外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用

最終更新日:2024年07月23日

外国人就業規制

労働契約法(1974年法律20744号)により規定される。

アルゼンチンの労働法は、労働契約法(1974年法律20744号)と呼ばれ、外国人に対しても適用される。

在留許可

移民法(2004年法律25871号)では、パーマネント、トランジット、テンポラリーの3種類の滞在許可がある。事業を行うためには、パーマネント、テンポラリーのどちらかの滞在許可の取得が必要。

管轄機関

内閣官房内務担当 移民局ウェブサイト(Jefatura de Gabinete de Ministros, Vicejefatura de Gabinete del Interior-Dirección Nacional de Migraciones外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

アルゼンチンの移住制度は、移民法(2004年法律25871号)により規定されている。

海外在住の外国人の入国および滞在には、その移住カテゴリーに応じて入国許可(Permiso de Ingreso)を取得する必要がある。入国許可は、海外にあるアルゼンチン領事館にて申請可能で1年間有効。
入国許可を取得後に、パーマネント、トランジット、テンポラリーの3種類のうち、いずれかの移住カテゴリーの滞在許可(ビザ)を取得しなければならない。

  • パーマネント
    永住を目的として3年以上(メルコスール加盟国および準加盟国の国籍を有する者は2年以上)テンポラリービザで滞在したアルゼンチン人の家族、もしくは永住者の家族などが取得できる。
  • トランジット
    学術活動、投資市場調査、季節労働等を対象としている。
  • テンポラリー
    専門的活動(工業、商業、ビジネス、科学、文化、スポーツ等)、投資家、学生、宗教、契約を有する労働者、年金生活者を対象とする。生産、商業、サービスなどが目的の投資家は、3年の滞在許可が得られる。

現地人の雇用義務

現地人の雇用は、労働契約法(1974年法律20744号)により規定されている。同法は、現地人の雇用比率を定めていない。ただし、一部の産業、例えば漁業では、アルゼンチン国籍の船員に関する規定がある。

  1. 労働契約

    労働契約法に現地人の雇用義務に関する規定はない。ただし、漁業法(1998年法律24922号)は、乗組員(クルー)の75%はアルゼンチン人、もしくは10年以上の永住許可を有する外国人と定めており、船長およびその他の職員(オフィサー)はアルゼンチン人に限定される。その他、地方州などでは、鉱業において現地人の一定比率の雇用義務が存在する。

    雇用時の試用期間は3カ月で(注:後述の「その他」参照)、それを超える場合は、正式な雇用に切り替えることが求められる。アルゼンチン国内で外国人を採用した場合も、労働契約法が適用される。

    労働契約法は雇用契約の期間を定めていない。ただし、特別契約として、有期雇用契約(最長5年。雇用者が契約満了日の30日前までに契約の終了を通知しない場合は、無期転換される)、季節契約(観光、サトウキビの刈入れ、果物収穫など特定の時期に雇用が発生する産業に限る)、一時的な雇用契約(特別イベントの開催、代行業務など)、チーム・グループ契約(例えば、飲食店経営者が複数のメンバーで構成された音楽団と結ぶ雇用契約など)が規定されている。

  2. 勤務時間・休暇
    一般的に、労働時間は1日8時間、あるいは週48時間である。年間の有給休暇は、勤続年数が6カ月から5年までは14日、5年から10年は21日、10年から20年は28日、20年以上は35日が認められる。
  3. 解雇

    解雇時の事前通告期限は、試用期間中の労働者に対しては15日前、勤続年数5年以下の労働者に対しては1カ月前、勤続年数5年以上の場合は2カ月前となっている。正当な理由なく解雇された労働者が受け取る賠償金(Indemnización) は、基本的には勤続年数ごとに1カ月分の給与相当額とされる。
    試用期間中の労働者は、賠償金を受け取る権利はない。ただし、雇用主が事前通告を行わなかった場合は、事前通告期間にあたる給与分に相当する賠償金を受け取る権利がある。労働者側が雇用主に対して雇用契約の解消を求める場合、雇用者に対して15日前に通知する必要がある。その場合は、雇用主が賠償金を支払う義務はない。

  4. 給与・賞与
    従業員の給与は、総額の20%までは物品、住居、食品などでの現物支給が可能。給与の支払いは、雇用主が労働者用の銀行口座を開設して振り込む必要がある。国家雇用生産賃金委員会によって最低賃金が決定されているため、正規雇用では最低賃金を下回る給与は認められない。労働者には6月と12月の2回に分けて、それぞれ給与1カ月分の賞与(SACまたはAguinaldo)を支給しなければならない。
  5. 社会保障費
    現行の負担率は2019年法律27541号に規定。商業・サービス分野、または年間売上高が、中小企業庁が定める「中規模企業区分B(Mediana tramo 2)」を超える大企業の従業員1人当たりの社会保障費の雇用主負担率は26.4%、その他業種、中小企業の場合は24%。本人負担率はいずれの場合も17%。雇用主負担率の内訳は次のとおり。
    雇用主負担率
    項目 a. 商業・サービス産業 b. a.以外の業種
    年金 12.35% 10.77%
    医療総合プログラム(INSSJP) 1.57% 1.59%
    家族手当 5.40% 4.70%
    雇用保険 1.08% 0.94%
    (医療保険) 6.0% 6.0%
    社会保障費合計 26.4% 24.0%

その他

2024年7月8日に「アルゼンチン人の自由のための基盤および出発点に関する法律」(通称:オムニバス法または基盤法)が公布され、労働契約法の一部が改正された。2024年7月23日現在、施行規則の公布待ちである。

オムニバス法に含まれた労働契約法の主な改正は以下のとおり。

  • 解雇基金制度:労働協約(Convenio Colectivo de trabajo)により、賠償金(Indemnización、いわゆる退職金)を解雇基金制度の設置に置き換えることが可能になる。雇用主は、従業員の給与の一定金額に相当する金額を基金に拠出することにより、解雇時に賠償金を支払う代わりに、基金から支払うことができる制度。
  • 試用期間の延長:これまでの試用期間の3カ月が6カ月に延長される。労働協約により、従業員数が6人以上100人までの企業では、試用期間は8カ月まで延長可能。従業員数が6人未満の場合、1年まで延長できる。試用期間中は、正当な理由なく解雇が可能で、賠償金の支払い義務はない。
  • 従業員の未登録または不正登録に対する罰則の撤廃:従業員との雇用関係を当局に登録しない、または実際より低い賃金で登録、登録日を遅延させた場合の雇用主に対する罰則が撤廃される。
  • 雇用関係の柔軟化:従来の雇用関係以外の形態で雇用することを可能とする。例えば、サービス委託契約や協力者(Colaborador)としての雇用を認める。
  • 派遣会社を通じた雇用を認める:派遣会社を通じた雇用を禁止する規則を撤廃する。これら従業員は、人材派遣会社の従業員とみなされ、サービスを受ける会社の従業員とはみなされない。
  • 労働組合などによる抗議権利を制限:例えば、これまで労働組合に属する労働者などは抗議の権利を主張し、会社の施設への出入りを妨害、会社施設の占拠、またはほかの従業員の労働を妨害することができた。今後、このような抗議を実施した場合は、解雇に値する正当な理由とみなされる。
  • 産休:現行法では、産前休暇は出産予定日の45日前から、産後休暇は出産の翌日から45日までの90日間とされるが、今回の改正により、従業員が希望すれば産前休暇は30日まで短縮し、残りの日数は出産後に充てることできる。