パッケージソリューション分野の拡大を図る。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係 
対日貿易赤字は23年ぶりの最高値、日本からの直接投資は拡大

2023年の対日輸出は前年比0.6%減の17億7,700万ユーロ、対日輸入は11.2%増の28億400万ユーロとなった。対日貿易赤字は2021年以降拡大し、2023年に39.9% 増の10億2,700万ユーロで23年ぶりの最高値となった。オーストリアにとって日本は、輸出では前年同様21位で、輸入では前年より1つ順位を上げて17位、欧州以外では輸出は米国、中国、トルコ、メキシコに続いて5位、輸入は中国、米国に続いて3位の相手国である。

対日輸出を品目別でみると、最大品目である機械・輸送機器(構成比45.4%)は前年比7.0%増の8億800万ユーロだった。うち半分近くを占める道路輸送機器(21.6%)は16.3%増のほか、産業用機械(7.7%)も半導体製造用特殊機械(2.3%)の4.0%増などが寄与し10.4%増となった。化学品(21.0%)は2.3倍となり、うち医薬品(13.9%)は6倍以上となった。一方、オーストリアの従来の主要輸出品目であるコルク・木材(3.3%)と木材製品(4.1%)は2022年の増加の後、2023年はそれぞれ、59.1%減、48.5%減と減少した。

日本からの輸入を品目別でみると、全体の59.1%を占める機械・輸送機器は前年比10.4%増になった。道路輸送機器(構成比19.0%)のうち乗用車(14.2%)は3億9,700万ユーロと約2.5倍となり、乗用車の輸入額増加分で2022年からの輸入総額の増加額2億8,300万ユーロに近い額に達している。その他増加した品目には一般機械(5.5%)の7.9%増、原動機(3.4%)の4.7%増、金属工作機械(1.2%)の42.4%増があった一方、産業用機械(13.8%)の12.0%減、電気・電子機器(9.7%)の13.7%減などが2桁で減少した。化学品(15.8%)は7.7%増となり、うち医薬品(4.7%)は43.6%と大幅に増加した。その他工業製品(14.0%)は、雑工業製品(6.6%)の美術品(3.5%)で高額の購入があった影響により、27.0%増加した。飲料品・たばこ(0.2%)は26.0%増で、うちウイスキーは、全体に占める金額は大きくないものの、45.0%増で400万ユーロに拡大した。

OeNBによると、日本からの直接投資は2022年の6,400万ユーロから2023年の11億6,700万ユーロに増加した。大型案件としては日本通運によるオーストリアのロジスティクス大手カーゴ・パートナー(cargo-partner)の買収などが挙げられる。それとは対照的に、対日直接投資は2022年の2,500万ユーロから1億3,500万ユーロの引き揚げ超過に転じた。

表7 オーストリアの対日主要品目別輸出入[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械・輸送機器 755 808 45.4 7.0 1,501 1,657 59.1 10.4
階層レベル2の項目道路輸送機器 330 384 21.6 16.3 300 534 19.0 77.9
階層レベル2の項目産業用機械 123 136 7.7 10.4 440 388 13.8 △ 12.0
階層レベル2の項目一般機械 76 98 5.5 30.1 143 154 5.5 7.9
階層レベル2の項目電気・電子機器 67 71 4.0 4.9 314 271 9.7 △ 13.7
階層レベル2の項目事務用機械 15 15 0.8 △ 1.8 148 142 5.1 △ 3.9
階層レベル2の項目通信機器 18 19 1.1 4.4 39 37 1.3 △ 4.5
原料別製品 366 239 13.5 △ 34.6 232 257 9.2 10.6
階層レベル2の項目金属製品 144 95 5.4 △ 33.9 45 39 1.4 △ 13.0
階層レベル2の項目木材製品 142 73 4.1 △ 48.5 1 0 0.0 △ 71.4
階層レベル2の項目鉄製品 30 20 1.1 △ 33.8 79 126 4.5 59.3
その他工業製品 162 147 8.3 △ 9.2 309 393 14.0 27.0
階層レベル2の項目計測機器 89 76 4.3 △ 14.9 165 153 5.5 △ 7.6
階層レベル2の項目カメラ、光学機器 5 6 0.3 20.2 48 48 1.7 △ 0.5
階層レベル2の項目雑工業製品 45 45 2.5 △ 1.5 90 186 6.6 106.7
化学品 165 373 21.0 125.9 412 444 15.8 7.7
階層レベル2の項目医薬品 40 247 13.9 511.9 91 131 4.7 43.6
階層レベル2の項目有機化学製品 24 30 1.7 22.9 99 97 3.5 △ 2.5
その他化学品 14 15 0.8 4.3 100 134 4.8 34.0
原料 158 71 4.0 △ 55.1 8 6 0.2 △ 29.1
階層レベル2の項目コルク・木材 144 59 3.3 △ 59.1 0 0 0.0 220.3
食料品 73 61 3.4 △ 17.2 7 7 0.2 △ 3.4
飲料品・たばこ 4 5 0.3 45.5 5 7 0.2 26.0
合計(その他含む) 1,787 1,777 100.0 △ 0.6 2,521 2,804 100.0 11.2

〔出所〕 オーストリア統計局

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2021年 2022年 2023年
実質GDP成長率 (%) 4.2 4.8 △ 0.8
1人当たりGDP (米ドル) 53,696 52,484 57,081
消費者物価上昇率 (%) 2.8 8.6 7.8
失業率 (%) 6.2 4.8 5.1
貿易収支 (100万ユーロ) △ 12,860 △ 20,593 △ 1,089
経常収支 (100万ユーロ) 6,669 △ 1,301 12,736
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 17,572 16,763 12,647
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ) 334,284 350,693 371,143
為替レート (1米ドルにつき、ユーロ、期中平均 0.85 0.95 0.92


貿易収支:国際収支ベース(財のみ)、2023年は暫定値
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:オーストリア経済研究所(WIFO)
貿易収支:オーストリア統計局
経常収支、対外債務残高:オーストリア国立銀行(OeNB)
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF