税制
最終更新日:2023年07月12日
- 最近の制度変更
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2024年9月12日
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2023年11月30日
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法人税
法人所得税(IRPJ)は実質利益に対し課税され、基本税率15%。月額2万レアル(年間24万レアル)を超える利益にはさらに10%課税。税金ではないが法人利益に対し9%の社会負担金(CSLL)の支払いも必要。したがって、実質的な法人税率は34%となる。
後述の「その他税制」を参照。
二国間租税条約
日本とブラジルは租税条約を締結しており、ブラジルの国内法と同租税条約のいずれか有利な方を選択できる。源泉所得税率は通常15%だが、同条約により12.5%を適用。
日伯租税条約
ブラジルと日本は、重複課税を避けるための日伯租税条約を1967年に締結〔1967年12月14日付行政令第61899号〕。ブラジルでは連邦税の所得税(法人および個人)が、日本では所得税と法人税が条約の対象となる。ブラジルに設立した会社が日本の子会社ではない場合や日本以外の関連会社と取引した場合、日伯租税条約は適用されない。租税条約に基づき税の軽減または免除を受けようとする場合には、「租税条約に関する届出書」を納税地の所轄税務署に提出する。
日伯間の主な取引の税率は次のとおり。
- 配当金送金
租税条約がない場合の源泉所得税率は15%。租税条約により出資者である日本法人への配当金送金に対する税率は12.5%。ただし、ブラジル国内の税法改正により、1996年以降はブラジルから国外への送金を含め利益配当に対する源泉所得税は非課税となっている〔1995年12月26日付法令第9249号〕。 - 利子支払い
租税条約がない場合の源泉所得税率は15%。日本への送金の場合、条約により12.5%。なお、本租税条約における「利子」とは、公債、債券または社債(担保の有無および利得の分配を受ける権利の有無を問わない)その他のすべての種類の信用に係る債権から生じた所得およびその他の所得で当該所得が生じた締約国の税法上貸付金から生じた所得と同様に取り扱われるものをいう。 - 使用料(ロイヤルティー)支払い
- 商標権の使用料に関する源泉所得税率:25%
- 映画フィルムの著作権およびラジオ・テレビ放送用フィルム・テープの著作権の使用料に関するもの:15%
- その他の使用料:12.5%
なお、2001年のブラジル国内の税制改正により、ロイヤルティー支払いに対する税率が15%に引き下げとなっており、商標権に関してはブラジル国内法を適用する方が有利となっている。
みなし外国税額控除規定(タックススペアリングクレジット)
日伯租税条約第22条は「みなし外国税額控除」の規定を定めており、配当金およびロイヤルティーは25%、利子は20%がブラジル国内で課税されたとみなし、日本側での課税額から控除することが認められている。なお、同租税条約は商標権の使用料についてはみなし税額控除の対象にしていない。
その他税制
ブラジルの税金は大きく「連邦税」、「州税」、「市税」に区分される。このほか複数の「社会負担金」が存在し、税金に準ずるものとして扱われている。ブラジル特有の移転価格税制や零細・小企業向け簡易税務申告制度もある。
税金は連邦税、州税、市税に分類でき、各行政機関(連邦政府、州政府、市)が各種税金の課税限度、各々の税法の一般規定を定めている。税ではないものの、社会負担金も存在する。ブラジルの税金体系は非常に複雑で、税金の種類は非常に多く、関連法令は頻繁に発令・改定される。地域や業種、取引形態による違いも大きい。
主な連邦税
- 個人所得税(IRPF)
実質所得への課税で、税率は月間所得に応じ7.5%、15%、22.5%、27.5%。
月間所得が2,112.00レアルまでは非課税。最高税率27.5%は月間所得が4,664.68レアルを超える場合に適用。
所得申告の際、扶養控除や医療費控除、教育控除等は一定額を上限に認められる。駐在員等の場合、労働ビザ取得後ブラジルに入国した日の翌月末を初回として所得申告が必要。家賃や自動車の供与などいわゆるフリンジベネフィットも個人所得とみなされる。国外で受け取る給与や賞与、賃貸収入等についても所得申告が必要。ブラジルと日本の両国で課税される場合には、外国税額控除の規定により二重に課税されている税額を控除できる。
また、12カ月以内のブラジルでの滞在期間が183日を超えると、税法上はブラジル居住者とみなされ、所得申告が義務となる。不動産、動産、株式譲渡などによる個人の資産譲渡益(キャピタル・ゲイン)に対しても個人所得税が課税される。税率は譲渡益の金額に応じ15~22.5%。ブラジル居住者となる前にブラジル国外に所有していた資産や預金等に対する譲渡益は課税対象外。
2024年1月以降、ブラジル居住者はブラジル国外で得た金融所得や配当金、株式売買益等の申告が必要となる。年間所得が6,000レアルを超えない場合には非課税。6,000~5万レアルまでの所得に対しては15%、5万レアルを超える所得に対しては22.5%の所得税が課税される。
- 法人所得税(IRPJ)
実質利益に対する基本税率は15%で、月額2万レアル(年額24万レアル)を超える利益には10%追加課税される。課税標準となる法人所得は、利益の算定形式(実質利益、推定利益、裁定利益)により異なる。
出資者に対し出資金に対する利息の支払いを一定の範囲で認めているが、出資者が受け取る利息に対しても法人所得税15%が課せられる〔1995年12月26日付法令第9249号〕。出資者が日本法人の場合、日伯租税条約が適用され税率は12.5%。 - 工業製品税(IPI)
輸入工業製品の通関・搬出、製造施設および製造施設とみなされる場所から工業製品を搬出する際に課税。工業製品税は付加価値に対して課せられ、仕入税額控除(クレジット)との差額を納付する。税率は製品により異なり、IPI税率表(TIPI)に基づく。
非関税の製品も多い一方、嗜好品などに対しては高い税率が適用される。輸出品は非課税。景気刺激策や国内産業保護、国内市場への製品供給等の政策的な観点から、税率は頻繁に見直される。 - 輸入税(II)
輸入品のCIF価格に対して課税され、税率は0~35%、平均税率は約14%。税率はメルコスール共通関税番号(NCMコード)ごとに定められ、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイが加盟する南米南部共同市場(メルコスール)では同一の税率を適用。メルコスール加盟国間の取引では、約85%の品目の輸入税を免除している。加盟各国は国内事情を考慮し、共通関税適用除外品目を選定し、共通関税表と異なる税率の適用が認められている。ブラジル国内では全共通関税品目の約87%の品目に対し2021年11月に10%、2022年6月にさらに10%の関税引き下げを行った。関税引き下げ期間は2023年12月末まで。
NCMコードは8ケタの数字で構成され、上6ケタは世界の主要国で使用される統計品目番号(HSコード)と共通、下2ケタがメルコスール固有のコードとなっている。ブラジルでは、類似の国産品がない資本財・情報機器・通信機器の輸入税の税率引き下げを申請できる〔2019年6月24日付経済省省令第309号〕。申請が認められると多くの場合、税率は0%または2%に引き下げられる。国産類似品のない自動車部品も免税の申請が可能〔2018年12月17日付貿易協議会決議第102号〕。
- 輸出税(IE)
通常は非課税。ある製品が国内で供給不足が起きた時などに輸出を抑えることを目的に課税される。課税対象品目は市場の状況により流動的に決められる。税率は30%だが、情勢に応じ引き下げないし引き上げが可能。上限は150%。
- 農地所有税(ITR)
都市部以外の土地の所有者に対して課税。税率は0.03~20%で、土地面積、有効利用率により異なる。土地面積が大きいほど、有効利用率が低いほど高い税率が適用される。 - 金融取引税(IOF)
金融取引に対して課税。税率は金融取引の種類により異なり、頻繁に変更される。
主な金融取引の種類と税率は次のとおり。- 債券投資の為替取引:非課税
- 企業への融資(貸付):借入期間に対し1日当たり0.0041%(上限1.5%)、借入時に固定税率0.38%。輸出融資・農業融資、工業融資特別機関(FINAME)による融資は非課税。
- 個人への融資(貸付):借入期間に対し1日当たり0.0082%(上限3.0%)、借入時に固定税率0.38%。
- 外国からの借入(いわゆる親子ローンを含む):借入期間が180日以下であれば6%、181日以上であれば非課税。2022年3月以降の外国からの借入は、借入期間にかかわらず非課税。
- 外国からの資本金送金(増資を含む):0.38%
- 保険取引:輸出信用保険・国際貨物運送保険・航空保険・保証保険・再保険等は非課税。生命保険・傷害保険・労災保険・自動車強制傷害保険は0.38%。医療保険は2.38%。その他の保険は7.38%。
- 定期預金・投資信託・国債等の運用:運用期間が30日未満の場合、運用収益に対し課税。税率は運用期間により96%から3%に逓減。運用期間が30日以上の場合は非課税。なお、運用収益から金融取引税を控除した金額に対し源泉所得税が課され、源泉所得税率は運用期間により異なる。運用期間180日まで22.5%、同360日まで20%、同720日まで17.5%、同721日以上15%。
- 輸出入取引:非課税
- 配当金、投下資本に対する利息支払いのための外国送金:非課税
- ブラジル国内で発行されたクレジットカードおよびデビットカードの海外での使用、キャッシング、トラベラーズチェックの購入:2023年1月以降の税率は5.38%、2024年1月以降は4.38%、2025年1月以降は3.38%、2026年1月以降は2.38%、2027年1月以降は1.38%に税率を引下げ、2028年1月以降は非課税とすることが決められている。
- 外貨の購入:1.1%。2028年1月以降は非課税。
主な州税
- 商品流通サービス税(ICMS)
各州で徴収される一種の付加価値税で、商品の輸入や流通取引に課税され、通信、運輸サービスなどにも適用。税率は取引の地域、種類により異なり、次のとおり。
- 同一州内および輸入取引:17~21%。
サンパウロ州は18%。アマゾナス州は20%。リオデジャネイロ州では基礎税率18%に追加税率2%を合わせ20%。 - 同一州内取引での特定製品に対する税率:憲法の定める範囲で、前項と異なる税率を定めることが認められている。
サンパウロ州での特定税率:
30%(サンパウロ州ICMS規則RICMS第55条-A:たばこなど)
25%(同規則第55条:通信サービス、酒類、香水、化粧品、250cc超のバイク、レジャーボート、武器・弾薬、ゲーム類、スポーツ用品、娯楽用品など)
20%(同規則第54条-A:一部の酒類)
12%(同規則第54条:運送サービス、肉類、小麦粉、自動車、農業機械、燃料オイル類、工業機器、情報処理機器、ジェネリック医薬品など)
7%(同規則第53条-A:避妊具および卵など)なお、酒類、たばこ類がサンパウロ州内の消費者に販売される場合には2%が追加課税される。
- 異なる州間の取引:移送元の州と移送先の州により異なる。
サンパウロ州、リオデジャネイロ州などの南東部・南部諸州から、北部・北東部・西部地域内の州およびエスピリットサント州への州間取引の税率は7%。その他の州間取引の税率は12%。税金は移送元の州で納付される。移送先の州では州内取引に対する税額と州間取引の差額の税金が納付される。 - 異なる州間での輸入品の取引:4%
輸入部品と国産部品とで作られた製品は、輸入部品比率40%超の場合、全体が輸入製品として扱われる。類似の国産品がない輸入品および基礎製造工程基準(PPB)を満たす国産品は、前項c.の規定が適用され12%または7%。 - 輸出取引:非課税
- 同一州内および輸入取引:17~21%。
- 自動車保有税(IPVA)
自動車保有者に対する課税で、車種、排気量、州により税率は異なる。
サンパウロ州の場合、バスおよびバイク、トラクター、フォークリフト、クレーン車等は2%、トラックは1.5%、リースカー、レンタカーは1%、その他の自動車は4%。製造後20年を超える自動車は非課税。2008年12月31日以前に製造され天然ガスでも稼働する車両は3%。
サンパウロ市では、環境対策の一環として車齢5年以下の電気自動車および水素自動車、ハイブリッド車の納税額の50%を還付している。 - 相続・贈与税(ITCMD)
資産や権利の相続・贈与に対する課税。税率は州により異なり、上限は8%。
サンパウロ州の税率は4%だが、以下の事由等に該当する相続・贈与の場合、非課税。- 5,000UFESP*未満の現に居住する唯一の住居を相続する場合
- 2,500UFESP未満の不動産で、それが唯一の相続財産の場合
- 1,000UFESP未満の銀行預貯金を相続する場合
- 2,500UFESP未満の贈与の場合
- 社会福祉団体、文化団体、環境保護団体等の非営利団体へ贈与する場合
*UFESPはサンパウロ州で使われる価値修正の単位で、2023年の1UFESPは34.26レアル。
主な市税
- 都市不動産所有税(IPTU)
都市部の不動産に対し課税。時価を基に算定し、税率は不動産の所在する市と用途により異なる。
サンパウロ市の場合、居住用不動産に対する税率は1%、非居住用不動産は1.5%。不動産価額により割引または割増される。 - 生存者間不動産譲渡税(ITBI)
生存者間の不動産および不動産の権利譲渡に対し課税。税率は不動産の所在する市により異なる。
サンパウロ市の税率は3%。住宅融資システム(SFH)等の融資を受けている不動産の場合、制限額までの税率は0.5%。 - サービス税(ISS)
サービス報酬に対し課される。徴税はサービス受益者が所在する市で行われる。課税対象となるサービスの種類および税率は市により異なり、最大5%、最低2%。サービスの輸出は非課税。
サンパウロ市の場合、多くのサービスに対する税率は5%だが、一部のサービスには2%、あるいは3%の税率を適用。企業誘致のため、一部の市では最低税率の2%を適用している。
サンパウロ市の税率は次のとおり。- 2%が適用されるサービス:清掃作業、保険ブローカー業、医療サービス、教育サービス、芸能・芸術・スポーツサービス、証券サービス、クレジット/デビットカードサービス、コンピュータープログラミング、調査サービス、教育サービス、警備サービス、グラフィックサービス、リース業、展示会等
- 3%が適用されるサービス:ITサポートサービス
- 5%が適用されるサービス:その他のサービス
主な社会負担金
国民の健康や年金および弱者救済を目的として徴収され、雇用主、労働者、財やサービスの輸入、連邦政府や州などが行う宝くじの収入等から負担。負担額は法人の売上高や利益、給与に対して算定される。連邦税務局が徴収し、税金に準じたものとして扱われる。
- 社会保険融資負担金(COFINS)
社会保障や医療、福祉の財源に充てられ、すべてのサービスや商品の総売上高に対して課せられる。
負担率は法人税の納付形式が累積型の場合3%、累積排除型(付加価値税方式)の場合7.6%。金融機関に対する負担率は4%。サービス・財の輸入取引も課税対象で、法人税の納付方式を問わず、サービスの輸入の場合7.6%、財の輸入の負担率は多くの場合9.65%(さらに、2023年12月31日までの輸入に対しては1%の追加負担率が課される)。累積排除型の企業の場合、金融収益にも課せられ、負担率は4%。 - 社会統合基金(PIS)・公務員厚生年金(PASEP)
失業保険や金銭的援助の財源として、社会統合基金は民間企業から、公務員厚生年金は連邦政府、州政府、市や公共団体から徴収される。
民間企業の場合、法人税の納付形式が累積型の企業および金融機関の負担率は総売上高に対して0.65%、累積排除型(付加価値税方式)の企業の負担率は1.65%。輸入取引も課税対象となり、負担率は法人税の納付方式を問わず、サービスの輸入で1.65%、財の輸入の負担率は多くの場合2.1%。累積排除型の企業の場合、金融収益にも課せられ、負担率は0.65%。 - 法人利益に対する社会負担金(CSLL)
社会保険の財源として、国内に住所を有するすべての法人と法人格扱いを受ける者に負担義務がある。
負担金標準額は法人税の税引き前利益を基に計算され、法人所得税と同時に支払う。一般法人の負担率は9%。銀行等の負担率は20%、その他の金融機関の負担率は15%。 - 特別財源負担金(CIDE)
特別財源負担金には、国産技術開発促進負担金(通称、CIDE-Tecnologia/テクノロジー特別財源負担金やCIDE-Royalties/ロイヤルティー特別財源負担金、CIDE-Remessa ao exterior/海外送金特別財源負担金)と、燃料特別財源負担金(CIDE-Combustível)の2種類がある。
国産技術開発促進負担金は国外居住者からの技術移転、技術援助、管理部門支援、ブランドの使用許可・供与、パテントの開発許可・供与の契約等に対する支払いに課せられる。法令では技術移転を伴う契約に対する送金を課税対象としているが、技術移転を伴わない送金に対しても課税を認める事例も見られ、法令解釈には不明確な点もある。負担率は支払額の10%。これらの費用を国外に送金する際、源泉所得税も徴収される(税率は15%。日本への送金では日伯租税条約が適用され12.5%。「法人所得税」、「二国間租税条約」参照)。
燃料特別財源負担金は、ガソリン、ディーゼル、ケロシン、燃料油、液化ガス、燃料エタノールおよびその派生製品の輸入・国内販売に課せられる。負担額は燃料の種類ごとに1立方メートルあるいは1トン当たりで決められ、ガソリンで1立方メートル当たり860レアル、ディーゼル燃料で1立方メートル当たり390レアル。
- その他の主な負担金
- 国立社会保障院(INSS)への負担金
国立社会保障院は国の社会保険制度を担う、社会保障省傘下の政府機関の1つ。国立社会保障院に対して支払う負担金もINSSと呼ばれる。
徴収対象は被雇用者(従業員)、役員・経営者、個人事業者、雇用者(法人)等。負担金は次のような社会保障の財源に充てられる。- 後遺障害による年金支給
- 老齢年金の支給
- 疾病、傷害などで労働能力に支障が生じた場合の手当の支給
- 低所得者への児童扶養手当の支給
- 出産前後の給与保証
- 遺族年金の支給
負担者ごとの負担率は次のとおり。
- 被雇用者(従業員):月額給与のうち1,320レアルまでは7.5%、同1,320.01~2,571.29レアルまでは9%、同2,571.30~3,856.94レアルまでは12%、同3,856.95~7,507.49レアルまでは14%で、月額給与が7,507.50レアル以上の場合の負担額は876.95レアル。
- 企業の役員・経営者:負担率は報酬月額の11%で、負担額上限は825.82レアル。役員報酬を受け取らず、配当金のみを受け取る場合の負担率は配当金額の20%で、負担額上限は1,501.50レアル。
- 雇用主(法人):支払い給与・報酬総額の20%(金融機関・保険会社は22.5%)。さらに、業務の危険度に応じ、1%、2%、3%いずれかの労働災害リスクに対する追加負担が課せられる。
建設業、旅客・貨物輸送業、自動車製造業、機械・設備製造業、繊維業、IT・通信技術産業等の17業種では、売上高を基準に納付する方式を選択することが認められている。負担率は業種により1~4.5%。
他にも、雇用主(法人)は国家教育負担金(Salário-Educação)、商工サービス業会負担金(SESI/SESC)、職業訓練所負担金(SENAI/SENAC)などの支払い義務を負う。雇用主(法人)の負担額合計は、支払給与額の約29%となる(業種などにより異なる)。
- 勤続年数保証基金(FGTS)
企業退職金に相当する制度で、雇用者側の企業に対し、従業員の退職手当の積立てを義務付けている。納付額は給与支給額の8%。教育・職業訓練プログラムの適用者に対する納付額は毎月の給与支給額の2%。企業が全額を負担する。従業員を正当な事由なく解雇する場合、雇用者は当該積立金累積額の40%相当額を上乗せして支払わなければならない。企業と従業員の両者が合意の上で雇用契約を解除する場合にも20%相当額の上乗せの支払いが必要となる。
従業員は、正当な理由なく解雇された場合(つまり、企業の一方的な都合で解雇された場合)、会社の倒産、公的年金の受給開始、70歳に達した場合、本人が死亡した場合、3年間以上にわたり勤続年数保証基金の支払い対象を外れた場合などに積立金の引出しができる。
- 国立社会保障院(INSS)への負担金
その他
税制改革動向
2023年1月に発足した新政権は、長年に亘り議論が続けられている税制改革を最重要政策課題の一つに位置付け、法制化に向けた準備を続けている。税制改革法案は2023年7月に下院を通過。議会では、欧米等の多くの国で採用されている付加価値税(VAT)を基本に、連邦税の工業製品税(IPI)、州税の製品流通サービス税(ICMS)、市税のサービス税(ISS)など5つの税金を2026年から8年掛けて統合する案を軸に検討している。
マナウスフリーゾーンの税制恩典制度は法律により2073年まで維持することが法律で決まっており、政府は税制改革後も維持していくとの声明を出しているが、詳細については公表されていない。一連の手続きが終了後、政府は税制改革第二弾として所得税や給与に対する付加費用の改革を行う意向を表明している。
移転価格税制
ブラジルの移転価格税制は1997年度に導入されたが、経済協力開発機構(OECD)ガイドラインを規範としておらず、日本や米国などのOECD加盟国の移転価格算定方法とは異なったさまざまなブラジル特有の規則が存在していた。2023年6月、2022年12月28日付暫定令第1152号を採択する2023年6月14日付法令第14596号が成立。同法令によりブラジルの移転価格制度が、ブラジルの歴史的な「算定式ベース」からOECDが定めるガイドラインに沿った「独立企業間原則」に移行するなど、ブラジルの移転価格税制が大幅に変更となる内容となっている。発効日は2024年1月1日だが、2023年1月1日からの早期適用が認められている。
連結納税制度
米国や日本などで導入されている企業グループ全体の課税額を一括して計算できる連結納税制度は採用されていない。そのため、グループ内の企業各社は個別に所得税申告を行う必要がある。
過少資本税制
ブラジルは2010年より過少資本税制を導入しており、ブラジル企業が借入金利息を税務上損金算入するためには、以下の要件を満たす必要がある。超過部分は損金算入が認められない。
- 貸手がブラジル企業の持分を保有する場合
貸手からの借入金総額が、貸手の出資額の2倍を超えない。 - 貸手がブラジル企業の持分を保有しない場合
貸手からの借入金総額が、ブラジル企業の純資産総額の2倍を超えない。
零細・小企業向け簡易税務申告制度(Simples Nacional)
零細・小企業に対する優遇措置として、“シンプレス・ナシオナル”と呼ばれる簡易税務申告制度が2006年にスタート。年間売上高が480万レアルまでの企業が対象。2023年6月末までに約2,185万の中小・零細企業が同制度に移行している。
連邦税の法人所得税(IRPJ)および工業製品税(IPI)、社会負担金のPIS/COFINSやCSLL、州税の商品流通サービス税(ICMS)、市税のサービス税(ISS)など8種類の税金・社会負担金を1つの書類で支払うことができ、税負担額が軽減される。
税率は業種と過去12カ月間の売上高により異なり、売上高が増えるごとに段階的に引き上げられる。