為替管理制度
最終更新日:2024年06月28日
- 最近の制度変更
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2024年11月5日
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2024年10月25日
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2024年10月7日
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2024年7月25日
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2024年7月25日
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管轄官庁/中央銀行
中央銀行ほか
アルゼンチン中央銀行(Banco Central de la República Argentina)
経済省(Ministerio de Economía)
為替相場管理
変動相場制を採用している。
政令260/2002号により変動相場制を導入。ただし、厳しい資本取引規制が導入されているため国外から資本が流入しにくい状態が続いている。為替市場での取引は貿易代金の決済が中心となっており、公式為替レートの変動幅は小さい。
2019年9月に資本取引規制が強化された結果、非公式の為替取引に適用される並行為替レート(通称ブルーレート)と公式為替レートの乖離幅が広がっている。
2023年12月10日に発足したハビエル・ミレイ政権は、資本取引規制を解除する方針だ。その一環として、2023年12月13日付中銀通達A7917を通じて、輸入代金の支払い条件を緩和し、支払い可能日を明確にした。
貿易取引
必要緊急大統領令609/2019号により、財・サービスの輸出代金の国内への還流が義務付けられた。輸入代金決済用外貨の取得に関する規則は、中銀通達により定められている。
- 輸出代金の関連義務
- サービス輸出の場合:国外へサービスを提供した場合、国内または国外で支払いがあった時点から5営業日以内に、国内の為替市場でペソに交換しなければならない。
ただし、国外から受け取る報酬の一部を外貨のままで留保できる。 - 財輸出の場合:国内の為替市場で代金をペソに交換するまでの期日が設けられており、取引の種類と品目によって、船積日から15、30、60、120、180、365日と設定されている。
- 15日:小麦、大麦、トウモロコシ、大豆、大豆ミール・油・かす
- 30日:関税分類第27類の品目(鉱物性燃料など)
- 60日:関連企業間取引で、ⅰ、ⅱの品目および関税分類第26、71類の品目など。
- 60日:関連企業間取引で、ⅰ~ⅲ以外の品目で、年間輸出が5,000万ドル未満。
- 120日:年間輸出5,000万ドル以上で、冷凍牛肉、ミルクジャム、ワインなど。
- 180日:ⅰ~ⅴ以外の品目
- 365日:品目に関係なく、簡易輸出制度「Exporta Simple」を通じた輸出取引。
中銀は、商品の輸出取引に関する外貨の追跡システム(SECOEXPO)を導入。2019年9月2日以降に実施されたすべての輸出取引状況を把握するための追跡システム。輸出業者は、追跡を担当する銀行を選定しなければならない。
政令28/2023号により、財・サービスの輸出代金の全額は外貨で国内に入金し、全額を公式為替レートでペソに交換するか、80%を公式為替市場レートで、20%を有価証券の売買取引(※)を通じてペソに交換する。
※優良スワップ(CCL)取引を指す。CCL取引の詳細は、調査レポート「アルゼンチンの資本取引規制(2024年6月)」を参照。 - サービス輸出の場合:国外へサービスを提供した場合、国内または国外で支払いがあった時点から5営業日以内に、国内の為替市場でペソに交換しなければならない。
- 財・サービスの輸入
- サービス輸入
- サービス輸入に際しては、サービスの輸入取引が存在したことを裏付ける書類を取引銀行に提出し、中銀の対外資産・債務調査システムに取引の関連情報を記録しなければならない。
- 2023年12月13日以降、サービスの輸入にアルゼンチン共和国輸入システム(SIRASE)への申告は不要となった。
- 中銀の事前承認なく輸入代金の支払いが可能なサービスは次のとおり。
- 旅客輸送サービス、 旅行関連サービス、音響・映像関連サービス、政府サービス、旅行支援会社による医療サービス、その他の医療サービス、カード代金の決済サービス。支払いができるのは、サービスの提供後。
- フレートに関連するサービス。
- 個人的、文化的・娯楽的サービス(個人の医療費や学費など)で、サービス提供日から90 暦日が経過したもの。
- これら以外で、輸出者と輸入者が関係会社ではなく、サービス提供から30 暦日が経過したもの。輸出者と輸入者が関係会社の場合で、サービスの提供日から180暦日が経過したもの。
- 2023年12月12日以前に提供されたサービスで、中銀の事前承認なく輸入代金の支払いが可能なのは、次の条件を満たした場合。
- 国内外の金融機関、または国際機関による融資または保証を有する。
- 加えて、公共歳入連邦管理庁(AFIP)の「単一外国貿易口座」に、金融機関を通じて輸入代金の支払い情報を登録しなければならない。
- 財輸入
- 2023年12月13日以降、財の輸入代金を支払うための外貨を取得するには、アルゼンチン共和国輸入システム(SIRA)での申告は不要となった。
- 通関後すぐにFOB建て輸入代金を支払うことができる品目は、石油または歴青鉱物油、その調製物や残留物、石油ガスとその他のガス状炭化水素、発電所が輸入する歴青炭、電気エネルギー、天然ウラン、濃縮ウランおよびその化合物、重水、ジルコニウムおよびその製品で、エネルギーまたは燃料の生産を目的に輸入するもの。
- 通関後から30日暦以降にFOB建て輸入代金が支払うことができる品目は、医薬品とその原材料、ヘルスケア関連製品、肥料や植物衛生に関する製品とその原材料、一部食料品、生活必需品など。
- 通関後から180日暦以降に FOB建て輸入代金を支払うことができる品目は、完成自動車、いわゆるぜいたく品。
- 通関前に支払いができる品目は、中小、零細企業が輸入する資本財は、FOB価額の20%相当額を通関前に、残りの80%と運賃、保険料を通関から30暦日経過後に支払うことができる。
- その他の品目は、輸入通関から 30暦日後、60暦日後、90暦日後、120 暦日後にそれぞれ25%ずつ分割してFOB建て輸入代金の支払いができる。運賃、保険料は、最初の支払いを行う輸入通関から30暦日後に全額を支払うことができる。
- サービス輸入
貿易外取引
中銀は2019年10月28日より、外貨購入の上限を設定。
- 外貨の購入
中銀通達A6815により、2019年10月28日以降、国内に居住する自然人による預金を目的とした外貨購入および海外送金は、1カ月につき200米ドルまでとされた。法人が外貨を購入するためには、中銀の事前承認が必要。両替商、政府機関、国際機関、外交機関などは規制の対象外。 - クレジットカード・デビットカード
海外においてクレジットカード・デビットカードを利用して現金を引き出すためにも上限がある。デビットカードの場合、アルゼンチン国内に保有する現地通貨建て口座であれば1カ月につき200米ドル相当まで。外貨建て口座からの引き出しには制限はない。クレジットカードの場合、アルゼンチンが国境を接する国で引き出せる現金は50ドルまで、その他の国では200ドルまで。クレジットカード・デビットカードで国外の財やサービスを購入する場合、利用金額に制限はないが、国内で発行されたカードの場合、利用金額が300ドルを超えると社会的包摂の促進と資金調達のための外貨購入に係る税(Impuesto PAIS)や個人資産税など合計約100%が課税される。ただし、次の取引の代金を国外に支払うことは認められない。- ギャンブルへの支払い
- 決済サービスプロバイダ(PSP)への資金送金
- 国外のファンドマネージャーへの資金送金
- 国外での為替取引
- 仮想通貨の購入
- 宝石、ジュエリー、貴金属(金、銀、プラチナ、など)の購入
資本取引
厳しく規制されている。
国外への利益・配当金の送金には中銀の事前承認が必要。一定の条件を満たせば中銀の事前承認は不要だが、実態としては、国外への利益・配当金の送金は困難である。債務の元本および利子の支払いにも中銀の事前承認の取得が必要だが、実態として債務の元本の部分の送金は困難である。
関連法
中銀通達(Comunicación)、政令260/2002号(変動相場制の導入)、必要緊急大統領令609/2019号(輸出代金の国内還流義務)ほか。
法令・検索ウェブサイト "Información Legislativa y Documental"
アルゼンチン中央銀行通達検索サイト "Banco Central de la República Argentina-Buscador de Comunicaciones)
アルゼンチン中央銀行「貿易と為替に関する通達集」(Textos ordenados de las normas sobre “Exterior y Cambios”(2.45MB))
その他
特になし。