技術・工業および知的財産権供与に関わる制度
最終更新日:2024年01月10日
- 最近の制度変更
技術・工業および知的財産権供与に関わる制度
著作権、商標権、特許権、回路配置の保護、営業秘密、その他の保護、執行機関。
主たる管轄官庁は、商務省知的財産局。
知的財産権
- 著作権:著作権法(1994年)
著作権制度については、1931年に文学および美術保護法(Protection of Literary and Artistic Work Act)、1978年に著作権法(Copyright Act 1978)が、それぞれ制定されているが、文化保護法的な性格が強かったため、商業面への適用が不十分であった。そこで、ソフトウエア、ビデオ、音楽テープ、CDなどの海賊版の増加に対処するため、改正著作権法が1994年12月に公布、1995年3月から施行されている。新法では、コンピュータプログラムが著作物であることも明確化されている。
1994年の著作権法により、著作権はその著作者の生存中およびその死後50年間保護される。著作者が法人の場合は、著作権の保護期間はその創作のときより50年、また著作物が応用美術である場合は、その創作のときより25年となる(ただし、その間に公表されたときは、その公表のときから起算)。
2015年、著作権法(第2版)(2015年2月5日官報掲載、同年8月4日施行)および著作権法(第3版)(2015年2月5日官報掲載、同年4月6日施行)が成立。これらは著作権保護ならびに権利管理情報および技術的保護手段に関する責任についての改正を図るもので、インターネット上の著作物の著作権侵害や許可されていない映画館での収録等に関する事項を含む。
2018年、著作権法(第4版)(2018年11月11日官報掲載、2019年3月12日施行)が成立したことによって、商務大臣が指定した、視覚、聴覚などに障害を有する障害者のための組織および手法による、合法的に入手した公開済みの著作物の、非営利目的での複製または修正が認められることとなる。
2022年、著作権法(第5版)(2022年2月24日官報掲載、2022年8月23日施行)が成立。写真著作権の保護期間が、作者の生存期間中および死後50年に延長された。また、サービスプロバイダの定義が拡充されるとともに(ホスティングサービスプロバイダや検索エンジンサービスの提供者も含まれることとなった)、一定の要件を遵守することを条件に、著作権侵害に関するサービスプロバイダの責任を免責する規定が設けられた。さらに、著作権者がサービスプロバイダに対して著作権を侵害するデータの削除またはアクセス制限を求めることのできる仕組みが設けられた。
- 商標権:商標法(1991年)
タイの商標制度については、旧商標法が1931年に制定後、1933年、1961年に改正された。その後、1991年11月に成立した新商標法(1992年2月施行)により旧法は無効とされ、サービスマークと証明標章が保護対象に加えられたほか、罰則規定も強化された。世界貿易機関(WTO)/知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)に定められた要件を満たすため、2000年4月に新商標法は改正された(2000年6月施行)。これにより、タイに商標登録出願を行う際に優先権を主張できる、立体商標を保護対象とする、捜査担当官の権限を強化する等の改正が行われた。
2016年4月に新商標法はさらに改正され(2016年7月施行)、商標の国際登録を認めるマドリッド協定議定書への加盟に向けた準備が整えられるとともに(2017年11月7日に加盟)、音商標を認める等の改正が行われた。
新商標法により、商標は出願日から10年間保護され、以後10年ごとに何度でも更新できるようになった。ただし、更新は期間満了前の3カ月間に行うか、または期間満了後6カ月間に追加費用を支払って行わなければならない。 - 特許権:特許法(1979年)
特許法は1979年に制定されたが、WTO/TRIPS協定に定められた要件を満たすため、1999年に改正特許法が公布されている(1999年9月施行)。また、2008年8月から、タイにおいてもパリ条約が発効しており、タイに特許出願を行う際に、当該条約に基づく優先権が主張できる。
意匠制度ならびに実用新案制度に相当する小特許制度は、特許法内に定められている。2009年12月24日から、タイは特許協力条約の142カ国目の加入国として発効しており、同条約を用いた国際特許出願の受付を開始している。
特許期間は、1999年の改正によって、[1]発明特許の保護期間を出願日から20年、[2]工業意匠特許の保護期間を10年、[3]小特許制度は最長10年の保護期間とされた。
なお、2019年1月28日より大麻の原料を含む発明の商業利用は、麻薬取締法において大麻の医療用開発が適法とされない限りは公序良俗に反し特許権として保護されない発明とみなすこととされたが、2019年2月19日施行の改正麻薬取締法により医療用大麻が合法化されたため、同日以降の大麻の原料を含む発明の商業利用は特許の対象となり、特許出願を行うことが可能となった。
- 回路配置の保護:集積回路の回路配置保護法(2000年)
集積回路の回路配置保護法は2000年8月に施行された。この法律では、創作者による独自に創作された回路配置またはその組み合わせを保護する場合には、商務省知的財産局への登録を必要としている。
保護期間は、申請日または商品として使用された日のどちらか早い時点から10年である(ただし、回路配置完了後15年を超えないものとする)。
- 営業秘密:営業秘密法(2002年)
タイにおける営業秘密については、2002年7月22日に施行された営業秘密法(2002年)に基づき保護される。
営業秘密法(2002年)で定める営業秘密とは、まだ一般に知られておらず、情報に通常接触できる関係者も、まだアクセスできない営業上の情報であって、その秘密から生じる商業的価値が生まれるものであり、営業秘密の管理者が、秘密保持の適切な措置を講じているものを意味する。
営業秘密を保護するための登録は一切必要とせず、それが秘密とみなされる限り、それらの営業秘密は保護の対象となる。2015年に営業秘密委員の任命や罰則規定を修正した改正が行われ、同年2月6日より改正法が施行されている。
- その他の保護
- CD製造法(2005年)
タイにおける知的財産侵害問題、とりわけCDに対する著作権問題に対処するために、その侵害を効果的・体系的に管理、防止する措置として、この法律が制定された。
本法の規定は、主としてCDに関する機械、原材料、工場、製造プロセスの届出義務や、CDを製造する際の事前届出を義務化するものである。 - 植物新品種保護法(1999年)
2000年に施行され、生物多様性条約への加入に向けて、植物新品種のほか、地域固有の植物品種や自然状態に従って、タイ国内での生息が確認された野生植物品種などの保護登録をするものである。農業共同組合省農業局が所管。 - 地理的表示保護法(2003年)
2004年4月に施行され、地理的起源に由来した品質、社会的評判、特性を有する産品を保護する。登録申請先は、商務省知的財産局。 - 伝統医薬および知識の保護と促進に関する法律(1999年)
タイの伝統医薬および知識として、実験、分析、セラピー、治療、もしくは疾病の予防、もしくは人間や動物の健康促進やリハビリテーション、出産補助、タイマッサージ、タイの伝統医薬の調合、医薬品関連機器等の発明で、古代から受け継がれてきた知識もしくは文書に基づくものを、登録によって保護するものである。
保護期間は、権利者の生存中および没後50年継続する。
- CD製造法(2005年)
- 執行機関
- 知的財産および国際取引中央裁判所(Central Intellectual Property and International Trade Court:CIPITC)
知的財産および国際取引中央裁判所は、アジアで最初の知財専門裁判所として1997年に設置された。第一審裁判所であり、知的財産および国際貿易に関する民事および刑事事件を扱っている。知的財産等に関する、より迅速で効率的な手続きをするために設けられた。 - 経済警察(Economic and Cyber Crime Division:ECD)
タイ警察庁は、知的財産を含む経済犯罪に対応するために、タイ警察の中央捜査局下に特別組織を設置している。1987年に創立された前身組織は、その後幾度か改組され、2005年には、Economic and Cyber Crime Divisionとなり、インターネット犯罪などもカバーする。
なお、2009年からは、Economic Crime Suppression DivisionおよびTechnology Crime Suppression Divisionにそれぞれ改組され、前者は経済犯罪、後者はコンピュータに関する犯罪を主に対応することとなった。 - 法務省特別捜査局(Department of Special Investigation:DSI)
DSIは、2002年に組織された。特別技能を持つ専門家らが集まった特別な捜査機関であり、一般人の公益や道徳に弊害をもたらす、あるいは国家の安全を脅かすような国際犯罪、組織化された犯罪などを扱っている。また、知的財産関係の事件等も扱っている。
- 知的財産および国際取引中央裁判所(Central Intellectual Property and International Trade Court:CIPITC)
主たる管轄官庁
商務省知的財産局(Department of Intellectual Property:DIP)
所在地:563 Nonthaburi 1 Road, Tambon Bang Krasor,
Amphur Muang, Nonthaburi, 11000
Tel:+66-2-528-7010, Hotline 1368
Fax:+66-2-547-4691