外資に関する奨励
最終更新日:2024年06月25日
- 最近の制度変更
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2023年8月1日
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2023年6月15日
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2020年7月28日
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2018年6月28日
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2018年4月6日
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奨励業種
1994年以来、新外資法の下で、ごく一部の例外を除いては外資のマジョリティー参加を積極的に受け入れてきたメキシコには、外資のみに適用される奨励措置は存在しないため、次に掲げる奨励措置は、外資のみならず内資にも適用される。
「国内生産の促進」という観点からいえば、産業分野別生産促進プログラム(PROSEC)が指定する部門が奨励業種といえる。
産業分野別生産促進プログラム(PROSEC)
在メキシコ製造業者は、PROSECを利用すれば、必要な部品・原材料、機械などを0%、3%、5%等の優遇関税で輸入することができる。ただし、PROSEC指定業種のリストにある完成品をメキシコで製造し、製造に必要な原材料・部品および機械・設備(含む工具類)が優遇関税の適用を受ける品目に指定されていることが前提となる。製造する品目(PROSEC政令第4条に掲載されている品目)、およびその製造のために輸入する部品・原材料、機械・設備の対象品目リスト(同政令第5条に掲載されている品目)を確認した上で、指定の申請様式に会社データ、メキシコでの生産品目、輸入する品目などの必要事項を記入し、経済省に提出・申請する。申請後、20営業日以内に許可されるかどうかが通知される。
現行PROSEC政令(Decreto por el que se establecen diversos Programas de Promoción Sectorial)は、2002年8月2日付連邦官報に公布され、その後2021年6月までに、35件の改正がなされている。
なお、PROSECの登録対象となるかどうかを判断するための24業種別の製造品目の最新リスト(PROSEC政令第4条に掲載)、および24業種別の優遇関税の対象品目と税率を定める最新リスト(同政令第5条に掲載)は次の経済省のウェブサイトで閲覧できる(「Normatividad」のタブから「BIBLIOTECA JURIDICA」を選択し、「Decretos」の中から「PROSEC」をクリックする)。
"Servicio Nacional de Información de Comercio Exterior(SNICE)"
PROSECは当初、現行IMMEX制度(後述)の前身にあたるマキラドーラ制度および輸出促進のための一時輸入制度(PITEX)による部品・機械設備等の無関税輸入の恩典が、NAFTA(米・加)向け輸出に対しては2001年1月1日以降適用されなくなったため、それを補う措置として導入された。ただし、加盟国への輸出を条件とした関税の減免やドローバックの禁止を規定したNAFTA303条(USMCA2.5条1項)に抵触しないよう、PROSECの利用にあたっては、輸出は義務付けられていない。
PROSEC指定の産業分野(PROSEC政令第3条に記載)(2020年6月30日現在)
- 電気
- 電子
- 家具
- 玩具
- 靴
- 冶金工業
- 資本財
- 写真産業
- 農業機器
- 他業種
- 化学
- ゴム・プラスティック
- 製鉄
- 薬品・医療機器
- 輸送機器(ただし、自動車産業を除く)
- 製紙
- 木材
- 革製品
- 自動車および自動車部品
- 繊維・アパレル
- チョコレート・菓子
- コーヒー
- 食品産業
- 肥料
レグラ・オクターバ
もともとレグラ・オクターバは、1995年12月28日付連邦官報公布の輸入一般関税法(LIGI)の補則第8条で、商務工業振興省(現経済省)が定めた特定の製品について、製造業者登録(Empresa Fabricante)を得ている企業が、当該製品をメキシコ国内で生産あるいは組み立てるのに必要な原材料・部品を、特別な関税コードにより一括して低関税で輸入できるという制度であった。
しかし既述のPROSEC発足に伴い、レクラ・オクターバはPROSECを補完する制度に変わった。なお、現行法制下では、2007年6月18日付連邦官報公布による輸出入一般関税法(LIGIE)の補則第8条を意味する。
PROSECによる優遇関税の決定はHSコードごとに行われるが、そこでは同一のHSコードに複数の異なる品目が該当する場合があり、その一部については優遇関税の適用に合理性があると認められても、他の品目ではそうでないこともあるため、当該HSコードをPROSECで使用することが好ましくない場合がある。そのようなケースにおいては、当該優遇関税を適用しても問題がないと考えられる品目についてのみ、レグラ・オクターバに基づく特別輸入許可によって、個別に優遇関税の適用を認めるようにしている。
レグラ・オクターバに基づく特別輸入許可は、経済省に申請し、認可されれば、PROSECの優遇関税の対象になっていない品目について、関税率0~5%で輸入できるようになる。同輸入許可の有効期間は、1回につき1年が原則であり、申請者の希望に基づいて輸入数量が割り当てられる。当該輸入許可の有効期限内であっても、同輸入割当を消化してしまった場合には、改めて許可申請を行わなければならない。
経済省は、レグラ・オクターバに基づく特別輸入許可申請の審理に際しては、原則として次の4つの判断基準を考慮する。その根拠は、経済省貿易細則・判断基準省令添付2.2.2(事前許可認可のための判断基準ならびに要件)の2である。
- 柔軟に資材調達を行うため、供給元の多角化を図る場合。
- 国内では生産されていないか、十分な生産量がないものを輸入する場合。
- 新製品生産・新規プロジェクト開始に向けた、立ち上げ段階で必要な場合。
- 貿易取引上の契約を遵守した製品を生産するために必要な場合。
なお、製鉄部門ならびにチョコレート・菓子部門、コーヒー部門のレグラ・オクターバ申請手続きにおいては、一部に特殊要件が存在する。
経済省は、レグラ・オクターバの申請を受け付けた翌日から起算して、15営業日以内に可否の決定を下す。この期間を過ぎても決定がなされない場合は、許可されたものとみなされる。特別輸入許可の期限は最長で1年間。
自動車製造業
軽量自動車新車製造企業登録
規制色の濃かった旧自動車令(1989年12月11日付連邦官報公布)は、NAFTA等における約定に従って2003年12月31日をもって廃止され、これに代わって「新自動車令」(正式名称は「自動車完成車産業の競争力ならびに自動車国内市場の成長促進のための政令」)がスタートした。この「新自動車令」に基づく奨励措置として導入されたのが軽量自動車新車製造企業登録で、車両総重量8,864キログラム以下で関税分類が8702項、8703項(ただし8703.10号を除く)、8704項のいずれかに該当する新車を製造する企業に対し、一定の要件下で本登録を認め、登録企業には一連の恩典を与えている。
「新自動車令」は、2017年2月2日時点までに、3度改正されている。改正の公布日は、2007年6月30日(政令添付Ⅰの更新のみ)、2009年11月30日、2017年2月2日である。また、政令の適用・運用を管轄する経済省は、同政令の適用詳細を定めた省令を2004年6月30日に公布した。同省令は、2017年1月6日までに3度の改正が行われた。改正の公布日は、2006年7月4日、2010年4月15日、2017年1月6日である。
軽量自動車新車製造企業登録の登録・更新要件は、「新自動車令」公布当初は、かなり厳しいものであった。しかしメキシコ政府は、2008年から2009年にかけての世界的不況による自動車市場の急激な縮小に鑑み、2009年11月30日公布の政令改正によって大胆な要件緩和を実施した。その結果、現行ルールは次のようになった。
登録用件
- 車両総重量8,864キログラム以下で、関税分類が8702項、8703項(ただし8703.10号を除く)、8704項のいずれかに該当する新車の製造業者であること。
- 直前の年度において、メキシコで前記カテゴリーの車両を5万台以上生産した実績があること。この要件に該当しない業者は、次の要件をすべて満たすこと。
- 申請直近の過去3年間のいずれかの年に5万台以上の生産実績があることを証明すること。
- 申請の前年度に、3カ月以上継続して操業を停止したことがないこと。
- 申請の前年度におけるメキシコでの生産台数減少率が、他市場でのメキシコ製自動車の販売台数の減少率を上回っていないことを証明すること。
- 前年度の生産台数が3万台を上回っていること。
- 当該車両製造のために、1億ドル以上の固定資産投資を行っていること。
- メキシコ産業財産権庁(IMPI)に登録してある当該自動車の商標登録権者であるか、または、その商標の使用権を有すること。
- 当該車両の交換部品の供給能力を有すること。
- 排ガス規制その他に関するメキシコ公式規格(NOM)を履行していること。
軽量自動車新車製造企業登録は、毎年11月1日から12月1日の間に更新されるが、その際、各新車製造企業は、前記の登録要件(ただし3.を除く)の履行継続維持を証明しなければならない。
ただし、同要件のうち2.を直ちに履行できない企業は、「新自動車令」7条に基づき、「登録」認可について経済省と交渉することができる。そのためには2.以外の要件すべてを履行していることに加え、次のa.~f.の資料を添付した申請書簡を提出しなければならない。
- メキシコで生産する自動車が、前記の登録要件1.の定義に合致するものであることを示すカタログ等の資料。
- 前記1.に掲げる新車生産に向け、少なくとも1億ドル以上を固定資産に投資した証拠として、外部監査人による会計・税務監査報告書の写し。
- 初年度、および2年目、3年目の生産計画。
- 国産・輸入の別を問わず、メキシコで販売しているか販売予定の自動車に関する、メキシコ産業財産権庁(IMPI)発行による商標登録証の写し。
- メキシコで販売する自動車が、自動車分野の各種NOMに適合するものである旨の宣誓書。
- 申請会社の設立公正証書、およびその変更に係る公正証書の写し。企業グループとしての申請の場合には、各企業の関連性を証明するための書類。
登録企業への恩典
- 保税倉庫運営認可(詳細は後述)。
- 税関法に基づく「軽量自動車新車製造企業」向け恩典(各種規制の緩和・手続の円滑化)。
- 自動車および自動車部品産業部門PROSECの自動認可。
- 本来の原産地にかかわらず、自社の車両を公共入札の場ではすべて国産車として扱えること。
- 完成車の無関税輸入割当の取得(原則として生産台数の10%に相当する台数分)。
Deposito Fiscalと呼ばれる保税倉庫には、完成車メーカーは輸入した部品・部材を保税状態で搬入できるし、それらを組み込んだ完成車を輸出する場合には、それら部品・部材の輸入通関手続きを一部簡略化することができる。国内市場向けに販売した完成車に組み込まれた保税材料については、確定輸入申告を行った上で輸入関税ならびに輸入付加価値税を支払わなければならない。この保税制度にも、加盟国への輸出を条件とした関税の減免や、ドローバックの禁止を規定したUSMCA2.5条1項等は適用される。すなわち、当該保税材料がNAFTA、EUとの自由貿易協定、EFTAとの自由貿易協定のいずれかにおける域外産品である場合、当該自由貿易協定締約国へ輸出される完成車に組み込まれた同域外製材料については、改めて(メキシコの)輸入関税を支払わなければならない。
こうした制度を利用する完成車メーカーは、IMMEX(後述)登録を有する部品メーカーが一時輸入した部品・部材を用いて製造した部品などに関し、保税状態で譲渡または移転を受けることができる。その際、当該完成車メーカーは仮想通関による輸入申告手続きが必要となるが、当該部品メーカーに対しては「商品移転証明書(Constancia de Transferencia de Mercancía=CTM)」と称する文書を発行する。完成車メーカーが部品メーカーから譲渡または移転される部品に組み込まれた一時輸入材料のうち、国内市場向けに販売された完成車に組み込まれたもの、あるいは、米・加またはEU、EFTA加盟国に仕向けられた完成車に組み込まれた当該自由貿易協定域外産材料については、各部品メーカーが該当する(メキシコの)輸入関税を負担しなければならない。
各種優遇措置
プロジェクト別優遇措置はなく、保税関連措置としてはIMMEX制度と戦略的保税区域(RFE)がある。通関手続き上のその他優遇措置としては認定企業登録がある。
IMMEX
- 概要
IMMEXとはIndustria Manufacturera, Maquiladora y de Servicios de Exportaciónの略号であり、「輸出向け製造・マキラドーラ・サービス産業」を意味する。主要根拠法はIMMEX 政令(Decreto para el Fomento de la Industria Manufacturera, Maquiladora y de Servicios de Exportación=輸出向け製造・マキラドーラ・サービス産業の振興のための政令/2006年11月1日付連邦官報公布、同年同月13日施行)であり、同政令によって輸出マキラドーラ産業とPITEX(Programa de Importación Temporal para Producir Artículos de Exportación=輸出品を製造するための一時輸入プログラム)という2つの異なる保税加工制度が統合され、手続きの簡素化が図られた。
旧輸出マキラドーラ・PITEXの主要恩典であった一時輸入制度は、基本的にはそのままIMMEXでも踏襲されている。さらには、IVA(付加価値税)の還付迅速化等の恩典が取り入れられた。IMMEX政令は、2017年10月末までに5度改正されている。改正政令の公布日は、2008年5月16日、2010年12月24日、2016年1月6日、2016年7月28日、2017年10月5日である。
2010年12月の改正では、2008年3月31日公布の大統領令で定められたいくつかの恩典がIMMEX政令に組み込まれた(政令6-BIS条等)ことで、一見恩典の拡充がなされたような印象を与えるが、それらの恩典は既に実施されていたものであるため、恩典の拡充は形式上のものにすぎない。むしろ実質的には、全体として規制色の濃い改正である。さらには、IMMEX企業による各種通関手続きの詳細を定めたSAT貿易細則(現行のものは2018年度版)についても、2010年12月24日には極めて規制色の濃い重要な改正が行われた。
ただし、後述する「認定企業登録」を有するIMMEX企業にとっては、恩典が大きく拡大されたといえる側面もある。「認定企業」には、その恩典として、IMMEX一時輸入に対する規制強化措置が一部適用されないからである。また、2013年末の税制改正により、2015年以降はIMMEX制度を用いた一時輸入に対し、原則としてIVAが課税されることとなった。しかし、IVAの一時輸入恩典がなくなることに対する産業界の強い抗議があったため、最終的には国税庁(SAT)から認定を受けた業者については、2015年以降もIVAの一時輸入恩典が享受できることとした。同IVA保税のための認定制度については、後述する。
2016年初の改正では、数種類あったセンシティブ品目の別添リストが統合され、一時輸入部材の国内滞留期間が18カ月に統一されるなど、簡素化した部分がある一方、センシティブ品目の一時輸入に際しては特別な要件を設定するなど規制強化につながる内容も含まれる。2016年7月、2017年10月の改正では、センシティブ品目にかかるHSコードの再整理が行われている。
- プログラム形態
IMMEX登録は、申請企業が実行しようとする輸出プログラムに対する認可という形で行われる。
プログラムは、政令上、次の5つの形態が認められている。- 統括企業(Controladora de Empresas)IMMEX
- 工業(Industrial)IMMEX
- サービス(Servicios)IMMEX
- シェルター(Albergue)IMMEX
- アウトソーシング(Terciarización)IMMEX
このプログラム形態のうち、アウトソーシングIMMEXは、自らは機械設備等の生産設備を有しない企業がIMMEX登録を行い、製造等の活動は予め登録認可を受けた他の下請メーカーに委託するというものである。
また、サービスIMMEXは、輸出製品に直接関係するサービス(塗装、研磨、切断、検品、仕分け、蔵置、ジャストインタイムによる搬入等)に加え、IT産業を中心とした輸出支援サービスまで幅広く対象として含まれている。 - 恩典
- 一時輸入
IMMEX(制度)の主要恩典は一時輸入を行えることであるが、対象品目ならびに一時輸入状態での国内滞留期間は、IMMEX政令4条によれば次のとおりである。
- 政令4条のⅠ:燃料や潤滑油等の生産工程で消費される財、輸出商品を構成する原材料・部品、容器・梱包財、ラベル・パンフレット等については、原則18カ月間。
- 政令4条のⅡ:コンテナ・トレーラーケースは2年間。
- 政令4条のⅢ:生産工程で使用する機械設備、機器、工具、計器類、型、交換部品、汚染防止、調査・職業訓練、安全、演算・通信、試験、測定・測量、製品検査・品質管理、輸出製品に直接係る資材の取り扱い等用の設備・機器、管理用機器等については、プログラムの有効期間中。
ただし、IMMEX政令添付Ⅰに掲げられる品目は、IMMEXによる一時輸入が禁止されている。
また、IMMEX制度を利用して一時輸入の状態で商品を保持できる滞留期間は、輸出製品に使用される部品・原材料などについては18カ月と定められているが、センシティブ品目(一部の糖類、HS72類の鋼材、中古の空気タイヤ等、繊維製品等)には別途、異なる滞留期間が設定されていた。しかし2016年の改正により、複数種類に分かれていたセンシティブ品目はまとめられ、別添ⅡA(糖類)、B(鋼材、鋼管)、C(繊維製品)、D(アルミ、同製品)、E(くず)として滞留期間が統一されて18カ月となった。
なお、サービスIMMEXは、これら一時輸入規制品目のうち、添付Ⅱの商品を取扱うことはできないが、後述する「認定企業」はその限りではない。一時輸入の主要効果は、輸出を条件として輸入に係る租税が免除されたり繰り延べされたりすることであり、具体的には輸入関税、輸入付加価値税(IVA)、アンチダンピング(AD)税が対象となる。これを前述の一時輸入対象品目の分類に従って概観すると、次のとおりとなる。
- 政令4条のⅠに分類される物品の場合、輸入関税は、物品の原産地・仕向け地、あるいは輸入者の活動内容によって支払いの要否が決まる。例えば、最終製品が米・加またはEU、EFTA加盟国に輸出される場合、それらに組み込まれる一時輸入材料のうち、当該自由貿易協定域外産の材料については、関税を支払わなければならない(USMCA2.5条1項)。それ以外のケースでは、輸入関税の支払いは輸出を条件として原則免除される。一方、輸入IVA(後述するIVAの保税認定を受けていることが前提条件)ならびにAD税については、一律に免除される。
- 政令4条のⅡの物品については、輸入関税、輸入IVA、AD税のいずれも免除される。
- 政令4条のⅢの物品については、輸入IVAのみが免除され、輸入関税およびAD税は支払わなければならない。
なお、輸入関税を支払う際、輸入業者はその登録状況に従い、一般輸入関税の代わりにPROSEC優遇関税またはFTA優遇関税を適用することができる。また、前述の一時輸入恩典とは別に、IMMEX登録企業には一般輸入業者登録における自動登録の恩典が与えられる。
- マキラドーラ・オペレーション(保税委託加工)
旧輸出マキラドーラ制度時代から適用されていた、マキラドーラの特別な課税ベースである通称「セーフ・ハーバー」は、IMMEX制度においても継承されている。これは、移転価格および所得税法上の恒久施設(PE)問題という、マキラドーラ企業の所得税制に係るものである。
「マキラドーラ・オペレーション(保税委託加工)」とは、外国企業が所有する部品・原材料を保税状態でメキシコに一時輸入し、外国企業から貸与された機械で加工した後に再輸出する保税加工オペレーションであり、現行では「輸出に関する製造業・マキラドーラ・サービス産業振興のための政令」(通称「IMMEX」政令)に基づくプログラム(IMMEXプログラム)に登録された企業が実施している。
ただし、IMMEXプログラム登録企業の中には、[1]部品と原材料を海外から自社が購入し、加工した上で再輸出している企業(部材と製品の所有権が在メキシコ企業にある企業)および[2]外国企業から部品・原材料を貸与され、同様に外国企業から貸与された機械設備を用いて委託加工だけを行う企業(部材と製品の所有権は外国企業)、という2種類がある。前記恩典の対象となるのは[2]の企業で、[2]の企業が行うオペレーションを、通常は「マキラドーラ・オペレーション」と呼ぶ。マキラドーラ企業に対する税制上の恩典は、2007年11月5日付官報で公布された企業単一税(IETU)に関する各種税制恩典を定める政令の第5条に規定されていた。旧所得税法第216条BISに基づき法人所得税(ISR)を納めている企業が支払うIETUについて、一定の税額控除を認めるという内容であった。しかし、2013年秋の税制改正でIETU自体が廃止されてしまったため、以前のIETUに関する税制恩典は消滅した。税制恩典の欠如が輸出加工業の国際競争力を低下させるという関連業界の懸念を受け、メキシコ政府は2013年12月26日付官報で政令を公布し、新たな税制恩典を発表した。
新たな税制恩典は、マキラドーラ企業の課税所得(セーフ・ハーバー、もしくはSATとの協議で事前に合意された額)から、追加で費用控除を認めるというもの。控除額は、「マキラドーラ・オペレーションのために支払われた費用で、個人所得税の非課税報酬となっている人件費を2で割った額から3%分を控除した額」(政令第1条I項)と規定されている。人件費のうち個人所得税の非課税報酬となっているのは、福利厚生費(残業代、貯蓄基金、食費補助、労働者利益分配金など。それぞれ一定の上限あり)などであるが、マキラドーラ企業はこれら人件費の47%相当額を、セーフ・ハーバーなどから追加で控除できることになる。
セーフ・ハーバーとは、外国企業から投入原材料や機械設備の貸与を受けて操業しているマキラドーラ企業に適用される特別な課税ベースで、操業に供される固定資産総額の6.9%および操業コスト総額の6.5%のうち、どちらか大きい方である。
- 一時輸入
- IMMEX制度の基本的な登録・維持要件
IMMEX登録を得てこれを維持するためには、基本的に次の要件を満たさなければならない。- 所得税法に則り、所得税を納税するメキシコ居住の法人であること。
- 年間50万ドル相当以上か、または、年間総売上の10%以上を輸出すること。
- SATの高度電子署名(FIEL)証明書を有すること。
- 現行の連邦納税者登録(RFC)を有すること。
- 税務上の住所ならびにIMMEX操業を行う他の住所がRFCに登録してあり、かつその登録内容が現状と一致していること。
- 貿易オペレーションに関する年次報告の提出。
- 国立統計地理情報院(INEGI)に対する月次報告。
- IMMEX政令添付Ⅳに基づく輸入品の在庫管理。
2010年12月のIMMEX政令改正によって、一部一般登録要件が厳格化された。また、従来はサービスIMMEX形態で登録する企業、およびセンシティブ品目を取り扱う企業にのみ求められていた「投資計画」の提出が、2016年改正ではすべての新規登録に義務付けられた。
- 2015年以降もIVAが保税となるための認定制度
2013年10月に国会を通過した税制改革の結果、IMMEX、戦略的保税区域(RFE)、完成車メーカーの保税倉庫などへの一時輸入においては、原則としてIVAが課税されることとなる一方で、企業認定制度による救済措置が取られた。同制度で認定された企業は、従来どおりの保税輸入が可能との内容で、2014年中に認定制度の詳細が公布され、2015年から発効するとなっていた。政府は2014年1月1日付官報で「2013年度の貿易に関する一般規則」(SAT貿易細則)第6次改定を公布し、この中で一時輸入におけるIVA課税の免除に関する企業認定スキームを示した。本認定制度では3つのレベルのカテゴリーが設定されており、AからAAAの順に利点が多くなり、その順番で認定要件は厳しくなる(表1参照)。
まず、すべてのカテゴリーで必要となる基本要件を満たす必要がある。税務義務履行証明(通称「Opinión Positiva」)や、従業員の社会保険庁(IMSS)加入証明などである。また、IMMEXを適正に利用していることの証明も必要となる。基本要件で重要なのは、「直近12カ月において一時輸入品の60%以上について再輸出(IMMEX登録企業へのバーチャル輸出を含む)を行う」という要件である。なお、HSコード72類の鋼材を一時輸入する企業には、より高い基準や追加書類が求められる。
AA、AAAのカテゴリーは、(Aの要件を満たすことに加えて)原則、操業経験の長さ、または企業規模の大きさが求められ、かつ部品・原材料のサプライヤーの税務義務履行証明も準備する必要がある。
ジェトロ:表1 IVA・IEPSモダリティーの主な認定要件(変更後)(118KB)
各カテゴリーの利点は、IVA保税を続けるという目的に沿っていれば、どれも利用可能である(表2参照)。AA、AAAにある「査察通知前自己修正機会の提供」とは、通常、SATが納税者の申告に疑義を抱いて納税者への査察を行う際には査察指令書(Orden de Visita Domicialia)という文書を納税者に送付し、その中で査察日時と場所を指定し、代表者にその場所・日時にいるよう要請するが、その査察通知前に納税者が自ら納税申告内容を修正する機会を与えることを意味するとみられる。
ジェトロ:表2 IVA・IEPSモダリティーの主な恩典(カテゴリー別)(103KB)
なお、認定を受ける際に登録した情報に変更がある場合、情報の内容に応じた所定期間内に変更を行わないと認定取り消し事由になるので、登録情報管理には注意が必要である。取り消されると、2年間は再申請ができない。そのほかの認定取り消し事由としては、査察の拒否、在庫管理における記録と実態との差異(10万ペソ超)検出などがある。
2016年5月のSAT貿易細則改定により、保税認定制度は「企業認定スキーム登録制度(RECE)」(後述)のカテゴリーに統合され、一時輸入滞留期間が36カ月に延長されたほか、各種通関手続きの円滑化や簡素化のメリットが拡大したが、2020年7月に正反対の改定が実施され、IVA・IEPS保税認定などの恩典が大きく削減された。削除される恩典は表2のとおりだが、特に重要な変更はIVA還付迅速化の恩典と保税滞留期間延長の恩典がいずれもなくなることである。IVA・IEPS保税認定企業には、カテゴリーに応じて一般の企業よりもIVA還付の法定審査機関(申請から40営業日以内)が短くなる恩典があったが、これが消滅した。また、2016年5月の改定で36カ月に延長された一時輸入滞留期間も18カ月に短縮された。なお、今回の改定は2020年7月27日に発効したが、附則第2条に基づき、現時点で有効な認定を持つ企業は現行認定の有効期限までは従来の恩典を享受でき、恩典は更新時に消滅する。
Recinto Fiscalizado Estratégico(戦略的保税区域)
戦略的保税区域は、2002年の戦略的保税区域(RFE)設置政令、2016年2月の「戦略保税区域とその活用スキームを奨励する政令」、SAT貿易細則等により規定されている。
戦略的保税区域は、大蔵公債省の認可によって開設されるが、同認可は二段階制を採る。まず、税関に隣接する指定保税区域(Recinto Fiscalizado)または港湾区域(Recinto Portuario)内、もしくはこれらに隣接する土地について、使用権を有する者に戦略的保税区域全体の管理運営権が認可される(便宜上、「運営認可」とする)。次に、同認可済み戦略的保税区域内において、貨物の蔵置・点検・改装・仕分け・加工・製造・展示等を行う利用者登録が認可される(便宜上、「利用認可」とする)。前者を取得した者は、「利用認可」の取得は認められない。いずれの認可も、1回の有効期間は20年で更新が可能である。
戦略的保税区域への貨物搬入においては、輸出入関税、相殺関税の支払い、動植物検疫、厚生・環境・公安関係以外の分野での非関税障壁/NOMの履行が免除される。しかし、税関法第63-A条の規制は除かれるため、例えばUSMCA2.5条1項等、商品輸出による部材の輸入税の繰り延べを禁じたルールは適用される。
また、前述のIVA・IEPS保税認定は申請と同時に付与され、所要期間が短縮された。円滑な事業開始が可能となった(要件を満たすことは必要)ほか、修正申告の利便性や特定部門別輸入業者登録の即時認可などの恩典が図られている。
なお、戦略的保税区域内における搬入貨物の滞留許容期間は、部品・原材料は60カ月、機械設備はRFE利用認可の有効期限まで(延長可)であった。しかし、大蔵公債省が2023年4月25日に2023年の貿易に関する一般規則(RGCE2023)の第2次改正を官報で公布し、貨物における滞留許容期間が、60カ月から24カ月に大幅に短縮された。
区域内からの搬出では、確定輸入(外国貨物)、確定輸出(内国貨物)、国外または国内返送、IMMEX企業による一時輸入、保税蔵地所・保税倉庫・他の戦略的保税地域への移転、などが可能である。
企業認定スキーム登録制度(RECE)
- 概要
SATが貿易事業者を特定し、認定企業に恩典を与える措置を開始したのは、2002年末の税関法改正時である。開始当時は、輸入規模の大きな事業者を信頼に足る企業と認定し、通関手続きの円滑化や簡素化などの恩典を与える制度であった。しかし、2011年末のSAT貿易細則改定に基づき、米国の「C-TPAT(テロ行為防止のための税関・産業界パートナーシップ)」などをモデルとした認可経済事業者(AEO)制度(新認定企業制度:NEEC)が導入されたのを機に、それまでの認定企業への恩典を再編し、企業規模よりも物流セキュリティーに重点を置いた優遇制度に変更した。
その後、2013年末の税制改正に基づき、保税加工プログラム(IMMEX)などを適用した一時輸入におけるIVA保税の恩典を、SAT認定企業に限定するIVA/IEPS保税認定制度が2015年1月から導入された。その結果、例えばIMMEX企業が対象となる企業認定制度としては、IVA保税のための認定と通関手続き円滑化・簡素化のための認定という2つの認定が存在することになった。加えて、通関手続き円滑化・簡素化のための認定においては、輸入額などの企業規模が基準となる認定(認定要件「B」および「D」)と物流セキュリティーのコンプライアンスが基準となる認定(認定要件「L」=NEEC)に分かれるという、複雑な構造となっていた。そこで2016年5月のSAT貿易細則の改定においては、「企業認定スキーム登録制度(RECE)」という1つの大きな企業認定制度の下で、それまで重複していた認定要件や恩典を統合する再整理が行われた。
前記改定に基づき、IMMEX企業が対象となる認定制度は「IVA・IEPS」モダリティーと「AEO」モダリティーの2種類に集約され、従来の通関手続き円滑化・簡素化のための認定カテゴリー「B」(直近半年間の輸入額が2億ペソ以上)および「D」(100人以上の従業員、25万ドル以上の設備・機器の保有など)については廃止された(表3参照)。
ジェトロ:表3 認定企業登録制度の変更(85KB)
- 登録要件
SAT貿易監査総局(Administración General de Auditoría de Comercio Exterior、通称「AGACE」)による認定企業登録認可を得るための基本要件は、次のとおりである(税関法第100-A条)。
- メキシコ法に則って設立された法人であること。
- 納税義務を履行していること。
- SAT貿易細則の定める基準に従い、通関関連法規の履行実績があることを証明すること。
- 輸送業者を指名すること。
なお、a.~d.の基本要件に加え、本登録対象企業の規模や業種に基づく類型ごとの個別要件も存在する。
- NEEC(=AEO)の導入
AEOモダリティーの前身となるNEECは、米国の「C-TPAT」などをモデルとした認可経済事業者(AEO)制度で、2008年に試験的プロジェクトとして考案された「安全な通商のための同盟(ACS)」を本格的な制度として発足させたものである。
本制度の主務官庁である国税庁(SAT)の長官によれば、「徴税」と「貿易円滑化」という観点に加え、税関に関して国際的な課題となっている「国の安全確保」の観点を考慮して導入されたのがNEECであり、世界税関機構(WCO)の「フレームワーク・オブ・スタンダード(国際貿易の安全確保および円滑化のための基準の枠組み)」に準拠したAEO制度である。
2016年5月のSAT貿易細則改定により、新制度の枠組みの中でNEECからAEOに改称された。AEOは、従来の認定企業制度で問われた輸入額の大きさは問題としないため、中小企業でも認可対象となり得るが、税務、通関、安全性という3分野でのコンプライアンスが認可条件となる。
AEOの認可を受けた企業は、[1]専用通関レーンの利用、[2]通関手続きの円滑化、[3]行政手続きの簡素化・円滑化、[4]時間外通関・優先通関、[5]開梱(かいこん)検査を伴わない、機器(X線やガンマ線利用機器)を用いた貨物検査、などの恩典が与えられる。具体的な恩典は、2018年度のSAT貿易細則第7.3.3~7.3.7に規定されている。AEOの認可を受けるためには、税務、通関、物流セキュリティーの3分野におけるコンプライアンスの徹底が認められなければならない。また、少なくとも3年間の貿易事業実績が必要で、その期間における納税義務の履行や適正な通関手続きの履行が検査されるとともに、物流の安全性に関し、次の11項目をクリアする必要がある。
- サプライヤー・チェーンにおける安全対策
- 関連施設の安全性と安全対策
- 関連施設へのアクセス管理
- 取引相手の安全性および信頼性の確保
- 製造・流通プロセスにおける安全性
- 通関手続きの適正な履行と管理
- 輸送手段・コンテナの安全性
- 従業員の安全性
- 情報・書類の安全性
- 物流セキュリティーに関する研修プログラム
- 事故の管理と調査
この11項目については、申請者が「企業プロフィール」と呼ばれるフォーマットに各項目別の自己評価を記載し、所定のAEO判定申請書に電子媒体で別添する形で、SAT貿易監査総局(AGACE)に提出する必要がある。
数十ページに及ぶ企業プロフィールは、企業によって記入されたものをAGACEがチェックし、必要に応じて裏付け資料を求めたり現場査察を行ったりする。AGACEは原則として、申請受理から100営業日以内に、AEOとして認可するかどうか判定する。AGACEの判定を受けた企業は、30営業日以内に、AGACEに年間登録料を納めた上でAEO認可企業として正式な登録認可を申請する。AGACEは申請受理後、原則として40営業日以内に認可登録を行う。認可の有効期間は1年で、有効期限の1カ月前までに更新を申請する。
AEOの代表的恩典としては、次のようなものがある。
- 専用通関レーン(Expres)の利用
米国税関でC-TPAT認可を受けた企業が使える「FAST」レーンのメキシコ版である「Expres」レーンの利用可能企業は、2012年以降はNEEC(AEO)の認可を受けた認定企業だけである。 - 輸入申告書の部分的修正
一般の企業は、SATの許可を得て輸入申告後に1回しか修正できない輸入申告書の次のⅰ.~ⅳ.のデータについて、AEOおよびIVA・IEPS保税認定の「AA」および「AAA」の認定を受けた企業は、輸入申告後3カ月以内であれば、何度でも許可を受けずに修正可能といった恩典が与えられている。- 修正申告により、輸入者が過払いした租税の還付が必要になる場合。
- 輸入品目の修正によって非関税規制の対象となる場合、あるいはIMMEXプログラム上、特別な許可が必要な品目になる場合。
- 輸入ステータスの変更を求める場合。
- 乗用車の車両識別番号を修正する場合。
- 申告漏れや未申告の指摘を受けた際の修正申告
貨物検査や税務調査などで修正漏れや未申告の指摘を受けた場合、AEOの認可を受けた企業であれば、修正申告を出すことで罰金を軽減できる。 - V5オペレーションの実施
「V5オペレーション」とは、外国企業から部材の無償支給を受け、当該部材や加工後の製品の所有権を持たないで委託加工だけを行うIMMEX企業が製造した製品を、国内の第三者(購入者)にメキシコ国内で引き渡す際、通関手続き上はIMMEX企業が外国企業に製品を再輸出し、国内購入者(第三者)が外国居住者から製品を確定輸入したとするオペレーション。IMMEX企業にとっては、一時輸入した部材の輸入ステータスを変更する必要がなく、外国企業にとっては委託加工後の製品の所有権をメキシコ国内のIMMEX企業に移すことなく国内第三者に販売できるメリットがある。このオペレーションは、AEO認可を受けた企業とIVA・IEPS保税認定の「AAA」の認定を受けた企業だけに認められる。 - バーチャル一時輸入調達した部材の滞留期間も6カ月ではなく36カ月
2010年末のSAT貿易細則の改定に基づき、IMMEX企業がメキシコ国内で他のIMMEX企業からバーチャル一時輸入調達した部材の滞留期間は、直接外国から一時輸入した部材の滞留期間である18カ月ではなく6カ月となっているが、認定企業の場合は36カ月となっていた。2016年5月および2017年4月のSAT貿易細則の改定により、バーチャル一時輸入調達した部材の滞留期間が6カ月に短縮されない例外として、「AEOの認可を受けた企業、あるいはIVA/IEPS保税認定の「AAA」の認定を受けた企業」が規定されている(第4.3.19則)ため、現在はAEO、あるいはIVA・IEPS保税認定の「AAA」でないとバーチャル輸入調達した部材の一時輸入滞留期間が36カ月とはならない。
Zonas Libre de Frontera Norte(北部国境地帯経済特区)
AMLO政権下で2019年1月1日に導入された北部国境地帯の減税措置。法人所得税(ISR)税率を30%から20%に引き下げ、付加価値税(IVA)税率を16%から8%へ引き下げることにより、同地域の経済活性化と雇用の増加を図るもの。同じく1月1日に施行された、一般日給最低賃金の引き上げと併せ、米国への移民流出の抑制を狙う。減税が適用されるのは、バハカリフォルニア、ソノラ、チワワ、コアウイラ、ヌエボレオン、タマウリパスの5州の合計43市町村。
法人所得税(ISR)の減税策は、対象地域で90%以上の収入を上げる法人および個人事業者に対し、所得税(ISR)30%の3分の1に相当する税務クレジットを与える。ただし、北部国境地帯源泉の所得に対してのみクレジットが適用できる。原則として、同地域において18カ月以上の操業実績があることを示すことが条件とされるが、新規に事業を立ち上げる場合には、同地域で新規に固定資産を取得すれば、適用対象となる。税務上の住所が同地域にない場合でも、支店などがあれば、その売上高について税控除を申請できる。
金融・保険業、士業、人材派遣業、農業、畜産業、漁業、林業のほか、所得税法第181条および第182条に基づき課税所得を算出するマキラドーラ・オペレーションを行う事業者については、適用対象外。
付加価値税(IVA)の減税策は、北部国境地域における事業所や施設において、物品の譲渡、サービス提供、物品のリースに関する活動を行う法人もしくは個人事業者に対して、IVA適用料率に通常の50%(16%→8%)のクレジットが付与される。具体的にはIVA税率8%の電子インボイス(CFDI)が発行できることになる。条件として、物品の引き渡し、リースの提供、独立したサービスの提供が北部国境地域内で実行されなければならない。なお、物品・サービスの輸入、不動産および無形資産の譲渡取引、eコマースにはクレジットが適用できない。
なお、2020年12月30日、南部国境地帯の23市町村にも同様のインセンティブを付与する政令が公布された。適用可能な市町村は4州の23市町村で以下のとおり。
- キンタナロー州:オソン・P・ブランコ(チェトゥマル)
- チアパス州:パレンケ、オコシンゴ、ベネメリト・デ・ラス・アメリカス、マルケス・デ・コミージャス、マラビージャ・テネハパ、ラス・マルガリータス、ラ・トリニタリア、フロンテラ・コマルパ、アマテナンゴ・デ・ラ・フロンテラ、マサパ・デ・マデロ、モトシントラ、タパチュラ、カカオアタン、ウニオン・フアレス、トゥクストラ・チコ、メタパ、フロンテラ・イダルゴ、スチアテ
- カンペチェ州:カラクムル、カンデラリア
- タバスコ州:バランカン、テノシケ
Zona Libre de Chetumal(南部国境地域チェトゥマル経済特区)
AMLO政権下で、2020年12月31日に導入された、ベリーズとの南部国境に位置するキンタナロー州チェトゥマル市における減税措置。同地域内に輸入する商品の輸入関税(IGI)と税関手数料(DTA)を免除し、同地域の経済活性化と雇用創出を図る。適用期間は、2021年1月1日~2024年12月31日まで。インセンティブを享受できるのは商業やサービス業に従事する企業で、製造業や建設業などは対象外。経済省への書面による申請が必要で、経済省は書面受理から5営業日以内に承認を行う。
テワンテペック地峡進出企業への税制インセンティブ
メキシコ政府は2023年6月5日、連邦官報を公布し、現政権の4大プロジェクトの1つである、テワンテペック地峡開発プロジェクトで計画される10カ所の工業地帯に適用される税制インセンティブを発表した。ただし、2023年5月12日付官報では6拠点が特定されているが、4拠点は未確定となっている。確定している工業地帯6カ所は以下のとおり。
- ベラクルス州:コアツァコアルコス1、コアツァコアルコス2、テキステペック、サンフアン・エバンヘリスタ
- オアハカ州:サリナ・クルス、サンブラス・アテンパ
各拠点で工業団地などを開発するデベロッパーと同拠点の土地を取得した上で特定の生産活動を行う企業には、所得税(ISR)の恩典と付加価値税(IVA)の恩典が付与される。特定の生産活動とは以下のとおり。
電気・電子、半導体、自動車(電動車)、自動車部品・輸送機器、医療機器、製薬、アグロインダストリー、発電・配電機器(クリーンエネルギー)、機械・機器、情報通信技術、金属・石油化学、テワンテペック地峡開発公社(CIIT)運営審議会が定める他の活動
所得税(ISR)のインセンティブとしては、進出企業が税制恩典を受ける要件を満たすことを大蔵公債省が認定する確認証書が発行されてから3年間は100%に相当する税額控除(タックスクレジット)が与えられ、月次予定納税あるいは確定申告納税時に収めるべき本来の税額から控除可能となる。その後、3年間の50%、あるいは90%の免除。ただし、90%の免税率(控除率)が適用されるのは、大蔵公債省が政令発効後90日以内に定める指針に基づく雇用水準を上回った企業に限られる。さらに、設立から6年間は、ISR法が定める償却率にかかわらず、設備投資の全額について、当該設備を利用した最初の年、あるいは翌年に一括で損金算入することを認める設備投資の即時償却がある。ただし、ISR法第181~182条に基づくマキラドーラ・オペレーションなど他の優遇措置を併用することはできない。
付加価値税(IVA)のインセンティブとしては、本政令の公布翌日から4年間、詳細な地域が定められていない4拠点については、CIITの行政文書の公布後、域内の取引にIVAが課税免除となる。なお、拠点内の取引、あるいは別の拠点に進出する企業との間の取引に限定して、恩典が適用される。
その他
特になし。