ブラジルの貿易投資年報
要旨・ポイント
- 2024年のGDP成長率は3.4%の伸びを記録。
- インフレが再燃し、政策金利は再び上昇。
- 貿易収支は歴代2番目の黒字幅を達成。
- EU・メルコスールFTA交渉が最終合意。
- 連邦政府は、投資環境改善に向けた国内産業支援プログラムを導入。
公開日:2025年7月11日

マクロ経済
GDPは工業とサービス業が下支えするもインフレが再燃
2024年の実質GDP成長率は前年比3.4%となった。これは、2021年に4.8%を記録して以来の高い水準だった。産業別にみると、工業が前年比3.3%増、サービス業が3.7%増加し、成長を下支えした。工業は、特に建設事業や製造業の伸びがみられた。国内経済の活性化や低所得者向け住宅供給政策による建設需要増が押し上げ要因となった。農畜産業は前年比3.2%減少した。干ばつや火災の影響で主要な農産品の生産量が振るわず、特に主要輸出品であるトウモロコシや大豆の生産が前年比で大きく減少した。
需要項目別にみると、GDPの約6割を占める民間最終消費支出が前年比4.8%増加した。増加要因としては、雇用の増加や賃金の上昇、インフレ率の低下、連邦政府による低所得者向け現金給付、個人向け融資額の拡大などが挙げられる。
2024年の失業率は6.6%で、2012年に現在の手法で統計を取り始めて以降で最低の水準となった。ブラジル地理統計院(IBGE)によると、就業者数の増加は、新型コロナ感染拡大後の雇用回復基調が依然として継続していることを示している。
2024年の消費者物価上昇率(IPCA)は4.6%で、ブラジル中央銀行(以下、中銀)が設定する2024年インフレ目標値3.00%(許容幅1.50~4.50%)を上回り、インフレが再燃した。最も上昇率が高かったのは飲食料品で、干ばつや火災のほか、南部リオグランデ・ド・スル州での大雨といった天候不順が農業生産に影響したことが主な押し上げ要因だった。レアルに対するドル高もインフレ上昇を助長した。ドル高により、多くの生産者が国内市場より輸出を優先し、国内供給が減少した。
インフレの再燃を理由に、中銀は2024年9月に政策金利を10.50%から10.75%に引き上げた。2022年8月以来の利上げとなった。9月以降は利上げ幅を0.5ポイントに拡大し、3会合連続で利上げを行い、12月時点で12.25%となった。ブラジル全国商業観光連盟(CNC)によると、利上げに伴い、負債を抱える世帯の割合は減少した(12月時点で76.7%、前年同期比0.9ポイント減)。だが、利上げの負担は大きく、負債の返済ができない世帯の割合は増加し(12月時点で13%、前年同期比0.8ポイント増)、現行方式で統計を取り始めた2010年以降で最高を記録した。
項目 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
年間 | Q1 | Q2 | Q3 | Q4 | |||
実質GDP成長率 | 3.0 | 3.2 | 3.4 | 2.6 | 3.3 | 4.0 | 3.6 |
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4.1 | 3.2 | 4.8 | 4.7 | 5.1 | 5.5 | 3.7 |
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2.1 | 3.8 | 1.9 | 4.1 | 1.2 | 1.3 | 1.2 |
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1.1 | △ 3.0 | 7.3 | 3.0 | 5.7 | 10.8 | 9.4 |
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5.7 | 8.9 | 2.9 | 6.1 | 4.3 | 2.1 | △ 0.7 |
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1.0 | △ 1.2 | 14.7 | 10.0 | 14.7 | 17.7 | 16.0 |
〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
〔出所〕ブラジル地理統計院(IBGE)から作成。
貿易
貿易収支は2023年に次ぐ黒字額を計上
開発商工サービス省(MDIC)の統計によれば、2024年の輸出額(通関ベース)は3,370億4,600万ドル(前年比0.8%減)、輸入額は2,628億7,000万ドル(前年比9.2%増)となり、貿易収支は741億7,600万ドルの黒字となった。前年より黒字幅は減少したものの、それでも現行方式で統計を取り始めた1989年以降で過去最高を記録した2023年(黒字額989億300万ドル)に次ぐ歴代2番目の高水準である。
輸出額を品目別にみると、国際市況の上昇に伴い、構成比で13.3%を占める石油及び歴青油が前年比5.5%増加し、コーヒーも大幅増(55%増)となった。砂糖・糖蜜(18.1%増)、牛肉(22.8%増)、パルプ(33.2%増)なども輸出を伸ばした。一方、主要な輸出農産品の大豆(19.3%減)やトウモロコシ(39.9%減)は減少した。干ばつで収穫量が減少したことなどが影響したとみられる。
主要国・地域別の輸出額でみると、最大の相手国である中国(構成比28%)向けが前年比9.5%減、2位の米国(12%)が9.4%増、3位のアルゼンチン(4.1%)が17.6%減少した。5位のスペイン向け輸出は大きく増加(26.9%増)した。押し上げ要因として石油及び歴青油(前年比51.1%増)や大豆(23.2%増)の伸びが挙げられる。
輸入額を品目別にみると、消費財(前年比23.4%増)、中間財(7.2%増)、資本財(20.9%増)とも前年に比べて増加した。資本財については、企業による活発な事業活動によって国内生産設備の輸入が増加したためとみられる。主要国・地域別の輸入額をみると、最大の相手国である中国は前年比19.7%増加、これに次ぐ米国も7.1%増だった。中国については、消費財(49%増)、中間財(13.3%増)、資本財(30.4%増)とも前年比で増加した。
品目 | 2023年 | 2024年 | ||
---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
農畜産業 | 81,485 | 72,480 | 21.5 | △ 11.1 |
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53,245 | 42,950 | 12.7 | △ 19.3 |
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7,315 | 11,338 | 3.4 | 55.0 |
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13,613 | 8,177 | 2.4 | △ 39.9 |
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3,074 | 5,155 | 1.5 | 67.7 |
鉱業 | 78,973 | 81,036 | 24.0 | 2.6 |
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42,611 | 44,964 | 13.3 | 5.5 |
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30,593 | 29,860 | 8.9 | △ 2.4 |
製造業 | 177,076 | 181,768 | 53.9 | 2.6 |
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15,776 | 18,624 | 5.5 | 18.1 |
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9,495 | 11,658 | 3.5 | 22.8 |
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11,251 | 11,647 | 3.5 | 3.5 |
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7,936 | 10,574 | 3.1 | 33.2 |
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12,165 | 10,406 | 3.1 | △ 14.5 |
合計(その他含む) | 339,696 | 337,046 | 100.0 | △ 0.8 |
〔出所〕開発商工サービス省
品目 | 2023年 | 2024年 | ||
---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
資本財 | 29,577 | 35,754 | 13.6 | 20.9 |
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24,059 | 28,277 | 10.8 | 17.5 |
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5,518 | 7,476 | 2.8 | 35.5 |
中間財 | 146,071 | 156,544 | 59.6 | 7.2 |
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85,359 | 89,385 | 34.0 | 4.7 |
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27,961 | 29,454 | 11.2 | 5.3 |
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24,351 | 28,792 | 11.0 | 18.2 |
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3,201 | 3,051 | 1.2 | △ 4.7 |
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2,925 | 2,940 | 1.1 | 0.5 |
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2,273 | 2,922 | 1.1 | 28.6 |
消費財 | 32,793 | 40,458 | 15.4 | 23.4 |
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24,384 | 28,748 | 10.9 | 17.9 |
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8,409 | 11,710 | 4.5 | 39.3 |
燃料及び潤滑油 | 32,227 | 30,011 | 11.4 | △ 6.9 |
合計(その他含む) | 240,793 | 262,870 | 100.0 | 9.2 |
〔出所〕開発商工サービス省
国・地域 | 2023年 | 2024年 | ||
---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
中国 | 104,325 | 94,372 | 28.0 | △ 9.5 |
米国 | 36,915 | 40,369 | 12.0 | 9.4 |
アルゼンチン | 16,712 | 13,778 | 4.1 | △ 17.6 |
オランダ | 12,148 | 11,720 | 3.5 | △ 3.5 |
スペイン | 7,859 | 9,970 | 3.0 | 26.9 |
シンガポール | 7,459 | 7,875 | 2.3 | 5.6 |
メキシコ | 8,572 | 7,802 | 2.3 | △ 9.0 |
チリ | 7,945 | 6,658 | 2.0 | △ 16.2 |
カナダ | 5,772 | 6,317 | 1.9 | 9.4 |
ドイツ | 5,647 | 5,847 | 1.7 | 3.5 |
日本 | 6,620 | 5,578 | 1.7 | △ 15.7 |
韓国 | 5,641 | 5,503 | 1.6 | △ 2.4 |
合計(その他含む) | 339,696 | 337,046 | 100.0 | △ 0.8 |
〔出所〕開発商工サービス省
国・地域 | 2023年 | 2024年 | ||
---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
中国 | 53,176 | 63,636 | 24.2 | 19.7 |
米国 | 37,959 | 40,652 | 15.5 | 7.1 |
ドイツ | 13,147 | 13,783 | 5.2 | 4.8 |
アルゼンチン | 11,998 | 13,577 | 5.2 | 13.2 |
ロシア | 10,013 | 10,965 | 4.2 | 9.5 |
インド | 6,873 | 6,850 | 2.6 | △ 0.3 |
イタリア | 5,853 | 6,388 | 2.4 | 9.1 |
フランス | 5,505 | 6,190 | 2.4 | 12.4 |
メキシコ | 5,541 | 5,767 | 2.2 | 4.1 |
日本 | 5,129 | 5,431 | 2.1 | 5.9 |
韓国 | 4,827 | 5,157 | 2.0 | 6.8 |
チリ | 4,313 | 4,953 | 1.9 | 14.8 |
合計(その他含む) | 240,793 | 262,870 | 100.0 | 9.2 |
〔出所〕開発商工サービス省
通商政策
EU・メルコスールFTA交渉が最終合意
EU・メルコスール間の自由貿易協定(FTA)交渉が2024年12月に最終合意した。両国・地域間のFTAは2019年6月に実質合意していたが、最終的な合意に時間を要していた。物品貿易については、EUからメルコスールに輸入される完成車の関税を最長15年かけて撤廃する。電動車や新技術を搭載した自動車では、さらに長い期間が設けられており、18年から30年かけて関税が撤廃されるとみられる。EU側では、ブラジルからの輸入品のうち、豚肉、エタノール、砂糖、米、蜂蜜、トウモロコシ、ソルガム、チーズなどに関税割当が付与される。ブラジル産業界は、対EU輸出が増加することを期待している。2024年のブラジルの対EUの往復貿易額は955億3,731万ドルで、輸出額は482億7,666万ドル、輸入額は472億6,065万ドルだった。
2024年8月には、パレスチナ・メルコスール間のFTAが発効した。同年6月時点では、ブラジルとパレスチナのみが批准しており、両国のみに適用される。ブラジルにとってパレスチナとの貿易額は決して大きくない。本FTAにより、メルコスールと中東間の貿易拡大が期待される。2024年のブラジルの対パレスチナの往復貿易額は3,419万ドルで、輸出額は3,389万ドル(輸出相手国135位)、輸入額は30万ドル(153位)だった。ブラジルからの主な輸出品は牛肉(構成比93.4%)である。
アラブ首長国連邦(UAE)・メルコスール間のFTA交渉も2024年7月に開始された。7~11月までの間に3回の交渉が行われている。2024年のブラジルの対UAE往復貿易額は54億4,630万ドルで、輸出額は45億4,763万ドル(輸出相手国14位)、輸入額は8億9,867万ドル(46位)だった。ブラジルからの主な輸出品は、砂糖・蜂蜜(構成比25.2%)、鶏肉(20.9%)、牛肉(13.1%)となる。
FTA | 発効日 | ブラジルの貿易に占める構成比(2024年) | |||
---|---|---|---|---|---|
往復 | 輸出 | 輸入 | |||
発効済み | アルゼンチン(メルコスール) | 1991年11月 | 4.6 | 4.1 | 5.2 |
ウルグアイ(メルコスール) | 1991年11月 | 0.8 | 0.8 | 0.9 | |
パラグアイ(メルコスール) | 1991年11月 | 1.2 | 1.1 | 1.3 | |
メルコスール原加盟国小計 | — | 6.6 | 6.0 | 7.4 | |
チリ(メルコスール・チリ経済補完協定第35号) | 1996年10月 | 1.9 | 2.0 | 1.9 | |
ボリビア(同36号) | 1997年1月 | 0.5 | 0.4 | 0.6 | |
メキシコ(同53号、同54号、同55号)〔注1〕 | — | 2.3 | 2.3 | 2.2 | |
エクアドル(同59号) | 2005年4月 | 0.2 | 0.3 | 0.0 | |
ベネズエラ(同59号、同69号)〔注2〕 | — | 0.3 | 0.4 | 0.2 | |
コロンビア(同59号、同72号)〔注3〕 | — | 0.9 | 1.0 | 0.8 | |
ペルー(同58号) | 2006年1月 | 0.7 | 0.9 | 0.6 | |
キューバ(同62号)〔注4〕 | 2007年7月 | 0.1 | 0.1 | 0.0 | |
インド〔注4〕 | 2009年6月 | 2.0 | 1.6 | 2.6 | |
イスラエル | 2010年4月 | 0.3 | 0.2 | 0.4 | |
南部アフリカ関税同盟(SACU)〔注4〕 | 2016年4月 | 0.3 | 0.4 | 0.3 | |
エジプト | 2017年9月 | 0.8 | 1.2 | 0.4 | |
パレスチナ | 2024年8月 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | |
メルコスール原加盟国外小計 | — | 10.3 | 10.6 | 9.8 | |
合計 | — | 16.9 | 16.6 | 17.2 | |
署名済み | シンガポール | — | 1.5 | 2.3 | 0.3 |
最終合意 | EU | — | 15.9 | 14.3 | 18.0 |
EFTA (European Free Trade Association) | — | 1.2 | 0.9 | 1.5 | |
交渉中 | 韓国 | — | 1.8 | 1.6 | 2.0 |
カナダ | — | 1.5 | 1.9 | 1.1 | |
レバノン | — | 0.1 | 0.1 | 0.0 | |
インドネシア | — | 1.1 | 1.3 | 0.7 | |
ベトナム | — | 1.3 | 1.2 | 1.4 | |
アラブ首長国連邦 | — | 0.9 | 1.4 | 0.3 |
〔注1〕メキシコとの協定はブラジルとの間で特定品目のみ関税を低減する特恵貿易協定(ACE53号、2003年5月発効)、メルコスールとして自由貿易協定の締結に向けた枠組み協定(ACE54号、2006年1月発効)、メルコスールとして自動車分野の貿易を定めた自動車協定(ACE55号、2003年1月発効)の3つがある。
〔注2〕ベネズエラはアンデス共同体とメルコスールで締結したACE59号(2005年2月発効)に加えて、ACE69号をブラジルと締結(2014年10月発効)。
〔注3〕コロンビアはアンデス共同体とメルコスールで締結したACE59号(2005年2月発効)に加えて、ACE72号をブラジルと締結(2017年12月発効)。
〔注4〕品目を限定した特恵貿易協定。
〔出所〕開発商工サービス省
対内・対外直接投資
対内直接投資額は2年連続で減少
対内直接投資額(国際収支ベース、フロー)は、前年比11.2%減の347億7,200万ドルだった。減少した一つの理由として、国外企業による在ブラジル企業の合併・買収(インバウンドM&A)取引案件が停滞していることが挙げられる。コンサルティング会社TRRデータによると、ブラジルにおける2024年のインバウンドM&A件数は343件(前年比11.4%減)にとどまった。
分野別にみると、農業・畜産・鉱業分野では、鉱物採掘関連事業が前年比68.4%減少したが、石油・天然ガス採掘が82.7%増加し、農業・畜産が2.5倍になった。製造業分野では構成比が高い化学品(構成比7.2%)が97.3%、食料品(6.7%)が85.7%増加し、冶金(3.2%)も3.5倍になった。一方、最も構成比の高い分野であるサービス業(57.2%)においては、金融サービス・同補助業(12.4%)が5%、商業(自動車除く)(10.3%)が18.8%、それぞれ減少した。
国別にみると、最大の投資相手国は引き続き米国(84億7,600万ドル)だが、前年比で15.5%減少している。また、3位のスイス(21億6,600万ドル)が1.5%減、5位の英国(17億2,000万ドル)が60.0%減、7位のスペイン(14億2,200万ドル)が43.0%減、9位のシンガポール(12億2,800万ドル)が16.6%減、10位のフランス(11億8,700万ドル)が10.3%減といずれも減少した。一方、8位の日本(13億4,800万ドル)が前年比で3.1倍、11位のイタリア(9億100万ドル)が2.8倍、13位のメキシコ(6億9,100万ドル)が2.5倍、15位のデンマーク(4億4,700万ドル)が2.1倍になった。中国企業によるブラジル向け投資は、パナマ、ケイマン諸島、英領バージン諸島といったタックスヘイブン(租税回避地)を経由するものがあり、中銀が公開している統計に表れてこない場合が多い。同統計上では3億600万ドルにとどまる。ただし、企業ごとの投資発表をみると中国企業の勢いは顕著である。中国の対ブラジル投資は以前から電力を含むインフラ分野に集中しており、2024年にも大規模な投資発表がみられた。例えば、国営電力配送会社の国家電網(State Grid)傘下のCPFLは12月18日、2025~2029年に事業拡大・改善のため298憶レアルを投資すると発表した。また、国家電力投資集団(SPIC)は6月6日にリオグランデ・ド・ノルテ州で風力発電所の建設計画に7億8,000万レアルを投じると発表した。電力分野の他にも自動車産業の投資案件も顕著だ。例えば、国有自動車大手の広州汽車集団(GAC)は6月24日、今後5年間で10億ドルを投じ、ブラジルに進出する計画を発表した。工場や研究開発センターに加え、補修部品用倉庫の建設も予定している。中国自動車メーカーの奇瑞汽車(Cherry)が展開する「Omoda(オモダ)」と「Jaeco(ジャクー)」ブランドは2024年8月9日に、ブラジル進出にあたり2億レアルを投資する計画を発表した。工場建設も検討されているが、国内生産を開始する前に、既に輸入車の販売が開始されている。
対外直接投資も大幅に減少
対外直接投資額(国際収支ベース、フロー)は前年比51.3%減少し、88億9,300万ドルだった。引き続き米国(31億9,800万ドル)が投資先として1位(13.4%減)、2位はタックスヘイブンのバハマ(14億7,300万ドル、43.9%減)だった。ブラジル企業による米国への投資計画の事例として、パルプ・紙大手スザノ(Suzano)が2024年7月12日、米パクチブ・エバーグリーン(Pactive Evergreen)から2つの製紙工場を1億1,000万ドルで買収すると発表した。また、ブラジルを代表する投資銀行のBTGパクチュアル(BTG Pactual)は6月27日にニューヨークに本社を置くM.Y.サフラ銀行(Banco M.Y. Safra)の購入、9月25日にはマイアミに本社を置く投資マネージメント会社グレイタウンアドバイザーズ(Greytown Advisors)の購入を発表した。
国・地域 | 2023年 | 2024年 | ||
---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
米国 | 10,029 | 8,476 | 24.4 | △ 15.5 |
オランダ | 5,170 | 5,369 | 15.4 | 3.8 |
スイス | 2,199 | 2,166 | 6.2 | △ 1.5 |
チリ | 1,987 | 2,074 | 6.0 | 4.4 |
英国 | 4,300 | 1,720 | 4.9 | △ 60.0 |
カナダ | 958 | 1,690 | 4.9 | 76.4 |
スペイン | 2,496 | 1,422 | 4.1 | △ 43.0 |
日本 | 437 | 1,348 | 3.9 | 208.5 |
シンガポール | 1,545 | 1,288 | 3.7 | △ 16.6 |
フランス | 1,324 | 1,187 | 3.4 | △ 10.3 |
イタリア | 324 | 901 | 2.6 | 178.1 |
ノルウェー | 540 | 757 | 2.2 | 40.2 |
メキシコ | 280 | 691 | 2.0 | 146.8 |
パナマ | 282 | 447 | 1.3 | 58.5 |
デンマーク | 212 | 447 | 1.3 | 110.8 |
合計(その他含む) | 39,147 | 34,772 | 100.0 | △ 11.2 |
〔注〕親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。
〔出所〕ブラジル中央銀行
国・地域 | 2023年 | 2024年 | ||
---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
米国 | 3,691 | 3,198 | 36.0 | △ 13.4 |
バハマ | 2,625 | 1,473 | 16.6 | △ 43.9 |
英領ヴァージン諸島 | 1,349 | 807 | 9.1 | △ 40.2 |
ケイマン諸島 | 1,205 | 639 | 7.2 | △ 47.0 |
ルクセンブルク | 2,837 | 503 | 5.7 | △ 82.3 |
オーストリア | 102 | 387 | 4.4 | 279.4 |
スイス | 345 | 258 | 2.9 | △ 25.2 |
ポルトガル | 204 | 173 | 1.9 | △ 15.2 |
オランダ | 210 | 167 | 1.9 | △ 20.5 |
アルゼンチン | 44 | 131 | 1.5 | 197.7 |
英国 | 3,209 | 123 | 1.4 | △ 96.2 |
パナマ | 83 | 108 | 1.2 | 30.1 |
ウルグアイ | 164 | 105 | 1.2 | △ 36.0 |
メキシコ | 107 | 76 | 0.9 | △ 29.0 |
ドミニカ共和国 | — | 72 | 0.8 | — |
合計(その他含む) | 18,264 | 8,893 | 100.0 | △ 51.3 |
〔注〕親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。
〔出所〕ブラジル中央銀行
業種 | 2023年 | 2024年 | ||
---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
農業・畜産・鉱業(その他含む) | 5,463 | 4,240 | 12.2 | △ 22.4 |
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3,894 | 1,232 | 3.5 | △ 68.4 |
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600 | 1,096 | 3.2 | 82.7 |
![]() |
438 | 1,077 | 3.1 | 145.9 |
![]() |
420 | 736 | 2.1 | 75.2 |
製造業 | 7,041 | 10,288 | 29.6 | 46.1 |
![]() |
1,266 | 2,498 | 7.2 | 97.3 |
![]() |
1,262 | 2,343 | 6.7 | 85.7 |
![]() |
318 | 1,100 | 3.2 | 245.9 |
![]() |
712 | 723 | 2.1 | 1.5 |
![]() |
103 | 650 | 1.9 | 531.1 |
![]() |
147 | 537 | 1.5 | 265.3 |
サービス業(その他含む) | 26,337 | 19,901 | 57.2 | △ 24.4 |
![]() |
4,543 | 4,315 | 12.4 | △ 5.0 |
![]() |
3,669 | 3,800 | 10.9 | 3.6 |
![]() |
4,411 | 3,583 | 10.3 | △ 18.8 |
![]() |
1,473 | 1,120 | 3.2 | △ 24.0 |
![]() |
1,507 | 1,041 | 3.0 | △ 30.9 |
不動産売買 | 305 | 344 | 1.0 | 12.8 |
合計(その他含む) | 39,147 | 34,772 | 100.0 | △ 11.2 |
〔注〕親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。
〔出所〕ブラジル中央銀行
業種 | 2023年 | 2024年 | ||
---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
農業・畜産・鉱業(その他含む) | 3,121 | 139 | 1.6 | △ 95.5 |
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2,910 | 124 | 1.4 | △ 95.7 |
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2 | 13 | 0.1 | 550.0 |
製造業 | 1,839 | 930 | 10.5 | △ 49.4 |
![]() |
453 | 425 | 4.8 | △ 6.2 |
![]() |
836 | 227 | 2.6 | △ 72.8 |
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244 | 92 | 1.0 | △ 62.3 |
![]() |
120 | 88 | 1.0 | △ 26.7 |
![]() |
13 | 30 | 0.3 | 130.8 |
サービス業(その他含む) | 12,907 | 7,278 | 81.8 | △ 43.6 |
![]() |
8,017 | 4,872 | 54.8 | △ 39.2 |
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2,883 | 1,012 | 11.4 | △ 64.9 |
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389 | 447 | 5.0 | 14.9 |
![]() |
93 | 397 | 4.5 | 326.9 |
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34 | 244 | 2.7 | 617.6 |
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23 | 98 | 1.1 | 326.1 |
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31 | 75 | 0.8 | 141.9 |
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1,245 | 61 | 0.7 | △ 95.1 |
不動産売買 | 397 | 546 | 6.1 | 37.5 |
合計(その他含む) | 18,264 | 8,893 | 100.0 | △ 51.3 |
〔注〕親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。
〔出所〕ブラジル中央銀行
業種 | 企業名 | 国籍 | 時期 | 投資額 | 概要 |
---|---|---|---|---|---|
農業・食品・飲料 | コカ・コーラ | 米国 | 2024年2月 | 40億レアル | 工場の生産能力を向上させる。 |
農業・食品・飲料 | ネスレ | スイス | 2024年5月 | 10億レアル | サンパウロ州アララス市の工場への投資を発表。 |
農業・食品・飲料 | アデコアグロ(Adecoagro) | アルゼンチン | 2024年7月 | 2億2,500万レアル | バイオメタンの生産拡大のための投資を発表。 |
農業・食品・飲料 | ブリティッシュ・ペトロリアム(BP) | 英国 | 2024年8月 | 5億3,000万レアル | トカンチンス州ペドロアフォンソ市でエタノールや砂糖の生産能力を向上させる。 |
農業・食品・飲料 | ラクタリス(Lactalis) | フランス | 2024年8月 | 1億レアル | 乳製品工場の拡大のための投資を発表。 |
農業・食品・飲料 | アグレックス(Agrex) | 日本 | 2024年10月 | 7億レアル | 大豆やトウモロコシの生産能力向上や企業の買収のための投資を発表。 |
パルプ、紙および板紙 | CPMC | チリ | 2024年4月 | 240億レアル | リオグランデ・ド・スル州バラ・ド・リオ市でパルプ工場を設立する。 |
パルプ、紙および板紙 | アラウコ(Aralco) | チリ | 2024年9月 | 46億ドル | マットグロッソ・ド・スル州イノセンシア市でパルプ工場を設立する。 |
自動車・自動車部品 | ゼネラルモーターズ(GM) | 米国 | 2024年1月 | 70億レアル | 新型車生産や新技術開発のための投資を発表。 |
自動車・自動車部品 | フォルクスワーゲン(VW) | ドイツ | 2024年2月 | 90億レアル | 生産能力向上と新型車開発のための投資を発表。 |
自動車・自動車部品 | 現代自動車 | 韓国 | 2024年2月 | 11億ドル | 電動車やグリーン水素自動車の開発のための投資を発表。 |
自動車・自動車部品 | トヨタ自動車 | 日本 | 2024年3月 | 110億レアル | 生産能力拡大と新技術導入のため投資を発表。 |
自動車・自動車部品 | ステランティス(Stellantis) | オランダ | 2024年3月 | 300億レアル | 新型車生産や脱炭素化技術の開発のための投資を発表。 |
自動車・自動車部品 | ピレリ(Pirelli) | イタリア | 2024年3月 | 2億レアル | サンパウロ州カンピーナス市のタイヤ工場への投資を発表。 |
自動車・自動車部品 | BYD | 中国 | 2024年3月 | 55億レアル | バイーア州カマサリ市で建設が予定される大型生産拠点のための総投資額を30億レアルから55億レアルに引き上げると発表。 |
自動車・自動車部品 | 三菱自動車 | 日本 | 2024年4月 | 40億レアル | 新製品の製造や、フレックスハイブリッド技術の高度化に向けた工場の整備のための投資を発表。 |
自動車・自動車部品 | 本田技研工業 | 日本 | 2024年4月 | 42億レアル | 生産効率の向上、革新的な技術の導入、そして電動化に向けた取り組みを加速させる。 |
自動車・自動車部品 | スカニア(Scania) | スウェーデン | 2024年6月 | 20億レアル | 2025年から2028までに20億レアルを投資すると発表。 |
自動車・自動車部品 | 広州汽車集団 | 中国 | 2024年6月 | 10億ドル | ブラジルで工場、研究開発研究所、倉庫を設立する。 |
自動車・自動車部品 | ブラボ・モーター・カンパニー(Bravo motor company) | アルゼンチン | 2024年7月 | 13億レアル | バイーア州でリチウムバッテリーの工場を設立する。 |
自動車・自動車部品 | BMW | ドイツ | 2024年10月 | 11億レアル | サンタカタリーナ州アラクアリ市の工場の生産能力を向上させる。 |
自動車・自動車部品 | サンセットタイヤ(Sunset tires) | 中国 | 2024年12月 | 15億レアル | パラナ州ポンタ・グロッサ市でタイヤ工場を設立する。 |
IT | アメリカ・モービル(America Movil) | メキシコ | 2024年4月 | 400億レアル | 今後5年間で光ファイバーの利用拡大や高速インターネットサービスのための投資を発表。 |
IT | アンゴラ・ケーブル(Angola cables) | アンゴラ | 2024年7月 | 500億ドル | セアラ州フォルタレザ市でデータセンターを設立する。 |
IT | アマゾン ウェブ サービス(Amazon web services) | 米国 | 2024年9月 | 18億ドル | ブラジルでデータセンターの運営・改善・設立のための投資を発表。 |
IT | マイクロソフト | 米国 | 2024年9月 | 147億レアル | クラウドサービスや人工知能の活用のための投資を発表。 |
IT | スペースセイル(Space sails) | 中国 | 2024年11月 | 10億ドル | 高速インタネットサービスの改善のための投資を発表。 |
エネルギー | EDP | ポルトガル | 2024年3月 | 300億レアル | 今後5年間で再生可能エネルギー関連プロジェクトのための投資を発表。 |
エネルギー | イベルドローラ(Iberdrola) | スペイン | 2024年3月 | 43億ユーロ | 送電網拡大のための投資を発表。 |
エネルギー | ムバダラ(Mubadala) | UAE | 2024年5月 | 135億ドル | バイオ燃料開発のための投資を発表。 |
エネルギー | 国家電力投資集団(SPIC) | 中国 | 2024年6月 | 7億8,000万レアル | リオグランデ・ド・ノルテ州で風力発電所を設立する。 |
エネルギー | FRV | スペイン | 2024年6月 | 270億レアル | セアラ州のペセン港におけるグリーンアンモニア生産計画のための投資を発表。 |
エネルギー | ヨーロピアン・エナジー(European energy) | デンマーク | 2024年9月 | 20億レアル | ペルナンブコ州のスアぺ港におけるグリーンメタノール生産計画のための投資を発表。 |
エネルギー | エンジー(Energy) | フランス | 2024年9月 | 29億レアル | 国家電力庁が実施した送電線網の入札で落札。ミナス・ジェライス州、パラナ州、サンタ・カタリーナ州、エスピリト・サント州、サンパウロ州おける送電線網の建設を行う。 |
エネルギー | シェル | 英国 | 2024年10月 | 12億レアル | ゴイアス州ジャタイ市で第二世代エタノール工場を設立する。 |
エネルギー | インパサ(Inpasa) | パラグアイ | 2024年10月 | 13億レアル | バイーア州でトウモロコシ由来エタノールの工場を設立する。 |
エネルギー | フエラ(Fuella) | ノルウェー | 2024年10月 | 90億レアル | セアラ州のペセン港におけるグリーン水素生産計画のための投資を発表。 |
エネルギー | 国家電網公司(State Grid ) | 中国 | 2024年12月 | 298億レアル | 2025年から2029年までに電力事業のために298憶レアルを投資する。 |
エネルギー | エネル(Enel) | イタリア | 2024年12月 | 253億レアル | 2025年から2027年までにサンパウロ州、セアラ州、リオデジャネイロ州で電力事業のために投資を行う。 |
家電 | ワールプール | 米国 | 2024年2月 | 5億レアル | サンパウロ州とサンタ・カタリーナ州の家電工場への投資を発表。 |
家電 | LG | 韓国 | 2024年4月 | 15億レアル | パラナ州クリチバ氏での冷蔵庫生産のための投資を発表。 |
冶金 | テルニウム/日本製鉄 | ルクセンブルク/日本 | 2024年4月 | 9億5,000万レアル | ミナス・ジェライス州のイパチンガ市の鉄鋼工場への投資を発表。 |
冶金 | ノルスク・ハイドロ(Norsk Hydro) | ノルウェー | 2024年7月 | 16億レアル | グリーンアルミニウム生産計画のための投資を発表。 |
物流・運輸・交通 | プロロジス(Prologis) | 米国 | 2024年1月 | 20億レアル | 物流センターを設立する。 |
物流・運輸・交通 | 中国中車 | 中国 | 2024年2月 | 142億レアル | サンパウロ市とカンピーナス市を結ぶ鉄道の入札で落札。鉄道の運営や改善のための投資を行う。 |
物流・運輸・交通 | アエナ(Aena) | スペイン | 2024年3月 | 45億レアル | サンパウロ市のコンゴーニャス空港の運営会社は空港の改善への投資を発表。 |
物流・運輸・交通 | MSC | スイス | 2024年4月 | 170億レアル | サントス港の運営会社は港の改善のための投資を発表。 |
物流・運輸・交通 | GLP | シンガポール | 2024年7月 | 21億レアル | 物流倉庫建設のための投資を発表。 |
物流・運輸・交通 | LATAM | チリ | 2024年8月 | 20億レアル | 航空会社LATAMは技術開発や航空機整備などへの投資を発表。 |
物流・運輸・交通 | CMA CGM | フランス | 2024年9月 | 63億レアル | 海運会社・コンテナ輸送会社CMA CGMはコンテナターミナルの運営会社Tecon Santos社を買収。 |
物流・運輸・交通 | ヴァンシ(Vinci) | フランス | 2024年9月 | 120億レアル | 建設会社ヴァンシはミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンテ市とゴイアス州クリスタリナ市を結ぶ道路の入札で落札。道路の運営・改善への投資を行う。 |
物流・運輸・交通 | 南アフリカ空港会社(Airports Company South Africa (ACSA)) | 南アフリカ | 2024年10月 | 14億レアル | グアルーリョス国際空港を運営する南アフリカ空港会社は2025年から2029年までに事業改善のための投資を発表。 |
〔出所〕 各社発表および報道などから作成
業種 | 企業名 | 投資国・地域 | 時期 | 投資額 | 概要 |
---|---|---|---|---|---|
食品・飲料 | JBS | オーストラリア | 2024年7月 | 1億1,000万豪ドル | サーモン生産のための投資を発表。 |
食品・飲料 | JBS | ナイジェリア | 2024年11月 | 25億ドル | 食肉加工工場を設立する。 |
自動車部品 | ランドンコルプ(Randoncorp) | メキシコ | 2024年6月 | 21億レアル | メキシコの自動車部品メーカーKUO社を買収。 |
IT | ウニコ(Unico) | メキシコ | 2024年10月 | N.A. | メキシコのデジタルセキュリティ会社Trullyを買収。 |
IT | ウニコ(Unico) | UAE | 2024年10月 | N.A. | メキシコのデジタルセキュリティ会社OZフォレンジックを買収。 |
機械 | ウェグ(WEG) | トルコ | 2024年9月 | 8,800万ドル | トルコの機械メーカーボルトを買収。 |
機械 | ウェグ(WEG) | メキシコ | 2024年9月 | 3億3,6000万レアル | 新たな工場を設立する。 |
パルプ、紙および板紙 | スザノ(Suzano) | 米国 | 2024年7月 | 1億1,000万ドル | 2か所の工場を買収。 |
金融サービス | ヌーバンク(Nubank) | メキシコ | 2024年4月 | 1億ドル | メキシコ事業に1億ドルを投資する。 |
金融サービス | BTGパクチュアル(BTG Pactual) | 米国 | 2024年6月 | N.A. | M.Y.サフラ銀行を買収。 |
金融サービス | BTGパクチュアル(BTG Pactual) | 米国 | 2024年9月 | N.A. | コンサルティング企業グレイタウンアドバイザーズ社を買収。 |
交通 | エリスール(Elisur) | チリ | 2024年9月 | 3,600万ドル | ヘリコプター運行会社エココプター社を買収。 |
〔出所〕 各社発表および報道などから作成
投資環境・外資誘致政策
国内製造を強化する産業政策を発表
2023年12月、ブラジルの新たな自動車政策(Mobilidade Verde:通称「MOVER」)が導入された。これはブラジル自動車産業の持続可能な成長を目指すもので、車両の脱炭素化や、技術開発、国際競争力強化、自動車・部品のイノベーションを支援するプログラム。具体的には、エネルギー効率向上のための投資を拡大し、車両製造で環境負荷を少なくした企業や、エネルギー効率の高い車両を製造・輸入する企業に対して減税恩典が適用される予定だ。細則が定まらず未定な部分があるものの、MOVERの導入を受け、本田技研工業、三菱自動車、ステランティス(Stellantis)、トヨタ自動車、現代自動車、フォルクスワーゲン(VW)、ゼネラルモーターズ(GM)、ルノー(Renault)、日産自動車などの主要メーカーが相次いでブラジル国内への投資計画を発表した。総額1,300億レアルを超える自動車業界への投資は、電気自動車やハイブリッド車生産など、モビリティの脱炭素化に向けたものが中心となっている。
ブラジル政府は2024年1月22日、国内産業支援により、国内の生産・雇用拡大、イノベーション創出を目指す「新ブラジル産業プログラム」を発表した。国産品を優先する政府調達で国内企業を支援する仕組みも本プログラムに組み込まれている。例えば、政府が医療品、トラクター、バス、ソーラーパネルなどを調達する場合、国産品が優先される。国内生産拡大に向けた投資増が期待されている。
対日関係
内需の拡大で日本からの輸出が増加
開発商工サービス省貿易統計(Comex Stat)によれば、2024年の対日輸出額は前年比15.7%減の55億7,800万ドルだった。対日輸出額全体の18.1%を占める鉄鉱石が18.2%減少し、鶏肉(部分肉、構成比15.2%)も10.7%減少した。一方、コーヒー豆(10.1%)は28.8%増加した。対日輸入額は、前年比5.9%増の54億3,100万ドルだった。対日輸入額全体の18.3%を占める自動車部品は6.0%増加した。ブラジル自動車部品工業会(Sindipeças)によると、2024年の自動車国内需要が拡大したため、自動車部品の輸入も増加した。日本は中国、米国、ドイツに次いで、4番目の自動車部品輸入相手国となった。
日本からブラジルへの対内直接投資額(国際収支ベース、フロー)は13億4,800万ドルとなり、前年比3.1倍と大きく増加した。2024年4月に日本製鉄の持ち分法適用会社の鉄鋼大手ウジミナスは、製鉄事業改善のため9億5,000万レアルを投資すると発表した。また、MOVERの発表を受け、トヨタ自動車は3月5日、2024年から2030年にかけてブラジルでの生産能力拡大と新技術導入のために、110億レアルの追加投資を発表した。この投資には、フレックスハイブリッド車の新車種製造やHEVのエンジン製造、バッテリー組み立てなどが含まれ、ハイブリッド車両の生産ラインを強化する予定だ。4月4日には、ブラジルで三菱自動車の車両組み立て委託先のHPEアウトモトーレス(HPE Automotores)がゴイアス州カタロン工場に2032年までに40億レアルを投資する計画を発表した。三菱自動車ブランドの新製品の製造や、フレックスハイブリッド技術の高度化に向けた工場の整備などに活用する予定。その他にも、本田技研工業は4月19日、2024~2030年にかけてブラジルに42億レアルの追加投資を行うことを発表した。この投資は、生産効率の向上、革新的な技術の導入、そして電動化に向けた取り組みを加速する目的だ。
品目 | 2023年 | 2024年 | ||
---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
鉄鉱石 | 1,235 | 1,010 | 18.1 | △ 18.2 |
鶏肉(部分肉) | 949 | 847 | 15.2 | △ 10.7 |
コーヒー豆 | 437 | 563 | 10.1 | 28.8 |
とうもろこし | 1,470 | 513 | 9.2 | △ 65.1 |
アルミニウム | 361 | 385 | 6.9 | 6.6 |
フェロアロイ | 348 | 323 | 5.8 | △ 7.2 |
大豆 | 343 | 323 | 5.8 | △ 5.8 |
豚肉 | 133 | 310 | 5.6 | 133.1 |
大豆油かす | 232 | 155 | 2.8 | △ 33.2 |
果実・ナット・野菜ジュース | 99 | 142 | 2.5 | 43.4 |
合計(その他含む) | 6,620 | 5,578 | 100.0 | △ 15.7 |
〔出所〕ブラジル中央銀行
品目 | 2023年 | 2024年 | ||
---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
自動車部品 | 938 | 994 | 18.3 | 6.0 |
治療用人血・動物の血 | 101 | 179 | 3.3 | 77.2 |
複素環式化合物(ヘテロ原子として窒素のみを有するものに限る) | 124 | 131 | 2.4 | 5.6 |
自動車用エンジン部品 | 117 | 126 | 2.3 | 7.7 |
乗用自動車 | 80 | 125 | 2.3 | 56.3 |
自動調整機器 | 110 | 116 | 2.1 | 5.5 |
ピストン式火花点火内燃機関 | 86 | 111 | 2.0 | 29.1 |
集積回路 | 110 | 99 | 1.8 | △ 10.0 |
医療用又は獣医用の機器 | 97 | 98 | 1.8 | 1.0 |
印刷機 | 81 | 96 | 1.8 | 18.5 |
合計(その他含む) | 5,129 | 5,431 | 100.0 | 5.9 |
〔出所〕ブラジル中央銀行
基礎的経済指標
項目 | 単位 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
---|---|---|---|---|
実質GDP成長率 | (%) | 3.0 | 3.2 | 3.4 |
1人当たりGDP | (米ドル) | 9255 | 10,350 | 10247 |
消費者物価上昇率 | (%) | 10.06 | 5.79 | 4.62 |
失業率 | (%) | 9.6 | 7.8 | 6.6 |
貿易収支 | (100万米ドル) | 61,525 | 98,903 | 74,177 |
経常収支 | (100万米ドル) | △ 42,157 | △ 27,933 | △ 61,194 |
外貨準備高 | (100万米ドル) | 324,703 | 355,034 | 329,730 |
対外債務残高(グロス) | (100万米ドル) | 319,634 | 342,191 | 347,534 |
為替レート | (1米ドルにつき、レアル、期中平均) | 5.16 | 5.00 | 5.39 |
注
貿易収支:通関ベース
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:ブラジル地理統計院(IBGE)
1人当たりGDP、貿易収支、経常収支、外貨準備高、対外債務残高(グロス):ブラジル中央銀行
為替レート:応用経済研究所(Ipea)