高騰する台北の不動産に見る光と陰

2011年4月

台北の不動産広告

現在台北市内に住んでいるが、郵便受けには毎日たくさんのビラが舞い込む。「舞い込む」というよりかは、ぎゅうぎゅうと押し込まれている。スーパーや学習塾の広告、ピザ屋、ジュース屋など新規開店の広告も多いが、圧倒的に多いのは不動産の販売広告である。新築マンションを宣伝するパンフレット風の豪華なビラ、中古マンションを斡旋する物件の写真入りビラ、ピンク地の紙に黒インクで価格と広さを印刷しただけのビラ等、多くの種類の不動産広告ビラが毎日詰め込まれている。

日本人がそれらのビラを見ると、記載されている物件の価格と広さに驚かされる。例えば、「50坪、5000万元、陽当たりよし」「100坪、1億元、学校近し」といった具合だ。

初めは、単位が平方メートル、日本円ではないかと我が目を疑ったが、まぎれもなく単位は坪であり、通貨は台湾元だ。坪は日本と同じく約3.3平方メートル、1台湾元は現在、日本円で2.8円程度である。それで換算すると、「160平方メートル、1億4千万円」「330平方メートル、2億8千万円」と、いわゆる億ションが目白押しである。

1997年、香港がイギリスから中国に返還されて以来、次は台湾が中国に併合されるという懸念から長く不動産価格は低迷してきた。しかし、台湾はしたたかに現状の政治体制を維持し、昨年(2010年)には中国と「海峡両岸経済協力枠組み協定(ECFA)」を締結、中国資本の台湾への直接投資をも一部開放した。すると、台湾の投資家は、中国大陸で不動産バブルを謳歌している中国資本が、今後大挙して台北の不動産を買いに来ると見て、不動産価格は一気に急騰した。台北は今や空前の不動産ブーム、不動産バブルに沸いている状況である。

また、中国が高度経済成長を遂げたため、台湾としては中国と武力で対決するというような事はもはや現実的ではなくなった。軍備増強よりも社会資本の充実のために公的資金が投入されており、台北ではMRT(Mass Rapid Transit System)による地下鉄の建設が進められ、バリアフリー歩道の完備された道路も整備され、台北の都市機能は格段に高まりつつある。今や、台北のマンションは庶民にとってははるか高嶺の花、サラリーマンの平均月収の数百倍にまで高騰してしまい、多くの市民が台北市郊外の新北市(昨年、台北県が昇格して誕生した)に流出している。しかし、そこでもまた不動産バブルが生み出されているようである。

台湾政府は、この不動産バブルに対処するため「奢侈税」あるいは「不動産増値税」の導入を検討、今年7月から実施するため立法院(日本の国会に当たる)に法案を提出しバブルに冷水を浴びせようとしてるが、反対も根強く、成り行きは予断を許さない。

さて、台北の不動産長者たちはいつまで笑顔でいられるのだろうか。

(台湾 菊地裕)

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