ブラジルの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年のGDP成長率は3.4%の伸びを記録。
  • インフレが再燃し、政策金利は再び上昇。
  • 貿易収支は歴代2番目の黒字幅を達成。
  • EU・メルコスールFTA交渉が最終合意。
  • 連邦政府は、投資環境改善に向けた国内産業支援プログラムを導入。

公開日:2025年7月11日

マクロ経済 
GDPは工業とサービス業が下支えするもインフレが再燃

2024年の実質GDP成長率は前年比3.4%となった。これは、2021年に4.8%を記録して以来の高い水準だった。産業別にみると、工業が前年比3.3%増、サービス業が3.7%増加し、成長を下支えした。工業は、特に建設事業や製造業の伸びがみられた。国内経済の活性化や低所得者向け住宅供給政策による建設需要増が押し上げ要因となった。農畜産業は前年比3.2%減少した。干ばつや火災の影響で主要な農産品の生産量が振るわず、特に主要輸出品であるトウモロコシや大豆の生産が前年比で大きく減少した。

需要項目別にみると、GDPの約6割を占める民間最終消費支出が前年比4.8%増加した。増加要因としては、雇用の増加や賃金の上昇、インフレ率の低下、連邦政府による低所得者向け現金給付、個人向け融資額の拡大などが挙げられる。

2024年の失業率は6.6%で、2012年に現在の手法で統計を取り始めて以降で最低の水準となった。ブラジル地理統計院(IBGE)によると、就業者数の増加は、新型コロナ感染拡大後の雇用回復基調が依然として継続していることを示している。

2024年の消費者物価上昇率(IPCA)は4.6%で、ブラジル中央銀行(以下、中銀)が設定する2024年インフレ目標値3.00%(許容幅1.50~4.50%)を上回り、インフレが再燃した。最も上昇率が高かったのは飲食料品で、干ばつや火災のほか、南部リオグランデ・ド・スル州での大雨といった天候不順が農業生産に影響したことが主な押し上げ要因だった。レアルに対するドル高もインフレ上昇を助長した。ドル高により、多くの生産者が国内市場より輸出を優先し、国内供給が減少した。

インフレの再燃を理由に、中銀は2024年9月に政策金利を10.50%から10.75%に引き上げた。2022年8月以来の利上げとなった。9月以降は利上げ幅を0.5ポイントに拡大し、3会合連続で利上げを行い、12月時点で12.25%となった。ブラジル全国商業観光連盟(CNC)によると、利上げに伴い、負債を抱える世帯の割合は減少した(12月時点で76.7%、前年同期比0.9ポイント減)。だが、利上げの負担は大きく、負債の返済ができない世帯の割合は増加し(12月時点で13%、前年同期比0.8ポイント増)、現行方式で統計を取り始めた2010年以降で最高を記録した。

表1 ブラジルの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年 2024年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 3.0 3.2 3.4 2.6 3.3 4.0 3.6
階層レベル2の項目民間最終消費支出 4.1 3.2 4.8 4.7 5.1 5.5 3.7
階層レベル2の項目政府最終消費支出 2.1 3.8 1.9 4.1 1.2 1.3 1.2
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 1.1 △ 3.0 7.3 3.0 5.7 10.8 9.4
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 5.7 8.9 2.9 6.1 4.3 2.1 △ 0.7
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 1.0 △ 1.2 14.7 10.0 14.7 17.7 16.0

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
〔出所〕ブラジル地理統計院(IBGE)から作成。

貿易 
貿易収支は2023年に次ぐ黒字額を計上

開発商工サービス省(MDIC)の統計によれば、2024年の輸出額(通関ベース)は3,370億4,600万ドル(前年比0.8%減)、輸入額は2,628億7,000万ドル(前年比9.2%増)となり、貿易収支は741億7,600万ドルの黒字となった。前年より黒字幅は減少したものの、それでも現行方式で統計を取り始めた1989年以降で過去最高を記録した2023年(黒字額989億300万ドル)に次ぐ歴代2番目の高水準である。

輸出額を品目別にみると、国際市況の上昇に伴い、構成比で13.3%を占める石油及び歴青油が前年比5.5%増加し、コーヒーも大幅増(55%増)となった。砂糖・糖蜜(18.1%増)、牛肉(22.8%増)、パルプ(33.2%増)なども輸出を伸ばした。一方、主要な輸出農産品の大豆(19.3%減)やトウモロコシ(39.9%減)は減少した。干ばつで収穫量が減少したことなどが影響したとみられる。

主要国・地域別の輸出額でみると、最大の相手国である中国(構成比28%)向けが前年比9.5%減、2位の米国(12%)が9.4%増、3位のアルゼンチン(4.1%)が17.6%減少した。5位のスペイン向け輸出は大きく増加(26.9%増)した。押し上げ要因として石油及び歴青油(前年比51.1%増)や大豆(23.2%増)の伸びが挙げられる。

輸入額を品目別にみると、消費財(前年比23.4%増)、中間財(7.2%増)、資本財(20.9%増)とも前年に比べて増加した。資本財については、企業による活発な事業活動によって国内生産設備の輸入が増加したためとみられる。主要国・地域別の輸入額をみると、最大の相手国である中国は前年比19.7%増加、これに次ぐ米国も7.1%増だった。中国については、消費財(49%増)、中間財(13.3%増)、資本財(30.4%増)とも前年比で増加した。

表2-1 ブラジルの主要品目別輸出(FOB) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
農畜産業 81,485 72,480 21.5 △ 11.1
階層レベル2の項目大豆 53,245 42,950 12.7 △ 19.3
階層レベル2の項目焙煎していないコーヒー 7,315 11,338 3.4 55.0
階層レベル2の項目挽いていないトウモロコシ( スイートコーン除く) 13,613 8,177 2.4 △ 39.9
階層レベル2の項目綿花・原綿 3,074 5,155 1.5 67.7
鉱業 78,973 81,036 24.0 2.6
階層レベル2の項目石油及び歴青油 42,611 44,964 13.3 5.5
階層レベル2の項目鉄鉱石及びその精鉱 30,593 29,860 8.9 △ 2.4
製造業 177,076 181,768 53.9 2.6
階層レベル2の項目砂糖・糖蜜 15,776 18,624 5.5 18.1
階層レベル2の項目牛肉(生鮮、冷蔵、冷凍) 9,495 11,658 3.5 22.8
階層レベル2の項目石油及び歴青油 11,251 11,647 3.5 3.5
階層レベル2の項目パルプ・くず紙 7,936 10,574 3.1 33.2
階層レベル2の項目大豆粕やその他飼料 12,165 10,406 3.1 △ 14.5
合計(その他含む) 339,696 337,046 100.0 △ 0.8

〔出所〕開発商工サービス省

表2-2 ブラジルの主要品目別輸入(FOB) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
資本財 29,577 35,754 13.6 20.9
階層レベル2の項目資本財(輸送機器除く) 24,059 28,277 10.8 17.5
階層レベル2の項目工業用輸送機器 5,518 7,476 2.8 35.5
中間財 146,071 156,544 59.6 7.2
階層レベル2の項目工業用資材(加工品) 85,359 89,385 34.0 4.7
階層レベル2の項目資本財部品および付属品 27,961 29,454 11.2 5.3
階層レベル2の項目輸送機器用部品 24,351 28,792 11.0 18.2
階層レベル2の項目工業用資材(原料) 3,201 3,051 1.2 △ 4.7
階層レベル2の項目飲食料品(加工品) 2,925 2,940 1.1 0.5
階層レベル2の項目飲食料品(原料) 2,273 2,922 1.1 28.6
消費財 32,793 40,458 15.4 23.4
階層レベル2の項目非耐久および半耐久消費財 24,384 28,748 10.9 17.9
階層レベル2の項目耐久消費財 8,409 11,710 4.5 39.3
燃料及び潤滑油 32,227 30,011 11.4 △ 6.9
合計(その他含む) 240,793 262,870 100.0 9.2

〔出所〕開発商工サービス省

表3-1 ブラジルの主要国・地域別輸出(FOB) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
中国 104,325 94,372 28.0 △ 9.5
米国 36,915 40,369 12.0 9.4
アルゼンチン 16,712 13,778 4.1 △ 17.6
オランダ 12,148 11,720 3.5 △ 3.5
スペイン 7,859 9,970 3.0 26.9
シンガポール 7,459 7,875 2.3 5.6
メキシコ 8,572 7,802 2.3 △ 9.0
チリ 7,945 6,658 2.0 △ 16.2
カナダ 5,772 6,317 1.9 9.4
ドイツ 5,647 5,847 1.7 3.5
日本 6,620 5,578 1.7 △ 15.7
韓国 5,641 5,503 1.6 △ 2.4
合計(その他含む) 339,696 337,046 100.0 △ 0.8

〔出所〕開発商工サービス省

表3-2 ブラジルの主要国・地域別輸入(FOB) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
中国 53,176 63,636 24.2 19.7
米国 37,959 40,652 15.5 7.1
ドイツ 13,147 13,783 5.2 4.8
アルゼンチン 11,998 13,577 5.2 13.2
ロシア 10,013 10,965 4.2 9.5
インド 6,873 6,850 2.6 △ 0.3
イタリア 5,853 6,388 2.4 9.1
フランス 5,505 6,190 2.4 12.4
メキシコ 5,541 5,767 2.2 4.1
日本 5,129 5,431 2.1 5.9
韓国 4,827 5,157 2.0 6.8
チリ 4,313 4,953 1.9 14.8
合計(その他含む) 240,793 262,870 100.0 9.2

〔出所〕開発商工サービス省

通商政策 
EU・メルコスールFTA交渉が最終合意

EU・メルコスール間の自由貿易協定(FTA)交渉が2024年12月に最終合意した。両国・地域間のFTAは2019年6月に実質合意していたが、最終的な合意に時間を要していた。物品貿易については、EUからメルコスールに輸入される完成車の関税を最長15年かけて撤廃する。電動車や新技術を搭載した自動車では、さらに長い期間が設けられており、18年から30年かけて関税が撤廃されるとみられる。EU側では、ブラジルからの輸入品のうち、豚肉、エタノール、砂糖、米、蜂蜜、トウモロコシ、ソルガム、チーズなどに関税割当が付与される。ブラジル産業界は、対EU輸出が増加することを期待している。2024年のブラジルの対EUの往復貿易額は955億3,731万ドルで、輸出額は482億7,666万ドル、輸入額は472億6,065万ドルだった。

2024年8月には、パレスチナ・メルコスール間のFTAが発効した。同年6月時点では、ブラジルとパレスチナのみが批准しており、両国のみに適用される。ブラジルにとってパレスチナとの貿易額は決して大きくない。本FTAにより、メルコスールと中東間の貿易拡大が期待される。2024年のブラジルの対パレスチナの往復貿易額は3,419万ドルで、輸出額は3,389万ドル(輸出相手国135位)、輸入額は30万ドル(153位)だった。ブラジルからの主な輸出品は牛肉(構成比93.4%)である。

アラブ首長国連邦(UAE)・メルコスール間のFTA交渉も2024年7月に開始された。7~11月までの間に3回の交渉が行われている。2024年のブラジルの対UAE往復貿易額は54億4,630万ドルで、輸出額は45億4,763万ドル(輸出相手国14位)、輸入額は8億9,867万ドル(46位)だった。ブラジルからの主な輸出品は、砂糖・蜂蜜(構成比25.2%)、鶏肉(20.9%)、牛肉(13.1%)となる。

表4 ブラジルのFTA発効・署名・交渉状況(単位:%)
FTA 発効日 ブラジルの貿易に占める構成比(2024年)
往復 輸出 輸入
発効済み アルゼンチン(メルコスール) 1991年11月 4.6 4.1 5.2
ウルグアイ(メルコスール) 1991年11月 0.8 0.8 0.9
パラグアイ(メルコスール) 1991年11月 1.2 1.1 1.3
メルコスール原加盟国小計 6.6 6.0 7.4
チリ(メルコスール・チリ経済補完協定第35号) 1996年10月 1.9 2.0 1.9
ボリビア(同36号) 1997年1月 0.5 0.4 0.6
メキシコ(同53号、同54号、同55号)〔注1〕 2.3 2.3 2.2
エクアドル(同59号) 2005年4月 0.2 0.3 0.0
ベネズエラ(同59号、同69号)〔注2〕 0.3 0.4 0.2
コロンビア(同59号、同72号)〔注3〕 0.9 1.0 0.8
ペルー(同58号) 2006年1月 0.7 0.9 0.6
キューバ(同62号)〔注4〕 2007年7月 0.1 0.1 0.0
インド〔注4〕 2009年6月 2.0 1.6 2.6
イスラエル 2010年4月 0.3 0.2 0.4
南部アフリカ関税同盟(SACU)〔注4〕 2016年4月 0.3 0.4 0.3
エジプト 2017年9月 0.8 1.2 0.4
パレスチナ 2024年8月 0.0 0.0 0.0
メルコスール原加盟国外小計 10.3 10.6 9.8
合計 16.9 16.6 17.2
署名済み シンガポール 1.5 2.3 0.3
最終合意 EU 15.9 14.3 18.0
EFTA (European Free Trade Association) 1.2 0.9 1.5
交渉中 韓国 1.8 1.6 2.0
カナダ 1.5 1.9 1.1
レバノン 0.1 0.1 0.0
インドネシア 1.1 1.3 0.7
ベトナム 1.3 1.2 1.4
アラブ首長国連邦 0.9 1.4 0.3

〔注1〕メキシコとの協定はブラジルとの間で特定品目のみ関税を低減する特恵貿易協定(ACE53号、2003年5月発効)、メルコスールとして自由貿易協定の締結に向けた枠組み協定(ACE54号、2006年1月発効)、メルコスールとして自動車分野の貿易を定めた自動車協定(ACE55号、2003年1月発効)の3つがある。
〔注2〕ベネズエラはアンデス共同体とメルコスールで締結したACE59号(2005年2月発効)に加えて、ACE69号をブラジルと締結(2014年10月発効)。
〔注3〕コロンビアはアンデス共同体とメルコスールで締結したACE59号(2005年2月発効)に加えて、ACE72号をブラジルと締結(2017年12月発効)。
〔注4〕品目を限定した特恵貿易協定。
〔出所〕開発商工サービス省

対内・対外直接投資 
対内直接投資額は2年連続で減少

対内直接投資額(国際収支ベース、フロー)は、前年比11.2%減の347億7,200万ドルだった。減少した一つの理由として、国外企業による在ブラジル企業の合併・買収(インバウンドM&A)取引案件が停滞していることが挙げられる。コンサルティング会社TRRデータによると、ブラジルにおける2024年のインバウンドM&A件数は343件(前年比11.4%減)にとどまった。

分野別にみると、農業・畜産・鉱業分野では、鉱物採掘関連事業が前年比68.4%減少したが、石油・天然ガス採掘が82.7%増加し、農業・畜産が2.5倍になった。製造業分野では構成比が高い化学品(構成比7.2%)が97.3%、食料品(6.7%)が85.7%増加し、冶金(3.2%)も3.5倍になった。一方、最も構成比の高い分野であるサービス業(57.2%)においては、金融サービス・同補助業(12.4%)が5%、商業(自動車除く)(10.3%)が18.8%、それぞれ減少した。

国別にみると、最大の投資相手国は引き続き米国(84億7,600万ドル)だが、前年比で15.5%減少している。また、3位のスイス(21億6,600万ドル)が1.5%減、5位の英国(17億2,000万ドル)が60.0%減、7位のスペイン(14億2,200万ドル)が43.0%減、9位のシンガポール(12億2,800万ドル)が16.6%減、10位のフランス(11億8,700万ドル)が10.3%減といずれも減少した。一方、8位の日本(13億4,800万ドル)が前年比で3.1倍、11位のイタリア(9億100万ドル)が2.8倍、13位のメキシコ(6億9,100万ドル)が2.5倍、15位のデンマーク(4億4,700万ドル)が2.1倍になった。中国企業によるブラジル向け投資は、パナマ、ケイマン諸島、英領バージン諸島といったタックスヘイブン(租税回避地)を経由するものがあり、中銀が公開している統計に表れてこない場合が多い。同統計上では3億600万ドルにとどまる。ただし、企業ごとの投資発表をみると中国企業の勢いは顕著である。中国の対ブラジル投資は以前から電力を含むインフラ分野に集中しており、2024年にも大規模な投資発表がみられた。例えば、国営電力配送会社の国家電網(State Grid)傘下のCPFLは12月18日、2025~2029年に事業拡大・改善のため298憶レアルを投資すると発表した。また、国家電力投資集団(SPIC)は6月6日にリオグランデ・ド・ノルテ州で風力発電所の建設計画に7億8,000万レアルを投じると発表した。電力分野の他にも自動車産業の投資案件も顕著だ。例えば、国有自動車大手の広州汽車集団(GAC)は6月24日、今後5年間で10億ドルを投じ、ブラジルに進出する計画を発表した。工場や研究開発センターに加え、補修部品用倉庫の建設も予定している。中国自動車メーカーの奇瑞汽車(Cherry)が展開する「Omoda(オモダ)」と「Jaeco(ジャクー)」ブランドは2024年8月9日に、ブラジル進出にあたり2億レアルを投資する計画を発表した。工場建設も検討されているが、国内生産を開始する前に、既に輸入車の販売が開始されている。

対外直接投資も大幅に減少

対外直接投資額(国際収支ベース、フロー)は前年比51.3%減少し、88億9,300万ドルだった。引き続き米国(31億9,800万ドル)が投資先として1位(13.4%減)、2位はタックスヘイブンのバハマ(14億7,300万ドル、43.9%減)だった。ブラジル企業による米国への投資計画の事例として、パルプ・紙大手スザノ(Suzano)が2024年7月12日、米パクチブ・エバーグリーン(Pactive Evergreen)から2つの製紙工場を1億1,000万ドルで買収すると発表した。また、ブラジルを代表する投資銀行のBTGパクチュアル(BTG Pactual)は6月27日にニューヨークに本社を置くM.Y.サフラ銀行(Banco M.Y. Safra)の購入、9月25日にはマイアミに本社を置く投資マネージメント会社グレイタウンアドバイザーズ(Greytown Advisors)の購入を発表した。

表5-1 ブラジルの国・地域別対内直接投資 [国際収支ベース、グロス、フロー](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
米国 10,029 8,476 24.4 △ 15.5
オランダ 5,170 5,369 15.4 3.8
スイス 2,199 2,166 6.2 △ 1.5
チリ 1,987 2,074 6.0 4.4
英国 4,300 1,720 4.9 △ 60.0
カナダ 958 1,690 4.9 76.4
スペイン 2,496 1,422 4.1 △ 43.0
日本 437 1,348 3.9 208.5
シンガポール 1,545 1,288 3.7 △ 16.6
フランス 1,324 1,187 3.4 △ 10.3
イタリア 324 901 2.6 178.1
ノルウェー 540 757 2.2 40.2
メキシコ 280 691 2.0 146.8
パナマ 282 447 1.3 58.5
デンマーク 212 447 1.3 110.8
合計(その他含む) 39,147 34,772 100.0 △ 11.2

〔注〕親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。
〔出所〕ブラジル中央銀行

表5-2 ブラジルの国・地域別対外直接投資 [国際収支ベース、グロス、フロー](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
米国 3,691 3,198 36.0 △ 13.4
バハマ 2,625 1,473 16.6 △ 43.9
英領ヴァージン諸島 1,349 807 9.1 △ 40.2
ケイマン諸島 1,205 639 7.2 △ 47.0
ルクセンブルク 2,837 503 5.7 △ 82.3
オーストリア 102 387 4.4 279.4
スイス 345 258 2.9 △ 25.2
ポルトガル 204 173 1.9 △ 15.2
オランダ 210 167 1.9 △ 20.5
アルゼンチン 44 131 1.5 197.7
英国 3,209 123 1.4 △ 96.2
パナマ 83 108 1.2 30.1
ウルグアイ 164 105 1.2 △ 36.0
メキシコ 107 76 0.9 △ 29.0
ドミニカ共和国 72 0.8
合計(その他含む) 18,264 8,893 100.0 △ 51.3

〔注〕親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。
〔出所〕ブラジル中央銀行

表6-1 ブラジルの業種別対内直接投資 [国際収支ベース、グロス、フロー](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
農業・畜産・鉱業(その他含む) 5,463 4,240 12.2 △ 22.4
階層レベル2の項目鉱物採掘関連事業 3,894 1,232 3.5 △ 68.4
階層レベル2の項目石油・天然ガス採掘 600 1,096 3.2 82.7
階層レベル2の項目農畜 438 1,077 3.1 145.9
階層レベル2の項目鉱物採掘支援事業 420 736 2.1 75.2
製造業 7,041 10,288 29.6 46.1
階層レベル2の項目化学品 1,266 2,498 7.2 97.3
階層レベル2の項目食料品 1,262 2,343 6.7 85.7
階層レベル2の項目冶金 318 1,100 3.2 245.9
階層レベル2の項目自動車・トレーラー・車体 712 723 2.1 1.5
階層レベル2の項目その他の輸送機器 103 650 1.9 531.1
階層レベル2の項目医薬品 147 537 1.5 265.3
サービス業(その他含む) 26,337 19,901 57.2 △ 24.4
階層レベル2の項目金融サービス・同補助業 4,543 4,315 12.4 △ 5.0
階層レベル2の項目電気・ガス等 3,669 3,800 10.9 3.6
階層レベル2の項目商業(自動車除く) 4,411 3,583 10.3 △ 18.8
階層レベル2の項目IT 1,473 1,120 3.2 △ 24.0
階層レベル2の項目金融サービス(非金融持ち株会社) 1,507 1,041 3.0 △ 30.9
不動産売買 305 344 1.0 12.8
合計(その他含む) 39,147 34,772 100.0 △ 11.2

〔注〕親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。
〔出所〕ブラジル中央銀行

表6-2 ブラジルの業種別対外直接投資 [国際収支ベース、グロス、フロー](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
農業・畜産・鉱業(その他含む) 3,121 139 1.6 △ 95.5
階層レベル2の項目鉱物採掘関連事業 2,910 124 1.4 △ 95.7
階層レベル2の項目その他 2 13 0.1 550.0
製造業 1,839 930 10.5 △ 49.4
階層レベル2の項目その他 453 425 4.8 △ 6.2
階層レベル2の項目自動車・トレーラー・車体 836 227 2.6 △ 72.8
階層レベル2の項目化学品 244 92 1.0 △ 62.3
階層レベル2の項目食料品 120 88 1.0 △ 26.7
階層レベル2の項目非金属鉱物製品 13 30 0.3 130.8
サービス業(その他含む) 12,907 7,278 81.8 △ 43.6
階層レベル2の項目金融サービス(非金融持ち株会社) 8,017 4,872 54.8 △ 39.2
階層レベル2の項目金融サービス・同補助業 2,883 1,012 11.4 △ 64.9
階層レベル2の項目その他 389 447 5.0 14.9
階層レベル2の項目商業(自動車除く) 93 397 4.5 326.9
階層レベル2の項目経営サービス 34 244 2.7 617.6
階層レベル2の項目運輸 23 98 1.1 326.1
階層レベル2の項目不動産サービス 31 75 0.8 141.9
階層レベル2の項目IT 1,245 61 0.7 △ 95.1
不動産売買 397 546 6.1 37.5
合計(その他含む) 18,264 8,893 100.0 △ 51.3

〔注〕親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。
〔出所〕ブラジル中央銀行

表7 ブラジルの主な対内直接投資案件(2024年)
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
農業・食品・飲料 コカ・コーラ 米国 2024年2月 40億レアル 工場の生産能力を向上させる。
農業・食品・飲料 ネスレ スイス 2024年5月 10億レアル サンパウロ州アララス市の工場への投資を発表。
農業・食品・飲料 アデコアグロ(Adecoagro) アルゼンチン 2024年7月 2億2,500万レアル バイオメタンの生産拡大のための投資を発表。
農業・食品・飲料 ブリティッシュ・ペトロリアム(BP) 英国 2024年8月 5億3,000万レアル トカンチンス州ペドロアフォンソ市でエタノールや砂糖の生産能力を向上させる。
農業・食品・飲料 ラクタリス(Lactalis) フランス 2024年8月 1億レアル 乳製品工場の拡大のための投資を発表。
農業・食品・飲料 アグレックス(Agrex) 日本 2024年10月 7億レアル 大豆やトウモロコシの生産能力向上や企業の買収のための投資を発表。
パルプ、紙および板紙 CPMC チリ 2024年4月 240億レアル リオグランデ・ド・スル州バラ・ド・リオ市でパルプ工場を設立する。
パルプ、紙および板紙 アラウコ(Aralco) チリ 2024年9月 46億ドル マットグロッソ・ド・スル州イノセンシア市でパルプ工場を設立する。
自動車・自動車部品 ゼネラルモーターズ(GM) 米国 2024年1月 70億レアル 新型車生産や新技術開発のための投資を発表。
自動車・自動車部品 フォルクスワーゲン(VW) ドイツ 2024年2月 90億レアル 生産能力向上と新型車開発のための投資を発表。
自動車・自動車部品 現代自動車 韓国 2024年2月 11億ドル 電動車やグリーン水素自動車の開発のための投資を発表。
自動車・自動車部品 トヨタ自動車 日本 2024年3月 110億レアル 生産能力拡大と新技術導入のため投資を発表。
自動車・自動車部品 ステランティス(Stellantis) オランダ 2024年3月 300億レアル 新型車生産や脱炭素化技術の開発のための投資を発表。
自動車・自動車部品 ピレリ(Pirelli) イタリア 2024年3月 2億レアル サンパウロ州カンピーナス市のタイヤ工場への投資を発表。
自動車・自動車部品 BYD 中国 2024年3月 55億レアル バイーア州カマサリ市で建設が予定される大型生産拠点のための総投資額を30億レアルから55億レアルに引き上げると発表。
自動車・自動車部品 三菱自動車 日本 2024年4月 40億レアル 新製品の製造や、フレックスハイブリッド技術の高度化に向けた工場の整備のための投資を発表。
自動車・自動車部品 本田技研工業 日本 2024年4月 42億レアル 生産効率の向上、革新的な技術の導入、そして電動化に向けた取り組みを加速させる。
自動車・自動車部品 スカニア(Scania) スウェーデン 2024年6月 20億レアル 2025年から2028までに20億レアルを投資すると発表。
自動車・自動車部品 広州汽車集団 中国 2024年6月 10億ドル ブラジルで工場、研究開発研究所、倉庫を設立する。
自動車・自動車部品 ブラボ・モーター・カンパニー(Bravo motor company) アルゼンチン 2024年7月 13億レアル バイーア州でリチウムバッテリーの工場を設立する。
自動車・自動車部品 BMW ドイツ 2024年10月 11億レアル サンタカタリーナ州アラクアリ市の工場の生産能力を向上させる。
自動車・自動車部品 サンセットタイヤ(Sunset tires) 中国 2024年12月 15億レアル パラナ州ポンタ・グロッサ市でタイヤ工場を設立する。
IT アメリカ・モービル(America Movil) メキシコ 2024年4月 400億レアル 今後5年間で光ファイバーの利用拡大や高速インターネットサービスのための投資を発表。
IT アンゴラ・ケーブル(Angola cables) アンゴラ 2024年7月 500億ドル セアラ州フォルタレザ市でデータセンターを設立する。
IT アマゾン ウェブ サービス(Amazon web services) 米国 2024年9月 18億ドル ブラジルでデータセンターの運営・改善・設立のための投資を発表。
IT マイクロソフト 米国 2024年9月 147億レアル クラウドサービスや人工知能の活用のための投資を発表。
IT スペースセイル(Space sails) 中国 2024年11月 10億ドル 高速インタネットサービスの改善のための投資を発表。
エネルギー EDP ポルトガル 2024年3月 300億レアル 今後5年間で再生可能エネルギー関連プロジェクトのための投資を発表。
エネルギー イベルドローラ(Iberdrola) スペイン 2024年3月 43億ユーロ 送電網拡大のための投資を発表。
エネルギー ムバダラ(Mubadala) UAE 2024年5月 135億ドル バイオ燃料開発のための投資を発表。
エネルギー 国家電力投資集団(SPIC) 中国 2024年6月 7億8,000万レアル リオグランデ・ド・ノルテ州で風力発電所を設立する。
エネルギー FRV スペイン 2024年6月 270億レアル セアラ州のペセン港におけるグリーンアンモニア生産計画のための投資を発表。
エネルギー ヨーロピアン・エナジー(European energy) デンマーク 2024年9月 20億レアル ペルナンブコ州のスアぺ港におけるグリーンメタノール生産計画のための投資を発表。
エネルギー エンジー(Energy) フランス 2024年9月 29億レアル 国家電力庁が実施した送電線網の入札で落札。ミナス・ジェライス州、パラナ州、サンタ・カタリーナ州、エスピリト・サント州、サンパウロ州おける送電線網の建設を行う。
エネルギー シェル 英国 2024年10月 12億レアル ゴイアス州ジャタイ市で第二世代エタノール工場を設立する。
エネルギー インパサ(Inpasa) パラグアイ 2024年10月 13億レアル バイーア州でトウモロコシ由来エタノールの工場を設立する。
エネルギー フエラ(Fuella) ノルウェー 2024年10月 90億レアル セアラ州のペセン港におけるグリーン水素生産計画のための投資を発表。
エネルギー 国家電網公司(State Grid ) 中国 2024年12月 298億レアル 2025年から2029年までに電力事業のために298憶レアルを投資する。
エネルギー エネル(Enel) イタリア 2024年12月 253億レアル 2025年から2027年までにサンパウロ州、セアラ州、リオデジャネイロ州で電力事業のために投資を行う。
家電 ワールプール 米国 2024年2月 5億レアル サンパウロ州とサンタ・カタリーナ州の家電工場への投資を発表。
家電 LG 韓国 2024年4月 15億レアル パラナ州クリチバ氏での冷蔵庫生産のための投資を発表。
冶金 テルニウム/日本製鉄 ルクセンブルク/日本 2024年4月 9億5,000万レアル ミナス・ジェライス州のイパチンガ市の鉄鋼工場への投資を発表。
冶金 ノルスク・ハイドロ(Norsk Hydro) ノルウェー 2024年7月 16億レアル グリーンアルミニウム生産計画のための投資を発表。
物流・運輸・交通 プロロジス(Prologis) 米国 2024年1月 20億レアル 物流センターを設立する。
物流・運輸・交通 中国中車 中国 2024年2月 142億レアル サンパウロ市とカンピーナス市を結ぶ鉄道の入札で落札。鉄道の運営や改善のための投資を行う。
物流・運輸・交通 アエナ(Aena) スペイン 2024年3月 45億レアル サンパウロ市のコンゴーニャス空港の運営会社は空港の改善への投資を発表。
物流・運輸・交通 MSC スイス 2024年4月 170億レアル サントス港の運営会社は港の改善のための投資を発表。
物流・運輸・交通 GLP シンガポール 2024年7月 21億レアル 物流倉庫建設のための投資を発表。
物流・運輸・交通 LATAM チリ 2024年8月 20億レアル 航空会社LATAMは技術開発や航空機整備などへの投資を発表。
物流・運輸・交通 CMA CGM フランス 2024年9月 63億レアル 海運会社・コンテナ輸送会社CMA CGMはコンテナターミナルの運営会社Tecon Santos社を買収。
物流・運輸・交通 ヴァンシ(Vinci) フランス 2024年9月 120億レアル 建設会社ヴァンシはミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンテ市とゴイアス州クリスタリナ市を結ぶ道路の入札で落札。道路の運営・改善への投資を行う。
物流・運輸・交通 南アフリカ空港会社(Airports Company South Africa (ACSA)) 南アフリカ 2024年10月 14億レアル グアルーリョス国際空港を運営する南アフリカ空港会社は2025年から2029年までに事業改善のための投資を発表。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表8 ブラジルの主な対外直接投資案件(2024年)
業種 企業名 投資国・地域 時期 投資額 概要
食品・飲料 JBS オーストラリア 2024年7月 1億1,000万豪ドル サーモン生産のための投資を発表。
食品・飲料 JBS ナイジェリア 2024年11月 25億ドル 食肉加工工場を設立する。
自動車部品 ランドンコルプ(Randoncorp) メキシコ 2024年6月 21億レアル メキシコの自動車部品メーカーKUO社を買収。
IT ウニコ(Unico) メキシコ 2024年10月 N.A. メキシコのデジタルセキュリティ会社Trullyを買収。
IT ウニコ(Unico) UAE 2024年10月 N.A. メキシコのデジタルセキュリティ会社OZフォレンジックを買収。
機械 ウェグ(WEG) トルコ 2024年9月 8,800万ドル トルコの機械メーカーボルトを買収。
機械 ウェグ(WEG) メキシコ 2024年9月 3億3,6000万レアル 新たな工場を設立する。
パルプ、紙および板紙 スザノ(Suzano) 米国 2024年7月 1億1,000万ドル 2か所の工場を買収。
金融サービス ヌーバンク(Nubank) メキシコ 2024年4月 1億ドル メキシコ事業に1億ドルを投資する。
金融サービス BTGパクチュアル(BTG Pactual) 米国 2024年6月 N.A. M.Y.サフラ銀行を買収。
金融サービス BTGパクチュアル(BTG Pactual) 米国 2024年9月 N.A. コンサルティング企業グレイタウンアドバイザーズ社を買収。
交通 エリスール(Elisur) チリ 2024年9月 3,600万ドル ヘリコプター運行会社エココプター社を買収。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

投資環境・外資誘致政策 
国内製造を強化する産業政策を発表

2023年12月、ブラジルの新たな自動車政策(Mobilidade Verde:通称「MOVER」)が導入された。これはブラジル自動車産業の持続可能な成長を目指すもので、車両の脱炭素化や、技術開発、国際競争力強化、自動車・部品のイノベーションを支援するプログラム。具体的には、エネルギー効率向上のための投資を拡大し、車両製造で環境負荷を少なくした企業や、エネルギー効率の高い車両を製造・輸入する企業に対して減税恩典が適用される予定だ。細則が定まらず未定な部分があるものの、MOVERの導入を受け、本田技研工業、三菱自動車、ステランティス(Stellantis)、トヨタ自動車、現代自動車、フォルクスワーゲン(VW)、ゼネラルモーターズ(GM)、ルノー(Renault)、日産自動車などの主要メーカーが相次いでブラジル国内への投資計画を発表した。総額1,300億レアルを超える自動車業界への投資は、電気自動車やハイブリッド車生産など、モビリティの脱炭素化に向けたものが中心となっている。

ブラジル政府は2024年1月22日、国内産業支援により、国内の生産・雇用拡大、イノベーション創出を目指す「新ブラジル産業プログラム」を発表した。国産品を優先する政府調達で国内企業を支援する仕組みも本プログラムに組み込まれている。例えば、政府が医療品、トラクター、バス、ソーラーパネルなどを調達する場合、国産品が優先される。国内生産拡大に向けた投資増が期待されている。

対日関係 
内需の拡大で日本からの輸出が増加

開発商工サービス省貿易統計(Comex Stat)によれば、2024年の対日輸出額は前年比15.7%減の55億7,800万ドルだった。対日輸出額全体の18.1%を占める鉄鉱石が18.2%減少し、鶏肉(部分肉、構成比15.2%)も10.7%減少した。一方、コーヒー豆(10.1%)は28.8%増加した。対日輸入額は、前年比5.9%増の54億3,100万ドルだった。対日輸入額全体の18.3%を占める自動車部品は6.0%増加した。ブラジル自動車部品工業会(Sindipeças)によると、2024年の自動車国内需要が拡大したため、自動車部品の輸入も増加した。日本は中国、米国、ドイツに次いで、4番目の自動車部品輸入相手国となった。

日本からブラジルへの対内直接投資額(国際収支ベース、フロー)は13億4,800万ドルとなり、前年比3.1倍と大きく増加した。2024年4月に日本製鉄の持ち分法適用会社の鉄鋼大手ウジミナスは、製鉄事業改善のため9億5,000万レアルを投資すると発表した。また、MOVERの発表を受け、トヨタ自動車は3月5日、2024年から2030年にかけてブラジルでの生産能力拡大と新技術導入のために、110億レアルの追加投資を発表した。この投資には、フレックスハイブリッド車の新車種製造やHEVのエンジン製造、バッテリー組み立てなどが含まれ、ハイブリッド車両の生産ラインを強化する予定だ。4月4日には、ブラジルで三菱自動車の車両組み立て委託先のHPEアウトモトーレス(HPE Automotores)がゴイアス州カタロン工場に2032年までに40億レアルを投資する計画を発表した。三菱自動車ブランドの新製品の製造や、フレックスハイブリッド技術の高度化に向けた工場の整備などに活用する予定。その他にも、本田技研工業は4月19日、2024~2030年にかけてブラジルに42億レアルの追加投資を行うことを発表した。この投資は、生産効率の向上、革新的な技術の導入、そして電動化に向けた取り組みを加速する目的だ。

表9-1 ブラジルの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
鉄鉱石 1,235 1,010 18.1 △ 18.2
鶏肉(部分肉) 949 847 15.2 △ 10.7
コーヒー豆 437 563 10.1 28.8
とうもろこし 1,470 513 9.2 △ 65.1
アルミニウム 361 385 6.9 6.6
フェロアロイ 348 323 5.8 △ 7.2
大豆 343 323 5.8 △ 5.8
豚肉 133 310 5.6 133.1
大豆油かす 232 155 2.8 △ 33.2
果実・ナット・野菜ジュース 99 142 2.5 43.4
合計(その他含む) 6,620 5,578 100.0 △ 15.7

〔出所〕ブラジル中央銀行

表9-2 ブラジルの対日主要品目別輸入(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
自動車部品 938 994 18.3 6.0
治療用人血・動物の血 101 179 3.3 77.2
複素環式化合物(ヘテロ原子として窒素のみを有するものに限る) 124 131 2.4 5.6
自動車用エンジン部品 117 126 2.3 7.7
乗用自動車 80 125 2.3 56.3
自動調整機器 110 116 2.1 5.5
ピストン式火花点火内燃機関 86 111 2.0 29.1
集積回路 110 99 1.8 △ 10.0
医療用又は獣医用の機器 97 98 1.8 1.0
印刷機 81 96 1.8 18.5
合計(その他含む) 5,129 5,431 100.0 5.9

〔出所〕ブラジル中央銀行

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 3.0 3.2 3.4
1人当たりGDP (米ドル) 9255 10,350 10247
消費者物価上昇率 (%) 10.06 5.79 4.62
失業率 (%) 9.6 7.8 6.6
貿易収支 (100万米ドル) 61,525 98,903 74,177
経常収支 (100万米ドル) △ 42,157 △ 27,933 △ 61,194
外貨準備高 (100万米ドル) 324,703 355,034 329,730
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 319,634 342,191 347,534
為替レート (1米ドルにつき、レアル、期中平均) 5.16 5.00 5.39


貿易収支:通関ベース
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:ブラジル地理統計院(IBGE)
1人当たりGDP、貿易収支、経常収支、外貨準備高、対外債務残高(グロス):ブラジル中央銀行
為替レート:応用経済研究所(Ipea)