関税制度
最終更新日:2023年07月06日
管轄官庁
開発商工サービス省貿易審議会(CAMEX)の運営執行委員会が、関税率を決定する。
財務省、開発商工サービス省の創設とその組織構成
2023年に発足したルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ(ルーラ)政権は、前政権下の2019年に経済省として統合された財務省、開発商工サービス省、予算企画省、労働雇用省の4つの省を、改めて個別の省に分割・再編した。
財務省
財務省(MF)は、2023年1月1日付の政令第11344号附属書Ⅰにより、財務検察総局と次の6つの局で構成されている。
- ブラジル国税特別局(Secretaria Especial da Receita Federal do Brasil – RFB)
連邦税(輸入税、工業製品税等)、PIS/COFINS(社会統合基金・公務員厚生年金および社会保険融資負担金)の管理。
- 国家財務局(Secretaria do Tesouro Nacional)
- 国際関係局(Secretaria de Assuntos Internacionais)
- 経済政策局(Secretaria de Política Econômica)
- 経済改革局(Secretaria de Reformas Econômicas)
- 税制改革特別局(Secretaria Extraordinária da Reforma Tributária)
開発商工サービス省
開発商工サービス省(MDIC)は、2023年3月2日付政令第11427号附属書Ⅰにより、次の3つの執行局(Secretaria-Executiva)と5つの政策局(Secretaria)が設けられた。
- 貿易審議会執行局(Secretaria-Executiva da Câmara de Comércio Exterior - CAMEX)
- 国家産業開発評議会執行局(Secretaria-Executiva do Conselho Nacional de Desenvolvimento Industrial)
- 国家輸出加工ゾーン評議会執行局(Secretaria-Executiva do Conselho Nacional das Zonas de Processamento de Exportação)
5つの政策局は次のとおり。
- 貿易局(Secretaria de Comércio Exterior - SECEX):輸出入貿易管理の全般
- 貿易業務部(Departamento de Operações de Comércio Exterior)
- 国際交渉部(Departamento de Negociações Internacionais)
- 商業防衛部(Departamento de Defesa Comercial):アンチ・ダンピング製品の監視。
- 商業計画情報部(Departamento de Planejamento e Inteligência Comercail)
- 輸出・輸出文化・通商簡素化促進部(Departamento de Promoção das Exportações, Cultura Exportadora e Facilitação de Comércio)
- 工業・イノベーション・商業・サービス開発局(Secretaria de Desenvolvimento Industrial, Inovação, Comércio e Serviços)
- グリーン経済・脱炭素・バイオ産業局(Secretaria de Economia Verde, Descarbonização e Bioindústria)
- 零細小企業・起業家支援局(Secretaria da Microempresa e Empresa de Pequeno Porte e do Empreendedorismo)
- 競争力・規制政策局(Secretaria de Competitividade e Política Regulatória)
関税率問い合わせ先
貿易統合システムSISCOMEXからリンクされているシミュレータや、開発商工サービス省のウェブサイトで確認する。また、民間業者も、最新の関税率を確認できるオンラインサービスを提供している。
輸出入業者登録(RADAR)に登録されている企業か否かを問わず、SISCOMEXポータルサイトからリンクされているブラジル国税特別局の課税・輸入規制管理シミュレータにメルコスール共通関税番号(NCM)の品目コードを入力することで、輸入にかかる連邦税率を確認することができる。法的根拠は開発商工サービス省のウェブサイトやSISCOMEXポータルサイトから参照することが可能。その他、税関関係専門の出版社であるAduaneiras社が、「TEC-WIN」という日本関税協会が発行する「Zeirom」に類似したソフトやウェブサービスを販売している。リオデジャネイロのINFOCONSULT社では、ウェブ上での製品区分・関税率・関連法令の検索サービスを「Sistema TECWEB」として提供している。
なお、国際関税協会のHSコードなどの規定変更に応じて、ブラジルの関税率表も更新される。
関税体系
基本税率、暫定税率、地域協定譲許税率(ALADI、メルコスール)、協定譲許税率(GATT)、発展途上国間特恵税率
最新のNCM関税率表解釈の第7回目の改正内容は、2021年12月6日付ブラジル国税特別局(RFB)細則第2054号に規定されている。2022年1月1日から発効している。
また、貿易取引条件とその解釈に関する国際規則であるインコタームズを2011年から正式に採用しており、2020年3月2日付貿易審議会決議第16号にて、インコタームズ2020を正式採用した。
品目分類
HS分類をベースとしたメルコスール共通関税番号(NCM)。最初の6ケタは、日本の関税番号と同一解釈。
関税の種類
従価税
課税基準
輸入の課税対象額は、原則CIF価格であるが、租税の種類により異なる。輸出は、FOB価格が課税対象額となる。
詳細は「関税以外の諸税」参照
対日輸入適用税率
基本税率の適用対象。
特恵等特別措置
ラテンアメリカ統合連合(ALADI)における貿易協定等に加え、発展途上国間特恵税率を適用。
関連法
輸入通関規定とその手順
貿易審議会運営執行委員会(GECEX)決議第272号と財務省収税局細則1788号、2054号の新関税率表および解説と通則:開発商工サービス省貿易局省令第23号、財務省連邦収税局(MF/RFB)細則ほか。
輸出入手続き関連
- 関税規則:2009年2月5日付政令第6759号。2023年6月までに13回の改正・変更あり。
- 統一輸出入規定:開発商工サービス省貿易局(SECEX)2011年7月14日付省令第23号。2023年6月までに、354回の変更、改正、廃止を繰り返している。
- 輸入通関規定とその手順:2006年10月2日付ブラジル国税特別局(RFB)細則第680号に規定。ブラジルの輸入通関に関する基本法令/細則で、2023年6月までに25回の変更、改正、修正、廃止が繰り返されている。
- 輸出入業者登録制度:2020年10月27日付RFB細則第1984号に、輸出入業者登録制度に相当する通関業者活動追跡登録(RADAR・ハダール)の資格取得申請に関する規定あり。
- RADAR審査要綱細則:2020年10月29日付税関運営総合調整部(Coana)省令第72号。
- 情報通信関連機器財、資本財の輸入税低減規定(Ex-Tarifárioシステム):2019年7月24日付経済省省令第309号に規定。
- 輸出通関規定とその手順:1994年4月27日付RFB細則第28号、2006年1月18日付同第611号。いずれも、2023年6月までに15回近い改正・変更がある。
関税以外の諸税
工業製品税(IPI)、商品流通サービス税(ICMS)、社会統合基金(PIS)、社会保険融資負担金(COFINS)、商船隊更新追加税(AFRMM)
詳細は「税制」参照。
Ex-Tarifárioシステム(例外関税)
国産品が存在しない資本財、情報通信関連機器に対する関税率の低減措置として、“Ex-Tarifário”(例外関税制度)が設けられている。関税改革法である1957年8月14日付法令第3244号第4条の規定に基づき、2019年6月24日付経済省(ME)省令第309号に規則が定められている。2023年6月現在、資本財(BK)および情報通信機器(BIT)については0%、自動車部品については0%または2%の税率が適用されている。
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Ex-Tarifárioの関税率(ブラジルにおける輸入税(II))の免税の適用品目
国産類似品がない資本財、情報通信関連機器、およびそれらの部品と構成品で、現行のメルコスール対外共通関税(TEC)のNCM品目コードに資本財(BK)、情報通信機器(BIT)として表示されている品目が対象で、一定期間、関税率ゼロ%を適用するシステム。TECを採用するメルコスール加盟各国に承認されている。また、自動車部品(Autopeças)を国内非生産自動車部品制度に基づき輸入する場合、国内生産同等品のない部品に対する減税措置については2022年7月20日付同決議第368号、国内に同等品の生産能力のないことが証明された場合の減免措置については2021年12月21日付同決議第285号の規定に従って申請しなければならない。 -
Ex-Tarifárioシステムの関税ゼロ%の適用を希望する申請企業
経済省の電子情報システム(SEI)の外部利用者としての登録を有する企業や業界団体が申請可能。申請企業が製造業者でなければならないかについては、現行法規では限定されていないため、中間業者である輸出入商社、または業界団体を通じての申請も可能。 - 申請要領
新規申請や、現在認可されている既存のアイテムの更新、変更、あるいは廃止に関する申請は、SEIに申請者のデータを登録後、入力フォームに従い対象機器のデータを記入し、技術カタログ(ポルトガル語翻訳済みのもの)をシステム上で添付して行う。申請内容は、少なくとも次の内容に則している必要がある。
- HSコードの第ⅩⅥ節注釈3, 4で規定される機械・製造装置の組合せであったとしても、単一のNCM品目コードに対応した資本財であること。
- 一定の様式に従ったEx-Tarifárioの記述方法案が示されていること。
- カタログ原本および輸入される資本財の見積書が添付され、ポルトガル語で書かれていない場合には、翻訳されていること。技術文献が不可欠な場合は、同様に翻訳されていること。
- 資本財の特徴に関する詳細、スペック、国内製品の存在が確認されている場合は、技術的な差異。
- 次項a~dの審査基準に適合する場合、必要な証拠書類を添付し、その旨の説明がされていること。
- 申請に関する通知・連絡の送付先となる有効な電子メールアドレス。
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Ex-Tarifárioの関税ゼロ%申請の審査、分析と認可
受理された申請書類の各データが、所定の要綱に載っているかどうかの事前のチェックを経て、申請された当該機械設備が国産されているかどうか証明・判定のため、開発商工サービス省のウェブサイトにパブリック・コメントの募集として、申請機器の記述、技術仕様などがカタログと一緒に公示される。記載日から20日以内に国内メーカーからの異議申し立てがない場合には「国産類似品なし」と判定され、次の段階で、免税申請の趣旨が次のa~dの観点に沿っているかどうかの審査が行われる。- 政府政策指針
- 新技術の吸収か
- インフラ改善のための投資
- 技術・安全性の規則法規の面で、ブラジル国内で生産される資本財と同等の扱いであるかどうか
生産性・雇用・競争力特別局商工サービス・イノベーション局(SEPEC/SDIC)によって分析された内容を基に、貿易審議会通商戦略副局(CAMEX/SEC)の諮問を受けつつ、通商貿易・国際関係特別局(SECINT)が関税ゼロ%の適用是非を決定し、連邦官報に記載する。有効期間は通常2年である。
なお、Ex-Tarifárioによらない、一般製品に対する輸入税の減免税申請については、メルコスール全加盟国の同意が必要となるため、ブラジルが一方的に決定することはできない。一般企業からの免税申請は、通常その企業が所属する業界団体を通して経済省に提出できるが、申請された対象物品に関する連邦政府各省、州政府、市政府、政府直轄公社などの意見調整後、メルコスールの会議に掛けられるまでに最低1~2年を要する。
- 国内の機械設備メーカーによる国産可能性に関する異議申し立て
開発商工サービス省のウェブサイトのパブリック・コメントの募集として公示された対象機器に対して、国内メーカー、あるいは業界団体が、類似国産機器の存在の可能性があると判断した場合は、SEIを通して異議申し立てを行うことができる。その場合は、充分な根拠となる技術的データ、申請機器との技術的特徴・相違点などの説明資料を添付しなければならない。
その他
Ex-Tarifárioをはじめとした関税等の減税措置、恩典(ドローバック制度、ほか)
- 自動車メーカーに対する恩典
自動車産業の高度化を目的に、2012年に制定された自動車政策Inovar-Autoプログラムは2017年12月30日に終了し、新たにRota2030プログラムとして定められた。燃費効率ラベルや運転支援技術の義務化や採用目標、ブラジル国内での研究開発投資等の条件と並び、国内非生産自動車部品輸入制度として、国内で生産されていない自動車部品に対する輸入税の免除措置が設けられている。 - 航空機および航空機部品輸入に対する恩典
2010年8月5日付CAMEX決議第55号に基づき、次の機器、部品等については、輸入税が0%。- 航空機
- 地上航空訓練用機器・同部品
- a.に該当する航空機の生産・修理・メンテナンス・調整などに使用する部品・機器等(関税番号で指定)は、輸入税が0%。
航空機関係の主要な部品・構成品・材料などの輸入は、民間航空管理調整委員会(COTAC)が管理している。
ドローバック制度の輸入恩典
輸出産品に使用される輸入部品・資材・副資材(国内調達品にも適用)などは、保留、免税・償還方式によるドローバック制度を適用すれば、輸入税、工業製品税(IPI)、商品流通サービス税(ICMS)、社会負担金(PIS/COFINS)、商船隊更新追加税(ARFMM)など、ほとんどの税金、社会負担金が保留、または免税となる。
ドローバック制度の細則は、2020年7月24日付経済省貿易局(SECEX)省令(Portaria)第44号を参照。
ドローバック特別制度の課税方式は、基本的に3つあり、「保留形式(諸税保留ドローバック)」と「免税方式(諸税免税ドローバック)」が開発商工サービス省貿易局(SECEX)の管理と権限によって適用され、「税金還付方式」はブラジル国税特別局(RFB)の管轄・権限となっている。
輸出振興の税務恩典制度「レインテグラ(REINTEGRA)」
2011年12月14日付法令12546号で創設された輸出企業に対する特別税務恩典制度で「レインテグラ(REINTEGRA)」と呼ばれる。当初の税務恩典は、輸出額に対して3%の払い戻しであったが、その後2018年までの7年間に幾つかの改正・変更を経て、2015年には1%に引き下げられ、同年12月から2016年末までは0.1%となり、2017年1月から再び2%に引き上げられた。しかし、2018年5月30日付政令第9393号により同年6月1日より0.1%に戻って、現在に至っている。
- レインテグラ制度の対象で輸出製品と基本条件
- ブラジル国内で製造された物品であること
- 2015年2月27日付大統領令第8415号附属書の工業製品税(IPI)表のNCMコードに該当する製品
- 輸出製品の原価内訳のうち、輸入資材の割合が大統領令第8415号で設定された割合を上回らないこと(対象輸出物品のうち、9割以上の物品の輸入比許容率は40%となっている。ただし、航空機、宇宙飛行体(88類)、高額、測定、検査、医療機器類(90類および30.36類の一部の医療関連機器を含む)、時計(91類)の場合は65%まで)となっている。
- 税務恩典の享受(クレジット)金額の計算
レインテグラ制度に該当する製品を輸出する法人は、次の割合(%)を適用して恩典金額を計算する。- 2015年12月1日より2016年5月31日まで:0.1%
- 2017年1月1日より2018年5月31日まで:2.0%
- 2018年6月1日より現在まで:0.1%
- レインテグラ制度を適用して計算されたクレジットは、次の割合(%)が適用される。
- PIS(社会統合計画基金)の名目で返金される割合:17.84%
- COFINS(社会保障金融負担金)の名目で返金される割合:82.16%
- レインテグラ制度を適用して計算されたクレジットの使用は、ブラジル国税特別局が管理する社会負担税の支払いの際、輸出者自身が支払い義務のある満期となった、あるいは満期に近づいた社会負担金と相殺することができる。
- レインテグラの払い戻し申請
レインテグラ制度を適用して算出されたクレジットの申請は、電子操作のPER/DCOMP(Pedido Eletrônico de Restituicão, Ressarcimento ou Reembolso Declaração de Compensação)と呼ばれるプログラムを使用して申請する。手続きは極めて煩雑で、クレジットが許可される期間は、申請日から5年。申請企業の連邦政府関連諸税の滞納がある場合は、許可の対象とならない。
- 関連法規:レインテグラおよび工業製品税率表
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- 1997年3月14日付法律(Lei)第9440号:地方開発のための税務恩典創設
- 1999年8月23日付法律第9826号:法令第9440号に関する工業製品税率表の変更
- 2011年12月14日付法律第12546号:特別税務恩典制度の創設ほか
- 2014年11月13日付法律第13043号:税務金融関連法規の中で、同制度の再創設(Ⅵ節、21条)
- 2011年12月1日付政令(Decreto)第7633号:細則
- 2015年2月27日付政令第8415号:細則
- 2014年9月30日付財務省(MF)省令(Portaria)第428号:クレジット割合に関する規定の修正
- ブラジル国税特別局(RFB)2021年12月6日付細則(Instrução Normativa)第2055号:返金、相殺、補償、償還に関する規定