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外食産業の動向 ‐ 日本食レストランが急増

2011年2月
分野:食品・農林水産物

日本の外食産業の進出は発展段階

ベトナムにおける日本料理店の数は、在住日本人数の伸びが著しくなった2007年前後より増加傾向にある。現在はホーチミン、ハノイの両市において約150の日本料理店が営業を行っている。当地の日本語フリーペーパーには、両市ともに新規店舗開設の広告が掲載される状態がここ2~3年続いている。また、大々的な広告を行っていない日本料理店もあり、ベトナム人を対象にしたレストランは日本人が目にする雑誌や新聞には広告を出していないことも多いため、実際の日本料理店の数はさらに多いとみられる。

しかし、シンガポールやタイなどの近隣諸国に比べると、日本食の外食産業はまだまだ発展段階といえるだろう。日本人在住者数は年々増加しているものの、日本の外務省の海外在留邦人数統計によると、2009年10月1日時点での在ベトナム邦人数は約9,400人(2005年時点では約4,000人)で、同資料によるとシンガポールは2万人超、タイは4万人超である(※1)。近年の経済成長が著しく、国民一人当たり国内総生産(GDP)は2008年に1,000ドルを超えたが、ベトナム人の間で日本料理は今なお「高級料理」としての認識が強く、高級なレストランで食べる日本料理が一般的な食事として普及するには、かなりの時間を要するとみられる。

また日系(※2)の外食チェーンの進出は少なく、現時点では全国的に見てもまだ数件しかない。日本料理店の客層は高所得者層のベトナム人もしくは在住日本人・外国人であり、対象となる在住日本人数が1万人前後の市場では、日系外食産業チェーンの進出は厳しいといわれている。

表1:日系外食チェーン店(2010年10月時点)
店舗名 所在地 店舗数 開設年 備考
居酒屋やんちゃ ハノイ 1 2010年 日系居酒屋チェーン店(やんちゃ)、和風居酒屋
Baby Spoon ホーチミン 3 2009年 日系洋食チェーン店(Baby Face Planets)、洋食レストラン
MOF ホーチミン 2 2009年 シンガポール系日本料理チェーン店(Ministry of Food Co., Ltd.)、甘味と軽食の和風カフェ

※1, 平成21年の海外在留邦人数調査統計(外務省)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます による。
※2, 2007年1月のWTO加盟時から起算して8年以内はホテル内等を除き、レストラン事業は外資には解放されていない。ここでいう日系とは業務提携、人材派遣などを含む広義の日系企業である。

現地で人気の日本食レストラン

ベトナム人・外国人向け日本食レストランが急増

以前は在住日本人を対象にした日本食レストランがほとんどであったのに対し、経済の発展と所得の上昇に伴い、都市部を中心にベトナム人高所得者層を対象とした日本食レストランが急増している。これまで客層の大半が日本人であった日本食レストランでも、客層が逆転した店も少なくない。

ホーチミン市でチェーン展開を行う「The Sushi Bar」は1999年に1号店をオープンし、現在はホーチミン市内に全4店舗を展開、日本料理にあわせたワインやお酒も楽しめるバーとしても人気が高い。提供される料理はすし・刺身をはじめ、揚げ物・焼き物・炒め物から丼物、鍋物まで幅広く、日本から直送された鮮魚も扱っている。デリバリーも可能で、オンラインでの注文・予約もでき、客単価も20万ドン(約10.3ドル ※3)前後からと手ごろな価格設定となっており、日本人をはじめ在住外国人、高所得者層のベトナム人に圧倒的人気を誇っている。ハノイでベトナム人に人気の日本食レストランを展開するTrieu Nhatグループは、回転ずし店の「Asahi Sushi」を2003年にオープン、その後和風鍋料理店「Asahi Hot Pot」、中華料理店「Long Dinh」の2店舗を展開し、さらには高級感と清潔感を売りにしたフォー専門店を4店舗展開している。これらの店舗は在住日本人の利用はほとんどなく、客層は約8割がベトナム人で、残りは在住外国人となる。特に「Asahi Sushi」は2003年の開店時よりベトナム人高所得者層に強く支持されている。店内1階は回転ずしで全席カウンター席、料理人がすしを握る姿を見ることができる。2階ではカウンター席とテーブル席で料理人がパフォーマンスを行う鉄板焼きコーナーが設置されている。3階は静かに食事を楽しめる全席テーブル席である。各フロアのコンセプトが異なり、趣向を凝らした作りとなっている。同店の客単価は一人当たり25~40ドル前後(ドリンク別)と、日本人オーナーの日本料理店と同等かそれよりも高いが、他店では見られない斬新なシステムで常に家族連れやカップルを中心に大変な人気を呼んでいる。

その他にもベトナム人を対象とした日本食レストランは急増しており、ホーチミン、ハノイの両市で展開しているところも珍しくない。また、本格的な日本料理店とはいえないが、きのこ鍋を専門とする「Ashima」や同系列のひとり鍋専門店「kichi Kichi」も、ここ数年で急激に店舗数を拡大している。「Ashima」は高級きのこ鍋料理店として、高所得者層のベトナム人および在住外国人を対象に2005年に1号店を開店、現在では全国に7店舗を展開し、日本の東京都港区にも1店舗展開している。客単価も比較的高く、高品質なサービスと落ち着いた雰囲気、味の良さから日本人ビジネスマンの接待にも利用されている。一方同系列の「Kichi Kichi」は、対象層をベトナム中間所得者層に設定し、ひとり鍋専門店として2009年2月に1号店が開店した。一人用の鍋がテーブルにセットされ、日本の回転ずしで使用される回転ベルト上で鍋の具が移動するという他にはないシステムで人気を集め、わずか2年足らずで全国に20店舗以上を展開している。同様に、日本風一人鍋専門店「Sy Phu(仕富)」も、現在、ハノイ、ホーチミン市双方で5店展開している。「Sy Phu」では、なるとや日本風さつま揚げやしらたきといった日本の鍋用の食材から、和牛やあわび、カンガルーやクロコダイルといった、一風変わった食材を使用しており、メインとなる食材(肉、魚)によって価格が異なる斬新なスタイルを取り入れている。

「Ashima」「kichi kichi」「Sy Phu」は、巻きずしや刺身といった日本料理の一部をメニューに取り入れており、日本語のような店名と、日本酒瓶のディスプレイや日本語の壁紙が使用された店内のインテリアなどから、多くのベトナム人には「日本料理店」と認識されている。

その他、最近では大型デパートやショッピングセンター内のフードコートにも、日本料理店を見かけるようになった。セット料理で3万ドン(約1.5ドル)前後からと、中所得者層をターゲットとした価格設定となっているところがほとんどである。料理のメニューも豊富で、すし、刺身から、うどん、定食、鍋まで幅広い。最近とくに店舗数を拡大しているのが「Kitchen Japan」である。こちらも2009年以降の展開が活発で、現在では、ハノイ、ホーチミン市、フエ市、ハイフォン市に11店以上展開している。

※3, 1ドル=19,500ドンで換算(2010年10月Vietcom Bank参照)、以下同様

ベトナムでも日本的なサービスが人気

在住日本人に人気の高い日本料理店も依然として多い。特に日本人に人気の高い日本料理店に共通しているのは、スタッフの徹底した教育と料理のクオリティーの高さである。オーダーの際にはスタッフが「本日のおすすめ」料理を適切な調理方法で提案したり、酒の席ではグラスが空けば、次のドリンクを勧めてくれたりと、細かな気配りとサービスが評判を呼んでいる。料理は現地の新鮮で安全な食材を使用している。例えば、野菜は産地直送で農家と直接契約している店も多く、海産物は近海でとれた新鮮なものを扱っている。日本でしか入手できない食材は日本から直接輸入したり、また昨今のトレンドとして、鍋料理店や焼き肉店、串焼き店などの専門店が増えている。これまでは居酒屋風の多品目料理を扱う日本料理店がほとんどであったのに対し、ここ数年の間で特色ある各種専門店が広く展開し始めている。

現地で人気の日本料理店に共通しているのは、安全性・品質を重視した食材を使用し、他店にはない独自のコンセプトを作り上げていることである。メニューには産地名の記入や、「日本直送」、「天然」といった記載が多く、昨今の食の安全性への人々の意識の高まりを強く反映している。また独自のコンセプトとして、モダンで落ち着いた内装やインテリア、「本日のおすすめ」や「日本直送」料理の品揃え、回転ずしから鉄板焼きまで家族連れやカップルで楽しめる雰囲気、日本と変わらない細やかなサービスなど、「他では見られない特徴」を先取りしている。

また経済の成長に伴う所得の上昇や生活の変化から、ベトナム人の間で日本食に対する意識や関心が変わり始めている。以前は「刺身」「すし」などの生魚に拒否反応を示す人々が多かったのに対し、シーフード店やベトナム料理店でも「サーモンの刺身」や「刺身サラダ」をよく見かけるようになった。刺身はベトナム語でもSashimiと呼ばれ、サラダやマリネなど日本料理以外でも頻繁に使用され、好んで食べられるようになった。ベトナム人に人気の日本料理店への聞き取り調査でも、ベトナム人客からの「すし」「刺身」の注文が増加していることが明らかになっており、またBig Cなどの大型スーパーマーケットの惣菜コーナーでは、パック詰めされた巻きずしや握りずしが販売されるようになった。価格も5万ドン(約2.6ドル)前後で設定されており、興味深く手にとるベトナム人客の姿が見られるなど、日本料理の代表でもある「すし」「刺身」がベトナム人の間で浸透しつつあることが窺える。

日系・非日系問わず、現地で浸透している日本料理店は、特に2009年以降に急増している。The Sushibarも3号店・4号店の開店は2009年以降であり、Asahi Sushiの2号店「Asahi Hot Pot」も2009年の開店である。その他日本人経営の焼き肉店や串焼き店等専門店も、2009年以降相次いで展開している。

客単価は店によって異なるものの、ディナーでは一人当たり20万~50万ドン(約10.3~25.6ドル)、すし・刺身などを含む場合は40万~60万ドン(約20.5~30.7ドル)前後(ドリンク別)となる。

表2:人気メニューと客単価(2011年1月時点)※4
店名 店舗数 人気メニュー 客単価 客層
Asahi Sushi/Hotpot
(ハノイ)
2 刺身、鉄板焼き(肉・魚)、鍋 ランチ:9~15ドル/セット
ディナー:25~40ドル
ベトナム人:80%
在住外国人:20%
Ashima
(ホーチミン/ハノイ)
(※5)
7
きのこ鍋、刺身(サーモン) 30万~60万ドン ベトナム人:70%
在住外国人:30%
Kichi Kichi
(ホーチミン/ハノイ)
(※6)
21
食べ放題(特定食品は別料金)
12万9,000ドン
ベトナム人:95%
在住外国人:5%
Kitchen Japan
(ホーチミン、ハノイ、フエ、ハイフォン)
11 定食、すし、鍋 定食:3万~10万ドン/セット
鍋:12万~40万ドン
ベトナム人95%
在住外国人:5%
Sy Phu(仕富)
(ホーチミン/ハノイ)
5 20万~40万ドン ベトナム人:95%
在住外国人:5%
The Sushi Bar
(ホーチミン)
5 すし、刺身 ランチ:9万~18万ドン/セット
ディナー:15万~40万ドン
ベトナム人:50%
在住外国人:50%

※4, 客単価は高級食材を除く一般的なものとし、ドリンク代を除く。
※5, ベトナム以外では、東京港区に1店展開。
※6, ベトナム以外ではシンガポールに2店展開。

高級感の演出で成功する外国レストラン

日本料理以外で現地に広く浸透している外国料理レストランには、主に韓国料理、タイ料理、メキシコ料理、イタリアン、ファストフードなどがある。韓国料理では食べ放題ビュッフェのSeoul GardenやファストフードのBBQ Chicken、タイ料理ではThai Express、イタリアンではJASPASやPepperoni’s Pizza(Al Frescosグループ)などが全国的にもチェーン展開を行っており、個人経営の専門店に比べ比較的安価なため、客層の大半が中・高所得者層のベトナム人である。

ファストフードでは、ハンバーガーやフライドチキン、ピザを中心として外国からの投資が急増している。これらファストフード店は1997年前後からホーチミン市を中心に展開が始まったが、2006年以降ハノイおよび北部市場での店舗拡大が相次ぎ、ここ3~4年で各店ともに全国的に急増している。主要なファストフード店として、ケンタッキーフライドチキン(2010年10月時点全81店舗 ※7)、ロッテリア(同全72店舗 ※8)、ピザハット(同全12店舗 ※9)などが挙げられる。価格もメインとドリンクのセットで5万ドン(約2.6ドル)前後からと、ベトナム人の中・高所得者層にとっては馴染みやすい価格帯で設定されており、都市部の若者を中心に人気を集めている。今後も店舗拡大が予想され、これまでは都市部の中心地のみであったのが徐々に郊外へと展開しつつある。
※7, ホーチミン48、ハノイ17、ハイフォン2、Hue2、ダナン2、Ban Me Thuot 1、Binh Duong 2、Dong Nai 3、Ba Ria-Vung Tau 3、カントー 1(同社ウェブサイトによる)
※8, ホーチミン 42、ハノイ16、ハイフォン3、Hue 1、ダナン2、Phan Tiet 1、Binh Duong 2、Dong Nai 3、Ba Ria-Vung Tau 2(同社ウェブサイトによる)
※9, ホーチミン9、ハノイ2、Dong Nai 1(同社ウェブサイトによる)

非日系の経営の日本食レストランは客層の大半がベトナム人である。本格的な日本料理を提供する非日系の日本食レストランも一部あるが、多くは味付けや食感がベトナム人に受け入れられやすいようアレンジされている。斬新で見た目にも派手なメニュー表や、パフォーマンスを見ながら楽しめるサービスが取り入れられていたり、ベトナム人の好む鍋料理の種類が豊富であったりと、よりベトナム人に受け入れられやすいようにさまざまな趣向が凝らされている。

その他、ホーチミン市を中心に外資系のカフェやベーカリーショップが人気を集めている。外資系のカフェやベーカリーショップは中心地に位置するため外国人や観光客の利用も多く、地場のカフェに比べ価格は数倍するが、利用者の多くはベトナム人である。一方ハノイでは、外資系カフェのチェーン展開はまだ少なく、外資系のベーカリーショップにいたってはほとんど展開していない。

現地で浸透する外国料理店やカフェの共通点として、店員の活気に満ちた挨拶と高品質なサービス、清潔で快適な店内、モダンなインテリア、落ち着いた高級感溢れる雰囲気などが挙げられる。店員は浴衣やアオザイなどの民族衣装や、モダンで洒落たユニフォームに身を包み、来客時には全店員が挨拶をし、各テーブルには専任スタッフが配置、客からの要望にも速やかに対応する教育が行われている。混雑時には入り口のボードに名前を記入しておけば、順番どおりに席へ案内するなど、日本では一般的だが他のベトナムの料理店ではまだまだ見られない、細やかなサービスも見受けられる。一般の料理店や屋台にはない高級感・清潔感がビジネスシーンでも利用できると、ベトナム人ビジネスマンにも好んで利用されている。また外国料理とはいえ、ベトナム人に馴染みやすいようベトナム流にアレンジされたメニューが多い。例えばファストフードでは米食文化を反映してライスセットメニューがあり、イタリアンではベトナム麺独特の軟らかさを反映してあえて軟らかく茹でたパスタが一般的である。

またベトナム料理でも南北で特徴があるように、全国でチェーン展開を行うレストランでは、地域によってメニューや味付けを変えている店も少なくない。例えば全国展開をする「ASHIMA」では、南部のメニューでは天ぷらや巻きずしがあるのに対し、北部ではそれらの代わりに揚げ春巻きと生野菜サラダになっている。外食産業がより盛んなホーチミン市ではファストフードの展開も早く、外国料理が人々の間で広く浸透している。一方、ハノイでの外国料理の外食産業はまだ展開が始まったばかりであり、文化的・歴史的な背景からもハノイの方がより保守的で用心深い傾向が強く、見たことのない食事・食べたことのない味に対する拒否反応が未だに強い。そういった地域の人々のトレンドや嗜好を取り入れたメニュー作りも成功要因の一つといえるだろう。

(ホーチミン事務所)

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