市場・トレンド情報

酒類の消費事情(台湾)

適格な情報を消費者にいかに届けるかが成功の秘訣

2015年3月
分野:食品・農林水産物

近年の台湾におけるウィスキー、ワイン、ビール等の輸入統計をみると、金額・数量ともに増加傾向にある。日本と比べ、飲酒の習慣があまりないとの印象が強い台湾であるが、台北の街中では、酒類専門店がよく見られ、高級スーパーマーケットから一般スーパーマーケットまで、酒類の品揃えも豊富だ。台湾の酒類等の輸入、卸売、小売業者および飲食関連業者に、台湾における輸入酒の消費状況・事情を聞いた。

増加傾向の酒類輸入

近年の台湾におけるウィスキー、ワイン、ビール等の輸入統計をみると、金額・数量ともに増加傾向にある。日本と比べ、飲酒の習慣があまりないとの印象が強い台湾であるが、台北の街中では、酒類専門店がよく見られ、高級スーパーマーケット(以下、「スーパー」)から一般スーパーまで、酒類の品揃えも豊富だ。また、2013年に引き続き、14年9月に台北市内で開催された日本全国各地の蔵元を集めた「日本酒主義2014」は、2日間の会期で2,000人を超える来場者を集めた。同年11月に同市で開催された「お茶・コーヒー・酒展」にも日本から蔵元、地ビール製造企業数社が参加して賑わいをみせる等、酒類および日本の酒に対する注目度も高まっている。

そのような状況の中、14年11月、台湾の酒類(ワイン、ウィスキー、日本酒)等の輸入、卸売、小売業者および飲食関連業者に、台湾における輸入酒(主にワイン、ウィスキー)の消費状況・事情をヒアリングした。

図1:台湾の酒類輸入額の推移(2003~13年)

台湾の酒類輸入額の推移(2003~13年)

(出所)台湾財政部関務署

図2:台湾の酒類輸入量の推移(2003~13年)

台湾の酒類輸入量の推移(2003~13年)

(出所)台湾財政部関務署

酒類の主な購入先は専門店やスーパーマーケット

家庭での晩酌の習慣が一般的には無いといわれている台湾においては、やはりレストランでの消費が多いかと思われるが、卸売、小売業者によると実際はワイン、ウィスキーは専売店やスーパーマーケット(以下「スーパー」)での売り上げの方が多いとのことであった。

台北では、ほとんどの高級スーパー、一般スーパー、量販店、コンビニエンスストアにおいて、ビール、ワイン、ウィスキー等さまざまな酒類が販売されているほか、台湾全体に31店舗の販売拠点を持つ橡樽桶をはじめとする酒類専門店も多い。ビール、ワイン、ウィスキーに関しては、これらのほとんどのチャンネルで販売されており、また品揃えも多い。

ビールに関しては、高級スーパー以外の販売チャンネルにおいても、世界各国のビールやクラフトビール(地ビール)が販売されるようになってきている。コンビニエンスストアでも、台湾産ビールのほかに、日本産、米国産、欧州産等数カ国のビールを揃える店舗が多い。14年の夏には、大手コンビニエンスストアが欧州産ビールをPB(プライベートブランド)商品として販売する等の展開もみられた。ビールは酒類への導入(ファースト・ステップ)としての性格もあり、こうした小売りにおけるビール市場の盛り上がりは、台湾の消費者の酒類への関心の高まりの表れであると話す関係者もいた。

日本の各産地の日本酒や焼酎については、小売りでは高級スーパーでの取扱いが大きく、一部の酒類専門店でも取扱っているという状況だ。その他の小売店でも日本酒が販売されているが、ほとんどが台湾産日本酒「玉泉」か、日本の大手酒造メーカーの日本酒が多い。

用途はレストランへの持ち込みや贈答用など

一方で、やはり家庭での晩酌の習慣を持つ人は少なく、家庭で飲んでもビール(特に夏)だけという人が多いというのが、今回ヒアリングした業者の一致した見方である。さらに、小売店での酒類購入の目的としては、多い順に、接待用(ホスト、ゲスト両方)、レストランでの個人消費(持ち込み)用、贈答用、自家消費用(自宅等で自分や家族、友人と楽しむため)という見方が多かった。

接待用、レストランでの個人消費用については、日本ではいわゆる“持ち込み”に相当するが、台湾では持ち込み手数料を取らない飲食店が多い。また、手数料を取っても300~500元(約1,200~2,000円)と、比較的安価な場合が多い。レストランでワインを1本注文した場合、800元(約3,200円)からの価格設定の店も多く、安い価格帯の酒類を持ち込んだ方が、安く済んでしまうこともある。台湾の宴会は乾杯文化であり、接待用に持ち込みをする場合は、味よりも量、価格の安さを求める人が比較的多いようだ。ゲスト側も返礼にウィスキーやワインを持ち込む場合もあり、この場合も比較的安い価格帯が好まれることが多いという。ただし、面子を重んじる文化は根強く、高級酒でもてなしたり、高級酒で返礼したりする場合もある。

レストランに持ち込む個人消費用の傾向として、中価格帯の酒類、ワインの場合500~800元(約2,000~3,200円)のものを用意することが多いようだ。特にワインは、台湾の一般の人の間でも浸透し、食事との組み合わせをみながら選ぶ人も増えている。友人との食事会に気軽に持っていけるプレゼントとして、買いだめをしている人も少なくないという。

なお、台北の飲食店の中には、酒類の持ち込みを禁止したり、高い持ち込み料を課したりする店もある。店によっては、自社取扱いワインの販促のため、コース料理を注文すればワインを1本サービスするというところもあるようだ。いずれにせよ、酒類の持ち込みに対しては、比較的寛容な考え方をする飲食店、消費者が多い点は特徴的といえよう。

また、贈答用としては、日本産の生鮮果実と同様に高級であり、パッケージが綺麗なものが好まれる。年間で、中秋節(8月下旬~9月)、春節(1~2月)の2回が贈答シーズンであり、平常時の倍ほどの売り上げになるとの話も聞いた。

自家消費用としては、まだ大きい割合を占めるに至らないものの、需要は着実に伸びているという。最も高価格帯の酒類を購入するのがこの層で、各酒類に造詣が深い人が多い。特に接待用では世界的な地名度が高いウィスキー、ワインが好まれるのに対し、個人消費用では知名度がそれほど高くなく珍しいもの、限定商品等が売れる傾向がある。

プロモーションは店頭ポップ広告で

酒類においては、商品のストーリーや味の特徴、料理との組み合わせ等の情報を消費者にいかに伝えるかが大切であるという点が、今回ヒアリングした業者の一致した見方である。スーパー、酒販店においては、これらの情報をまとめたポップがよく利用されている。日本の人気漫画で紹介された商品とのポップを作成する業者もいる。ワインを取扱う飲食店であれば、味の特徴を簡潔に記したワインリストを提供する店もある。また、輸入・卸売業者からは、直接消費者に伝えることが大事であるからと、小売り現場の試飲ブースに販売員を派遣するとの話しを聞いた。

2014年11月に開催された「お茶・コーヒー・酒展」では、ウィスキー、ワイン、ビール等の講座が開かれ、専門家や輸入業者が自らそれぞれの酒類の製法から飲み方まで解説していた。9月に催された「日本酒主義」においても、精米歩合の違いによる味・香りの違いを参加者に体験させる企画が行われ、来場者の関心を引いていた。このようなイベント時以外にも、輸入業者や小売店主催の酒類講座がワインをはじめとし数多く開催されている。日本酒においても、利き酒師の資格を持つ講師が講座を開設するなど、徐々に消費者教育が広がってきている。こうした消費者への酒類教育については、各関係者が共通して注力している。

ワインについては、台湾は金額・数量ともにフランスから最も多く輸入しているが、金額は年々増加しているものの、数量は年々減少している。小売業者によれば、この動きは消費者がよりよいワインを求めるようになってきたためとみていた。

日本酒に関しては、まだまだ啓蒙段階にあるとの見方が多く、台湾の一般消費者の中では日本酒といえば熱燗にするというイメージが強いという。また、仮に「大吟醸」「吟醸」という言葉を知っていても、何を意味するかまでは知らない人がほとんどとのことであった。ただし、2013年、14年と2年連続で年間200万人を超える訪日者がいる台湾では、日本で日本酒を味わった人も多く、台湾内での関心が高まってきている状況にある。この波を利用し、どう消費者に日本酒自体を知ってもらうかが、今後の台湾での消費拡大を図る上で重要と思われる。

(交流協会台北事務所)